菅首相 高裁判決に上告せず、諫早湾の排水門開門へ

 菅直人首相は15日午前、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の排水門開門を命じた福岡高裁判決(6日)について「上告しないという最終判断をした。その線に沿って今後の対応をするよう指示した」と語り、上告断念を表明した。首相官邸で記者団に語った。鹿野道彦農相が16日に同県を訪れ、長期開門調査を実施する方針とともに県側に伝え、早ければ12年度にも開門調査が始まる。上告の期限は20日で、政府は17日の閣議で上告断念を正式に決める。福岡高裁判決は「5年間の常時開門」を命じており、段階的な開門を検討してきた農林水産省の路線を転換することになる。
毎日新聞 12月15日(水)11時4分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101215-00000521-san-pol


諫早湾干拓事業で開門を命じる高裁判決。管首相は上告しないことを表明、「5年間の常時開門」が確定することになる。諫早湾干拓事業については、2年前(2008年)の地裁判決の時にも書いた。

諫早干拓訴訟 国に排水門の開門命じる判決 佐賀地裁
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/8b34d51d5fcac82d81719845063df5c6
諫早湾干拓 国が控訴 環境アセスを実施 開門調査先送り
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/4f4c4932117f32e558e5d63de75a05de

この年の4月に干拓地への営農が始まったばかりだった。首相の上告断念表明を受け、干拓営農者らは、「開門によって調整池に海水が入れば、被害が出る」として反発しているという。

諫早湾干拓 漁業者は歓迎、営農者猛反発 排水門の開門
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101215-00000021-maip-soci

しかし、調整池の水質は営農開始以降も改善されておらず、未だに農業用水はおろか、工業用水としての基準もほとんど満たしていない。

農水省 調整池水質調査結果
http://www.maff.go.jp/kyusyu/nn/syoukai/kankyou_monitoring/cyouseichi.htm
アオコの危険性を指摘 諫早湾調整池の研究者らが出版
http://mytown.asahi.com/areanews/nagasaki/SEB201007200043.html

2年前の記事でも書いたが、この水を農業用水として使うこと自体に疑問を感じる。(金子前知事は調整池の水は農業用水ではないと発言して波紋を呼んだ)開門した場合、この調整池の水が海に流れ込むことになるので、周辺海域にも影響が出てくるだろう。このため、何らかの対策、工夫が必要になると思う。

現在、干拓地には41の個人・法人が入植。農家への配慮が足りない等の意見も出ているが、そもそもこの干拓事業、入植に関しては、元知事、国会議員に市議会議員、建設会社など利権の温床となっている。金子長崎県知事(当時:現参議院議員)の娘と自民党の谷川弥一衆議院議員(谷川建設会長)の息子夫婦が役員の株式会社「T・G・F」が入植しているのはその象徴。

諫早干農地 知事の親族企業入植 「恩恵」に疑問と憤りも
http://n-seikei.jp/2009/07/post-936.html

長崎県の中村知事は元副知事で金子前知事の事実上の後継者。これを考えると長崎県の強硬な開門反対も理解できる。

諫早湾干拓地への入植者には、国から整備費用などとして50%、加えて県や市などからも補助金が支給されている。ニュースでハウスなどの建築に18億円を投入したという営農者の話が出ていたが、そもそも諫早湾干拓では広い農地で大型機械を使った大規模農業を想定しているもので、施設栽培をするのであれば干拓地でなくても良いはず。高額の設備投資は補助金を見込んでのものだろう。開門が決定した場合、農家への保証も視野に入るだろうが、本当に必要な設備投資であったかも検証する必要があると思う。

「動き出したら止まらない」公共事業の象徴とされる諫早湾干拓事業。多額の税金を投入し、周辺の環境に影響を与えたのは事実。さらに事業を止めるにも費用と時間がかかる。関係者からの圧力も懸念される。事業の精算には困難が伴うだろうが、少なくとも国が諫早湾干拓を反省し、公共事業のあり方を真剣に考えると言う点で、上告断念は正しいと思う。



関連リンク
ベジネット社長のブログ 長崎県諫早干拓を訪問
http://vegenews.net/archives/2009-02.html

多額の設備投資で、全自動制御型のハウスを建築した農業生産法人の話がある。農業はリスクが大きいのに、そのリスクに果敢にチャレンジしたのか、無謀なのか、それとも設備を作ればそれで良かったのか。。。

首相、諫早湾干拓「歴史的に反省あってもいい」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101215-00000588-san-pol
現場発:諫干3年 来月6日「開門」控訴審判決 営農順調…だが
◇地代滞納、水質悪化の問題も
http://124.83.167.158/life/food/nouandsyoku/archive/news/2010/11/20101120ddp041010026000c.html



