採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

シャー・ナーメあらすじ:7.ザールとルーダーベの話(1/4)

2023-02-07 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

おもいのほか時間がかかっていたこの第七章、ようやくめどがついてきました。霊鳥シムルグに育てられたザールの、後日譚です。
この章は21節もあってとても長いので、4分割してみました。
ここまできてようやく、名前のついた女の子の登場人物が出てきますよ!そして燃える恋も☆

場面があちこちに飛び、各地で皆、そのキャラクターが際立つ個性的な行動をとります。
1回目は、一番スイートな部分。Boy meets girl の初々しい恋です。
憧れる相手に、手さえも触れる前、という恋のはじまりって、心震えるみずみずしさがあっていいよねー、と楽しみに訳していたのですが、あれ、なんか、昔みたいに共感できないような。私の心はもうパッサパサ? 年取ったってことかしら!? いや、文章を自分で書きながら共感するのはむずかしいからだな、うん。

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7.ザールとルーダーベの話(1/4)
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■登場人物
ザール:シスタン、ザブリスタンの若王(跡継ぎ)。生まれつきの白髪。Zal
ミフラーブ:ザールの支配地域にあるカボルの領主(アラブ系でザハクの子孫)。Mehrab / メフラーブ
シンドゥクト:ミフラーブの妃 Sindukht
ルーダーベ:ミフラーブの娘 Rudaba / Rudabeh / ルーダーバ
サーム:ザブリスタンの先王。ザールの父で、ザールに後を託してマヌチフルの命令でマザンダランとカルガサールに遠征中。Sam / Saam
マヌチフル:ザブリスタンが臣従する、大イラン帝国の王。シャー。Manuchifl
カボル(地名):アフガニスタン東部。いまの首都カブール一帯。Kabol / Kabul 。(敢えて現代の通称と違う言葉を選んでいます)

■概要
ザブリスタンの跡継ぎザールが、自分を知らしめ、見分を広めるため領内を旅していきます。
そしてアラブ系民族のカボルという国で領主ミフラーブと親交を深め、その娘を、見る前に深く恋します。
娘ルーダーベも、父親から彼の話を聞いて、逢う前から恋してしまいます。
侍女たちが恋の仲立ちをして、ふたりはある夜、こっそり逢うことができたのでした。

■ものがたり

□□1.ザール、カボルのミフラーブを訪れる 

ある日、ザールは王国を旅することを決意し、仲間を従えて旅に出ました。ヒンド、ダンバー、モルグ、マイと旅を続けました。行く先々で彼は王座を設けて豪華な祝宴をひらき、酒や楽人を呼んでもてなし、気前よく散財しました。絢爛豪華な旅をして、笑いながら、幸せな気持ちでカボルに着きました。

そこの領主はミフラーブという人で、申し分のない富豪でした。彼は糸杉のように背が高く優雅で、顔は春のように爽やかで、足取りは堂々として雉のようでありました。その心は賢く、その心は思慮深く、その肩は戦士のようであり、その心は神官のようでした。ミフラーブはザハクの子孫でしたが、ザールと争うつもりはなく属国として従っていました。

ザールの接近を知った彼は、宝物や琥珀などの様々な贈り物を持って夜明けと共にカボルを発ちました。ザールは、豪華な歓迎団が自分を迎えに来たと聞いて、前に出て彼らを迎え、あらゆる敬意を払って挨拶しました。

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●ザールの天幕を訪ね歓迎の意を表するミフラーブ f67v

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●ミフラーブからの贈り物の行列 f67v

ミフラーブをトルコ石を敷き詰めた玉座に座らせると、二人の王の前には素晴らしいご馳走が並べられました。侍従が葡萄酒を注いでいる間、ミフラーブは主君ザールを見定め、満足しました。

ザールへの祝福を述べるためミフラーブが玉座から立ち上がったとき、ザールはその姿と肢体を見定め、長老たちに言いました。
「なんと優雅な装いで美しい身のこなしの人物だろうか。かくも見事な体格であれば戦いにかけては右に出る者はいないでしょう。」

ある貴人がザールに言いました。
「高い壁に囲まれたカボルの彼の館には、その顔が太陽よりも美しく、頭から足まで象牙のようで、頬は楽園のようで、背丈はチークのように高くほっそりとした娘がいます。
麝香のように黒い髪の輪が銀色の首を覆って二筋に分かれて落ち、その先端は足首の輪飾りになります。彼女の頬はザクロの花のようで、唇は桜ん坊。彼女の銀色の胸は2つのザクロの粒を持っています。彼女の目は庭の双子の水仙です。月を求めるなら彼女の顔、麝香を求めるなら彼女の髪がその隠し場所でしょう。」

これはザールの心に動揺を引き起こし、休息と理性は失われました。
彼は考えました。この父君の娘であれば、その乙女の美しさはどれほどのことか!

