<CO2排出量増加の要因は?>その4 国の責任

日本の温暖化ガス排出量は1990年と比べ、9%も増加してしまった。
チームマイナス6%。みんなで二酸化炭素排出量を減らそう!と言われて
久しいのに、なぜこんなに増えたのか。その要因を探る連載も4回目。
まとめ。国の責任について。


石炭火力の増加、電力自由化、自家発電、間接排出量での公表など要因を
挙げて来たが、一番の排出量増加の原因は国の姿勢だろう。

企業としては儲けるのが一番なので、石油が高くなってくれば安い石炭を
使う。電力自由化で余った電気が売れるのだったら、安い石炭火力で発電
する。設備ももちろん安い方が良い。今回小名浜火力発電所に対し、環境
省から建設に反対する意見書が出されたが、これは遅すぎた。
少なくとも温暖化が問題になってきた時点で、排出量の多い石炭火力発電
所の新設を規制するべきだった。結局、国はこの10年で石炭火力由来の電
力が倍増し、排出量が増加するのを黙認した。

今回、環境省は小名浜火力発電所建設に反対の立場をとり、会見で

 石炭火力の必要性は十分理解しているが、古い性能の悪い施設と置き
 換えるなど真に必要なものに限定すべきだ

と踏み込んで発言したのに対し、経済産業省の勧告では

 最高水準の設備の導入や、廃木材などバイオマスの混焼率拡大などで
 CO2排出量の実行可能な最大限の削減を図ること

と石炭火力自体は容認する内容になっている。
「最高水準の設備」をどのくらいと見なすのか?また、最高水準を導入
した場合、初期費用がかさみ、売電では儲けが出なくなる可能性がある。
バイオマスの混焼では、量の問題でCO2削減効果は少ないだろう。

石炭火力の擁護論として、最近よく出ているのが石炭ガス化複合発電
(IGCC)とCO2の地中貯留。ガス化発電の方は特に問題ないと思うが、
まだ、国内でも実証実験の段階。これを持って、日本の技術は素晴らしい、
効率は世界一!と主張するのは早計。これでも、排出量が15~20%減り、
石油並に低下するという程度。設備費用は既存の石炭火力よりも数倍高く
なるので、現状では国内であまり普及は進まないだろう。
オーストラリアなど石炭産出国ではメリットが大きいか?

また地中貯留は、技術的にも確立されていない。将来に禍根を残す可能性が
あり、私は賛成できない。エネルギーの自立という目的からも、やはり脱炭
素社会を目指すべきだと思う。

では、どうしたら良いのか。
石炭火力では、NOx,SOxなど大気汚染物質も問題になるが、これは法律や
地方自治体の条例で規制されている。同じように、二酸化炭素の排出量も
基準値を設けて規制すれば良い。例えば原単位が一定値以上(0.6kg-CO2
/kWhなど)の場合は送電不可とする。

また、現在、石炭の関税は石油等と比べ極端に安くなっている。業界に配慮
したものだろうが、これでは石炭をどんどん使えと言っているようなもの。
温暖化ガス排出量に応じて関税を設定すべきだろう。

安い石炭火力の電力を使えなくなると、競争力が落ち、失業者も増える。と
経済界は主張するだろうが、現状は、自家発電でも自家消費は減っており、
大半は送電目的であることを考えると、大きな問題はないだろう。
間接排出量での公表を止め、発電による排出量は発電をした会社の排出量と
すれば、石炭火力を縮小する企業が増えるはず。

家庭も安い電力で恩恵を受けてきたのかもしれないが、家庭の昼間の電力
価格はそれほど下がってはいない。一番大きいのはオール電化での深夜電
力の割引だろう。石炭火力を規制すると深夜電力は上がると思われる。
オール電化にすると、省エネ、エコ。と宣伝しているが、これも夜間に
石炭火力で発電した電力を使っているとなると、むしろ逆だろう。
現在、時間帯別の原単位を電力会社は公開していないが、これを公表し、
本当にエコなのか検証する必要がある。

