日本風力開発「神風」決算の怪  まとめ

前回前々回と雑誌FACTAの記事を元に日本風力開発の2009年3月期
決算について書いてきました。今回はまとめです。

事の発端は、日本風力開発が2009年3月期決算で115基+蓄電池の代
理店収入として、36億円以上を計上し、経常黒字となったこと。
前年まで毎年30基前後しかない風力発電機の販売で、115基というの
は非常に多い。これは、前に書いた通り、単年度ではなく、多年度受
注だろう。

日本風力開発の風車代理店であるが、販売先は最終的に子会社の風力
事業会社となる。通常であれば、これは連結決算で相殺されるが、
風車販売先を子会社の風力事業会社ではなく、建設会社にすることで
売り上げとして計上できるようになっている。

今回の115基の風車の場合、メーカー側では受注残となっており、売上
げには計上されていない。それでも日本風力開発に販売手数料を払って
いる。ここからは推測だが、建設会社が手付け金として払った金額がそ
のまま販売手数料に回った。と考えられる。建設会社にはリスクはある
が、この手付け金の支払いで工事を取れることなるのだったら安いもの?

子会社に直接販売では売り上げに計上できず、間に建設会社を挟むこと
で、売上げにする。私は会計に詳しくないので、これが会計上問題があ
るのかどうか分からないが、少なくとも、正直なやり方ではない。

会計上はともかくとして、風車の補助金を考えると大きな問題がある。
メーカー→日本風力開発→建設会社→風力事業会社と間に複数の会社が入
ることで風車の代金は当然高くなり、その分、補助金の総額も高くなる。

さらに、風車建設、補助金交付が決定する前に、建設会社が風車を購入し、
その代理店収入が日本風力開発に入ることになっている。
必然的に建設工事は、風車を購入した建設会社に決定。補助金が交付され
る以上、入札で決まるはずの建設工事が早い段階で内定していることにな
る。これでは工事費の見積もりなどの正当性、妥当性も疑われる。

ここまで見て、日本風力開発は会計上、それに補助金交付に関しても、(法
律上はともかく)企業姿勢としては問題がある。少なくとも補助金に関し
ては会計検査をすればすぐに分かる。こういった裏技的な会計処理は長続
きはしないと思う。

最近の強引な大規模開発を考えると、一企業のみではなく、日本の風力開発
に共通する問題のような気がする。企業姿勢、倫理ももちろん重要だが、日
本の健全な風力開発のためにも、そろそろ補助金のあり方を見直し、開発に
関し、環境、騒音等規制を設ける時だろう。


関連ページ
日本風力開発 決算の謎(当ブログ内)
http://facta.co.jp/article/200909059.html
日本風力開発株式会社
http://www.jwd.co.jp/
平成21年3月期 決算短信(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/financial/090515_financial_results_march_2009.pdf

鉄筋160本が倒れて7人が重軽傷、北海道江差町・風力発電所の基礎工事
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20090730/171172/
7/21に起きた江差町の風力発電所建設工事での事故。
日本風力開発のHPには全く記載はありませんが、どうなっているので
しょうか?



2009/9/15 更新
急に涼しく秋らしくなってきました。彼岸花があちこちに咲いています。
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日本風力開発「神風」決算の怪 その2 風車の流れ

日本風力開発のH21.3月期決算に対する疑問を投げかけた雑誌FACTA
の記事から前回の続き。

第4四半期に115基+蓄電池の代理店収入、36億円以上があったとし
て、計上黒字を維持した日本風力開発。しかし、この代理店収入とは
どういうことか?親会社の日本風力開発が風力発電機メーカーから
風車を購入し、子会社の風力発電事業社へ販売した場合、経理上、グ
ループ内取引として相殺されるはず。
この風車や蓄電池の流れは、決算短信に記載されている。

前年度までのGEの風車の場合。(画像をクリックで大きく見られます)



風力発電事業会社(原則連結子会社)が建設会社に工事を発注。
建設会社は日本風力開発に風車を発注。
日本風力開発が輸入元となり、建設会社に風車を販売。

H21年度3月期からは、GEの風車は使わず、日本製鋼、日立
製作所の代理店となった。(NAS電池は日本ガイシ)




(クリックで大きく見られます)

風力発電事業会社(原則連結子会社)が建設会社に工事を一括発注。
建設会社は風車や蓄電池をメーカーに直接発注し仕入れる。
日本風力開発はメーカーから販売手数料の支払いを受ける。

今回の決算の場合、115基+蓄電池を仕入れたのはあくまで建設会社
であり、日本風力開発は関知していない。ということのようだ。
FACTAの記事の中では

「はっきりしているのは、リスクは建設会社さんが負うこと」

との日本風力開発のコメントがある。

リスクを建設会社が負うということは、当然、建設会社は風車の代金
にその分の金額を上乗せするだろう。そもそも、風力事業会社が直接
メーカーから風車、蓄電池を購入すれば、安く仕入れができるはず。
なぜこんな複雑な流れになっているのか?

