採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

シャーナーメ:12. カイ・カヴスのマザンダラン侵攻

2023-05-22 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

慢心した若い王カイ・カヴスが、悪魔にそそのかされてイラン軍を率いてマザンダランに侵攻し、窮地に陥る、という話です。
こういう王様なので、イラン軍を再び編成する訳にもいかなかったのか、助けを求められたザールは、息子ロスタムひとりを救援に向かわせます。次からがその冒険、「ロスタムの7つの労働」になります。

「豊かなあの国の○○が欲しい」から進軍するなんて胸糞悪いの極みですが(ムッカーとしてしばらく頭を冷やすために作業を中断したりしてました)、そのようなことは歴史上今に至るまで無数に繰り返してきた訳ですし、そもそもこれは神話ですし、桃太郎が鬼ヶ島に攻め入ったのを無条件に受け入れるように、これもお話として読みましょう・・・。

この部分は、シャー・タフマスプ本には挿絵はないです。
ほかの写本で使えそうなものがないか探しているところです。絵になりそうないいシーンもあると思うのだけれど・・。

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12. カイ・カヴスのマザンダラン侵攻
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■登場人物
《イラン側》
カイ・カヴス:イランのシャー。父王はカイ・コバド。
トゥース:ノウザルの息子。イラン王族で武将。Tus。兄弟はゴスタハム。
キシュバド ー グダルズ  ー[ギーヴ、バフラム、ロハム]:イランの戦士。祖父、父、子、の関係。  Kashvad, Goudarz, Giv, Bahram, Roham ギーヴには ホジルHojir という兄弟もいる
ケラッド Kharrad:イランの戦士
ミラド mirad ーゴルギン Gorgin/Gurgin:父、子の関係。ミラドはイランの大臣で遠征中の城代、息子ゴルギンは武将。

《マザンダラン側》
マザンダランの君主:
アルジャン:マザンダランの将軍 Arzhang
サンジェ:マザンダランの廷臣 Sanjeh
白鬼:マザンダランのディヴの武将のひとりで、王に協力する。White Div / Div-e Sepid
プーラド:マザンダランのディヴ。グンディの息子。Pulad son of Ghundi

■概要
傲慢な若いシャー、カイ・カヴスが、悪魔にそそのかされたために、ザールの助言も聞かず、軍団を率いてディヴ一族の国マザンダランを侵略することになりました。美しく豊かな土地に住む人々を殺戮し、財産や宝物を略奪していきました。
しかしマザンダランのディヴたちは手強く、白鬼の魔法によってシャーと戦士達はみな目が見えなくなり、捕虜になってしまいます。
シャーはザールに助けをもとめました。ザールは息子ロスタムひとりを、シャーと軍勢を助けるために遣わしました。
ロスタムとラクシュの旅が始まります。

 

■ものがたり

□□カイ・カヴスが即位し、マザンダラン侵攻を誘惑される

カヴスが父の跡を継いだとき、世界はすべて彼の奴隷となりました。玉座、王室のトルク(首飾り)とイヤリング、碧玉をあしらった黄金の冠、高いうなじのアラブ馬の種馬、全ての宝が自分のものであり、地上の富で自分にかなう者はいないと思いました。

ある日、黄金で飾られた宮殿で、イランの諸侯や指揮官たちと葡萄酒を飲み交わし、大小さまざまな事柄について話し合いながらこう語りました。 
「私は世界の頂に立つシャーである。この私には誰も口出しできないだろう。」

そこに、吟遊詩人に扮し、竪琴を携えた悪魔が宮廷にやって来て、侍従長に王への謁見を求めました。
「私はマザンダランでその甘い声で有名です。もしお許しを頂ければ、王の御前で歌わせて下さい。」
侍従長は王に吟遊詩人の来訪を伝えました。
カヴスは彼を入れるように命じ、彼を楽器とともに座らせました。彼は竪琴の調律をすると、歌い始めました。