昨日のコメントでも書いたが、高速道路1000円、エコポイント、オール電
化の普及など、国は本当に温暖化対策をする気がないようだ。一番大事な
のは、国が本気で温暖化対策に取り組む姿勢を見せること。どういう対策
を取るのが有効なのかを分析し公表することだと思う。


関連ページ
次世代石炭火力にCO2回収技術 三菱重工 豪で6年後稼働
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090617-00000005-fsi-bus_all
二酸化炭素ゼロ目指す石炭火力発電 経産省が開発後押し
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090617-00000629-san-bus_all
【キー・テク】Jパワー「石炭ガス化技術」
http://www.business-i.jp/print/article/200906010009a.nwc

<CO2排出量増加の要因は?> 石炭火力発電の増加
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/91c4f3a82427cca7252507070c3347cb
<CO2排出量増加の要因は?その2> 電力自由化と自家発電の増加
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/5676ba8d945440ac6c9d7176058cded3
<CO2排出量増加の要因は?>その3 間接排出量と直接排出量
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/f6bee62324c4d184b35cc0572e878855
小名浜火力発電 環境相が反対の意見書…温暖化対策に不備
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c719791e3191a3d34ded15487120e928
温室ガス 中期目標は「05年比15%減」 麻生首相表明
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/4ed21e0b06d4f30f273254b919d37aac
電力、CO2排出14%増 07年度、原発停止で
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c5a44ca8e0f6ab3fa182381581cc7e34


2009/7/9 更新 七夕はやはり曇り空で星は見えませんでした。
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<CO2排出量増加の要因は?>その3 間接排出量と直接排出量

前回、前々回とエネルギー変換部門、特に石炭由来の排出量の増加が
日本のCO2排出量増加の要因と書いた。
発電からの排出量が増える背景には、日本での温暖化対策が間接排出量
に基づいている点がある。つまり、発電時のCO2排出量は家庭、産業など
の最終消費者の排出量として配分して扱われている。配分前の直接排出量
の実体はあまり知られていない。
そこで、GIO 日本の温室効果ガス排出量データよりグラフを作成してみた。


部門別 CO2直接排出量の推移 (クリックすると大きく見られます)


部門別の直接排出量グラフを見ると、1990年の排出量は産業部門が最も
大きかった。産業部門はその後もほぼ横這いであるが、エネルギー変換
部門の排出量は増加し続け、2007年には産業部門を大きく引き離し1位
になった。


燃料種別排出量の推移 (クリックすると大きく見られます)


燃料種別排出量では、石油が基準年より82,000[Ggco2]減少したのに対し、
石炭は143,000[Ggco2]増加し、石油との差は縮まってきた。


エネルギー変換部門排出量増減率の推移 (クリックすると大きく見られます)


エネルギー変換部門の排出量増減率を見ると、電力自由化(規制緩和)された
2001年以降、大幅に排出量が増えたのが分かる。
電力自由化では、小売りの一部自由化が大きく言われているが、同時に調達・卸
も規制緩和され、工場等の自家発電余剰電力を売電できるようになった。
前回書いた通り、エネルギー変換部門からの排出量が急増した背景にはこの自家
発電の増加があると思われる。

日本のエネルギー効率は世界一と言われている。乾いた雑巾をしぼるようなもの。
とも。確かに経済産業省の2007年度エネルギー需給実績によると、最終エネルギー
消費は2000年以降ほぼ横這いであり、2005年から3年連続で減少している。
(但し1990年比では、約14%増加)
しかし、エネルギー起源のCO2排出量はこの間も増加している。

ここから言えることは、省エネ(エネルギーの節約)とCO2削減とは直接結びつい
ていない。ということ。
企業はコスト削減のために、自家発電設備を新設(増設)する。もちろん燃料は安
い石炭。自家消費は節約し、出来るだけ売電する。電力会社は自ら設備を増設する
ことなく、安い電力を調達できる。基本的に公表・報道されるのは、最終消費者に
発電時の排出量を負わせる間接排出量なので、企業側の排出量は増えたことになら
ない。かくして、家庭部門、オフィス部門の排出量が増加し、家庭での省エネ、
温暖化対策の負担が叫ばれることになった。