夜になっても、ザールは見たこともないこの娘への強いあこがれで、眠れず、食べられず、また民族の違いを考えると猶更困り果てて思案に暮れました。


□□2.ルーダーベと侍女の娘たち

ある日の明け方、ミフラーブが女部屋に行くと、二つの太陽がありました。一人は妻のシンドゥクト、もう一人は愛娘のルーダーベです。彼らの部屋は、春の庭のように色とりどりに飾られ、甘い香りと気品に満ちていました。シンドゥクトはナツメの唇から真珠の歯を覗かせて微笑み、夫に尋ねました。
「サームの息子、この老人のような髪をした訪問者はどんな人物なのか教えてください。彼は玉座にふさわしいのでしょうか、それとも彼が育った荒野のあの巣に戻るべきでしょうか?」
ミフラーブは答えました。
「銀の胸を持つ我が麗しの糸杉よ。彼のような手綱さばきをする見事な騎手は見たことがない。
彼の心は獅子、力は象、手はナイル川のようだ。彼は王座につくと金貨を散らし、戦いになると首を散らす。彼の頬は花蘇芳のように赤く、聡明で、戦いの中では獰猛な鰐のよう、馬上では鋭い爪のある竜のようである。
どのような難癖屋でもたったひとつの欠点しかみつけられない。彼の髪は白いのだ。
しかし、この白髪が彼を際立たせている。『彼は何と魅力的なのか』と誰もが言うだろう。」

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●ミフラーブがシンドゥクトとルーダーベにザールについて説明する68v


これを聞いたルーダーベは頬をザクロの花のように赤く染め、ザールへのあこがれに心を燃やしました。彼女は食べることも休むこともできず、性格も態度も変わってしまい、情熱が知恵の座を奪ってしまったのです。

ルーダーベには5人のトルクメン人の侍女がいました。みなルーダーベに忠実で思慮深い娘たちでした。彼女はこの少女たちに言いました。
「私の秘密を聞いて。私は恋をしています。私の心はザールを思う気持ちでいっぱいで、寝ても覚めても彼のことが頭から離れないのです。私の魂をこの苦しみから解放するために、何か方法を考えて欲しいの。」

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●侍女たちに打ち明けるルーダーベ f69v

ルーダーベのような身分の者がこのような行動をとることに、侍女たちは驚きました。彼女たちは立ち上がり、率直に彼女に答えました。
「愚かな姫様! あなたは世界中の女性の王冠であり、父君の家の宝石です。肖像画はヒンドからチン、西方まで賞賛され、あなたの背丈を持つ糸杉はなく、神々に嫁いだプレアデスの姉妹たちだって姫様ほど美しくありません。
なのに、老人のように生まれ、父親に疎まれ、山の中で鳥に育てられた者を恋するなんて。
珊瑚の唇、麝香の髪の若い娘が、どうして老人と結婚しようと思うのでしょう。」

この言葉を聞いたルーダーベは、風に煽られた火のように体を震わせ、眉を弓のように曲げて怒鳴りつけました。
「チンの皇帝も西方の王もイランの王子さえもいらない! 獅子のような強さと体格を持つザールこそ、私にふさわしいのです。人が彼を老人といおうが若いといおうが、私にはとっては彼が魂と心の平和を与えてくれる人なのです。」

侍女たちは彼女の返答に驚き、声を揃えて言った。
「私たちはあなたの忠実な召使です。姫様のためになんでもしましょう。魔法を学び、鳥と飛び、鹿と走り、呪文で目を封じてでも、この王子をあなたの側に連れて参りましょう。 」

