エアコンでの暖房は省エネか? その2

エアコンでの暖房は省エネか?の続きです。

前回、外気温が低温の場合は省エネにならない。と書きました。
JIS規格では、室温が20度でのテストですので、室温が低い場合の
立ち上げ運転時の効率はどうなのか?調べてみたのですが、はっき
りしたデータが見つけられませんでした。
しかしエアコンの負荷が定格より大きくなると、効率が悪くなるよ
うなので、室温を上げる立ち上げ運転時は効率が低下すると思われ
ます。

http://www.pu-kumamoto.ac.jp/~hosoi/15.pdf
http://tkkankyo.eng.niigata-u.ac.jp/HP/HP/sympo3/akabayashi.pdf

こちらの研究結果で見てみても、冷房時に比べ暖房のcopは大きく低
下しています。カタログ値は冷房、暖房のcopは大差ないのですが。
冷房は室内の狭い空間で熱エネルギー密度が高い状態で熱を集め外に
出す。暖房は外の低温の拡散した熱エネルギーを集めて室内に送る。
こう考えると、暖房の方が効率が悪いのも当然と言えます。

エアコンでの暖房で忘れてはいけないのは、外の熱をもらって室内を
暖房するので、室外機からは外気温よりも冷たい空気が放出される。
ということ。この排気が0度以下になり湿度が大きい場合、室外機に
霜が付着します。こうなると霜除去のため、暖房を一時中断して除霜
運転をすることに。エアコンでの暖房が時々止まるのはこのためです。
最近は、ノンストップ暖房機能を搭載した機種もあるようですが、
どちらにしろ霜取りに無駄なエネルギーが必要になっています。

寒冷地では下記のブログにあるように室外機が「氷のお化け」になる
こともあるようです。

http://iehint.blog.drecom.jp/archive/206

冷房時の排熱はヒートアイランド現象を引き起こす要因として問題に
なっていますが暖房時の冷風はあまり言われませんね。
冷房の排熱は集めて熱エネルギーとして給湯等に使うというのも考え
られますが、暖房時の冷風、氷は使い道が思い浮かびません。

これらのことから、やはりエアコンでの暖房は省エネにはならない。
と思います。特に寒冷地では。ヒートポンプエアコンで暖房をするの
であれば、空気熱ではなく、地下水、地中熱を使うと効率は上がるは
ずです。(地下水だと冷房にも使えますね)

空気の比熱(熱容量)が1.0 J/g・K に対し、水は4.2J/g・K
同じ温度でも、水の方が空気よりも4.2倍の熱エネルギーを貯め込んで
いることに。水を使うと同じ温度の空気からよりも多くの熱を取り出す
ことができる。さらに地下水は外気温よりも高い温度で一定しているの
で、さらに効率が上がることになります。冷房時も外気温よりも低い温
度の地下水(水道水でも可)を使い、水温の上がった水を給湯に使うと、
排熱の問題も解消され、一石二鳥。

ドイツでもヒートポンプの効率について議論されていたのですが、地熱、
地下水を使ったヒートポンプは温暖化対策において合格という結論に
なったようです。

村上敦さんのフライブルク・エコレポート
http://www.eco-online.org/german-eco/2008/12/29-120635.php

ドイツ語が読めないので、詳細は分かりません。。。
が、このフィールドテストでのヒートポンプは給湯、暖房全般に使われ
る大がかりなもので、日本とは単純に比較できない。とのことです。

このようなフィールドテストで機能と省エネ、温暖化対策への効果をき
ちんと検証することはとても重要です。
また、村上敦さんが言われるように、日本のエネルギー供給戦略を明確
にすること。これが行われない限り、国もメーカーも電力会社、それに
消費者もどのような行動を取ればよいのか、どんな商品を作り、どれを
買うといいのか、判断ができません。日本の将来像を見据えた対策を考
え議論することが第一です。

エコキュート、エアコンでの暖房についても正確な情報が提供されてい
るとはいえません。特にエコキュートの深夜電力を使った給湯は問題が
大きい。エアコンでの暖房も外気温が低い場合は有効ではない。
メーカー、電力会社の宣伝を鵜呑みにせず、商品の機能をきちんと調査
する機関が必要だと思います。


関連ページ
地下水、地中熱空調
ライフ・アート 地中熱ヒートポンプ
http://www.life-art.jp/syo01.htm
ゼネラルヒートポンプ工業株式会社 水冷式、地中熱、排熱回収ヒートポンプ
http://www.zeneral.co.jp/
MDI株式会社 簡易ヒートポンプ
http://www.mdirect.jp/framepage7.html
エナーテック マルチヒートポンプシステム
http://www.enertec.co.jp/heat_pump/index.html
株式会社リビエラ 地下水利用空調
http://www.aomori-riviera.co.jp/index.html

関連記事
エアコンでの暖房は省エネか?
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/fb242a549702df2328ab836f08cd9f61
エコキュートの謎  エコキュートはエコなのか?
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/2c7cd0811170c773affb04ee589f5514
エコキュートの謎 その2 深夜料金の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/b559c7e7cc685450e86dc2e1058ef5d6


2009/3/13 更新 
花粉症が少し治まってきました。杉花粉はそろそろ終盤でしょうか?
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エアコンでの暖房は省エネか?