また日本の発電効率は世界一とも言われている。日本のすぐれた技術を輸出し、海外
で削減分の排出枠を獲得しようという主張も多い。しかし、自家発電設備での効率に
ついては、疑問が残る。売電でてっとり早く儲けようと作られた自家発電設備にはそ
れほどお金をかけていないだろう。実際、今回の小名浜火力発電所の排出原単位が
0.8kg-CO2/kWh程度だったのを見ると、それほど効率は良くないと思われる。

また、石炭は出力の変動には向かず、原子力と同じくベース電力とされている。
つまり、1日中ほぼ一定の出力となる。石炭火力発電が増えれば、それだけベース
電力が増え、夜中でも作られる電力量が増える。ここにも電力会社がオール電化を
促進していった原因があるようだ。安く調達できる自家発電からの電力が深夜割引
の元になっているのかもしれない。オール電化は省エネになり、温暖化対策に有効
と宣伝されているが、深夜帯の石炭火力の発電量が増えれば、逆にCO2は大幅に増
えることになる。

あまり排出量が増えるのは企業として好ましくはない。自家発電し自分で消費した
分は当然その会社の排出量となる。しかし、間接排出量の考え方では、売電した分
については、最終消費者の排出量と見なされる。企業にとっては温暖化・環境対策
で悪いイメージも付かない間接排出量の方が都合がいい。

電力自由化、自家発電、間接排出量とCO2排出量の増加の原因を探ってきたが、な
んと言っても、日本の排出量増加の一番の原因は国の姿勢だろう。
長くなってきたので、また次回に続く。


<CO2排出量増加の要因は?> 石炭火力発電の増加
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/91c4f3a82427cca7252507070c3347cb
<CO2排出量増加の要因は?その2> 電力自由化と自家発電の増加
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/5676ba8d945440ac6c9d7176058cded3

小名浜火力発電 環境相が反対の意見書…温暖化対策に不備
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c719791e3191a3d34ded15487120e928
温室ガス 中期目標は「05年比15%減」 麻生首相表明
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/4ed21e0b06d4f30f273254b919d37aac
電力、CO2排出14%増 07年度、原発停止で
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c5a44ca8e0f6ab3fa182381581cc7e34

GIO 国立環境研究所 日本の温室効果ガス排出量データ
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/data/2009/n001_6gas_2009-gioweb_J1.01.xls



2009/6/30更新 水不足が一転、大雨になっています。
雨を待ち望んでいたものの、ちょっと降りすぎです。
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<CO2排出量増加の要因は?その2> 電力自由化と自家発電の増加

前回前々回と1990年からの日本のCO2排出量増加は石炭火力発電の
増加が原因と書きました。

石炭を使った発電量は1990年と比べ2006年には3倍以上となった。
石炭は石油、LNG等と比べて安価であるが、二酸化炭素の排出量は、
石油の約1.5倍、LNGの約2倍とかなり高い。これでは、日本の排出量が
増えて当然です。

安い石炭火力が増えた原因として、忘れてはいけないのが電力の自由化。
1995年から段階的に電力は自由化され、2000年から工場等の自家発電設備からの
余剰電力の販売に関する規制も緩和された。
この結果、自家発電設備・発電電力量は大幅に増えた。
(↓こちらのレポートに1998年から2004年までの自家発電設備、発電量の
 データがあります)
http://www.tohoku.meti.go.jp/shiene-kan/denryokujiyuuka/date/2-1.pdf

自家発電についてのデータについては、資源エネルギー庁の電力調査統計がある。

資源エネルギー庁 電力調査統計
http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htm

項目の最後、5-(1)~ 5-(3)が自家発電についての統計。
H12年(2000年)からH20年(2008年)までのデータをみることができる。
(H16から調査内容が変更になっている)

このデータから自家発電と電気事業者の設備、発電量を比べてみる。
まずは、発電設備の認可出力

自家発電設備 
 2001年 3024万Kw
 2009年 4305万Kw
 -----------------
 +1280万Kw 増加率 約42%

電気事業者(一般、卸、特定、特定規模の合計)
 2001年 22,859万Kw
 2009年 23,543万Kw
 -----------------
 + 684万Kw 増加率 約3%

