採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

シャーナーメ:12.ロスタムの七つの試練(中)

2023-06-22 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

ロスタムのマザンダランでの試練の続きです。
白鬼を倒して、めでたしめでたし、かと思いきや、次、さらにオトナの展開が待っています。
日本語がなんかうまくこなれていないのですが、次の(下)は更に難しいので、ここはこのくらいにして、ひとまず次にいきます。

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12.ロスタムの七つの試練(中)
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■登場人物
ロスタム:白髪のザールの息子。
ラクシュ:ロスタムの愛馬。黄色地に斑点模様。

マザンダラン(地名):人間とともにディヴ(鬼)や魔術師が住む国。架空の土地で、現在のマザンダラン地方(カスピ海南岸)とは無関係。
ウラド:マザンダランの辺境地の領主。Ūlādウーラード/Owlad/Olad
アルザン・ディヴ:マザンダラン首都域(?)の護衛隊長。
白鬼:マザンダラン最強のディヴのひとり。カイ・カヴスらを魔法で盲目にした。 ホワイトディヴ/Div-e Sepidディーヴ・エ・セピド ここでは端的に呼べる「白鬼」としました。 

 

■概要
ロスタムの旅は続きます。マザンダランの領主ウラドを捕虜にし、案内役にしてアルザン・ディヴを倒します。
そして洞窟の白鬼とも死闘を繰り広げ辛くも勝利し、視力を回復させる魔力があるというその肝臓を持ってカイ・カヴス一行のもとに向かいます。

■ものがたり

□5□ロスタムの第五の試練:ウラドを捕まえる

ロスタムは夜を徹して、疾走するように旅を続け、黒人の顔のように黒い、星も月もない濁った夜にたどり着きました。
彼はラクシュに手綱を任せて歩みを進めましたが、闇夜のために地面の高低も川も見えないほどでした。

やがて明るくなってあたりを見ると、地面は緑の絹のようで、耕された土地には小麦の若芽が輝き、あちこちに小川が流れている土地でした。

ロスタムの衣服は汗で濡れそぼち、休息と睡眠が切実に必要でした。
彼は虎皮の胴衣を剥ぎ取り、兜も脱いで日干しにしました。そしてラクシュの手綱を外し、若麦の中を気ままに歩かせました。虎皮と兜が乾くと再びそれを身につけ、獅子のように草むらに寝そべり、盾を枕に、剣の柄に手をかけて一眠りしました。

麦畑の番人は、作物の中にラクシュがいるのを見て、色めき立って駆け寄り、棒で勇者の足を強く叩き、ロスタムに言いました。
「このアーリマンめ、あんたは自分の馬を麦畑の中に放って、自分に何の害もなさない人の財産を台無しにしている!」

ロスタムはその言葉に激怒し、答える代わりに立ち上がって男の耳を掴んで捻り、頭から引きちぎってしまいました。男は地面から耳を拾い上げ、ロスタムのしたことに驚き狼狽して泣き叫びました。

この土地の所有者はオラドと呼ばれる男で、立派で勇敢な若者でした。怪我をした番人は頭と手を血まみれにし、耳を持って彼のもとへ行って泣きながら報告しました。 
「黒い鬼のような男がいたのです!虎皮の胴衣と鉄の手甲をつけた完全なアーリマンでした。私は彼の馬を麦畑から追い払おうとしたのですが、彼はそれを望まず、私を見ると、何も言わずに立ち上がり、私の耳をもぎ取ってまた眠ったのです。」

●ロスタムに耳を千切られた麦畑の番人(Bayerische Staatsbibliothek, BSB Cod.pers. 10, f.84v)

 オラドは貴族の一団と草原に狩りに出ていたところでしたが、番人の報告を聞いて麦畑に向かい、そこに大男の足跡をみつけました。
番人が言っていた場所にその男を探しに行ったところ、ロスタムはラクシュに乗り、光り輝く剣を抜いて、まるで雷雲のように威嚇しながら向かってきました。

