うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0256. I Am Legend (2007)

2008年04月26日 | 2000s
アイ・アム・レジェンド / フランシス・ローレンス
101 min USA

I Am Legend (2007)
Directed by Francis Lawrence, written by Mark Protosevich and Akiva Goldsman based on a novel by Richard Matheson, also John William Corrington and Joyce Hooper Corrington (1971 screenplay). Cinematography by Andrew Lesnie, music by James Newton Howard, performed by Will Smith (Robert Neville), Kona (Sam, german shepherd), Alice Braga (Anna), Charlie Tahan (Ethan) and Emma Thompson (Dr. Alice Krippin).


アンドリュー・レスニーの映像が美しかった。逆光を効果的に使える撮影者で、透明な絵になっている。これまでに"The Lord of the Ring" や "King Kong" を撮っている。ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽も響きがよかった。テレビドラマの"ER"のテーマを作曲したひとで、たぶん自身の持ち楽器はピアノ。鍵盤の和音に空気感がある。

物語は人類死滅系。終わってエンディングに入った瞬間「ようするにバイオハザード」という声が周囲からあがっていた(たしかに)。けれど脚本というか、語りの手順は悪くない。類似の設定が多いだけに、状況をみせていく語り口が重要になる。孤独な緊迫感をたもっていた。

監督をしたフランシス・ローレンスの感覚はやや粗いかもしれない、でも好みの問題です。ひっきりなしにライフルを構える主人公には感情移入がしにくいけれど、一人で自己防衛をつづけるサヴァイヴァーなら言動が荒れるほうが自然であると考えて、それを表現したということだと思う。

冒頭で、画期的な癌治療薬を開発した医師がワンシーンだけ出てくる。演じたのはエマ・トンプソンで、みじかいカットなのに印象的だった。



メモリータグ■人間がいなくなって雑草の生えたニューヨークの町を、シカたちが自由に走り回る。人間はいないほうがいいのかも? と一年に何回か考えることがあるのですけれど、この瞬間もそうでした。




0255. La Marche de l'empereur (2005)

2008年04月20日 | 2000s
皇帝ペンギン / リュック・ジャケ
85 min France

La Marche de l'empereur (2005)
Directed by Luc Jacquet. written by Luc Jacquet (story and earlier screenplay), Michel Fessler(earlier screenplay). Second Unit and Assistant Direction by Jerome Maison. Cinematography by Laurent Chalet and Jerome Maison.


皇帝ペンギンの集団繁殖行動と育児、ヒナの自立までをとらえた有名なドキュメンタリー。種の保存は個体の保存に優先されるという生物の論理が実感できる。映像はすばらしい。ペンギンをディスターヴせずにどうやってこれを撮影できたのかわからない。

ナレーションはペンギンの「セリフ」として擬人化して語られる。文学的でレトリカルな表現が多く、科学的な情報性はやや犠牲になっているものの、スタイルはいかにもフランスらしい。BBCであればリポーターが「客観的解説」をおこなうことをえらんだかもしれない。音楽は、ペンギンたちの圧倒的な美しさに添えるにはやや力不足だったかもしれないけれど、努力している。あえていうと、唯一の問題は効果音。ときに自然音をおおってしまう。記録としての価値を大幅に下げてしまうこともあり、できれば避けてほしかった。でもぜいたくをいってはきりがない、皇帝ペンギンの生態について初めて知った。斬新な映像だった。

あらまし:皇帝ペンギンたちは南極で、冬をまえにすると各地で海からあがる。陸路を数週間かけて横断し、自分たちが生まれた奥地に戻る。横断中の栄養補給はない。迷ってはぐれた個体は淘汰される。

ペンギンたちはコロニーで求愛行動をおこない、つがいをつくって数か月後にメスが一つ産卵する。卵はメスの足の間からオスの足の間に受け渡される。この受け渡しに失敗すると卵は零下四十度の空気に曝されて凍ってしまう。メスは卵をぶじオスにわたすと、ふたたび長距離の陸路を横断して海に戻り、ヒナに給餌するぶんまで栄養を補給してコロニーに戻る。海で捕食される個体もあり、過酷な往復である。

