エコキュートの謎 その3  ヒートポンプの可能性

前回前々回と、エコキュート、深夜電力について批判的なことを
書きましたが、私はガス会社の回し者ではありません。

オール電化住宅は、都市ガスがなく、プロパンガスの地域で急増して
います。「プロパンガスの料金」で書いたとおり、プロパンガスは
都市ガスと比べてかなり割高です。オール電化にすると、この分が
減らせるので、かなりの節約になります。オール電化の普及は元はと
言えば、プロパンガス業者が不透明な料金設定にして儲けていたのが
原因でしょう。しかし、高すぎる料金と同様、深夜電力の安すぎる料
金というのも問題があると思います。

エコキュートは、確実に電気使用量が増え、電力会社が儲かる仕組み
になっています。ガス、石油給湯器と比べ省エネにはなりません。
ヒートポンプは良い技術だと思います。ようは使われ方の問題です。

ヒートポンプは空気の熱を汲み上げ、熱として暖房、給湯に使う。
逆に冷房時は室内の空気を汲み上げ、外に出す。
冷房時は外に熱を放出し、給湯、暖房時には、冷気を出す。
1の電気エネルギーで3の熱を生み出す。というと何やら魔法のようで
すが、単純に言うと室内(給湯タンク)と外部で熱交換をしているとい
うこと。なので、外気温が低いと暖房、給湯効率は格段に下がります。
エコキュートは、最も外気温が低い深夜の時間帯にお湯を沸かすという
点で使い方としておかしい。

ヒートポンプの利点を生かすには、一番気温の高い昼間にお湯を沸かす
こと。効率はかなりよくなります。しかし、真夏の昼間には電力使用量
がピークになって、負荷平準化という点では問題。
でもヒートポンプでは、お湯を沸かす時に冷気を外部に放出するので、
これを冷房に使ったら使用電力量はあまり変わらないかも?
太陽熱温水器を併用すると、省エネ効果はかなり上がるはずです。
(現在エコキュートでは太陽熱温水器とは接続できないようです)

逆に深夜帯に冷水を作り、これを冷房に使うというのもあります。
もちろん、冷水を作る際にでる排熱は給湯に使えます。
これだと、昼間のピーク電力を抑え、さらに冷房の排熱によるヒート
アイランド現象も解消されます。以前は「エコアイス」としてよく宣
伝されていましたが、最近は見ませんね。

ヒートポンプで冷房をする場合、排熱を回収することで、これを給湯
に廻すこともできます。現在、自動販売機等で実用化されています。
また、温度差発電、低温発電が実用化されれば、排熱が電気に変わる
ことになります。海水による温度差発電よりも、こちらの方が実効性、
実用性は高いと思います。

ヒートポンプは良い技術です。地下水、地熱による冷暖房、冷房時の
排熱を回収して熱エネルギーとして使うなど、省エネ効果は大きいと
思います。しかし、使い方次第では逆の結果になってしまう。
電気、ガス、石油などそれぞれに利点があります。適材適所、それぞ
れの得意とする場面で利用してこそ技術が生きてくる。
温暖化対策の重要性が増す中、企業の利権争いに付き合っている場合
ではありません。


関連ページ
(財)ヒートポンプ・蓄熱センター
http://www.hptcj.or.jp/
温度差利用しクリーン発電、慶大教授が装置開発(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20080813c3b1303h13.html
有限会社 インタースフィア 温度差発電装置の開発・販売
http://www.inter-sphere.biz/index.html
四国コカ、省エネ自販機を本格導入 09年2000台新設(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20090106c6b0602906.html
三菱重工業、ヒートポンプ式温冷水給湯器で欧州進出 (フジサンケイ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090119-00000035-fsi-ind


2009/2/9 更新 雨が降り、寒くなってきました。
春はまだ先でしょうか。
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エコキュートの謎 その2 深夜料金の謎

前回、エコキュートは節約にはなるかもしれないが、省エネにはならない。
と書きました。補足すると、ガス、石油給湯器と比べると省エネにはなら
ない。ということです。エネルギー効率でエコキュートとガス・石油が
同程度だったとしても、貯湯タイプのエコキュートはどうしても必要量よ
りも多くのお湯を沸かすことになります。(お湯切れを回避するため)
また深夜に沸かしたお湯を次の日の夜に使うと、湯冷めします。この分も
エネルギーのロスになります。
但し、従来からの電気温水器と比べると格段に省エネになります。
現在、エコキュートの設置には国などから補助金が出ていますが、これは
電気温水器からの買い換えに限る必要があると思います。