「マザンダラン、私の故郷。永久に栄えよ。
 その庭園には一年中薔薇が咲き、
 野生のヒヤシンス、無数のチューリップが山の斜面に咲き乱れる。
 その大気は甘く澄んでいて、
 暑くもなく寒くもなく、常春。
 その芳しい空気は魂を蘇らせ、
 「その山の流れには薔薇水が流れている!」と人は言う。
 夜鳴鶯(ナイチンゲール)は庭で歌い、
 谷間には鹿が歩き回る。
 小川の水は絶えることなく一年中さざめき、
  鷹狩りでも弓矢でも、猟の獲物に恵まれないことはない。
 この地は金貨や錦織、素晴らしい特産品で飾られ、
 娘たちは美しい偶像のように黄金の冠をかぶり、
 戦士達は黄金の帯を締めている。
 この地にいるものは、計り知れない歓びを味わう。」

この歌はカイ・カヴスを奮い立たせ、自分の軍隊でマザンダランを征服することを思いつきました。彼は戦士たちに言いました。
「我々は宴と美食に明け暮れ、勇気を忘れ、怠惰に慣れてしまったのではないだろうか。
わたしの幸運、恩寵、王権は古のジャムシードやザハク、父王カイ・コバドを超えているのだから、武勇においても彼らを追い越さなければならない。
王たる者は世界を征服する野心を持つべきだ。」

彼の話を聞いた貴族たちは、皆黙り込んで顔を見合わせて、眉をひそめるばかりでした。
トゥース、キシュバド、グダルズ、ギーヴ、バフラム、ケラッド、ゴルギン、は面を伏せてこう答えることしかできませんでした。

「我々はあなたの奴隷であり、仰せの通りにいたします。」

しかし、その後、彼らは一緒に座って、王の言葉について話し合いました。
「なんという災難だろう。王が杯のもとで言ったことが忘れられなければ、我々もイランも破滅だ。
王冠と封印の指輪で鳥や魔物(ディヴ)を従えたジャムシード王でさえ、マザンダランの魔物たちと戦うことなど考えもしなかった。また、魔法に長けたファリドゥンも、そのようなことは考えもしなかった。」

トゥースは皆に提案しました。
「勇敢な諸侯よ、百戦錬磨の指揮官諸君よ、解決策は一つだろう。ザボレスタンのザール殿に使者を送り、出来るだけ急いで来て貰うのだ。ザール殿ならば王に賢明な助言を与えることができるはずだ。
マザンダラン侵略の考えを植え付けたのはアーリマンであり、悪魔が待つ扉を開けてはいけないと、ザール殿から告げてもらおう。
万一彼が王の考えを変えさせることが出来なければ、我々の運命は終わりを告げることになる。」

そして彼らはザボレスタンに急使を派遣しました。使者がザールのもとに到着すると、彼はトゥース達からのメッセージを伝えました。

ザールは、使者の言葉を聞き、王家の木がこのように萎れつつあることを知って深く嘆きました。
「カヴスは苦労知らずの傲慢で頑固な若造だ。
そのような王者が私に従わないとしても、それは不思議ではない。
彼が耳を傾けないならば、私が悲しく思うだけでなく、神もイラン中の戦士たちも、私を恨むだろう。
私はカヴスに会いに行き、助言を提供しなくてはいけない。 
もし彼がそれを受け入れれば、事態は安泰だが、もし彼が自分の計画に固執するならば、我々はシャーに従うほかなく、我々の運命は破滅に続くだろう。」

ザールは長い夜を考え込んで過ごし、太陽が地平線から顔を出すと、族長たちとともに王のもとへ出発しました。

ザールがイランに近づき、その旗が見えてきたという知らせが、トゥース、グダルズ、ギーヴ、バフラム、ロハム、ゴルギンに届きました。指揮官たちは彼を迎えに出て、彼に祝福を下し、宮廷に案内しました。トゥースの歓迎と感謝の言葉に、ザールは答えました。
「古の教訓は私のようなうるさい老人によって繰り返し語り直されるものであり、後になって天の摂理がその行いに報いるものでしょう。
カヴスには確かに助言が必要であり、私たちはカヴスに助言を差し控えるべきではありません。
もし、私たちが提案する知恵を無視すれば、彼は後悔することになるでしょう。」