両者は近づき、互いに問いかけました。
「何者だ?」
ウラドも言いました。 
「お前こそ何者だ?どの王に忠誠を誓っているのか? 諍いを起こす乱暴者はここを通す訳にはいかない。
なぜお前は私の番人の耳を引き裂き、馬を麦畑の間に放したのか?
お前の世界はここで黒くなり、兜は塵に帰すであろう。」

ロスタムは言いました。 
「私の名前は、雲、とでもいおうか。獅子の鉤爪をもち、槍や剣を振るって戦士の頭を切り落とす雲だ。私の名を知ればお前の血を凍らせるだろう。
『強弓と投げ縄の使い手、ロスタム』とは私のことだ。
お前のような息子を産んだ母親を何と呼ぶか知っているか?『屍衣の縫い子』か『泣き女』だ。
取り巻きを連れてきて戦わせるつもりかもしれないが、ドームにクルミを投げて壊そうとするのと同じくらい無意味なことだ。」

そして、彼は投げ縄を鞍にかけ剣を抜きました。そしてその剣の一撃で、2つの首を切り落としました。

f121v

●ロスタムが斬ったウラドの取り巻きの二人(f121v)

平野は散り散りになった騎士たちの塵で埋め尽くされ、彼らは山や洞窟に逃げ込みました。ロスタムはオラドに追いつくと、投げ縄を投げつけて彼の頭を縛り上げました。そして馬から引きずり下ろし、腕を縛り上げて、命令しました。 
「白鬼の居場所、それからカヴスの幽閉場所を教えろ。もしお前が本当のことを言い、お前の中に嘘がないと分かったら、このメイスでマザンダランの王を退位させたのち、お前が代わりにここを統治するのだ。しかしもし嘘をついたり裏切ったりすれば、後悔することになる。」

f121v

●ロスタムに捕らえられたウラド(f121v)

ウラドは言いました。 
「どうか落ち着いて下さい。望むものはすべて私から得られます。白鬼の住む場所、そしてカヴスが幽閉されている場所への道を教えます。そして更にマザンダランの王が座すところも。その地には六十数万の騎士たちが闊歩し、皆立派な鎧を支給され報酬を得ており、不満を持つものは一人もいません。彼らは千二百頭の戦象を持ち、都市には彼らのための場所がないので郊外で飼っています。
道のりは険しく、道中には無数のディヴが待ち構えているでしょう。鉄のようなあなたですが、たった一人で、彼らを相手にするのは厳しいかもしれません。」

この言葉はルスタムを笑わせました。
「私と共に来るならば、私と対峙した戦士たちがどうなるかを見ることができる。彼らが最初に私の強さと威力を垣間見るとき、そして私が振るう巨大なメイスを見るとき、彼らは無様に敗走し、手綱がもつれ、恐怖に怯えるだろう。
私が望むのは、お前がカヴスのもとへ案内してくれることだ。さあ、今すぐ出発だ。」

こう言って、彼はラクシュに飛び乗り、ウラドを横に従えて風のように速く駆け出しました。そしてディヴたちがカヴスを倒したイスプルズ山に着くまで昼も夜も休まず走り続けたのです。

山裾で休んでいると、真夜中、平原から叫び声が上がり、狼煙があがって至る所で松明を灯しているのが見えました。
ロスタムはウラドに尋ねました。 
「あの火は何だ?」
ウラドは答えて言いました。
「あそこがマザンダランへの入り口です。
夜が更けるにつれ、誰も眠れないほどに騒がしくなります。ディヴ・アルザンが守備隊の隊長です。」
ルスタムたちは再び眠りました。

夜が明けるとロスタムはウラドを連れ出し、木に縛り付けてておきました。

f124r

●縛り付けられたウラド(f124r)

そして鞍に祖父が愛用していたメイスを掛け、自信と策略に満ちて出発しました。

 

