ベトナムの子どもたちに奨学金を――FUJI教育基金

ベトナム南部・北部の中学・高校生、大学生に奨学金を贈って勉学の支援をしています。

ベトナム北西部、ラオスとの国境沿いのソンラー市で過ごした今年の3.11 by TAKAHASHI Mariko

2012-03-16 | 東日本大震災への支援

昨年のFUJI奨学金授与の旅に参加し、ハノイ市に滞在している高階さんから、東日本大震災から1年たった今年の3月11日、ラオスとの国境沿いの町で感じたことが届きました。高階さんは、帰省する友だちのフェンさんに同行して、3月10日から13日まで、その実家のあるソンラー省ソンラー市で過ごしてきたそうです。

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大震災から、 はや1年が経過。

東北地方の方々にとっては、長い1年だったかもしれない。
震災以降、気仙沼市・唐桑町で街づくりに携わり続ける知り合いの加藤拓馬君のブログを読むと、地元の方々が力強くも、いまも大変な想いや苦労をして日々の生活を送っていることが伝わってくる。

一方で、ベトナムの人からよく聞こえてくるのは、
  「日本人の忍耐力・我慢強さ」
  「経済復興の早さ」
に対する褒め言葉の数々。
さらに、
  「日本にとってはほんの微々たる額かもしれないけれど、寄付させてもらった。何もしないよりもはいいかと思って。」
という声も聞いた。
一日本人として、感謝の気持ちが込み上げた。

11日、私はフェン一家とニュースを見ていた。
ここでもやはり、日本の経済回復の早さを褒められた。
原発に対する指摘や、政府の対応に対する批判は、これまでベトナム人から聞いたことは一度もない。
メディアの影響か、あるいは遠慮して言わないだけなのかは、定かではない。
両方かもしれない。
ただ、普段の生活を通じて感じるのは、ベトナム人の日本・日本人に対する印象が全般的にとてもいいこと。
震災の一件で、すでに美化されたイメージが、さらに美化されているような気さえした。
フェン一家によると、ベトナム人の日本人に対するイメージは「おしん」だと言う。

ところで、この翌日、フェン一家の犬がこの世を去った。
食事もやっとという感じの、年老いた犬だった。
死んでしまったことに対する家族の反応は、思っていたよりも普通だった。

  「死んでしまった。」
淡々とその事実を受け止めている家族の姿を見て、ある1年前の記憶が蘇った。
震災直後、奇跡的にレスキューされた年配のご夫婦と犬が一匹いた。
テレビは、そのご夫婦・犬と、娘さんらしき若い女性の再会を報道した。
この女性は、向かってくるご両親ではなく、飼い犬に抱きついて号泣した。
ペットを飼ったことがなく、動物に親近感のない私は、この光景にショックを受けた。
一緒にテレビを見ていた両親も驚いていた。
でもその後、母が知り合いの年配の方と話しをしたところ、その方は報道された若い女性の気持ちが、何となくわかる気がする。
そう言ったそうだ。
母のお友達も犬を飼っている。

動物・ペットに対する価値観を、一概にベトナム人と日本人の2つに分けて考えることはできないけれど、一般的にベトナムで見かける動物への接し方は、それほど優しいものではないと思う。
動物はあくまで動物で、人間の二の次。
ベトナムでは、吠える犬に小枝を投げつける人、蹴飛ばすフリをする人、石を投げる人がいる。
ハノイ市内ではガリガリに痩せ、汚い色に染まった犬や猫もよく見かける。
彼らの目はうつろに見える。
(もちろん可愛がられ愛されているペットもいる)

ただ、テレビで見た日本の犬と、フェン一家の犬の扱いが対照的で、なんとなく印象的だった。

もう一つ感じたこと。
フェンの家は4階建てで、とても広かった。
とにかく広かった。
でも、その割に荷物は少なく、部屋の中はスッキリしていた。

震災後に用事があり、石巻と気仙沼へ3度行った。
無残な街の光景を目の前に、とにかく「物が多い」と感じた。
数多くの家が流されてしまったので当然かもしれないけれど、もしベトナムが同じ状況に遭遇したら、ここまで荷物は溢れかえっていなかったのかな。

スッキリしたフェン宅を見て、物は人を幸せにできないことを再確認した。
一方で「買い物が楽しみ・ストレス解消」という、日本や中国の友だちが私に言った言葉が、個人的には虚しすぎて忘れられない。

震災で家族や親戚、大切な人を失ってしまった人は、それまでのその人との人間関係を振り返り、後悔していないだろうか。

いろいろな記憶を思い起こした2012年3月11日だった。

今ベトナムにいる自分は、ベトナムでできること、ベトナムの人とできることを、できる範囲でやりたい。



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