自家発電設備の認可出力が2001年に比べ2009年で42%も増加したのに対し、
電気事業者では3%。いかに自家発電設備が増えたかよく分かる。

次に発電電気量。

自家発電設備 
 2000年 1,508億Kwh
 2008年 1,904億Kwh
 -----------------
 +396億Kwh 増加率 約26%

電気事業者(一般、卸、特定、特定規模の合計)
 2000年  9,407億Kwh
 2008年 10,046億Kwh
 -----------------
 + 639Kwh 増加率 約6.8%

発電電気量で見ても自家発電の増加が大きいことが分かる。

では、自家発電の電力はどのように使われたのか?2004年からはデータが増え、
送電された電力量、自家消費電力量も分かるようになった。

2004年
自家発電発電量 1906億Kwh
-------------------------
自家消費    1219億Kwh
送電・特定供給  531億Kwh

2009年
自家発電発電量 1904億Kwh
-------------------------
自家消費    1107億Kwh
送電・特定供給  636億Kwh


2004年と2009年では発電量はほぼ同じ。内訳では、自家消費が減り、
電気事業者への送電と特定供給が増えた。
2000年からの自家発電電力量の推移をグラフにすると次の通り。


資源エネルギー庁「電力調査統計」より作成(画像をクリックすると大きく見られます)


自家発電の総発電電力量は2000年から2004年まで大きく伸び、その後横這い。
これに対し、2004年から自家消費は減り、他社への送電電力量は増えた。
この間一貫して発電設備容量は増えているので、自家発電設備の増設は自家消費
のためというよりは、送電目的だと言えるだろう。
先日環境アセスメントで建築反対の意見書が出された小名浜火力発電も、出力
40万kWのうち、自家消費はわずか1万kWで残りは送電という計画だった。

福島県環境影響評価審査会 第1回 議事概要(PDF)
http://www.pref.fukushima.jp/asesu/sinnsakai-gijigaiyou080825.pdf

自家発電での発電方法をみると、約94%が火力発電所となっている。
燃料種別が分からないが最近導入された、送電目的の設備では石炭火力の割合
が多いだろう。

2007年の日本の発電電力量のうち、自家発電の電力量は約16% 小さいとは言え
ない割合になってきている。
日本の火力発電の割合は60%程度と言われている。しかし、自家発電を加えると
2006年で65%、2007年で70%にもなる。
ここまで火力発電が増えるにまかせておいたのだから、日本が温暖化対策に消極
的とみられても仕方がない。

では、今後どうしたら良いのか。これはまた次回



関連ページ
資源エネルギー庁 電力調査統計
http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htm
小名浜火力発電 環境相が反対の意見書…温暖化対策に不備
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c719791e3191a3d34ded15487120e928
温室ガス 中期目標は「05年比15%減」 麻生首相表明
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/4ed21e0b06d4f30f273254b919d37aac
<CO2排出量増加の要因は?> 石炭火力発電の増加
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/91c4f3a82427cca7252507070c3347cb
電力、CO2排出14%増 07年度、原発停止で
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c5a44ca8e0f6ab3fa182381581cc7e34


2009/6/24 更新
NHK 「日本の、これから」環境と景気の放送がありました。
現在までに日本の排出量が増えた要因について説明がなかったのが残念です。
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温室ガス 中期目標は「05年比15%減」 麻生首相表明

 麻生太郎首相は10日、首相官邸で記者会見し、2020年までの日本の温室効果ガス削減目標(中期目標)について「05年比15%減」(90年比8%減)とする方針を表明した。日本はすでに「2050年までに現状比60~80%減」との長期目標を打ち出しているが、首相は中期目標達成により、「30年には約4分の1の減(25%減)、50年には約7割減(70%減)につながる」との見通しも示した。
6月10日19時38分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090610-00000018-maip-pol


麻生総理は2020年までの日本の温室効果ガス削減目標は05年比15%と表明した。
15%と言っても、05年比なので、京都議定書の基準年(1990年)と比べると
8%の削減。要は1990年に比べて05年は7%増えたわけですね。