省エネにはならないとしたら、なぜ節約になるか。というと、昼間の1/3
という深夜電力料金のおかげ。では、なぜ深夜電力はこんなに安いのか?
よく言われるのが、原子力発電は夜間も停めることができないので、夜間
余った電力を安く設定している。という話。では、時間別の発電量、電力
供給、需要がどのくらいなのか。調べてみたのですが、見つけることがで
きませんでした。
代わりに時間帯別ではありませんが、電力会社別の発電量と供給量のデータ
を見つけました。

数表でみる東京電力
http://www.tepco.co.jp/company/corp-com/annai/shiryou/suuhyou/pdf/suh-all-j.pdf

P6~7、電力会社別の事業概要に受発電電力量と販売電力量があります。
これを見ると、全電力会社の発受電電力量と販売電力量の差は約10%。
また、p42 東京電力の発受電電力量によると、昭和45年~平成19年の間の
総合ロス率は10%~8.0%。このうち約5%が送配電ロス率。なので発電したが
販売できなかった電力量というのは、約5%~4%で昭和45年からあまり変化し
ていない。

このことから原子力で発電した電力が深夜に余っている。というのは事実で
はないと思います。では、なぜ深夜電力が安いのか。というと、余っているの
は発電した電力ではなく、発電設備の方ではないでしょうか。

電力会社は火力、原子力等の発電設備を持っていますが、このうちベース供
給となるのが、原子力と石炭など。ピーク時は石油火力で調整しています。
(P30「1日の時間帯別発電」参照 但し、これはイメージ図で正確では
 ないようです。揚水発電用の電力は全体の1%程度なのに、ずいぶん多い
 ように見えます)

夜間などは火力発電の設備は使われず、遊んでいることに。この分、設備利
用率、負荷率は下がります。この余った設備を有効に使いたい。で深夜帯の
電気料金を安くして使ってもらおう。ということでしょうか。

しかし深夜帯の需要も原子力等のベース供給量を達成していて、さらに火力
を動かすとすると、当然燃料が必要になります。そう思うと、深夜電力が
昼間の1/3という料金設定は安すぎるような気がします。火力で発電すると
なると、二酸化炭素の排出量も増えます。今後、深夜帯の需要が増え、排出
量取引や環境税が導入されると、この価格は維持できなくなるでしょう。
実際、深夜電力料金はじわじわと値上げされてきています。
特に燃料費調整分は時間帯に関わらず1kW当たりの電気使用量にかかるので、
もともと安い深夜電力は値上げ幅が大きくなっています。
(もちろん燃料費調整がなくなれば、その分下がるのでしょうが)

オール電化では家庭の使用電力量は必ず上がります。発電による二酸化炭素
の排出原単位(単位発電量当たりの二酸化炭素排出量)も上がりました。
チームマイナス6%ということで、家庭でも節電を呼びかけていますが、CO2
排出量の原単位が上がれば少々節約しても意味をなさなくなってしまう。
プロパンガスの料金と同様、電気料金の適正な価格というのも考える必要が
あると思います。

その3へつづく。。。

(この記事に誤りなどございましたらお知らせ下さい)


関連ページ

数表で見る東京電力
http://www.tepco.co.jp/company/corp-com/annai/shiryou/suuhyou/index-j.html
エコキュートの謎  エコキュートはエコなのか?
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/2c7cd0811170c773affb04ee589f5514
プロパンガスの料金
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/06536c1446c4d6b69d4e5ad4851ae185
電力、CO2排出14%増 07年度、原発停止で
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c5a44ca8e0f6ab3fa182381581cc7e34


2009/2/3 更新 今日は立春です。
子供がインフルエンザにかかってしまいました。小学校で大流行している
ようです。皆様、健康には十分お気をつけ下さい。
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エコキュートの謎  エコキュートはエコなのか?

