Wolf Children / Mamoru Hosoda
117 min Japan
おおかみこどもの雨と雪 (2012)
原作・監督:細田守、脚本:奥寺佐渡子、細田守、編集:西山茂、製作指揮:城朋子、製作「スタジオ地図」、キャラクターデザイン:貞本義行、作画監督:山下高明、美術監督:大野広司、美術設定:上條安里、音楽:高木正勝、声:宮崎あおい(花)、大沢たかお(彼)、黒木華(雪)、西井幸人(雨)、主題歌:アン・サリー
www.kadokawa.co.jp
いまさらですが『おおかみこどもの雨と雪』をみる。たいへんな力作だった。綿密で、ていねいで、地道なプロセスをじっくりとえがきながら、つねに起伏をたやさない。ファンタジーの主題に対してリアリズムのスタイルをとることで、人狼の子供を育てる母親の重労働とその身体的な重さを間近に伝えていた。物語は監督した細田守さんのオリジナルだそう。よくこんな作品を作れたものです。
しいていえば2Dセルアニメーションの伝統上にあるシンプルな人物描線のデフォルメと、背景3Dの迫真的な作り込みをどのように融合させるかは、アニメーション界をつうじて今後の課題だと思う。たとえば必死で農作業をしている登場人物の腕がふにゃふにゃのゴムのようだったりするいっぽうで、豪快な滝はほとんど実写に近い。このままばらばらの追究をつづけると、一枚の絵としてなりたたなくなる。映像表現としての本質的な重力が違いすぎるのだ。キャラクターは貞本さんの設計だからこれでいい、といった認識では埋められないものがある。
それでも「宮崎アニメ」の後継者たち――すなわち発展的で独創的な才能――は、ジブリの外から現れてくることを、この作品はよく告げている。アニメーション史上において、ウォルト・ディズニーの後継者たちがディズニーという帝国企業の外から現れたことには明確な必然性がある。外部には富裕な予算もぶ厚い組織力もない代わり、天才の呪縛もない。離れてよかったのです、細田さん。
メモリータグ:子供たちが小学校に入り、学年が上がっていくプロセス。カメラをパンでふりながら、育っていく子供の性格を淡々をみせる。鮮やかな演出でした。