□□ザールがシャーに助言する

一行は宮廷に入り、ザールが先に、他の貴族たちは彼に続きました。
ザールはカヴスが玉座に座っているのを見ると、両腕を胸元で従順に曲げ、頭を下げて言いました。 
「世界の主よ、あなたの歳月が勝利と繁栄で満たされ、あなたの心が常に知識で満たされ、あなたの頭が知恵で満たされますように。」
王は彼を丁重に迎え、ザールを横に座らせました。王はザールに、旅の困難さ、国の英雄の知らせ、ロスタムについて尋ねました。

ザールは王に言いました。
「世界の君主よ、あなたは強者たちの王座と王冠を受け継いでいます。
あなたの幸運はすべての臣民を繁栄させ、彼らはあなたの後援を喜びます。あなたはシャー・ファリドゥンの後裔であり、この時代があなたからその愛を奪うことがありませんように。

今、私は陛下がマザンダランを狙うという重大な知らせを耳にしました。
あなたの偉大な先達は誰もそのような旅は考えていませんでした。
マヌチフルは死に際して多くの富と宮殿をここに残し、ザヴ、ノウザル、カイ・クバドもそうでした。皆、武勇にすぐれ強大な軍勢を持つ王だったと我々の記憶に残っています。
しかし、彼らはマザンダランを試みませんでした。そこは呪術師たちの故郷であり、誰も解くことのできない呪いの国です。あの土地は、剣で征服することはできないし、知恵と財宝で手に入れることもできないのです。
その地に行くこと、あるいは行こうと思うことだけでも不運であるとされます。
陛下がその地を侵略してはならないのは、どのシャーもそれを良しとしなかったからです。
もし攻撃すれば、そこに費やした金も戦士達も、二度と見ることはできないでしょう。
この戦士たちはあなたの臣下ですが、あなたと同じように、彼らはすべて神の奴隷なのです。彼らの高貴な血を流さないで下さい。欲望のために野心という邪悪な種を地に植えないで下さい。その木は憎しみという果実を養うのです。」

カヴスは答えました。 
「そなたの助言は有り難く聞こう。
しかし私の勇気と恩寵、富は、ジャムシードやファリドゥン、マザンダランを攻めることを考えなかったマヌチフルやカイ・コバドを凌駕している。私自身とその軍勢はより偉大であり、世界は私の鋭利な剣の下にあるのだ。
そなたもかつて剣を抜いて世界を勝ち取った。今度は私がその力を見せつける時だ。
私はマザンダランに行き、卑しく浅ましいディヴと魔術師達を捕らえ、そして彼らに多額の税金をかけるか、皆殺しにするだろう。 
そなたは、地上から彼らが一掃されたという知らせを聞くであろう。

そなたとロスタムはイランの摂政となり、眠らないようにせよ。
神は私の助け手であり、ディヴの王子は私の獲物である。
そなたは私と共に行かないのだから、私の玉座の上で気を揉まないでくれ。」

ザールはこれを聞き、深い失望と無力感に襲われつつも答えました。 
「陛下はシャーであり私たちはその奴隷です。善悪は別として、あなたの意志に従って動き、呼吸しなければなりません。
私は言うべきことを理性に従ってお話させて頂きました。
誰も、至高の権力者ですら、死を根絶することはできないし、運命の目を針で縫うことも、節制によって欲望から逃れることもできません。
この輝く世界が陛下に繁栄をもたらし、陛下が私のこの言葉を思い出すことがありませんように。
陛下ご自身の行いが御身に後悔を与えませんように。陛下の心と信仰と支配が輝いていますように。」 

ザールは王の決心に心を曇らせながら、早々にいとまを告げました。宮廷を去るとき、彼の目の前には太陽と月が暗く見えました。
指揮官達はザールを見送りに出ました。ギーヴはザールに言いました。
「神が我々を導いて下さいますように! もしカヴスがシャーでないならば私は彼を無価値と見なすのですが。
貪欲や死や欠乏があなたから遠ざかり、あなたの敵があなたに危害を加えることができなくなりますように。私たちはどこにいても、どこに行っても、あなたの賛美を聞くことができます。そして神の次に、私たちのために尽力して下さったあなたを信頼します。」
ザボレスタンへの帰路につくザールを、一人一人が抱きしめました。

カヴスはザールが去るとすぐに、トゥースとグダルツに軍団を準備させ、マザンダランに向かう軍を先導するように命じました。

 