温室効果ガスはその後も増え続け、国立環境研究所の「日本国温室効果ガス
インベントリ報告書」によると、2007年には1990年比9%の増加となってい
ます。ですので、排出量が確定している直近の2007年比では17%の削減が必要
となります。

さてこの目標表明に伴い、家庭では25%の削減が必要などと報道されています。
しかし、エネルギー変換部門(電力会社等)での削減の必要性については全く
といっていいほど報道されていないようです。
前回も書いた通り、最も温室効果ガスが増えているのは、エネルギー変換部門
です。1990年比で2007年は、エネルギー変換部門は38.6%も増えている。
その中でも石炭による排出量は急増している。

電気事業連合会「一世帯あたり電力消費量の推移」を見ると、1世帯当たりの
消費電力は2000年は303.1kwh/月なのに、2007年は300.0kwh/月と減っている。
しかし、電力による排出量は1世帯当たり、2000年は1,866 kg-co2/世帯
2007年は 2,265 kg-co2/世帯と20%も増加となっている。

GIO 日本の温室効果ガス排出量データ
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/data/2009/n001_6gas_2009-gioweb_J1.01.xls

また、経済産業省の2007年度エネルギー需給実績によると、最終エネルギー
消費は3年連続で減少(前年比-0.7%)しかし、二酸化炭素排出量は増加と
なった(前年比+2.7%) この原因について、原子力発電所の停止、渇水により
電力の原単位が増加したため。としている。

平成19年度(2007年度)エネルギー需給実績(速報)
http://www.meti.go.jp/press/20081112001/20081112001.html
http://www.meti.go.jp/press/20081112001/20081112001.pdf


発電時の排出量を産業や民生部門に振り分けた間接排出量でのみ報道が行わ
れているようだが、発電時の排出量を減らさない限り、家庭でいくら節約、
対策をしても効果は現れない。
なぜ、電力会社の排出量の推移について報道されないのでしょうか?
もちろん原発の停止による影響はあるが、発電時の排出量の増加はそれだけ
が原因ではない。

また家庭でできる対策としては、省エネ車、エコキュートなどの給湯器、太
陽電池など、高額な消費に繋がるものばかりが挙げられているのも気になる
ところ。

温暖化対策では、正しい知識、情報が不可欠です。
正確な情報なしには一体どうしたら良いのか、判断すらできません。
京都議定書に調印してからも日本の排出量がここまで増えたのは何が原因な
のか。調査と科学的な分析が必要です。
国も報道機関も、経済界、業界に配慮するばかりではなく、正確な情報、日本
の置かれている現状を公表、報道してほしいものです。


関連ページ
国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)
http://www-gio.nies.go.jp/index-j.html
温室ガス削減で光熱費年3万円増…それでも「不十分」の声
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090611-00000062-yom-soci

(当ブログ内)
小名浜火力発電 環境相が反対の意見書…温暖化対策に不備
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c719791e3191a3d34ded15487120e928
<CO2排出量増加の要因は?> 石炭火力発電の増加
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/91c4f3a82427cca7252507070c3347cb
電力、CO2排出14%増 07年度、原発停止で
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c5a44ca8e0f6ab3fa182381581cc7e34
エコキュートの謎  エコキュートはエコなのか?
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/2c7cd0811170c773affb04ee589f5514



2009/6/12 更新 梅雨入りしたのに、快晴の良いお天気です。
水不足の心配本格化してきました。
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<CO2排出量増加の要因は?> 石炭火力発電の増加

前回、石炭使用量の増加が、日本のCO2排出量増加の原因と書いた。
計算上、1990年から2007年の日本の温室効果ガス総排出量の増加分の
約90%が石炭由来CO2排出量の増加によるものと言える。

では、なぜ石炭使用量が増えているのか。
資源エネルギー庁のエネルギー白書から見てみる。

http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/index.htm
(最新版は平成20年度だが詳細データがないため、グラフ、XLSファイルは
 平成19年度から引用する)
 

