日本風力開発「神風」決算の怪  雑誌FACTAより

風力発電に逆風。3月末の逆転黒字は、発電機115基の「収入」という不可解な理由。

風力発電といえば、地平に巨大なプロペラが整然と立ち並ぶのどかな田園風景が思い浮かぶ。「環境の時代」を象徴する風車の里のイメージだが、実は騒音、低周波、鳥類の激突死などを嫌う近隣住民とのトラブルが絶えない。もうひとつの「クリーンエネルギー」太陽光発電が、経済産業省の全面的なバックアップや補助金制度の導入で普及が進むのに比べると、どうも旗色が悪い。トラブルのない「適地」は狭い日本では限られており、「あとは海のうえに建てる洋上風力発電所を増やすしかない」(風力発電メーカー幹部)ところまできている。
2009年9月号 FACTA
http://facta.co.jp/article/200909059.html


コメントでお知らせ頂いた、雑誌FACTAの記事。宇久島での風力発電を
計画している日本風力開発株式会社の決算について掲載されている。
(日本風力開発株式会社はマザーズに上場)

決算への疑問点として、第3四半期まで赤字だったのに、第4四半期で
風力発電機115基、蓄電池の代理店収入があり、売上高36億4200万円を
計上し、黒字となった。ということ。
日本風力開発の風力発電機の販売台数は平成15年から平成20年度まで
毎年約30基。最も多いH18年度でも39基。これに比べると115基という
のは確かに多い。

日本風力開発 開発中の発電所(平成21年3月期決算説明資料より)

(クリックで大きく見られます)

上の決算資料によると、日本風力開発の現在開発中の発電所は、 
江差10基 由良5基 胎内 10基 銭函 20基の合計45基。
このうち、銭函はNAS蓄電池を設置予定。
その他計画中では、

 北海道松前町 2000kwx20基(+蓄電池)
 長崎県宇久島 2000kwx50基

これらを足すとぴったり115基になる。
ちなみに松前と銭函(小樽)は平成21年度の補助で、平成21年
7月31日に補助が決定。


平成21年度新エネルギー等事業者支援対策事業の交付決定について
http://www.nepc.or.jp/topics/2009/0731_3.html
補助事業者一覧(pdf)
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/090731_3.pdf


宇久島は、ご存じの通り住民の反対でまだ計画の段階。
第4四半期への売り上げの集中はコメントにも頂いたが、補助金の
交付決定が下りてから発注するため。としているが、まだ補助が決
まっていない段階での発注では説得力がない。

では、この115基はどこから仕入れたのか。
日本風力開発は、平成20年3月期まではGEの風車の輸入代理店だった。
しかし、平成21年3月期に日本製鋼所、日立製作所と代理店契約を結び、
この2社の風車を使うことになっている。

日立製作所の方は、決算資料等に風力発電に関する記述はほとんどな
く、売上等の記載もない。

日本製鋼所は、決算資料によると、H21年3月期の風力発電機の売上高
は18億円。受注高は217億円となっている。H20年3月期の受注高も142
億円ある。室蘭民報の記事によると、日本製鋼所室蘭製作所の2008年
度の風車製造能力は年間30基なので、受注残が積み上がっているのも
仕方がない。

日鋼室蘭が2000kW発電用風車、年100基に増産へ
http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2008/05/28/20080528m_01.html

記事では、H23(2011)年度までに年100基体制に増産とあるが、決算
短信では、10.3月期に100基、11.3月期に150基の生産体制を構築と
なっているので、前倒しして設備投資している模様。売上高は10.3月
期で265億円を見込んでいる。
このうち、どの位が日本風力開発に関するものかは分からない。

ここまで見ると115基+蓄電池の代理店収入というのは、FACTAで指摘さ
れているとおり、単年度分ではなく、多年度受注だと思われる。
ただ、日本製鋼の風車製造が追いついていないことから、前もって発注
したとも考えられる。風力発電機の販売はしたものの、風車自体は納品
になっておらず、着工もしていないのだから、発電所建設に関する経費
は発生せず、利益幅は大きくなる。
もちろん、グループ外に販売した場合は代理店収入はそのまま利益にな
るが、それは稀だろう。

ここで疑問に思うのが、親会社の日本風力開発が風力発電機の代理店に
なり、連結子会社の風力事業社が購入した場合、売り上げは相殺され、
意味がないのではないか。という点。
これは子会社の風力事業会社ではなく、工事予定の建設会社に販売する
ことで売上に計上できるようになっているようだ。
この風力発電機の販売の流れに関してはまた次回。