H18.3月期の決算短信では、風力発電機の保証、アフターサービスを日
本風力開発ではなく、建設会社に負わせるため。といった意味合いの記
載がある。

平成18年3月期 決算短信(連結)(PDF)
>http://www.jwd.co.jp/pdf/financial/00046546.pdf

このように理由付けをしてはいるが、この複雑な取引の一番の理由は
補助金のため、更には日本風力開発の決算をよく見せるためだろう。

現在、民間企業の風力発電所建設には約1/3の国からの補助金が支給
される。風車の販売で間に入る会社が多くなるほど、風車の値段は高
くなる。補助金は定率なので、風車、建設費が高くなるほど、支給額
も高くなる。

また、日本風力開発が直接子会社の風力事業会社に風車等を販売した
場合、決算ではこの取引は相殺される。建設会社を間に挟むことで、
日本風力開発は売上として計上できる。

この取引で、建設会社の利益、補助金の支給額は増えることになる。
しかし、実際に日本風力開発の儲けが増えるのだろうか?

いくら補助額が増えても、建設費等経費がそれ以上に高くなれば、その
分日本風力開発の利益は少なくなる。風車の代理店収入で今期は利益が
増えても、来期以降に建設工事の経費が増える。黒字にするためには、
更に多くの風車を販売(発注)しなければならない。
そもそも、風力事業会社は「原則連結子会社」なのに、なぜ日本風力開発
の風力発電開発事業の黒字が成り立つのか。グループ外への風力発電開発
支援ではなく、最終的に建設費もグループ内の経費となるので、年々開発
事業を拡大しない限り、成立しないだろう。これが、最近の風力発電所の
大規模開発の要因かもしれない。

もう一つこの取引では問題が隠れている。
今回の115基の風車の代理店販売は建設会社がメーカーから直接仕入れ、
リスクも建設会社が負うとしている。しかし、風力事業会社、又は日本風
力開発が依頼しない限り、建設会社が自己判断で風車、蓄電池を購入する
ことはまずないだろう。

ここで問題になるのは、建設会社が補助金、建設が決まる前に前もって
風車を発注(又は購入)した場合、事実上、風力発電施設の工事はこの
建設会社に決まる。ということだ。

補助金を受ける以上、本来施工会社は入札によって決めるべき。それが
補助金の受給が決まる前にすでに工事を請け負う会社は決まっている。
これでは、建設会社と発注元(日本風力開発)との関係も不透明となり、
補助金の算出元となる工事費などの経費も疑わしくなってくる。

日本風力開発について、ここまで見て、風力発電機の流れ、建設会社と
の関係など、不透明な点が多い。日本風力開発は上場企業なので、決算
資料などが公開されているが、他の開発業者はどうなのだろうか?
日本の風力発電所が開発・運営に様々な問題を抱え、反対運動が増えて
いる。強引な開発はそれを誘因している初期の補助金支給のあり方に一
番の問題があると私は思う。

(もし、この記事に誤りがありましたらお知らせ下さい。反論、内部事情も歓迎です)


関連ページ
雑誌FACTA 2009年9月号 日本風力開発「神風」決算の怪
http://facta.co.jp/article/200909059.html
日本風力開発株式会社
http://www.jwd.co.jp/
平成21年3月期 決算短信(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/financial/090515_financial_results_march_2009.pdf

日本風力開発「神風」決算の怪  雑誌FACTAより
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/742832b81e996bc76aa3064e0cc50c90



2009/9/8 更新 
昨日(9/7)は二十四節気の一つ白露でしたが、私の地域では
まだまだ暑い日が続いています。ここ1ヶ月まともな雨も降っ
ていません。そろそろ一雨欲しいところです。
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日本風力開発「神風」決算の怪  雑誌FACTAより

風力発電に逆風。3月末の逆転黒字は、発電機115基の「収入」という不可解な理由。

風力発電といえば、地平に巨大なプロペラが整然と立ち並ぶのどかな田園風景が思い浮かぶ。「環境の時代」を象徴する風車の里のイメージだが、実は騒音、低周波、鳥類の激突死などを嫌う近隣住民とのトラブルが絶えない。もうひとつの「クリーンエネルギー」太陽光発電が、経済産業省の全面的なバックアップや補助金制度の導入で普及が進むのに比べると、どうも旗色が悪い。トラブルのない「適地」は狭い日本では限られており、「あとは海のうえに建てる洋上風力発電所を増やすしかない」(風力発電メーカー幹部)ところまできている。
2009年9月号 FACTA
http://facta.co.jp/article/200909059.html


