[日本風力開発 決算の謎2010] 補助金について

日本風力開発が有価証券報告書の提出遅れから監理銘柄になって20日あまり。
主な内容はこちらをご覧下さい。

日本風力開発はH21年3月期に代理店収入を得た風車115機中93機とNAS蓄電池40MW、それに20年3月期の蓄電池27MWをゼネコンに購入依頼し、もしこれらの資材の納入先がなければ、日本風力開発が買い戻すという「覚書き」を交わした。そして「覚書き」通り、日本風力開発は蓄電池55MWをゼネコンから買い戻した。(実際は連結子会社の松前、銭函風力開発が直接ゼネコンから購入したと見られる)


これは、売り上げを増やすことで決算を良く見せようとしたということだろう。2009年3月23日という期末ぎりぎりになっての取引。なんとか黒字を確保したいという思惑が感じられる。もちろん、これだけでも粉飾決算が疑われるが、もっと大きな問題がある。それは、風力発電所建設には補助金が支給されているということ。

風力発電所に関しての補助金は主に「新エネルギー等事業者支援対策事業」として、建設費の約1/3が支給される。1件当たりの年間補助金上限額は10億円(相当の理由が有る場合は15億円)最大4年間で40億円となっている。ちなみに、この補助金は昨年の仕分けで「予算半減」となり、新規の補助採択は難しい状況。

事業仕分け 1.95兆円捻出し終了 449事業を検討
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/180978ce259d30879ad2b1a965c5fecc

この補助金は平成21年度から一般社団法人新エネルギー導入促進協議会(nepc)が窓口になっている。

平成21年度新エネルギー等事業者支援対策事業 公募要領(pdf)
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/090420_2.pdf

上記公募要領の冒頭(2ページ目)にはこう書かれている。

 当協議会から補助金の交付決定を通知する前において、発注等を完了させた設備等については、補助金の交付対象とはなりません。

日本風力開発がゼネコンに依頼して、蓄電池、風車を購入してもらったのがH21年3月。銭函、松前の補助金支給が決定したのはH21年7月。そして、日本風力開発が蓄電池を買い戻ししたのがH22年3月(実際には、銭函、松前風力開発が購入)。補助金交付決定前のH21年3月に蓄電池等を発注したと考えるのが、自然だと思う。

また、補助金が支給される以上、入札で決めるべき施工会社が、補助金交付決定前に決まっていることになる。これでは、風力事業者と建設会社の関係も不透明となり、工事代金等の妥当性も疑われる。

日本風力開発が風車等の機材をゼネコンに購入してもらうことによって斡旋手数料を得た。この手数料分は建設費が増え、その分、補助金も増えることになる。(実際は、ゼネコンを通す分さらに建設費は増えるはず)少なくともこの斡旋手数料にかかる補助金は水増しされたものと言えるだろう。

今回の最も大きな問題は、この補助金に関してだろう。さらにゼネコンと日本風力開発との関係、癒着がなかったか。これが今後の焦点だと思う。

本年度(平成22年度)の補助金の公募は6/21で締め切られた。銭函、松前も前年度からの継続事業として申し込みを済ませただろう。新エネルギー導入促進協議会が補助金の支給継続を認めるのだろうか?注視する必要がある。


関連リンク
日本風力開発
http://www.jwd.co.jp/
一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会
http://www.nepc.or.jp/

行政刷新会議事業仕分け結果 
省・新エネルギー導入のための補助・事業者向け (pdf)
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov27kekka/2-68.pdf

日本風力開発 決算の謎2010
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/04f65e34ca83bde201508849ebb4ae8a
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f


2010/7/4 更新
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コメント
 
 
 
補助金 (風坊主)
2010-07-05 10:17:56
毎回拝見させて頂いておりますが、いつも的を得た記載に感心致します。
さて、この会社の事業スキームは分かりやすい解説で分かりました。
つまり、販売手数料の一部(約30%)は補助金だということですよね。
補助金申請するにあたっては金額の確定をする必要がある為に、工事業者や風車メーカーの選定については補助金申請する前にある程度決定するしかありません。ですから、補助金決定がなされる前には工事業者やメーカーはほとんど決まっている状態になります。
発注をしていなければ良いという暗黙の了解がある、ということでしょう。
国の補助事業なので、予算の関係もあってかこういうスキームになっているようです。
この事業開始前の補助事業自体にも問題があるわけです。
JWDはこのスキームを上手く利用して利益を上げていた、と言う事でしょう。
ですが、今後はこのような補助事業は無くなっていくでしょうから、その時にどうするのでしょうか?
 
 
 
Re:補助金 (mizu)
2010-07-06 22:07:29
風坊主さん、

販売手数料の原資は補助金であるとも言えますね。
基本的に事業を行う際には、経費をできるだけ少なくしようとするはずなのに、子会社への販売で手数料を得て、その分建設費が増える。
この日本風力開発の事業スキームは売上げを大きく見せること。それに補助金を上手く利用するという意図があったのではないでしょうか。

何度も書きますが、今回の問題、それに最近の強引な風力開発、反対運動の激化には、補助金が大きな要因だと思います。
定率の補助金では、経費を抑えるという意欲が働きにくく、施工業者との癒着を生みやすい。
今の補助金制度では、費用の妥当性、建設後の発電量に対する監査等も行われていないようです。

今後は、建設費ではなく発電量に対する補助へと移行していくと思います。
日本風力開発やその他の風力事業者の今までのビジネスモデルは全く通用しなくなる。
新しい仕組みに対応できる事業者は生き残り、それ以外は淘汰されることになるでしょう。
 
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