Retscreenで風力発電の採算性シュミレーション

前回、設備利用率と設備容量について書いて見ました。今回は、この設備利用率を使って風力発電の採算性を分析をしてみます。使うのはグリーンプロジェクト分析ソフトRetscreenです。

RETScreen クリーンエネルギープロジェクト分析ソフト ダウンロード
http://www.retscreen.net/ja/home.php
(エクセル必須です)
当ブログ内 RETScreenの紹介
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/5b8e47a62db8be72094b0e87fc90e939


風力発電の分析は3種類あります。それぞれ下記のデータを使って計算します。

方式1 設備利用率
方式2 年間平均風速と機種の電力カーブデータ
方式3 月ごとの平均風速と機種の電力カーブデータ

方式1は設備利用率だけでの計算で、最も簡単な分析になります。

では始めましょう。まずはスタート画面。



一番上、「プロジェクトデータベース参照」のリンクを押します。すると各種テンプレートの選択画面が出ます。


プロジェクトタイプ-電力
タイプ-風力タービン
プロジェクト名-50,000kw

を選択し、右下、緑丸のチェックをクリック。




データが挿入されました。プロジェクト名、場所などの水色のセルは備考欄になるので適宜名前など付け直して下さい。環境提示の□をクリックすると、言語、通貨が変更できます。ここで、通貨を「円」に変更します。分析タイプは初期状態では方式1になっています。方式2,3にする場合はここも変更(後で変更もできます)


下の欄、立地参照条件で「天候データ地点選択」で、各地の気温、風速等のデータを参照できます。(今回は設備利用率からの計算なので、選択の必要はありません)日本のデータも入っています。また、データ提示欄で自分で記入することもできます。

ここまできたら、一番下、欄外の「エネルギーモデルシートを完成」をクリック。風力タービンのエネルギーモデルのシートができあがります。(少し時間がかかります)



今回の分析は、NEDO再生可能エネルギー技術白書から、風車10MW、初期コスト30億円(30万円/kw)、設備利用率20%、年間コスト(メンテナンス等)7000万円(0.7万円/kw)、売電金額20円/kwhとしてみます。

入力項目は 風力タービンの電力容量 10000(kw) その右、¥マーク 初期コスト欄 3000000000(円) 容量係数(設備利用率) 20(%)、売電料金 20000(円/MWh)

ここまで入力すると、年間の商用電力網への出力が17,520MWhと出てきます。これは年間の発電量です。設備利用率からの計算なので、風速や機種による違いは関係ありません。

「排出分析」では、二酸化炭素の排出量取引のクレジットレートを設定できます。(今回は飛ばします)

その下、「財政分析」欄。

初期画面では、インフレ率 2.0%、プロジェクト期間25年、借入率70%、利子率7%、借入期間15年になっています。ここは適宜変更して下さい(今回はこのまま計算します)。その下、初期コストは飛ばして、インセンティブと助成金欄。補助金が支給される場合はここに記入します。操業とメンテナンスのコスト欄に 70000000(円)と入力。これで入力終わりです。

これで分析結果が出ました。一番下「予算の現実性」という項目です。上から、

自己資本に対する内部収益率(IRR equity) 13.1%
投資金額に対する内部収益率(IRR assets) 3.9%
投資金額の回収期間(Simple payback) 10.7年
自己資本の回収期間(Equity payback) 10.6年
(全て税引き前)

右側にはキャッシュフロー図も出ました。


(クリックで大きく見られます)

この数字をどう考えるかはそれぞれの判断に任せます。インフレ率、利子率、借入率、借入期間の変更、設備利用率が25%だったら?補助金があったら?売電価格は?排出量取引ができたら?などなど、それぞれ数字を変えて分析してみて下さい。また、風力だけではなく、事業用の太陽光発電も同様にシュミレーションできます。

繰り返しになりますが、これは最も簡単な分析になります。それでも、ある程度の採算性は掴めるかと思います。採算性は個別の設備利用率はもちろん、制度面(買取価格、補助金)などに大きく依存することになります。採算性が低ければ普及せず、あまりに儲けすぎるとバブルを呼んでしまう。夢物語ではない、堅実で公平な制度設計を望んでいます。


