うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0420. いつか晴れた日に (1995)

2013年11月16日 | ベルリン映画祭金熊賞

いつか晴れた日に / アン・リー
136 min  USA | UK

Sense and Sensibility (1995)
Directed by Ang Lee. Screenplay by Emma Thompson. Music by Patrick Doyle. Cinematography by Michael Coulter. Film Editing by Tim Squyres. Costume Design by Jenny Beavan and John Bright. Performed by  Emma Thompson (Elinor Dashwood), Kate Winslet (Marianne Dashwood), Emilie Francois (Margaret Dashwood), Gemma Jones (Mrs. Dashwood), Tom Wilkinson (Mr. Dashwood), James Fleet (John Dashwood), Harriet Walter (Fanny Ferrars Dashwood), Hugh Grant (Edward Ferrars), Alan Rickman (Col. Christopher Brandon).



原作はオースティンなので、おさだまりの技巧と恋愛路線はしかたがない。それでも観たのはアン・リーの有名作だったから。演出も費用も堂々たる「大作」で、イングランドの古典的田園風景をどこまでもくり広げつつ、俳優のこまかな表情で内面が語られていく。あらためて、あの監督のうわばみのような能力にあきれました。なんでも丸ごと呑みこんで、みるみる消化してしまう。1996年ベルリン映画祭金熊賞。

アン・リー――台湾出身の李安――はベルリン映画祭、ヴェネチア映画祭、米国アカデミー賞をなんども制している。しかもその多くが、しばしばまったく傾向の異なる作品であることも知られている。不思議な作家だけれど、人の表情がかもし出す気配とその記号について、ほとんど構造的普遍性といいたい洞察力をどの作品でも発揮しているように思う。感情の駆け引きを台詞なしで語れるのだ。『色|戒』(Lust, Caution)の冒頭場面なども、ひときわ濃密だった。

主演したエマ・トンプソンは演じているようにみえないほど自然で、脚本を手がけていることにも驚く。脇のみなさんは独壇場というくらい達者にみえた。ヒュー・グラントだけは「聖職者志望の篤実で内気な青年」という役に違和感がのこる。ちゃんと演出されてはいたものの、どこかわざとらしさが目についた。妹娘を誘惑する、にやけた青年を演じたほうがしっくりしたかもしれない。もともとそういう風貌の持ち主なのだ。



メモリータグ■最終場面。花婿が空に投げ上げる金貨をスローモーションにして仕上げている。アン・リーの作品は意外にラストシーンで迷いを感じることがあるけれど、これは穏やかにまとまっていた。