平成20年度のエネルギー白書によると、2007年の日本の石炭使用量は1億
8943万トンと過去最高となった。このうち、鉄鋼業で6763万トン、電力で8702万
トンを使用し、この2業種で石炭使用量の82%を占める。


【第213-3-3】石炭の用途別需要量の推移
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2008energyhtml/2-1-3.htm
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2008energyhtml/xls/2bu/1s/213-3-3.xls

「石炭の用途別需要量の推移」を見てみると、鉄鋼での石炭消費量は80年
代からほぼ横這いだが、電力では急激に増加している。2000年には鉄鋼で
の需要を上回った。1990年から2007年までの間に消費量は約3.3倍となった。
つまり、石炭消費量、石炭由来CO2の増加は石炭火力発電の増加が原因と
言える。

ではなぜこんなに電力での石炭使用が増えたのか。
それはやはり価格だろう。

【第222-3-9】化石エネルギーのカロリー当たりCIF価格
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2008energyhtml/2-2-2.htm
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2008energyhtml/xls/2bu/2s/222-3-9.xls

「化石エネルギーのカロリー当たりCIF価格」を見てみる。これは、石油、
石炭、LNG等を同じ発熱量で比べた価格。1990年には石油、LNGは石炭の約
2倍の価格だった。2000年以降石油が急騰。石炭は比較的価格が安定して
おり、2006年には石油は石炭の約4倍となった。
同じ発電するなら、原料は安い方が良い。石炭火力が増えるのも当然だろう。

【第214-1-5】発電設備容量の推移(一般電気事業用)
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2008energyhtml/2-1-4.htm
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2008energyhtml/xls/2bu/1s/214-1-6.xls

発電電力量の推移を見てみると、石油は90年に1951億Kwhが2006年には
779億Kwhと半分以下に、LNGは1639億Kwhから2577億kwhと1.6倍。
石炭は719億kwhから2444億kwhへと3倍以上になった。
この結果、石炭火力は全発電電力の約25%を占めるようになった。

こうして安い燃料として石炭による火力発電が増え、石炭由来の二酸化
炭素の排出量も増えた。石炭の二酸化炭素排出係数は石油、LNGに比べて
高いので、結果、日本のCO2排出量は大幅に増加してしまった。

しかし、これは一般電気事業用の話。企業等の自家発電分は含まれてい
ない。2006年時点で、大口需要(産業用)全体の自家発電電力量比率は
約28%に達したという。この自家発電についてはまた次回。



関連ページ
資源エネルギー庁 エネルギー白書
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/index.htm
平成20年度
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2009/index.htm
平成19年度
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2008energyhtml/
資源エネルギー庁 電力調査統計
http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htm
電気事業連合会 電力データ
http://www.fepc.or.jp/library/data/demand/index.html
小名浜火力発電 環境相が反対の意見書…温暖化対策に不備
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c719791e3191a3d34ded15487120e928
電力、CO2排出14%増 07年度、原発停止で
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c5a44ca8e0f6ab3fa182381581cc7e34


2009/6/10 更新
梅雨入りし、久々のまとまった雨になりました。
水不足が深刻化する中、めぐみの雨です。
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小名浜火力発電 環境相が反対の意見書…温暖化対策に不備

 福島県いわき市に建設が計画されている小名浜火力発電所(仮称)の環境影響評価(環境アセスメント)に対し、斉藤鉄夫環境相は26日、「最大限の二酸化炭素(CO2)排出量削減対策が講じられていない」として、建設に反対する意見書を提出した。地球温暖化対策の不備を理由に環境相が反対意見を出すのは初めて。意見書提出を受けた二階俊博経済産業相も「CO2排出削減に最大限努力するのは常識だ」と述べ、環境相意見に沿った勧告を出すと見られる
5月26日12時12分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090526-00000010-maip-pol


日本化成などが計画している小名浜火力発電所の環境アセスメントで
異例の建設反対の意見書が提出された。地球温暖化対策の不備を理由に
環境相が反対意見を出すのは初めて。
28日には経済産業省も「実行可能な最大限の(排出)削減」を図るよう
勧告した。

