あこがれ / フランソワ・トリュフォー
25 min France
Les Mistons (1957)
25 min Directed by Francois Truffaut. Short story by Maurice Pons. Scenario by Francois Truffaut (uncredited). Cinematography by Jean Malige. Film editing by Cecile Decugis. Music by Maurice Leroux. Performed by Bernadette Lafont (Bernadette Jouve) . Gerard Blain (Gerard). Michel Francois (Recitant).
初期のトリュフォーの、ひそかに有名な短編。スカートをひるがえして自転車をこいでいく若い娘の映像だけが記憶に残っていた。その軽やかさと夏の光の追憶感がいまみてもすばらしい。舞台的な演出の型を重くひきずっていた20世紀前半の映像とはあきらかに違う、さらりと素直なみずみずしさがあふれてきた。でもこんなお話だったかしら。
原題はレ・ミストン、『悪童』というより『悪ガキども』(というしかありません)。名づけようのないわくわくした憧れと、未分化な嫉妬と敬意をそのままに “気になるお姉さんをひたすらつけ回した子供時代の夏休み” の悪ふざけが、回想とともに語られる。淡い喪失と夏の終わりと、未知の何かへの期待、いまもにがい少年期の思い出――と書くと、どこか男性作家の特権的な主題のようでもあるけれど、これを少女の眼にしてみれば、それはそれでなりたつに違いない。相手を傷つけて愉しんだ自分たち、どこかでみとめてほしかった憧れの相手に訪れた思いがけない悲劇。おお。
なんにせよ、少年の感性をとらえてトリュフォーの右に出る映像作家はそういない。リズミカルな編集もよかった。説明的なつなぎかたをすると、あの遠い追想の感じは出なかったろう。とても音楽的な映像だと思います。
メモリータグ■テニスをする恋人同士。白く輝くテニスウェア、陽光のなかで笑う娘の鮮やかさ。繁みでみている少年たち。