エコキュートはエコなのか?の続編です。

我が家の暖房器具は昔ながらの石油ストーブ1台とこたつのみ。最近は
エアコンの方が省エネと言われていますが、私はあの熱風が吹き付ける
のが好きではない。風が冷たく感じる時があるのも、本当に暖房になっ
てるのか?と疑問です。ストーブは輻射熱、遠赤外線でじんわり暖まる
ので、エアコンと比べると暖房の質、快適さは違うと思います。

しかし、最近は下記のような暖房も灯油、ガスなどよりもエアコンが省
エネになるという報道(宣伝?)多くなっているのも事実。

1.0kWの消費電力で約6.0kW以上の暖房能力が得られ、効率的な暖房が
行えます。
http://www.jraia.or.jp/product/home_aircon/airconw_01.html
http://www.hinodeya-ecolife.com/ecowiki/165.html

石油ストーブでの暖房がエネルギーの無駄遣いだったらいい気はしない。
でも、これって本当なんでしょうか?調べてみました。

富士通の最新エアコン ノクリアRZシリーズ 10畳用 AS-Z28Vの場合
(2009年3月時点)

http://www.fujitsu-general.com/jp/products/aircon/2009/nocria_z/lineup/asz28v.html

商品ページでは、暖房能力 3.6kw 消費電力 605kw なので

暖房効率COP = 3.6kw / 0.605 kw = 5.95

1の電力で、5.95の熱を発生させた。ということで確かに効率がいい。
しかし、この時の温度等条件が分かりません。
詳細仕様を見ると、外気温2度時の暖房能力、消費電力がありました。

http://www.fujitsu-general.com/jp/products/aircon/2009/nocria_z/lineup/asz28v_detail.html

外気温2度の時には 暖房効率 5.7kw 消費電力 1750w

暖房効率COP = 5.7kw / 1.750 kw = 3.25

エネルギー消費効率(COP)として書かれている5.95の半分以下。
1のエネルギーで3の熱を得る。これだと、発電、送電ロスを考えると
石油をそのまま燃やす場合とほぼ同じ熱効率になります。
外気温が2度以下の場合はもっと効率が下がるはずです。

では、エネルギー消費効率(COP)5.95として書かれていた値はどこから
出てきたのか。
↓こちらよると、JIS C9612に基づき、外気温度7℃、室内温度20℃。

http://www.fujitsu-general.com/jp/products/aircon/caution/index.html

JIS C9612を見てみると、暖房能力試験はJIS B 8615による。とのこと。
日本冷凍空調工業会にあるパッケージエアコンの規格と同じようです。

http://www.jraia.or.jp/product/com_aircon/jis_02.html

温度条件は、

室内側吸込空気温度 乾球温度 20度
標準時: 室外側吸込空気温度 乾球温度 7度
低温時: 室外側吸込空気温度 乾球温度 2度

標準では、やはり外気温7度。外気温が7度から2度になると効率は
約半分に。さらに気温が低くなると効率は格段に下がるでしょう。
外気温の妥当性はともかくとして、室内側が20度というのはどうなん
でしょう?これはすでに暖まった時点での保温だけで低温からの立ち
上げ運転は含まれていない?室内側が例えば10度だった場合、効率は
分からないのですが、少なくとも使用電力量はかなり大きくなるはず
です。

東京電力のサイトに「省エネ性能のアップでエアコン暖房はお得です」
というページがありました。

http://www.tepco-switch.com/life/labo/research/aircon/q_b-j.html

1MJあたり、石油ストーブ2.6円に対し、高級エアコンだと1.0円。
半分以下の値段です。が、しかし、これは外気温7度の場合。
小さな字で「2℃時の高級エアコンのコストは約2.0円です」とあります。

また灯油は平成20年3月時点の料金で1,714円/18L。今は1200円/18L程度
なので、石油ストーブは1MJ当たり1.8円。外気温2度の時には、石油スト
ーブの方がお得になります。(深夜料金の場合を除く)さらに、これは室
内温度が20度の場合だと思うので、室内温度が低い場合は、もっとエアコ
ンの方がコストが高くなると思われます。


結論。外気温が低い場合(2度以下?)は石油ストーブの方が、省エネに
なり、さらに節約にもなる。(室内温度の条件により、実際は外気温が2度
より高い場合でも省エネ、節約になると思われます)
特に寒い地域ではエアコンによる暖房は不利です。電力会社、メーカーに
ダマされないようにして下さい。

つづく。。。


備考:ここでは、富士通の特定の機種を対象にしましたが、これは単に
仕様のページが見やすかったため選んだものです。
他のメーカーの最新機種も調べましたがほとんど効率等は同じでした。


関連ページ
エアコン省エネ効果調査へ、過大評価の可能性 経産省
http://www.asahi.com/eco/TKY200910190158.html

日本冷凍空調工業会
http://www.jraia.or.jp/product/com_aircon/jis_02.html
JIS規格 検索ページ
http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html
エコキュートの謎 エコキュートはエコなのか?
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/2c7cd0811170c773affb04ee589f5514


2009/3/6 更新
この冬、うちでは灯油18リットル2缶買っただけ。
さらにまだ余っています。今年は本当に暖かい冬だったようです。
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