□6□ロスタムの第六の試練:アルザンとの闘い

彼は隊長のアルザンを探すために出発し、ディヴの軍勢に遭遇すると、轟くような声をあげました。この叫びを聞いたアルザンが天幕から飛び出してきました。 ロスタムはそれを見て馬を進め、炎のように彼に襲いかかり、彼の頭と耳と首をつかみ、もう片方の手で肩をつかんだのです。

f122v

f122v

●アルザン・ディヴにつかみかかるロスタムと加勢するディヴたち(f122v)

そしてロスタムは、猛獣のようにアルザンの首を引きちぎって彼の軍隊に投げつけました。
大将の首とロスタムの鉄のメイスを見て、ディヴたちは恐怖に震え、誰も彼も、土地や作物のことを忘れて逃げ去ってしまいました。

 

日没後、彼は全速力でイスプルズ山に戻りました。ウラドの縄を解いて、高い木の下に座ってシャー・カヴスがいる街に行く方法を尋ね、早速オラドに先導させて足早に向かいました。

彼らがその街に到着すると、ラクシュは雷のような嘶きをあげました。これを幽閉場所で聞いたカイ・カヴスは仲間のイラン戦士たちに言いました。
「ラクシュの嘶きが聞こえた! 私の心と精神は歓びで若返ったようだ。
カイ・クバドがトゥランの王と戦ったとき、あの馬はこのように嘶いたのだ。」
戦士たちは密かに語りあいました。
「王の心は、あまりの苦難に遭って、正気を失ってしまったのだ・・。」

やがてこの場所にロスタムがやってきて忍び込みました。
彼はシャーの前に跪き、彼の長い苦難を思って激しく泣きました。
グダルズ、トゥース、勇敢なギーヴ、獅子バフラム、シャウーシュ、グスタハムら、高貴な戦士たちも見えない目で、次々に集まってきました。

f123r

●盲目にされ捕らわれているイランの戦士たち(f123r)

カヴスはロスタムを抱きしめて、ザールのことを尋ね、ロスタム自身の旅の苦難を尋ねました。

f123r

●ロスタムを抱きしめるカヴス(f123r)

そしてシャーはロスタムに内密に言いました。
「ここのディヴたちにラクシュを見せるな。『アルザンは死に、ロスタムはカイ・カヴスと共にある』と奴らに知られれば、軍勢が集まり行く手を阻むだろう。密かに白鬼の住処を探し当て、そこで闘うのだ。
汝はディヴの軍勢の総本山、七ッ峯まで行かなければならぬ。そこにある恐るべき洞窟が白鬼の住処である。
どうか汝に彼を仕留める力があるように。彼はあの軍の長であり、要なのだから。

我が兵士たちの目は悲しみで曇っており、私も暗闇の中にいる。
そして我々の薬師は白鬼の体内から抽出した血液に望みをかけている。賢明な薬師が言ったのだ。『彼の血液を3滴、涙のように目の上に降らせれば、盲目を退けることが出来る』と。」

ロスタムは出発する際にイランの戦士達に語りかけました。
「楽観はできません、私が立ち向かうのはあの恐ろしい白鬼なのです。
もし奴が私を打ち負かすならば、この惨めな窮状がずっと続くでしょう。しかし、もし神と私の良き星が私を助けるなら、この王家の木が再び実を結び名誉が回復されるでしょう。」

 

□7□第七の試練:白鬼との闘い

彼は戦いと復讐のために身支度を整え、ウラドを連れ、ラクシュを風のように進ませました。
七ッ峯に到達すると、ロスタムは深淵な洞窟の様子を伺ってみました。猛々しいディヴの軍勢が警戒にあたっているのを見て、ロスタムはウラドにこう語りかけました。
「お前はこれまで私が尋ねたことにすべて正直に答えてくれた。しかし、これからがディヴたちとの本格的な戦いだ。この先どうすればいいのか秘密を知っていれば教えてくれないか。」
ウラドは言いました。
「太陽が暖かくなるとディヴたちは眠ります。今は夜ですから、殆どのディヴが座りもせずに警護しています。日が高くなり、神があなたの味方であるならば、あなたは彼らに勝利することができましょう。」