(もし、この記事に誤りがありましたらお知らせ下さい。反論、内部事情も歓迎です)



関連ページ
日本風力開発株式会社
http://www.jwd.co.jp/
平成21年3月期 決算短信(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/financial/090515_financial_results_march_2009.pdf
2009年3月期決算説明会(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/library/_results09.pdf

日本製鋼所 風力発電事業
http://www.jsw.co.jp/product/ecology/wind/wind_02.html
平成21年3月期 決算短信
http://www.jsw.co.jp/ir/pdf/20090511kessantan.pdf
日立製作所 風力発電
http://www.hitachi.co.jp/environment/showcase/solution/energy/wind_velocity.html

銭函地区に風力発電所計画 高さ100mの発電機20基建設
http://otaru-journal.com/2009/05/0515-7.php
鉄筋160本が倒れて7人が重軽傷、北海道江差町・風力発電所の基礎工事
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20090730/171172/


2009/9/4 更新
衆議院選は民主党が圧勝しました。日本は変わるでしょうか?
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コメント
 
 
 
はじめまして。 (ひじき)
2009-09-04 23:45:10
大変勉強になりました。

伊豆の風力発電を見ているものです。
会社は違いますが、いろいろあって。
自宅の庭を送電線埋設の話から
風力発電に関わることになりました。
その強引さにはへきへきとしているところです。

それとは別に
ビジネスとして成り立つのか
ただ会社の食いつなぎのため
目先の補助金目当てで
事業を興しているのではないのかと
勘ぐりたくなります。

これから、じっくり
貴殿のブログを読んでいきたいと思います。


 
 
 
補助金制度上 (カリブの海賊)
2009-09-06 16:19:04
上は風車の補助金採択前の風車や工事の発注はできないルールですね
今、CEFの風車が敦賀港に28基(GE製2.5MW)ほど保管されていますが、風車のラベルに「CEF UCHINADA」と記載されています。以前、内灘町にはCEFが30本前後の大規模洋上風力の計画が記事になっていました
また、敦賀市内の開発サイトも補助金申請したそうですが、不採択となっています。よもや、敦賀のサイトの風車も発注なんてことは・・・

やっぱり初期投資の補助金とか、よくないと思いました
 
 
 
強引な開発と補助金 (mizu)
2009-09-07 08:38:56
ひじきさん、初めまして。コメントありがとうございます。
風力発電の開発は、最近特に強引になったように感じています。地元の方に受け入れられなければ、風力発電は能力を発揮できないのが風車。建設時のトラブルは禍根を残しかねません。地元への配慮が必要だと思います。

ビジネスモデルとしては、調べているところですが、永続的かと言われると疑問です。利益の先取りというか、とにかく作り続けないと利益が出ない構造のような気がします。

カリブの海賊さん
115基の発注が本当に宇久島などの風車を含んでいるのかは分かりません。日本風力開発は、「建設会社が発注したことなので、当社は関知していない。」と答えることでしょう。
この辺の風車の流れ、建設会社との関係等、不透明な点があります。この点について、また次回書きますね。
 
 
 
Unknown (マロニエ)
2009-10-26 16:07:57
小樽の銭函地区にも大規模風力発電を作るという事ですが どうみてもあんな底の底まで砂地に立地するのは 合点がいきません 地震でもあったひには 液状化現象でひっくり返るのではと思っております バードストライクばかりではなく 貴重な海岸植生が失われます どうも多額の補助金など 金の臭いがプンプンしますが ほんとうの環境保護がなされるよう願ってやみません 
 
 
 
Unknown (mizu)
2009-10-27 19:12:29
マロニエさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
銭函は2000kwを20基、それに蓄電池設置の計画ですね。
銭函地区については、どのような土地、状況なのか分かりませんのでなんとも言い難いです。

ただ私としては、無理に大型化し、規模を拡大するのではなく、環境にも配慮した風力発電であってほしいと思います。
 
 
 
初心に返るしか (カリブの海賊)
2010-06-26 21:46:43
創業間もない風車1本の頃の日本風力開発はこんな会社じゃなかったと断言できます
どうしてこうなっちゃったのかなあ
いみじくも塚脇社長のIRでのコメントで「初心に返って」とかいてあったので、今からでも遅くないから初心に戻って、あの「ちょうしちゃん」の風車1本を大切にかわいがっていたあの頃に戻るべきじゃないかな
今の状況は見るに堪えないです
 
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