関連ページ
RETScreenソフトでの計算モデル等(英語)
http://www.retscreen.net/ang/12.php

大阪ガス、和歌山の風力発電施設傘下に 9月に運転開始
http://www.asahi.com/business/update/0607/OSK201106070088.html
大阪ガスが日本風力開発の由良風力発電所を買収。今回のシュミレーションと同じ、10MW(2MWx5基)で投資金額約30億円。ただしその1/3の補助金が交付されると見られます。補助を受けている場合は、売電金額は現在10~12円/kwhのようです。

発電事業進出を検討=全国10カ所に太陽光施設―ソフトバンク
http://www.asahi.com/business/jiji/JJT201105230107.html
ソフトバンク、孫社長が打ち出したメガソーラー計画。こちらは2万Kw(20MW)で建設費用80億円。売電金額は40円/kwhを見込んでいるようです。

NEDO再生可能エネルギー技術白書
http://www.nedo.go.jp/library/ne_hakusyo_index.html
風力だけでなく、太陽光、バイオマス、太陽熱、波力、海洋温度差発電等についての資料あり。

風力発電事業における現状と課題 北海道/苫前町職員組合
http://www.jichiro.gr.jp/jichiken/report/rep_gunma30/jichiken/5/17.htm
実際の風力発電事業のコスト、課題など詳細な資料。

当ブログ内
再生可能エネルギーの発電量はどのくらい? 設備容量と設備利用率について
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/59744c907c59d5d0db00800c5318a625
勝手に風力発電講座 定格出力と設備利用率
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/a08334ada4cdae6bf1fe22356a36d648


2011/6/12 更新
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クリーンエネルギー採算性等分析ソフト Retscreen

震災、福島第1原発の事故、計画停電、浜岡原発の停止と、原発、日本のエネルギー戦略の見直しが待ったなしの状況となってきています。この中で、今、注目を浴びているのが自然エネルギー(再生可能エネルギー)。自然エネルギーで原発の代替を!と言った声も大きくなってきていますが、一体どのくらいのエネルギーが見込めるか?このRetscreenは、クリーンエネルギーの採算性、CO2削減、化石燃料の削減量等をシュミレーションするフリーソフトです。

RETScreen クリーンエネルギープロジェクト分析ソフトウェア
http://www.retscreen.net/ja/home.php

ダウンロード
http://www.retscreen.net/ja/download.php
(Windows2000以上、Excelのマクロを使うため、Excel必須)

カナダの天然資源省が作成したソフトですが、日本語のホームページがあります。ソフト自体も日本語。トレーニングコースも一部日本語ファイルがあります。

トレーニングコース
http://www.retscreen.net/ja/d_t_info.php
http://www.retscreen.net/ja/t_training.php
(青マスは日本語のファイル)

このトレーニングコースの資料だけでも見る価値あり。プレゼン等にも使えそうです。

さて、RETscreenでなにが出来るか。

風力、水力、太陽光、太陽熱、地熱等の発電システム、太陽熱、地中熱、空気ヒートポンプ、パッシブソーラー等の熱(家、ビル、商業施設等も選べる)、エネルギー効率、熱の生産/冷熱の生産、電力、熱電併給など多様なプロジェクトのシュミレーションができます。

http://www.retscreen.net/ja/d_t_info.php

風力、太陽光、太陽熱等様々な製品データ、それに各地の風力、気温、日射等の気象データも収録されています。

難点は、ヘルプが英語・フランス語しかないこと。このため、使い方が分かりにくい。(ヘルプがマニュアルを兼ねている)エクセルのマクロベースで、動作が遅く、不安定なこと。それに、どのようなデータに基づきシュミレーションされたかが分からないこと。(計算手法は公開されています)
難点もありますが、とても有用なソフトだと思います。しかも無料!

実際の使い方などは、また次回。



2011/5/14 更新
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