オスは数十日間、両足の間で抱卵し、厳冬の吹雪にも集団で耐えて卵を孵す。うまれたヒナは、コロニーにもどってきたメスに渡されて、メスが給餌と飼育をおこなう。オスはメスと交替で海に戻る。集団内のヒナは個体識別されていないようにみえたけれど、ナレーションではよくわからなかった。給餌や攻撃抑制トリガーはヒナの鳴き声なのだろうと思いながらみていた。

ヒナを育てたメスは、冬の終わりのブリザードをヒナが克服するところまで保護したのち、冬が終わってほどなく子離れして、海に戻っていく。この間ブリザードや肉食鳥の捕食によって淘汰される個体がある。幼鳥はほどなく毛がぬけかわると、夏になって割れた氷の亀裂から海に移動し、四年ほどを海ですごして成長する。そののち求愛のために陸地へあがり、コロニーに戻ってくるのである。

厳しい集団繁殖で、オスもメスもそれぞれ数か月は栄養補給がない。南極で生存するという生態の合理は、ぎりぎりで成立するものだと身にしみる。一生の平均産卵回数はよくわからない。このヒナの生存率だと、一生に五回ほど産卵すれば種は保存されるだろうか。いずれにせよ、南極とは一般人が安易に観光などでふみこむべき土地ではないとつくづく思う。



メモリータグ■親の足の間から顔を出したヒナの丸い顔、そのかわいらしさ!




0254. "LOST" Season 3 (2006-07)

2008年04月08日 | 2000s
ロスト シーズン3 / J・J・エイブラムス
42 min, 22 episodes, USA

"LOST" Season 3 (2006-07)
Produced by J.J. Abrams, Bryan Burk, Carlton Cuse et al. Directed by Jack Bender (20 episodes), Stephen Williams (15 episodes) et al. Writing credits : Damon Lindelof (25 episodes), Carlton Cuse (16 episodes) et al. Performed by Matthew Fox (Jack Shephard), Josh Holloway (James 'Sawyer' Ford), Evangeline Lilly (Kate Austen), Terry O'Quinn (John Locke), Naveen Andrews (Sayid Jarrah), Emilie de Ravin (Claire Littleton), Dominic Monaghan (Charlie Pace), Yunjin Kim (Sun Kwon), Daniel Dae Kim (Jin Kwon) and Elizabeth Mitchell (Juliet Burke).


シーズン3を見終えた。物語はシーズン4にもちこされ、終結部はまだわからない。
シーズン2についての感想(0186)からつづけると、孤島にべつべつに不時着した乗客たちでつくられていた2つのグループAとBに加えて、第三のグループCの主要人物の過去が掘り下げられる。かれらがグループA,Bに合流しつつあるところでシリーズ3は終わっている。話の呼吸からは今回で終えることもできたろうけれど、人気がありすぎたのか、どこかでの時点で続行決定がなされたようにみえる。

このあと大詰めにむけて鍵になるのは、この物語の舞台になっている島の特性だろう。ソラリス(1972)とストーカー(1979)を足して割り、徹底的に通俗化したような気配が漂う。死者は甦り、時間は戻り、求める相手が眼前にあらわれる。並行する異時空間が交錯するトポスという可能性は誰でも思いつくが、全体が死者の集団幻想であるという疑惑はまだ晴れない(笑)。

語りの面では、いわゆる順接、つまり時間どおりにものごとが起こるふつうの順序で話をつくったあと、これを断片化し、入れ替えてみせていく演出技術が安定している。この技術はちいさな謎を随時生み出すことができるため、状況が重層的にみえ、先が読めない状態を維持することに貢献している。



メモリータグ■捕虜を閉じこめる屋外の檻。朽ちて錆びが浮き出した檻で、ほんとうに廃園になった動物園の、大型動物用の檻を使っているようにみえる。この作品とかぎらず、こういう物質的なリアリティーにはとてもひかれる。