発電所新設に「最大限のCO2削減」勧告 二階経産相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090528-00000042-fsi-bus_all

環境相は会見で、「石炭火力の必要性は十分理解しているが、古い性能の
悪い施設と置き換えるなど真に必要なものに限定すべきだ」と述べている。
では、石炭、石油、LNGなど燃料種別でのCO2排出量はどの位なのか?
環境省の排出係数一覧によると、

 石炭  0.0247 kg-c/MJ
 A重油  0.0189 kg-c/MJ
 液化天然ガス(LNG)  0.0139 kg-c/MJ

*同一発熱量で比較。

つまり、同じ発熱量を得る場合、石炭は重油の1.3倍、LNGの1.7倍のCO2を
発生させる。ただし、これは直接燃やした場合でタービン、発電器等の効率
は含まれていない。発電時の燃料種別の排出係数はどうなのか?
これがなかなか見つからない。ずいぶん探して、次の資料中に記載を見つけた。

電力CO2排出係数の国際比較(PDF)
http://www.env.go.jp/earth/gijyutsu_k/02/ref_03_2.pdf

P9,表4 各国の電力CO2排出係数の推移によると、2001年時点で日本の
燃料別排出係数は下記の通り。

 石炭   0.819 kg-co2/kwh
 石油等  0.547 kg-co2/kwh
 天然ガス 0.376 kg-co2/kwh

石炭は同じ発電量に対し、天然ガスの約2.2倍、石油の1.5倍のCO2を排出
することになる。
さらに表3を見ると、日本の電力CO2排出量は1990年に比べ2001年で石油
は半減、石炭は2倍になっている。この間、ドイツ、イギリスは石炭由来
CO2を減らしている。
また、総発電量に対する石炭火力の割合は、日本では1990年が14.6%だっ
たのに対し、2001年度は、23.1%となった。

この資料は2001年までのデータ。電気事業連合会のページによると、2006年
で日本の石炭火力の割合は27%とさらに割合が高くなっている。

電気事業連合会 主要国の電源別発電電力量の構成比
http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/shuyoukoku/sw_index_03/index.html

日本では総発電電力量、石炭火力の割合共に増え続けている。
これでは、二酸化炭素排出量が増えるのも当然。

これは発電に伴う石炭火力の割合だが、国立環境研究所のデータを見ると、
全エネルギーに伴う石炭のCO2排出割合も増えていることが分かる。

GIO 温室効果ガスインベントリ
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html
日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2007年度)(XLS)
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/data/2009/n001_6gas_2009-gioweb_J1.01.xls

排出量データ、シート「7・CO2-Source」によると、1990年に比べ、2007年
の石炭由来CO2排出量は、143,275 [Gg CO2]、46.42%増えている。
1990年から2007年の温室効果ガス総排出量の増加は159,651[Gg CO2]なので
増加分の約90%が、石炭由来CO2排出量の増加によるものと言える。

これだけ大幅に石炭由来エネルギーが増えると、いくら省エネ努力をしても
追いつかない。これはもう日本のエネルギー戦略、温暖化対策のミスだろう。
ではなぜ石炭エネルギーが増えたのか。またそれを国が容認してきたのか?
長くなってきたので、続きはまた次回



関連ページ
環境省(仮称)小名浜火力発電所環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の
提出について
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11157
経済産業省 小名浜パワー事業化調査(株)(仮称)小名浜火力発電所に係る環
境影響評価準備書に対する勧告について
http://www.meti.go.jp/press/20090528003/20090528003.html
環境省 地球温暖化対策の推進に関する法律施行令で定める排出係数一覧(PDF)
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/santei_keisuu/keisuu.pdf
国立環境研究所
http://www-gio.nies.go.jp/
IEA Statistics for 2006 JAPAN (Electricity/Heatで燃料別の発電量が分かる)
http://www.iea.org/Textbase/country/m_country.asp?COUNTRY_CODE=JP
<CO2排出量増加の要因は?> 石炭火力発電の増加
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/91c4f3a82427cca7252507070c3347cb


2009/6/4 更新 雨が少ない状態が続いています。水不足が心配です。
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