うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0351. 麦の穂をゆらす風 (2006)

2012年02月28日 | カンヌ映画祭パルムドール

麦の穂をゆらす風 / ケン・ローチ
UK 127 min

The Wind that Shakes the Barley (2006)
Directed by Ken Loach, 1936 UK, screenplay by Paul Laverty, cinematography by Barry Ackroyd. Performed by Cillian Murphy (Damien O'Sullivan), Padraic Delaney (Teddy O'Sullivan),  Liam Cunningham  (Dan).  


二十世紀初頭、イングランドの圧政下にあったアイルランドで、青年たちが国の独立をもとめて英国正規軍と闘争する。1922年にひとまず自治領になるが、この微妙な半独立の政治的決定を巡ってアイルランドの国内は分裂し、それまで共に闘ってきた青年たちがおたがいに殺し合う状況に陥る。脚本はコンパクトで、義勇軍の中心にいた兄弟が最後に敵対するさまをえがいて終わった。

映像は自然の緑をみずみずしくとらえてあの国の長い悲劇の一場面を彩る。監督はケン・ローチ。じっさい古風ともいえる正攻法の秀作で、なにより主題の歴史性に価値がある。原題は「大麦を乱す風」。大麦は貧しい無名の若者たちの象徴だろう。ようやく実った麦が風のなかで無残に折れていく。

観る側のうさこは去年の秋から、ただもう地を這うように鈍重に仕事をしていたのですが、どん底からのリカバリーをめざして観た第一作としてはなかなか険しい内容でした。軍の暴虐、脅迫と密告、仲間の処刑、紛糾、ゲリラ戦、最後は最愛の弟を自分の手で銃殺。そして悲惨な歴史はこの作品の最終場面のあと、まだまだつづくわけです……(涙)。でも大英帝国をスタイリッシュに描く映像作品ばかりがどっさりあるなかで、視点をバランスするうえでも貴重な一作だと思います。2006年カンヌ映画祭パルムドール。

 

メモリータグ■領主のひなびた城館。木立ちに囲まれた静かなたたずまい。