ロスタムは先を急ぐことなく、太陽が高くなるのを待ちました。
そして、オラドをまた投げ縄で縛っておき、ラクシュに跨がり剣を鞘から抜いて出発しました。
彼は雷のように自分の名を咆哮し、眠りこけるディヴの集団の中に降り立ち、彼らの首を切り落としました。誰一人として彼に挑もうとする者はいませんでした。

ロスタムは張り詰めた様子で白鬼を探しに前へ進みました。そこには地獄のような洞穴がありましたが、暗闇の中で白鬼の姿は見えません。
ロスタムは剣を握ったまましばらくそこに立っていました。目を凝らして穴の暗闇を覗き込むと、そこに山のようなものがあり、穴の中を隠しているのがわかりました。それは夜の色をしており、髪は雪のように白く、世界はその大きさと広さで満たされているように見えました。

さて、ルスタムは眠っている白鬼を殺すのではなく、獣のような咆哮で彼を呼び起こしました。
鉄の兜と鎧を身にまとった白鬼は、石槌を手に取り、覆い被さる煙のようにルスタムに襲いかかってきました。
ロスタムはうろたえました。
「もはやこれまでか!」

しかしロスタムは気持ちを奮い起こして突進し、鋭い剣で白鬼の体に斬りかかり、その一撃は片脚の太ももを切断したのです。

白鬼は傷ついた体で彼に襲いかかり、残った片脚で洞窟を蹴り壊したので、石塊が降り注ぎました。2人は象と獅子のように組み合い、互いに肉を引き裂き、地面は血でぬかるみと化しました。

f124r

●白鬼とロスタムの死闘(f124r)

組み合いながら、ロスタムはこう思いました。
「今日、この時を生き延びれば、永遠に生き続けられよう。」
そして白鬼も思っていました。
「もはや長らえても仕方あるまい。たとえこの龍の魔の手から逃れても、片脚を失い傷ついた姿ではマザンダランでの私の権威は失われてしまうだろう。」
それは彼の惨めな慰めでした。
しかし、それでも白鬼は血と汗を流しながら格闘し、ロスタムは神の力を借りて応戦しました。しかし傷だらけのロスタムはついに、手を伸ばして白鬼の胴体を掴み、首の高さまで持ち上げて、息が止まるほどに彼を地面に叩きつけました。
そして短剣で彼の心臓を刺してとどめを刺し、腹を開いて肝臓を抜き取りました。洞窟内はすべて白鬼の巨体で満たされ、地面は血の海になりました。


ロスタムは洞窟から出てきて、ウラドを縄から解放し、投げ縄をまた巻いて鞍に括り付けました。
彼はウラドに白鬼の肝臓を持たせ、2人はカヴスのもとに向かって出発しました。
ウラドは言いました。
「無敵の勇者よ!私の体にはまだあなたの縄の跡が残っています。束縛の中で考えていたのですが、かつてあなたは私に報酬の希望を与えてくれました。気高い戦士に相応しく、約束を守ってもらえるのでしょうか。」
ロスタムは答えました。
「そうだ、マザンダランはお前のものだ。
しかし、この先もまだ試練の日々が続き、その中で幸運も不幸も訪れるだろう。マザンダランの王を玉座から引きずり下ろして葬り去り、その軍勢にも対処せねばならない。それが無事に済んでからだ。
しかしもしそうでなくとも、私はお前に誠意を尽くそう。」

 

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

ずっと知りたいと思っていた画家の情報がわかりました。過去の表にも追記する予定です。

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f121v 121 VERSO  Rustam's fifth course : the capture of Owlad  ルスタムの第五の試練:オウラドの捕獲  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis アブド・アル・ヴァハブ、ミール・ムサッヴィールの監督
f122v 122 VERSO  Rustam's sixth course: he slays Arzhang  ルスタムの第六の試練:アルザンを倒す  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis アブド・アル・ヴァハブ
f123r 123 RECTO  Kay Kavus and Rustam embrace  カイ・カヴスとルスタムの抱擁  MET, 1970.301.18 MET カディミ
f124r 124 RECTO  Rustam's seventh course: he kills the White Div  ルスタムの第7の試練:彼はホワイトディヴを殺す  Cleveland Museum of Art, Cleveland (Cuyahoga county, Ohio, United States) (inhabited place) 1988.96 CMA / Hollis アブド・アル・ヴァハブ、ミール・ムサッヴィールの監督