□□3.ルダベの侍女たちがザールに会いに行く 

侍女たちはどうにかしてルーダーベを助けようと考えました。彼女たちはルームの錦を身にまとい、髪には花飾りをつけて川岸に降りていきました。春も盛りのその日、彼女たちは川辺で薔薇を摘みました。
摘んだ薔薇は膝を満たしていきましたが、それでも彼女たちはあちこちを歩き回って摘み続けます。

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●薔薇を摘み集める侍女たち f70v

ザールの野営地は川の向こう側にありました。侍女たちがザールの天幕のちょうど対岸に来たとき、ザールは彼の高い玉座からそれらを見つけ、尋ねました。
「あの花摘み娘たちは誰だろうか。」
廷臣の一人が言いました。
「ミフラーブ殿の宮殿から来た侍女たちで、人々がカボルの月と呼ぶ彼の娘が、薔薇を集めに行かせたのでしょう。」
ザールの心は高鳴りました。そしてザールは小姓の少年とともにさりげなく川岸を歩き、小姓から弓を受け取ると、一羽の鴨が水面から翼をひろげ飛び立つのを見計らって、矢を放ちました。

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●矢を射たザール f70v

矢は水鳥を仕留め、丁度娘たちのそばの水際に落ちました。ザールは小姓にそれを取りにやらせました。小舟で川を渡ってきた少年に、侍女のひとりが声をかけました。

「あなたのご主人、あの獅子のような体格の射手は誰なの?彼より立派な騎士も、弓の上手な射手も見たことがないわ。」
かわいい少年ははにかんで言いました。
「ぼくのご主人はザブリスタンの王で、サームの息子、名前はザールです。地上でいちばん、美しく逞しい騎士です。」

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●侍女たちと話をする小姓70v

少女たちはその少年をからかうように笑いかけて答えました。
「いいえ、ミフラーブ公の宮殿に、あなたの王よりずっと素敵なお姫様がいます。
その目は物思いにふけり、その眉は弧を描き、その鼻筋は銀の葦のよう、その頬はチューリップのような色で、その髪の先は足首の輪飾りのように巻きついています。彼女は無比の月なのです。
じつは私たちは、ザール殿の唇に姫様の紅玉の唇を触れさせたいのです。」
それを聞いた少年の顔は真っ赤になりました。
「確かに、太陽は月と結ばれるべきです。」
と少年は答えました。

少年はザールのもとに戻ってきました。
ザールは小姓に、少女たちが何を言ってそんなに笑ったのか、なぜ顔を火照らせているのか尋ねました。少年は聞いたことをザルに話すと、ザールの心は喜びに浮き立ちました。
彼は小姓に、侍女たちへの伝言ー薔薇の茂みの中に隠れているように―と姫君への贈り物を持たせ、再度川を渡らせました。

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●川を渡った小舟70v

ザール自身も川を渡り、侍女たちのいる薔薇の茂みに行きました。
そして彼女達に、姫君の背丈や美しさ、話し方や知恵などを質問しました。侍女たちはザールに跪いて挨拶し、ルーダーベの美しさを雄弁に説明しました。

王子は心急いて、しかし平静を装って侍女たちに語りかけました。
「何とか姫君にお逢いするすべはあるでしょうか。私の心と魂は姫君への愛で満たされており、彼女の顔を一目見たいと切望しています。」
侍女たちは答えました。
「お許しを頂ければ、私たちは城に戻ります。そして、閣下の英明、美貌、誠実さ、そして熱い情熱について、姫君にすべてをお伝えします。どうぞ今晩、投げ縄を持って城壁に来て下さい。」

□□4.ルーダーベのもとに帰る侍女たち 

ザールは夜を待ちましたが、まるで一年が過ぎゆくように感じました。
少女達が城に到着したとき、それぞれ花束を2つ持っていました。城壁を守る門衛は眉をひそめて叱りつけました。
「こんなときに、随分と遠出してきたもんだな!」
彼女たちは心に秘密を抱え、むしろはしゃいだ様子で答えました。
「別にいつもと同じよ。だって春なのですもの。ルーダーベ様のために、薔薇とヒヤシンスを摘んできたの。」
「今日はそんなことをしている場合ではない。ザボレスタンの王ザール殿が近くまで来ているのだ。ミフラーブ殿が毎日通っているのを知っているだろう? もしザール殿が花を摘んでいるお前たちに出くわしたら、何をされるかわからないぞ。」