□□カヴス、マザンダランに到着

夜が明けて戦士たちがマザンダランに向かうとき、カヴスはイランを大臣ミラドに託し、封印の指輪と権限、国庫の鍵を与えました。
彼は言いました。 
「敵が現れたら戦いの剣を抜け。ロスタムとザールはどんな災難からも逃れられる。」

翌日、太鼓の音が鳴り響き、トゥースとグダルツが軍団の先頭を切って進軍しました。カヴスも続き、軍勢の行進に華を添え、日が暮れるとイスプルーズ(アスプルーズ)山の前に陣を敷きました。

カヴスの玉座には金の布がかけられ、空気は葡萄酒の良い香りに満ちていました。指揮官たちは皆、カヴスの前に座り、葡萄酒と楽しい会話で一夜を明かしました。
夜が明けると、彼らは起き上がり、兜と帯をつけて王の前に控えました。
王はギーヴに命じました。
「戦士の中から二千人のメイス使いを選び、マザンダラン方面へ進め。出会う者を皆殺しにし、すべての集落を焼き払って昼を夜に変えろ。気づかれないうちに魔法使いを殺害するのだ。」

ギーヴは命じられたとおりに兵士たちと共にマザンダランの国境まで行進し、そこで住民に剣とメイスの雨を降らせました。
女も子供も杖をついた老人も無慈悲に斬り捨て、町を焼き払い略奪し、住民の生活に癒しではなく毒をもたらしました。

あたりを見て回ると、彼らがやってきたのは、まるで楽園のような美しい街だということが分かりました。
どの通りにも、街角にも、首飾りや耳飾りをつけた無数の奴隷がおり、さらに、月のように輝く兜や面をつけた奴隷もいます。あらゆる場所に宝物が蓄えられていて、ここには金、あそこには宝石がありました。周囲の田舎には無数の家畜の群れがいました。
彼らはこの地の栄光と華麗さをカヴスに伝えました。
「マザンダランは天国に匹敵します。この街のすべてがチンの錦と薔薇の花輪で神殿のように飾られ、ここの女性は天女(ハウリ)のようで、その薔薇色の頬は天国の番人からザクロの花を浴びせられたかのようです」と。

カヴスはこれを聞いて、
「マザンダランの素晴らしさを教えてくれたあの吟遊詩人に感謝しよう!」
と叫びました。
イラン軍による略奪は一週間続き、そして一旦止みました。

マザンダランの君主はこの知らせを受け、心は痛み、頭は不安でいっぱいになりました。
君主は廷臣の一人、サンジェというディヴに言いました。
「急いで白鬼のもとへ行き、イランの王カヴス率いる大軍がここに到着し、マザンダランを略奪していると伝えよ。もし彼が助けに来なければ、この地で生きている者がいなくなるのが目に見えていると言ってくれ。」

サンジェは王のメッセージを白鬼に伝えると、白鬼は答えました。
「絶望することはない。私が軍を率いて奴らをマザンダランから追い出す。」
そして巨大な白鬼は立ち上がったのですが、その頭は巡る空に届くほどでした。

白鬼はイラン軍の頭上に真っ黒な煙の天幕を広げました。世界はアフリカ人の顔のように暗くなり、大地はまるでピッチ(タール)の海のようで、すべての光は隠れてしまいました。
そして闇の中、黒い空からは石と矢が降り注ぎ、イラン軍は逃げ惑い、多くの者がカヴスの所業に腹を立ててイランに逃げ戻りました。
その日が終わる頃には、シャーとその戦士のほとんどが盲目になっていました。
カヴスはこの悲惨な状況の中で悔やみました。
「賢明な助言者は財宝に勝るのだ。情けないことに、私はザールの助言を受け入れなかったのだ。」

イラン軍は1週間もこのように苦しみ、今では誰一人として目が見えなくなってしまいました。
8日目、白鬼が声を轟かせました。

「カヴスよ、柳のように実を結ばない役立たずよ。
貴様がイランの王座に就いてから、知恵はお前を見捨て、良識は飛び去った。
そして自分の軍隊がマザンダランを侵略できると考え、実際に多くの者を虐殺したのだ。
ここで、自分の野望の罰を受けよ!」