九州農水局 諫早湾干拓事業
http://www.maff.go.jp/kyusyu/nn/isahayaindex.html
長崎県農林部 諫早湾干拓事業
http://www.pref.nagasaki.jp/isakan/
検証「諫早湾干拓事業」
http://www.justmystage.com/home/kenshou/index.html

ニューふぁ~む21長崎
http://www.newfarm21.com/newfarm21/nagasaki/index.html

当ブログ内
諫早湾干拓問題
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/366962961a15ff0549c856f4117d935b

諫早湾調整池の真実諫早湾調整池の真実堤 裕昭 羽生 洋三 高橋 徹 by G-Tools




2010/12/20 更新 旧暦では11月15日 今日は満月です。
明日21日は皆既月食。天気が心配ですが見られるでしょうか?
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諫早湾干拓 国が控訴 環境アセスを実施 開門調査先送り

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防開門を国に命じた佐賀地裁判決を不服として、国は10日、福岡高裁に控訴した。一方で、同日会見した若林正俊農相は、開門を求める地元の声に配慮し、開門の影響を探る環境影響評価(アセスメント)をすることも明らかにした。ただ、事業を主管する農林水産省では、中長期の開門調査は「農漁業への悪影響が大きい」などと否定的な声が強く、実際に開門調査をするかどうかは今後のアセスメントと政府内の調整に先送りした形だ。
7月10日21時52分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080710-00000018-maip-soci


予想通り、国側控訴となりました。
若林農林水産大臣は「将来、排水門を開くことを前提に調査に入る」
と述べたというが、あまりあてにはできない。

農水省は控訴決定の要因として次の2点をあげている。
(1)開門すれば海水が調整池に流れ込み、干拓地での営農が困難になる
(2)水位調節ができなくなり、洪水などの危険性がある

干拓市での営農は今年(平成20年)4月に始まったばかり。
締め切り面積 3,542ha に対し、干拓用地は約700ha。
調整池面積が 約2,600ha ほとんどが調整池でしめている。
この700haを長崎県が国から51億円で購入し、入植者は県から農地を
リース契約で借り受けている。前回も書いたように、調整池の水質は悪く、
農業用水の基準を満たしていない。
3ヶ月前に始まった営農。この営農と長年続いた漁業とで、なぜ農業被害の
方を優先するのか。私には分からない。

(2)の防災機能について。
川に堤防を作るのではなく、海を締め切っているのだから、川の氾濫には
あまり効果がないように思う。効果が発揮されるのは高潮の時くらいか。
農水省のホームページでは、高潮、洪水共に効果があるように記載されている。

http://www.maff.go.jp/kyusyu/nn/isahaya/outline/bousai.html

しかし、昭和60年の高潮での被害は床上浸水18戸。
これを防止するための費用として2500億円は高額すぎる。
既存の堤防を強化したり、住宅を移転させる方が安上がり。
今回の地裁判決でも

 防災機能代替工事のため、判決確定から3年間は開放を猶予する

としている。だが控訴するのであれば、代替工事は行われないだろう。
洪水時の効果として、締め切り後の平成11年7月の豪雨時に効果があった
ように書かれているが、この時の被害は下記の通り。

 家屋の全壊1戸、半壊1戸、床上浸水240戸、床下浸水471戸
 諌早市内約34,000世帯約93,000人を対象に避難勧告

甚大な被害をもたらしているがこのことは全く記載していない。
この時点で、防災効果には疑問が生じる。

もう一つ、このホームページで最も気になったのが次のページ。

http://www.maff.go.jp/kyusyu/nn/isahaya/outline/seitaikei.html

新たな生態系の創造 事業により創出された資源
潮受堤防の内側にはヨシ原が広がり、ギンブナ等の魚類が生息し、多くの鳥類が生息・休息の場として利用するなど、九州最大級の新たな淡水性の湿地生態系が形成されつつあります。

今回諫早湾干拓事業を調べ、この記載を見つけた時には腹が立つというか
あきれるというか。
諫早湾内の生態系を壊しておいて、「新たな生態系の創造」なんて大それた事を
よく言えたもんだ。しかも、調整池の水質は非常に悪いのに。
自然、生態系はそうそうコントロールできるもんではない。
ましてや「創造」なんて。。。

いろいろ調べてみましたが、やはりこの諫早湾干拓は大失敗です。
国、農水省もそろそろ失敗を認めるべきでしょう。
一体どこで間違ったのか。今後どうするのが一番良いのか。
漁業の被害にとどまらず、自然環境の価値を考える時だと思う。


関連ページ
諫早湾干拓訴訟 水門5年間開放命じる 佐賀地裁「漁業被害と因果関係」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080627-00000125-san-soci
有明海、魚介類減少の原因究明へ 環境省、海底の泥を調査
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080707AT2G0500606072008.html