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●守衛に叱られる侍女たち71v

少女たちは館に入り、姫のところへ行き、座って秘密を打ち明けました。ザールからの錦や宝石を見せると、ルーダーベは彼について詳しく知りたがりました。
5人の少女は一斉に話し始め、誰が王女に自分の見たことを伝えるべきかを競い合いました。
「ザール殿は美しい糸杉のようで、身につける衣装の色、香水、すべてが優雅で、王族の栄光を放っています。背丈はすらりとして、腰は細く、胸は高く、肩や腿は隆々として獅子のようです。
目は二輪の黒い水仙のよう、唇は珊瑚のようであり、彼の頬は銀の鎖帷子をまとった花蘇芳のように、薔薇色の肌に銀の産毛があります。
学識があり賢者の思慮深さがあり、威厳があります。髪は真っ白ですが、これによって魅力を欠くものではないのです。」
「ザールは鳥に育てられ、老人の頭をした枯れた若者だという人もいますが、やはり違ったのですね。」
ルーダーベはそう言うと、頬をザクロの花のような色に赤らめて微笑みました。
侍女たちは言いました。
「私たちはザール殿に、姫様に会えると伝えました。彼は希望に満ちた心で自分の野営地に帰っていきました。さあ、お客様をお迎えする準備をしましょう。そしてすべてがうまくいくように祈るのです。」

ルーダーベは自分の館を持っていたため、彼女の親族は何も疑いませんでした。
ルーダーベの部屋は陽気な春のように、偉大な男たちの肖像画で飾られました。
侍女たちは部屋をチンの錦で飾り、瑪瑙やエメラルドを盛った金の盆を置きました。葡萄酒には麝香と龍涎香で香りをつけ、部屋中を水仙、菫、花蘇芳、薔薇、ジャスミンの花で飾りました。
ゴブレットは金とトルコ石でできており、透明な薔薇水に浸されたお菓子もあります。
このようにして、月のかんばせの姫君の部屋から薔薇の香りが立ち上り、太陽の君を待ち受けたのです。

□□5.ザールがルーダーベのもとを訪れる 

日が暮れると、姫の館には外から鍵がかけられましたが、侍女のひとりがザールのもとに忍んで行き、言いました。
「準備が整いましたので、お越しください。」 
ザールは心急いて城に向かいました。
ルーダーベは館の屋上ー城壁の上ーに出てザールを待ちました。その様子は、満月を頂く糸杉のようでした。そしてザールが現れると、彼に声をかけました。
「よく来てくれました、高貴な生まれのお方。あなたは私の侍女たちの説明した通りですね。高貴なあなたを、ここまで騎馬ではなく歩かせてしまってごめんなさい。」
彼はその声を聞き、城壁の上のルーダーベを見ました。その美しさは宝石のようにあたりを輝かせました。
彼は答えたました。
「おお、月のかんばせの姫よ。あなたの顔を見ることができるようにと、幾夜神に願ったことか。今、あなたはその声、その優しい言葉と優しさで私を幸せにしてくれます。
しかしいま、貴女は高い城壁の上にいてわたしは地上にいて、もどかしい思いです。」

ザールの言葉を聞いたルーダーベは緋色の頭巾を脱ぎ、そして、そのすらりとした糸杉の頂きから比類ない麝香の投げ縄ー美しい黒髪ーを解き放ちました。彼女の髪は城壁の上からまっすぐ垂れて地面に達しました。
「勇敢な戦士よ、どうぞこの髪を掴んでください。」

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●胸壁から黒髪を垂らすルーダーベ f72v


ザールは驚いて彼女の髪と顔を交互に見つめました。
彼女は彼がその麝香の投げ縄にしばしば口づけするのを聞きました。
彼は言いました。
「それはいけません。美しい麝香を傷つけたくありませんから。」
そして従者から投げ縄を受け取り、息もつかせぬ早さで軽々と投げつけました。
投げ縄はうまく胸壁に引っかかり、彼は60キュビトの高さを軽々と登ってきました。
ルーダーベは駆け寄って、思わず彼の手をとり、そして愛に酔いしれた二人は手を握り合ったまま、屋根の上からルーダーベの黄金の間へと降りていきました。