そして、短剣で武装した1万2千のディヴを選び、イラン人捕虜をきつく縛り上げ、監視させました。捕虜たちには日々生きていくのに足るだけの食物は与えられましたが、心は屈辱と悲しみに苛まれました。
白鬼は、紅玉とトルコ石で飾られた王冠を含むイラン軍の宝物をすべて奪い、マザンダランの軍司令官アルジャンに引き渡して言いました。 
「悪魔のような侵略者たちについては片がついた、と王に伝えよ。
イランのシャーとその軍隊は、二度と明るい太陽と月を見ることはないだろう。私は彼を死で脅したのではなく、運の浮き沈みを教えたのだ。彼は悩みを乗り越えて賢くなり、今後は誰もそのような策略に耳を貸さなくなるだろう。」

アルジャンは、イランの捕虜や彼らの財宝や立派な装身具をつけた馬などの略奪品の行列とともにマザンダランの王のもとに旅立ちました。

 

□□カヴス王、ザールへ事態を伝える

打ちひしがれたカヴスは、ザヴォレスタンのザールのもとにひとりの戦士を使者として遣わし、このようなメッセージを送りました。
「私の王冠と王座は塵と化し、私の財産と春の薔薇のように華麗な軍隊はディヴのものとなってしまった。今、アーリマンの魔の手にかかり、私の目は暗く、運勢は混乱し、疲れ果てて傷つき、私の哀れな体は魂を捨ててしまった。
あなたが私にくれた忠告を思い出すと、私の中から冷たいため息がもれる。私は賢明に行動せず、あなたの助言に従わず、私の知恵のなさが災いをもたらしたのだ。
今、あなたが助けに来てくれなければ、これまで得たものはすべて失われてしまうでしょう。」

使者はザールに自分の知っていること、見聞きしたことをすべて話しました。
ザールの慧眼は、運命がカウスにもたらす災いを彼に示しました。
彼は悲しみのあまり皮膚をかきむしりましたが、誰にも相談しませんでした。

彼はロスタムひとりを呼び出して、言いました。
「世界の王がアーリマンに捕らわれてしまった。王は龍の息の中にいて、イランに災いが訪れようとしている。もはやぐずぐずしていられない。
息子よ、どうかお前がラクシュに乗って、復讐のために剣を握ってくれ。運命は、この日のためにお前を育てたのだ。」

拝命したロスタムは尋ねました。
「父上、マザンダランへの遠い道を、兵士を伴わずにどうやって行きましょうか?」
ザールは言いました。
「この王国から行くには2つの道がある。ひとつは安全だが遠い、カヴスが通った道である。
もう一つはより近道であり2週間の旅だが、ディヴや獅子や怪物の巣窟であり、あらゆる暗黒の世界だ。
汝は短い方を選び、その驚異を見よ。神がお前を助けるであろう。険しい道だが、ラクシュを道連れにすれば、その危険も乗り越えられるだろう。

暗い夜、夜が明けるまで、私は神に祈ろう、再びお前の肩と胸を見ることができるように。しかしもし神の意志で悪魔がお前の日を暗闇に変えるなら、それは避けようがないことなのだ。永遠にこの世に留まれる者はなく、世界に名声を誇るものですら最後には別の場所に召喚されるのである。」

ロスタムは父に答えました。
「私は父上の命に従う覚悟で帯を締めています。
無謀で見込みのない試みかもしれませんが、私はどんなことにでも遭遇する準備ができておりますし、神以外に味方を求めません。
私は王のために身も心も捧げ、魔術師たちからまだ生きているペルシャ人を救出します。
世界を創造した唯一神によって誓います。
ロスタムは、白鬼とサンジェを倒し、アルジャンの腕を岩のように結んで肩に軛を乗せ、ラクシュがプーラドの頭と脳を蹄の下に踏みつけるまで、ラクシュから降りることはありません。」

ザールはロスタムを抱きしめ、その頭に多くの祝福を呼びかけました。
ロスタムは虎の皮の兜をかぶり、胴衣をつけて背筋を伸ばし、そして決意を固め、ラクシュにまたがりました。

ルーダーベとザールは、涙に濡れた頬で息子を見送りました。

■シャー・タフマスプ本の細密画

なし。

■他の写本の細密画

探し中。

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