ピクニック・アット・ハンギングロック / ピーター・ウィアー
115 min Australia
Picnic at Hanging Rock (1975)
Directed by Peter Weir, Sydney 1944-. Novel by Joan Lindsay. Screenplay by Cliff Green. Cinematography by Russell Boyd. Film Editing by Max Lemon. Art Direction by David Copping. Costume Design by Judith Dorsman (as Judy Dorsman) . Performed by Rachel Roberts (Mrs. Appleyarda), Vivean Gray (Miss McCraw ), Anne-Louise Lambert (Miranda (as Anne Lambert)), Margaret Nelson (Sara).
ずっとまえに見たきりだった、ピーター・ウィアーの初期の代表作。クリフ・グリーンの脚本に品があり、演出はまっすぐで若々しい。オーストラリアで1900年の聖ヴァレンタインの祝日にピクニックに出かけた女子生徒たちのうち、三人の少女と一人の教師が行方不明になった実話をもとにしている。けんめいな捜索がつづき、少女の一人は一週間後に生きて発見された。山中で靴を脱いでいたのに足は無傷だった。ほかは誰も戻らないまま、なんの痕跡も見つからなかった。消えてしまったのだ。ピクニックの当日、寄宿舎に居残りをさせられ、のちに温室に飛び降りて自死した少女セーラの逸話がハーメルンの物語を連想させる。ひとりだけ扉の内側に入れなかった子供のよう。
IMDBによれば、女子生徒たちの声にはあとからプロの俳優が全面的に吹き替えなおしたものがあるという。配役の選択肢が限定されていて難しかったであろうことは仕上がりのところどころからも想像がつくけれど、豊穣な示唆をはらむ魅力的な作品です。英国風の寄宿舎の抑圧的な価値観と、ダイナミックなオーストラリアの灼熱の夏の組み合わせが不思議なずれと非現実感を作り出していく。寄宿舎という閉鎖的な小共同体の秩序は、巨大な自然界のふところに飲み込まれるように消滅してしまう。〈外部〉にさらされた人間たちの無力と小ささを深い神話性のうちにえがきだしたことが、なによりも優れている。
メモリータグ■南半球の深い森陰から、コアラがひっそりとこちらをみつめている。