私の地域では、電化住宅が増えているということを以前も書きました。
電化住宅と言えば「エコキュート」!
ちなみにエコキュートとはCO2冷媒ヒートポンプ給湯器の愛称です。

 昼間の1/3の料金の深夜電力でお湯を沸かすので、光熱費の節約
 空気熱を利用するので、省エネルギー
 CO2も削減

等々、宣伝されていますが、本当に省エネになるのか?以前から疑問に
思っていました。近所のホームセンターでカタログを入手したので、
性能など、比較してみたいと思います。

今回入手したカタログは、ダイキン、パナソニック、日立のエコキュート。
ついでにリンナイ、ノーリツのガス給湯器カタログも持ってきました。

まずは基本性能なのですが、これは各メーカーほとんど同じ。
370リットルタイプで加熱能力4.5kW、460リットルで6.0kW。
とても低い数字です。これがエコキュートの特徴とも言えます。

現在の一般的な(貯湯式ではない)ガス、石油給湯器では、加熱能力は
約45kW。エコキュートの10倍。このため、お湯が必要な時に必要な量だ
けを沸かすことができます。しかし、エコキュートの場合は、湯沸かし
能力が低いので、長時間かけてゆっくり沸かし、お湯を貯めておかなけ
ればならない。

ちなみに↓こちらの高カロリーカセットコンロは4.1kW。

イワタニ カセットフー BO-(ボー) CB-AH-35


これで370リットルのお湯を沸かす事を考えると。。。とっても時間が
かかるでしょうね。

エコキュートでは瞬間的にお湯を沸かせないため、お風呂の追い炊きの
時は別の熱交換機を使っています。以前の機種ではここで、ヒートポンプ
ではなく電熱器を使っていたようです。現在は、貯湯タンク内のお湯と
水を熱交換させています。このため、省エネ性能はアップしていると言える
でしょう。但し、熱交換なので当然タンク内のお湯の温度は下がります。
日立のホームページによると、

 浴そう温度を38度から40度まで上昇する場合、約2度程度です。
 (タンク内残湯温度80度、残湯湯量200Lのとき)
http://kadenfan.hitachi.co.jp/kyutou/contents/faq/faq2.html#p01

とのことです。

さて、性能をもう少し見てみます。
加熱能力は夏も冬も同じ370リットルで4.5kWですが、消費電力は季節により
大きく変わってきます。

 中間期 0.92kW
 夏期 0.8kW
 冬期 1.5kW

この数字も各メーカーほとんど同じです。さて、ではいつが中間期で
いつが夏期なのか?ですが、

 夏期  外気温(乾球)25度、水温 24度
 中間期 外気温(乾球)16度、水温 17度
 冬期  外気温(乾球) 7度、水温  9度
  
となっています。エコキュートは深夜電力を使うことが前提となって
いるので、この気温、水温は全体的に高すぎです。
私は比較的暖かい地域に住んでいますが、今日の最低気温は2度でした。

さて、加熱能力を消費電力で割った値がCOP エネルギー消費効率です。

 加熱能力 4.5kW / 中間期消費電力 0.92 = 中間期COP 4.89

0.92の電気で4.5の熱を作ったということですね。このCOP、少し前までは
業界最高値 COP4.9! なんて宣伝されていましたが、最近はこの値はあまり
使われていません。前述したように高すぎるってことでしょうね。
現在代わりに使われているのが、年間給湯効率 APFです。
この値は、機種により2.8~3.3となっています。COPと比べるとずいぶん下が
ります。では、「年間給湯効率」とはどんな値なのか?

年間給湯効率とは
 一年を通してある一定の条件のもとにヒートポンプ給湯機を運転した時の
 単位消費電力量あたりの給湯熱量を表したものです。
 年間給湯効率=一年で使用する給湯に係る熱量÷一年間で必要な消費電力量
http://panasonic.jp/sumai/hp/5qa/index.html#m2

とのことです。はっきり言ってなんのことか分かりません。
ある一定の条件がどんなものなのか、規格を作った(社)日本冷凍空調工業会
のページでも具体的な算出方法および条件が分かりません。
http://www.jraia.or.jp/frameset_product.html

家庭用ヒートポンプ給湯機のJIS案に関する意見と原案への反映について
http://www.jraia.or.jp/frameset_product.html
というページでやっと少し分かりました。

