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サブカルとサッカーの話題っぽい

【ラノベ】終物語 上

2013-11-04 | ライトノベル
終物語 (上) (講談社BOX) 終物語 (上) (講談社BOX)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2013-10-22

 読了。

 面白かった! 完!\(^o^)/

 気軽に読めることにかまけて、最近は頭をまったく使わずにパラパラとページをめくれば良い作品にばかり触れていたので、おかしな言い方ですけど「久々にがっつりとラノベを読んだ気分」でした。
 長かった『物語』シリーズもいよいよ終わりが見えてきましたが、前作『暦物語』が最後のエピソードだけ読んでおけば問題ない作りっつーか、ぶっちゃけ他は全然面白くなかったのに比べると、今回の『終物語(上)』はとても楽しめました。暦と扇が教室に閉じ込められるまではテンポがよくないなーと思っていたんですけど、暦の過去に触れるエピソードだということが判明してからは、物語にグイグイと引き込まれていきました。
 まあ、過去エピソードとは言っても、おそらく最初からこういう構想があったわけではないでしょうけどね。『物語』シリーズ自体がツギハギで続いていることを考えても、『惑星のさみだれ』のように最初からエンディングまでのプロットがあったわけではないと思います。ただ、それでもなんとなくそれっぽく辻褄合わせしてしまえるのは、やはり西尾維新という作家さんの特異な能力なんだろうなと。

 さておき、内容に触れると、『終物語』は全体をとおしてミステリー色の強い一冊でした。
 このへん、「ミステリー」ではなく「ミステリー色」というあたりが、西尾さんのデビュー作でもある『戯言』シリーズっぽくて、なんとなく懐かしい気分になったりも。まー、相変わらず登場人物の名前がややこしいので、マトモに犯人当てをしようという気はまったく起こりませんでしたけどね!
 しかし言われてみると、〝子供〟にとっては両親や教師というのは絶対的な存在で、正しさの象徴のようなものであるというのは、当時の自分の心情と照らし合わせてみても納得のいく話なので、「おうぎフォーミュラ」の落としどころには、なるほどと思わされました。もっとも、あのケースで明確に悪いのは担任教師だったので、わかりやすい報いを受けたほうが読後感はよかったと思いますけど、そのへんは本筋から外れるから敢えて触れずに済ませたのかなあ。
 続く「そだちリドル」、「そだちロスト」では、『物語』シリーズでは珍しくガチでシリアスな問題を引っ張ってきたなーというのが第一印象でした。
 これまでも戦場ヶ原の母親の問題、羽川の家庭の問題などはありましたが、どこか作り話めいていてキャラクター造型の一環にしかなっていなかったことに比べると、老倉育の家庭環境はシャレで済まされるようなものではなかったので、作品カラーにそぐわないといえばそぐわないような……気がしないでも……ない……かな?(曖昧)
 ファイナルシーズンと銘打っている流れからの、扇というキャラの特異性を際立たせるための演出だとしたら、見事にハマっていると思います。ハイ。
 誤解を恐れずに言うと、後ろの二編に関しては、面白くはあったものの、あまりしっくりくる内容ではありませんでした。身も蓋もない話、読んでいて暦に非があるようには思えなかったんですよね、僕には。
 育に関する一連の問題は、どんなに暦自身が自罰的だったり、扇が追い込みをかけてみたりしたところで、「でも子供にどうこうできる話じゃねえしなあ」という思いが常に頭の隅をかすめていたせいで、育の言い分はどこまでいっても言いがかりとしか思えなかったのが何とも。あれです、理解はできるけど納得はできねーとか、そういう感じ。
 これは元々、僕が自罰的なキャラクター(主人公)が好きではないというのも絡んでいて、某『WA2』の北原春稀などが良い例ですが、登場人物の心理とどんどん乖離していくと冷めた目で物語を眺めてしまうんですよね。
 だからこそ、羽川と扇の対決には心躍るカタルシスがあったと言えるのかもしれません。扇の特殊能力なのか、やたらと暦が「扇ちゃんの言うことは正しい」と思っていることにイライラし始めていたタイミングだったので、おっぱいをエサに一本釣りしたり、あっさり言い負かしてしまう羽川に拍手喝采でしたよ。
 時系列的に「羽川が休学したのは扇の目くらましのため」というのがすでに明かされていることもあり、『終物語』というのは羽川が頼りになる存在というのをこれでもかと思い知らせるエピソードでもあったと思います。『傷物語』のときもそうだったなーと、これまた少し懐かしく感じたりもしました。

 とまあ、そんな感じで、羽川のおかげですげー面白い一冊でしたということで一つ。
 どうでもいい話、かつてエロゲの主人公で「数学だけ得意」みたいなキャラクター付けをよく見かけたんですが、エロゲライターさんとかラノベ作家さんは数学に対して特別な思い入れがあったりするんでしょうかねえ。
 そういえば、知人に「○○の定理」みたいなのが大好きだってふれまわってるファッション数学オタがいたっけなあー(明らかに悪意のある見方)