コメントでお知らせ頂いた、雑誌FACTAの記事。宇久島での風力発電を
計画している日本風力開発株式会社の決算について掲載されている。
(日本風力開発株式会社はマザーズに上場)

決算への疑問点として、第3四半期まで赤字だったのに、第4四半期で
風力発電機115基、蓄電池の代理店収入があり、売上高36億4200万円を
計上し、黒字となった。ということ。
日本風力開発の風力発電機の販売台数は平成15年から平成20年度まで
毎年約30基。最も多いH18年度でも39基。これに比べると115基という
のは確かに多い。

日本風力開発 開発中の発電所(平成21年3月期決算説明資料より)

(クリックで大きく見られます)

上の決算資料によると、日本風力開発の現在開発中の発電所は、 
江差10基 由良5基 胎内 10基 銭函 20基の合計45基。
このうち、銭函はNAS蓄電池を設置予定。
その他計画中では、

 北海道松前町 2000kwx20基(+蓄電池)
 長崎県宇久島 2000kwx50基

これらを足すとぴったり115基になる。
ちなみに松前と銭函(小樽)は平成21年度の補助で、平成21年
7月31日に補助が決定。


平成21年度新エネルギー等事業者支援対策事業の交付決定について
http://www.nepc.or.jp/topics/2009/0731_3.html
補助事業者一覧(pdf)
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/090731_3.pdf


宇久島は、ご存じの通り住民の反対でまだ計画の段階。
第4四半期への売り上げの集中はコメントにも頂いたが、補助金の
交付決定が下りてから発注するため。としているが、まだ補助が決
まっていない段階での発注では説得力がない。

では、この115基はどこから仕入れたのか。
日本風力開発は、平成20年3月期まではGEの風車の輸入代理店だった。
しかし、平成21年3月期に日本製鋼所、日立製作所と代理店契約を結び、
この2社の風車を使うことになっている。

日立製作所の方は、決算資料等に風力発電に関する記述はほとんどな
く、売上等の記載もない。

日本製鋼所は、決算資料によると、H21年3月期の風力発電機の売上高
は18億円。受注高は217億円となっている。H20年3月期の受注高も142
億円ある。室蘭民報の記事によると、日本製鋼所室蘭製作所の2008年
度の風車製造能力は年間30基なので、受注残が積み上がっているのも
仕方がない。

日鋼室蘭が2000kW発電用風車、年100基に増産へ
http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2008/05/28/20080528m_01.html

記事では、H23(2011)年度までに年100基体制に増産とあるが、決算
短信では、10.3月期に100基、11.3月期に150基の生産体制を構築と
なっているので、前倒しして設備投資している模様。売上高は10.3月
期で265億円を見込んでいる。
このうち、どの位が日本風力開発に関するものかは分からない。

ここまで見ると115基+蓄電池の代理店収入というのは、FACTAで指摘さ
れているとおり、単年度分ではなく、多年度受注だと思われる。
ただ、日本製鋼の風車製造が追いついていないことから、前もって発注
したとも考えられる。風力発電機の販売はしたものの、風車自体は納品
になっておらず、着工もしていないのだから、発電所建設に関する経費
は発生せず、利益幅は大きくなる。
もちろん、グループ外に販売した場合は代理店収入はそのまま利益にな
るが、それは稀だろう。

ここで疑問に思うのが、親会社の日本風力開発が風力発電機の代理店に
なり、連結子会社の風力事業社が購入した場合、売り上げは相殺され、
意味がないのではないか。という点。
これは子会社の風力事業会社ではなく、工事予定の建設会社に販売する
ことで売上に計上できるようになっているようだ。
この風力発電機の販売の流れに関してはまた次回。


(もし、この記事に誤りがありましたらお知らせ下さい。反論、内部事情も歓迎です)



関連ページ
日本風力開発株式会社
http://www.jwd.co.jp/
平成21年3月期 決算短信(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/financial/090515_financial_results_march_2009.pdf
2009年3月期決算説明会(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/library/_results09.pdf

日本製鋼所 風力発電事業
http://www.jsw.co.jp/product/ecology/wind/wind_02.html
平成21年3月期 決算短信
http://www.jsw.co.jp/ir/pdf/20090511kessantan.pdf
日立製作所 風力発電
http://www.hitachi.co.jp/environment/showcase/solution/energy/wind_velocity.html

銭函地区に風力発電所計画 高さ100mの発電機20基建設
http://otaru-journal.com/2009/05/0515-7.php
鉄筋160本が倒れて7人が重軽傷、北海道江差町・風力発電所の基礎工事
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20090730/171172/


2009/9/4 更新
衆議院選は民主党が圧勝しました。日本は変わるでしょうか?
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