九州農水局 諫早湾干拓ページ
http://www.maff.go.jp/kyusyu/nn/isahayaindex.html
気象と災害 1999年7月の諫早豪雨
http://weathernews.jp/cww/docs/saigai/0017/index.html
本明川の歴史
http://www.qsr.mlit.go.jp/nagasaki/river/hon_information/gaiyou/rekisi.html



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諫早湾干拓 着手21年で完工 抗議活動の中で記念式典
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/fba74b364508fa5ca31a3ea244a62c24


2008/7/13 更新
毎日毎日暑い日が続いています。
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諫早干拓訴訟 国に排水門の開門命じる判決 佐賀地裁

 国営諫早湾干拓事業(諫干)による潮受け堤防の閉め切りで漁場環境が悪化したとして、佐賀、福岡、熊本、長崎の有明海沿岸4県の漁業者ら約2500人が国を相手取り堤防撤去や常時開門を求めた訴訟の判決が27日、佐賀地裁で言い渡された。神山隆一裁判長は諫早湾とその近郊で起きている漁業被害と閉め切りとの因果関係を一部認め、国側に5年間にわたる排水門の開門を命じた。諫干を巡る一連の訴訟で、開門を命じた司法判断は初めて。
6月27日11時23分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080627-00000002-maip-soci


諫早湾干拓事業で漁業被害の因果関係を認める判決。
1997年の堤防締め切りからすでに10年以上。諫早湾干拓事業は
無駄な公共事業の代名詞のようになっている。

今回の判決では、

「漁民らにこれ以上の立証を求めることは不可能を強いる」とした上で、
「中・長期開門調査を国が実施しないことは、もはや立証妨害」

と断じている。これは正論だろう。
しかし、諫早湾干拓の問題は漁業被害だけではない。

諫早湾干拓が正式に計画された1986年当時。予算は1350億円だったらしい。
それが現時点で総事業費は2533億円。倍近くに膨れ上がっている。
工事期間が20年以上、予算は倍。
農水省に事業再評価の資料があったが、なぜこんなことになったのかは
明らかにされていない。
公共事業というのは、始まってしまうと大幅に予算オーバーが当たり前の
ようになっている。

また、諫早湾干拓により出来た農地には入植が始まっている。
この農業用水に堤防内の調整池の水を使うことになっている。
調整池は淡水化しているので、水門を開けると潮水となり、農業用には
使えなくなる。というのが農水省側の開門しない理由の一つ。
しかし、この調整池の水質にも問題が。

調整池の水質は、農水省が月に2回調査し、公表している。

http://www.maff.go.jp/kyusyu/nn/syoukai/kankyou_monitoring/cyouseichi.htm

H20年5月7日の調査での値は次の通り。

PH 8.6 COD 12 SS 130 T-N 1.12 T-P 0.268
COD-化学的酸素要求量 SS-浮遊物質量 T-N -全窒素 T-P -全燐
いずれも単位mg/l

環境省の農業用水の基準をいずれも満たしていない。
(ちなみに工業用水の基準すら満たしていません)

http://www.env.go.jp/kijun/wt2-1-2.html

農水省の諫早干拓のページでは、

調整池の水質は、事業完了時には環境保全目標値を満足すると予測しています。
 目標値=COD:5mg/㍑以下、全窒素:1mg/㍑以下、全リン:0.1mg/㍑以下

となっているが、現状では遠く及ばない。

http://www.maff.go.jp/soshiki/nouson_sinkou/isa_haya/3-0kankyoueikyouhyoukatou.htm

本当にこの水を農業に使うのだろうか?
開門により農業用水を使えなくなることよりもこの汚れた調整池の水が
海に流れるのを心配する方が現実的だろう。

この判決では、3年の準備期間を経て5年間の開門を命じている。
しかし国側は準備するだろうか?高裁判決では逆転できるとみてそのまま
放置するという確率が高い気がする。

堤防の中も外も環境を激変させた諫早湾干拓。
走り出したら止まらない、公共事業。
建設費の無駄だけではなく、環境の改善にいったいどの位の時間、費用が
かかるのだろう?
この干拓事業が与えた環境への影響、経済的損失などを精査し、そろそろ
失敗を認め、何が間違っていたのか検証する時ではないでしょうか。


関連ページ
九州農水局 諫早湾干拓事業
http://www.maff.go.jp/kyusyu/nn/isahayaindex.html
長崎県農林部 諫早湾干拓事業
http://www.pref.nagasaki.jp/isakan/
Weblio 辞書
http://www.weblio.jp/content/%E8%AB%AB%E6%97%A9%E6%B9%BE%E5%B9%B2%E6%8B%93

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http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/s/%EB%DD%C1%E1%CF%D1


2008/7/2 更新
7月に入りましたが、雨の日が続いています。
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