 

 

■その他の写本の細密画

サムネイル 連番 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
BL-Add-MS-18188

他19

93r Rustam capturing Ūlād. 第五の試練:ウラドの捕獲 ②British Library, Add MS 18188
カタログ

1486, Turkman/ Timurid 様式

BSB-Cod-pers-10 他20 84v -- 第五の試練:麦畑の番人がウラドのところに戻る ⑧Bayerische Staatsbibliothek, BSB Cod.pers. 10 1560-1750
BL-Add-MS-18188

他21

93v Rustam fighting Arzhang. 第六の試練:アルザンを斃す ②British Library, Add MS 18188
カタログ

1486, Turkman/ Timurid 様式

NYPL-Spencer-Coll-Pers-ms-3 他22 Rustam's Sixth Feat: he kills the dîv Arzhang. 第六の試練:アルザンを斃す ⑬The New York Public Library, Spencer Coll. Pers. ms. 3 1616-07、シラーズ?
SbBerlin-Ms-or-fol3380 他23 077r Rustam's sixth labour: he kills Arzhang 第六の試練:アルザンを斃す ⑮Staatsbibliothek zu Berlin, Ms. or. fol. 3380 15XX、1670 年代
BL-Add-MS-18188

他24

94v Rustam killing the White Dīv. 第七の試練:白鬼を斃す ②British Library, Add MS 18188
カタログ

1486, Turkman/ Timurid 様式

SbBerlin-Ms-or-fol-359

他25

124v Rustam's seventh labour: he kills the White Div 第七の試練:白鬼を斃す ③Staatsbibliothek zu Berlin, Ms. or. fol. 359

15XX

BL-IO-Islamic-3540-f71v

他26

71v Rustam and the White Demon.  第七の試練:白鬼を斃す ④British Library, IO Islamic 3540
カタログ

15XX, シラーズ

LM-Ryl-Pers-910 他27 76v Rustam's seventh labour: he kills the White Div, Painter B. 第七の試練:白鬼を斃す ⑤Library of Manchester, Ryl Pers 910 1498?/1518?/
1570?
LM-Ryl-Pers-932-f87v 他28 87v Rustam's seventh labour: he kills the White Div. 第七の試練:白鬼を斃す ⑦Library of Manchester, Ryl Pers 932 1542、シラーズ
BSB-Cod-pers-10 他29 87r -- 第七の試練:白鬼を斃す ⑧Bayerische Staatsbibliothek, BSB Cod.pers. 10 1560-1750
PECK-shahnameh 他30 62v (p124) Rustam Kills White Div 第七の試練:白鬼を斃す ⑨Princeton Univ. Library, Peck shahnameh 1560-1750
SbBerlin-Diez-A-fol-1-102v 他31 102v Rustam's seventh labour: he kills the White Div 第七の試練:白鬼を斃す ⑩Staatsbibliothek zu Berlin, Diez A fol. 1  1593
SbBerlin-Ms-or-fol-4251 他32 208r Rustam's seventh labour: he kills the White Div 第七の試練:白鬼を斃す ⑫Staatsbibliothek zu Berlin, Ms. or. fol. 4251 1605,イスファハン
NYPL-Spencer-Coll-Pers-ms-3 他33 Rustam's Third Feat: he kills a dragon. 第七の試練:白鬼を斃す ⑬The New York Public Library, Spencer Coll. Pers. ms. 3 1616-07、シラーズ?
FWM-Ms-311 他34 59r Rustam's seventh labour: he kills the White Div 第七の試練:白鬼を斃す ⑭Fitzwilliam Museum, Ms 311 1620 - 1621
SbBerlin-Ms-or-fol3380 他35 078r Rustam's seventh labour: he kills the White Div 第七の試練:白鬼を斃す ⑮Staatsbibliothek zu Berlin, Ms. or. fol. 3380 15XX、1670 年代

