THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「星夜行」(北森みお/パロル舎)

2010年08月25日 | Weblog
 戦後65回目の夏――。 この時期、「戦争と平和」を考えるさまざまな本が刊行されていますが、ある1冊の本が話題になっています。それは、広島在住の作家・北森みおさんの本。新聞広告に目がとまった私はさっそく購入し、読んでみることにしました。

 5つの話から構成されるこの物語の主人公は、「モギ」という珍しい名前の女の子(小学生)。彼女は原爆で両親と弟を失い、愛する「ソラ姉さん」と友達「リン」は原爆症の後遺症で苦しんでいます(入院していたリンは作中で死に、ソラ姉さんの病状も日に日に悪化していきます)。また、ユキおじさん、謎の少年&少女のマキオくんとコマギさん、バイオリン弾きなども登場し、物語の不思議な世界が広がっています。

 眩い光に包まれた1945年8月6日、ヒロシマ。遠ざかることのない、あの日……。ヒロシマのトラム(電車)の軌道に乗せて、ひとりの少女が静かに語る儚くも切ない「悲しみと再生を願う」物語。電車の中で彼女はさまざまな人とに出会い、心の交流を深めていききす。
 
 あの日、あの場所にいた人たちから、戦争を知らない若い世代まで、すべての人たちへ贈られた1冊。本書には、原爆についての生々しい描写や原爆投下への怒りの気持ちなどは一切書かれていません。ただ、少女の日々の体験、人との交わりの様子がやわらかいタッチの文章で淡々と綴られています。しかし、この物語の根底にある作者の反戦の思いが全編通して感じることができます。


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