二人は並んで座りました。
ルーダーベの姿は、宝石が縫い取られた錦の衣装、金と宝石の腕輪、首飾り、耳飾りに飾られ、花が咲き乱れる春の庭のようです。でも、きらめく宝石よりももっと美しいのは、ジャスミンに囲まれた赤いチューリップのような頬、麝香のような髪の巻き毛、愛らしさと気品のある彼女の表情でした。ザールは感嘆し、魅入られ、見つめ続けました。

ルーダーベは恥じらいに目を伏せながらも、ザールをちらちらと盗み見るように見ました。すらりとしたその体、剣帯をつけた厚い胸、その優雅な首、槌の一振りで岩を砕くその盛り上がった肩、そして心が震えるほど美しいその頬を、見るほどに彼女の心は燃え上がり、彼らは口づけして、愛に酔いしれました。

ザールは月の顔をした乙女に言いました。
「麝香の香りのする銀色の糸杉よ!マヌチフル大王は決して同意しないだろうし、父は声を荒げて反対するかもしれません。しかし神に誓って、私は決してあなたへの忠誠を断ち切ることはなありません。 」
ルーダーベは答えました。
「私も信仰と正義の神に誓って、あなた以外は私の主でないと誓います。」
二人の愛は夜が更けるにつれてますます深まり、知恵は愛の炎の前に逃げ去りました。
空の色が変わり夜明けを告げる太鼓の音が鳴り響いたとき、二人は涙を流し、昇る太陽に願いました。
「世界を照らす太陽よ!どうかもう少しだけ!そんなに早く昇らないで!」

ザールはルーダーベに別れを告げ、最後に、縦糸と横糸が絡み合うように強く彼女を抱きしめました。
そして、ザルは胸壁から投げ縄を落とし、まっすぐ下降して、自分の野営地に帰っていきました。

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f067v 67 VERSO  Zal receives Mihrab's homage at Kabul  ザールはカブールで王ミフラーブの表敬訪問を受ける  個人蔵 Hollis 本※のp129
f068v 68 VERSO  Mihrab describes Zal to Sindukht and Rudabeh  ミフラーブは王妃シンドゥクトと王女ルーダーベにザールを説明する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis  
f069v 69 VERSO  Rudabeh confides in her maids  ルーダーベ、メイドに打ち明ける  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis  
f070v 70 VERSO  Rudabeh's maids meet Zal's page at the river  ルーダーベの侍女たちは川でザールの手下と出会う  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran ioHollis  
f071v 71 VERSO  Rudabeh's maids return to the palace  ルーダーベの侍女が宮殿に戻る  MET, 1970.301.6 MET  
f072v 72 VERSO  Rudabeh makes a ladder of her tresses  ルーダーベは自分の髪で梯子を作る。 MET, 1970.301.7 MET  

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)

●67 VERSO  Zal receives Mihrab s homage at Kabul  ザールはカブールで王ミフラーブの謁見を受ける 
この陽光降り注ぐ接待シーンは、まるで園遊会のような雰囲気で、ミール・ムサヴヴィールが、いつものようにハンサムで愛想のよい従者たちを登場させたといえる。
ザールの近くに立っているミール・ムサヴヴィールの小人は、その整った体型で目を楽しませてくれる。ミフラーブ(Mihrab)は、贈り物の行列が通り過ぎるとき、謙虚さを簡単に身にまとっている。右上の丸々とした廷臣は、カルプス・スルタンの別の肖像と思われる。

〇Fujikaメモ:
ものすごく多い人物を描いていて、とても手が込んでいる絵ですよね。
解説にもありますが、ミフラーブは肩をすくめたようにしゃちほこばって、かしこまった様子で描いてあります。
ザールの前のお盆に積み上げられた赤いものはザクロでしょうか。

●68 VERSO  Mihrab describes Zal to Sindukht and Rudabeh  ミフラーブ王は王妃シンドゥクトと王女ルダベにザールを説明する 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
客人ザールの様子を、ミフラーブが妻と娘に説明しています。
この不鮮明な画像でも、娘ルーダーベが物思いにふけって、あらぬ方を見やっている様子が伺えます。
画面手前には、5人の侍女がザクロや花籠を運んで行き来しています。