 

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)、メモ

●121 VERSO  Rustam's fifth course : the capture of Owlad  ルスタムの第五の試練:ウラドの捕獲
〇Fujikaメモ: 
この節、児童文学の英雄の冒険ではありえない、大人の展開で、思わずぎょっとしてしまいました。
他人の麦畑に勝手にラクシュを放し、咎めてきた人の耳を千切ってしまうなんて・・・。
ここで捕虜にした辺境の農場主ウラドが、マザンダラン中央のことをなんでもよく知っているというのはずいぶんラッキーです。
シャータフマスプ本ではウラドは歩いた状態で縄をかけられていますが、このあと「ウラドを横に従えて風のように速く駆け出した」とあり、まさか駆け足のはずもなく、ウラドも馬で同行しているはずです(重たい軍装なしとはいえ名馬ラクシュについていくなんて割といい馬ですよね)。
ウラドの馬は省略されることが多いですが、(他19)では、騎馬のウラドが捕まっているし、(他24)(他25)では、洞穴の外にラクシュともう一頭、馬が描かれています。

●122 VERSO  Rustam's sixth course: he slays Arzhang  ルスタムの第六の試練:アルザンを倒す 
〇Fujikaメモ: 
文章では割とあっさり闘って勝つだけですが、この絵(f122v)はとても綺麗です。
金色の地面にサックスブルーの青い空。もふっとした木やうねうねとうねる灌木、綺麗な花も咲いています。地面の金と、ロスタムやラクシュの赤茶色を背景に、アルザン・ディヴの鮮やかな青(空とは違う青色)が綺麗です。
奥にはいろいろの容姿のディヴがいます。
(他21)は、まさにアルザンの首をもぎとりかけているところ。流血シーンです。

●123 RECTO  Kay Kavus and Rustam embrace カイ・カヴスとルスタムの抱擁
〇Fujikaメモ: 
盲目にされたカイ・カヴスと戦士たちが囚われているところにロスタムが訪ねて行くシーンです。
絵では優雅なテラスにいますが、このとき彼らは、少なくとも軟禁状態のはずですよね。なのでロスタムは護衛をどうにかするか、もしくはこっそり忍び込む必要がありますが、原文にはそのあたりの詳しい記載がありません。護衛を殺したりすると追手がかかったりするはずでややこしいので、忍び込んだということにしました。

●124 RECTO  Rustam's seventh course: he kills the White Div  ロスタムの第7の試練:白鬼を斃す 
〇Fujikaメモ: 
暗い洞窟の中で白鬼とロスタムが闘うシーンで、七つの冒険の章のクライマックスです。
他の写本にも挿絵が多く、今回調べた写本のうちほぼ全てにこのシーンの挿絵があります。(14冊中12。(他24)~(他35)。)
白鬼は片脚(版によっては片腕と片脚)を切り落とされたという文章があるため、そのような姿で描写されています。
洞穴の外には、ウラドが木にしばりつけられており、ラクシュもまた近くにつながれています。
ウラドは、だいたいどの絵でも何重にもぐるぐる巻きにされていますが、これはロスタムの投げ縄がとても長い(つまり力が強い)からです。
12枚の挿絵は、洞穴、白鬼、ロスタムと、似ているようでそれぞれ個性的できれいです。よかったらサムネイルをクリックして拡大してみてください。
(他25)は、洞窟の中に何故か若い女性が!?。文中にはそういう描写はないのですが・・・。洞窟の外にはいろいろなディヴたちがいます。
だいたいは、ロスタムが短剣でとどめを刺しているシーンですが、(他30)と(他34)は、白鬼の脚をずばっと斬りつけているシーンです。
(他24)(他25)は画面に大小の黒い穴が描かれていますが、小さい方が洞穴の入り口の描写、大きい方は洞穴内の格闘を描くための描画上の便宜的な開口部、ではないかと思います。

 

 

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