読了。
うおお……オモシレェ━━━ヽ(∀゜ )人(゜∀゜)人( ゜∀)ノ━━━ !!!!
実はだいぶ前から、あの『まおゆう』と同じ作者さんの手による〝web小説にありがちな設定〟で書かれたweb小説があるというのは耳にしていたんですが、良い評判よりも悪い評判のほうが目に入ってきてしまい敬遠していたんですよね(主にシロエの性格に関してだった)。
ところがまあ、この秋からアニメが放映されるということで、「だったらその前に少し読んでみようかな……」とコミカライズ版に手を出したのが運の尽き、というか財布の紐の尽き。めっちゃくちゃ面白いじゃないですかコレ。
以下雑感。
・最初に「web小説にありがちな設定」と書いたが、具体的には「ネトゲの世界に転移」という設定のことを指す。嘘だと思ったら「小説家になろう」というサイトをチラ見してみてもらいたい。一発で理解できるハズ。
・ただまあ、この場合の「ありがち」というのはなにも悪い意味だけではなくて、それだけ人気がある(=読者に求められている)設定の小説ということでもあるわけで、多分に漏れず僕も大好きな設定だったりする。それだけに選択の幅が広くなるので、意外と自分好みの物語を見つけにくかったりもするのだが、今作『ログ・ホライズン』は完全にツボだった。
・第一に、作品の根幹をなすルールの設定が好み。死んでも復活できるとか(今の段階ではリスクは明かされないけど)、空腹感はあるけど食事に味がないとか、ファストトラベルの位置づけとか、およそ「ネトゲモノの小説」を書くうえで必要になる矛盾潰しを完璧に近い形でこなしているのはスゲーと思う。ゲームとリアルのいいところどりをしているような設定でキッチリと土台作りができているので、キャラクターの掘り下げや物語の展開に集中して読めるというのはとても大きな利点。つまらないネトゲモノは、まずここで躓いていることが多いんだよなあ……。デスゲーム()とかね!
・第二に、作品世界に多様性を持たせられていることに感心。主人公であるシロエすら『ログ・ホライズン』という作品に登場するキャラクターのうちの一人として描かれているというか、「シロエの持つ価値観」というものが作品世界において特別視されることなく、「こういう考え方の人もいる」というラインに留めてあるのは素晴らしい。これが『SAO』だと、とにかくキリトマンセーになるから読んでいて辛いんだよね。そのうえ、いわゆる善と悪が、主人公と主人公に敵対する者たちという図式にそのまま置き換えられてしまうのはマジでつまらない。ネトゲをやっている人にも色んな考え方の持ち主がいて然るべきだし、その点『ログ・ホライズン』は「○○する人は善」とか「○○する人は悪」みたいな単純な構造を持ち込んでいないのがすごくよくできていると思う。
・第三に、純粋にストーリーが楽しい。1巻はいわばチュートリアルみたいなもので、知人のギルメンを救出にいくというクエストをこなすのがエピソードの中核になっているが、手探りで経験を積んでいく主人公と読者をオーバーラップさせられる構造になっているのも何気に上手いと思う。主人公シロエはヘビーユーザーなので、エルダー・テイルなんていう架空のゲームを知らない読者との知識の差というのは埋めようがないはずなのに、キチンと足並みを揃えられる作りになっているのは橙乃ままれさんのテクニックだよなと。あと、本来であれば不可能に近い動作を、仲間との連携とプレイヤースキルで行ってしまうというのは、俺TUEE系の面白さもあった。単なるチートじみた強さ、ではないのがこれまた実にウマイ。
・つーわけで、現時点でほぼケチのつけようがない出来なのだが、唯一、文章の装丁のちぐはぐさが目についたのだけは残念。場面が切り替わるわけでも、会話が終わるわけでもないのに、途中で変なところで一行空いたりするのは何なんだろう? web小説のときの文体をそのまま文庫にしたんだろうか。このへんはブラッシュアップすることでもっと読みやすくなったと思うので、編集さんに頑張って頂きたい(エンターブレインのweb小説文庫は他と比べたら破格の扱いだと思うけど)。
これは大人買いだなー。
ちゅうか、web小説を文庫化したときってソフトカバー(1000円強の値段のちょっと大きなやつ)になるのが大半ですけど、コスト面とか考えると仕方がないんですかねー?
文庫サイズで値段も600円とかにしたほうが売れると思うんですが、それはなかなか難しいのかなあ。僕が中学生、高校生のときだったら一冊1000円以上する本はちょっと買えなかったですわ(´ω`)