●69 VERSO  Rudabeh confides in her maids  ルーダーベ、侍女達に打ち明ける 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
画面の右三分の一がハレムの外で、左側が女たちの世界、という構図です。
ここではルーダーベが侍女よりえらく大きく描かれています。重要人物ということと、あと実際背が高い、ということを表現しているのでしょうか。
三か所の窓からは綺麗な庭の花や木が見えています。

●70 VERSO  Rudabeh's maids meet Zal's page at the river  ルーダーベの侍女は川でザールの手下と出会う 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
これは、鮮明な画像のおかげかもしれませんが、とっても綺麗な絵!
このシリーズで(画像がみつかったものの中で)唯一、完全な屋外シーンです。
画面を横切る川。最初はもっと明るい色(青と銀?)だったのかもしれません。
川の向こうには、咲き乱れる花と、カラフルな服を着た侍女5人と、ザールの小姓の少年。
侍女のうち一人は肌が褐色です。
小姓はザールによって射られた水鳥と矢を持っています。
(ザールが水鳥を射たのは、勿論侍女たちに近づくためで、あと未婚女性に近づけるのは少年だけなので小姓が行かされたわけです)
川の中には小舟。
川の手前はザールの野営地側で、ひときわ目立つように弓を射たザールを描いてあって、ほかにも男性が数人います。
川の手前側にも川を背景にして植物がくっきり描かれています。
よく見ると川には波模様や魚も描いてあります。
この章の中でこの絵が一番好きです。

●71 VERSO  Rudabeh's maids return to the palace  ルーダーベの女中が宮殿に戻る 
ルーダーベのメイドは急いで彼女の宮殿に戻りますが、警備員から遅くまで外出していると叱られる。彼女たちは花を摘んでいたと答え、ルーダーベをザールの話で喜ばせる。
〇Fujikaメモ:
侍女たちが門番に叱られるシーンの文章は、私の拙い英語力、そして翻訳ツールで訳された変な日本語にもかかわらず、とてもリアルです。
若い女の子が5人集まって、とある秘密を共有してしまったら、それはもう、クスクス笑ったりはしゃいだり、そのうわずった様子が浮かぶようです。
絵は、割と端正で静的な構図です(ヘラート派?)。
長時間出かけていた割には持ち帰った花が、ちょっと足りないような気もします。

●72 VERSO  Rudabeh makes a ladder of her tresses  ルーダーベは自分の髪で梯子を作る。
ルーダーベの侍女の一人がザールを宮殿から王女のパビリオンに忍び込ませる。ルーダーベは壁を登るために髪の毛を下ろすが、ザールは投げ縄を投げて屋根の銃眼をキャッチし、それから彼の最愛の人に会うために登っていく。
〇Fujikaメモ:
これは、シャーナーメの中でも有名なシーンのひとつ。このシーンの挿絵はおそらく沢山あると思います。
シャータフマスプ本のこの挿絵は、ちょっとさみしい(物足りない)ような気もしますが、夜だし、こんなもんかな?
(METも、ホートン氏と交渉したときこの有名なシーンの絵を希望したのでしょうね)
翻訳の参考にしている本(Ferdowsi, Abolqasem. The Lion and the Throne: Stories from the Shahnameh of Ferdowsi, Volume 1 (p.108). Mage Publishers. Kindle 版. )では、別の絵を採用しています。で、どちらも、髪は(文章の表現とは異なり)地面にまでは達していないです。さすがに何メートルもの長さの髪は描きにくかったのかな。
ザールがのぼった城壁と、ルーダーベの館(部屋)の位置関係が不明です。
門番がいたので、カボルの宮殿を囲む城壁はあるのだと思うのですが、
・ザールが登ったのはAカボルの宮殿を囲む城壁? Bルーダーベの館の壁?
・Aだとすると、ルーダーベの館には、いったん城郭内の地面を歩いて彼女の館まで移動しなくてはいけない?
・Bだとすると、カボルの城壁のどこかをこっそり抜けて城内に入ったということになります。
・今回は、よくわからないながらも、今回は、A城壁を登った、というように解釈し、しかも彼女の館はその壁に接している(階下にある)という設定にしてみました。女達の住む館は、本当は城内の奥深い場所にありそうで、城壁に近いところにあるとは考えにくい気もしますが・・・
お分かりの方、コメント欄で教えて下さい。




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