要は1年間に使うお湯の全熱量を消費電力で割ったもの。
でも気温、お湯の量等、計算・算出方法で大きな差になります。
素案では、 東京と大阪の気象データを基に、1℃きざみでの外気温度(1日の平均気温)
ごとの年間発生日数を設定。この日数と気温をもとに年間給湯モード熱量、年間給湯
モード消費電力量を算出。

でしたが、

「1日の平均外気温度」は、実際に運転する時間帯である夜間の時間帯の平均とすべき
ではないか。

との意見に沿って、1日の平均外気温度による発生日数でなく、夜間の平均外気温度に
よる発生日数によること。となりました。
実際には「東京・大阪のデータから、夕刻7時から明朝7時までの12時間の平均気温を
計算して日数をカウント」しています。

う~ん。深夜電力は夜11時から朝の7時までなのになぜ夕方7時からにしたんでしょう?
これでは平均気温も深夜帯よりも高めに出るので、年間給湯効率も実際より高くなって
しまいます。また、計算に使った給湯モードも季節に関わらず一定となっているので
これも、実際のお湯の使用量とは異なっているでしょう。

ここまで見てみると、「年間給湯効率」というのもあまり当てにはならないようです。
実際の効率よりも高めに出ているのは間違いないでしょう。仮に年間給湯効率を2.5と
した場合、火力発電のエネルギー利用率が37%だと

 2.5x0.37 = 0.925

1の石油・石炭のエネルギーから0.925の熱を取り出した。ということになります。
これだと石油を直接燃やして熱を発生させるのと比べ、大差はない。

またエコキュートは深夜にお湯を沸かす。一般的にお風呂に入るのは夜なので、
朝~夜まで10時間程度保温して置かなければならない。この間、せっかく沸か
したお湯は冷めてしまいます。どの程度冷めるかというと、

 朝、沸き上がり後13時間で冬季には約7~10度低下します。
 http://kadenfan.hitachi.co.jp/kyutou/contents/faq/faq2.html#p09

とのこと。なんとももったいない話です。もちろんお風呂に入らない日があると、
沸かしたお湯は無駄になります。このため、エコキュートには「上手に使う方法」
というのがあるようです。

http://kadenfan.hitachi.co.jp/kyutou/contents/tukaikata/index.html
http://www.jraia.or.jp/frameset_product.html

○おふろは、前日の残り湯を沸かし直すより、入れ直した方が経済的。
○旅行などで、短期間不在となる時には、「タンク休止」で沸き上げの休止を
 設定してください。

また、「日立エコキュートに関するご注意」というページも興味深いです。

○タンク内のお湯は放熱により少しずつ冷めます。
○配管からの放熱により、設定温度より低めになることがあります。
○沸き上げ時間帯に入浴などでお湯を使用した場合、設定湯温まで沸き上が
 らずに翌日の湯量不足の原因になる場合があります。
http://kadenfan.hitachi.co.jp/kyutou/contents/caution/index.html

こういう製品にとって不都合な(消費者に取っては重大な)情報をカタログに
載せているのは日立だけでした。日立は正直ですね。

以上いろいろと書いてきましたが、結論としては、エコキュートは節約には
なるかもしれないが、省エネにはならない。と思います。特に冬場は効率の悪さ、
保温、湯冷めなど問題が大きい。ヒートポンプ技術自体は良い技術だと思います。
ただ、使い方に問題があるかと。特に給湯の場合、空気熱よりも地熱、地下水等
を使った方が良いでしょうね。
節約面でも、深夜電力の価格設定にも疑問あり。

その2へつづく。。。


関連ページ
エコキュート、設定にご注意 省エネ効果少ない場合も(朝日新聞)
http://www.asahi.com/eco/TKY200812250293.html
エコキュートは本当に省エネなのか?
http://eco.cute-site.net/eco/ecocute.html
気候ネットワーク オール電化住宅は地球温暖化防止に寄与するのか?
http://www.kikonet.org/research/policy.html
(社)日本冷凍空調工業会 家庭用ヒートポンプ給湯器
http://www.jraia.or.jp/frameset_product.html
プロパンガス料金 (当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/06536c1446c4d6b69d4e5ad4851ae185
エアコンでの暖房は省エネか?
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/fb242a549702df2328ab836f08cd9f61


2008/1/28 更新 1月26日は旧正月でした。
今日は旧暦で1月3日です。
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