今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

米国での臨床留学を実現するために日本で準備すべきこと(試験以外で)

2008-04-29 00:38:37 | 臨床留学
米国で外国人(非米国人)が臨床研修をする為ためには、様々なハードルがあります。

グリーンカードを持っていること(J-1ビザは受け付けない)を必須とするプログラムがたくさんありますが

これは私たちにとっては論外として


ホームページなどによく書かれているハードルを列挙します


1. 医学部卒業後5年以内である事
2. キャリアのブランクが無い事
3. 米国での臨床経験が1年以上ある事
4. 自分が応募する科を専門とする米国の医師による推薦状(LOR)が1枚以上ある事


ホームページでこれらの条件を見た時は絶望的になりました

私は2以外全部アウトでした。厳密に言うと、この2年はフルタイムではないのでオールアウト


これらの条件をクリアする為によく行われているのが横須賀や沖縄の海軍病院での研修と野口医学研究所主催のエクスターン研修です

海軍病院では、1年間研修をすると米国での経験と見なしてくれるようです。もっと大きいのが同時に4をクリアできる事です。つまり海軍病院の米国医師が推薦状を書いてくれるのはとても大きいのです。

野口のエクスターン研修はトーマスジェファーソン大学(TJU)関連病院とハワイ大学(UH)で研修するのですが

それらの施設で後にレジデントとしてマッチする可能性も高くなります


様々な(全ての)条件に抵触する私は、カンザスのNational Conferenceで多くのプログラムのディレクターと話をしてきました

履歴書を押し付けて質問をするふりをしつつ、なんとか自分を売り込もうといろいろ話をしてきましたが

そこで仕入れた話を上記の4つの条件に照らし合わせます


1. 医学部卒業後5年以内である事

  • 5年とは限りませんが、卒後年数で区切っているプログラムはたくさんあります
  • ただ生の声を聞いてみると、これは一応の条件であって、例外も認めるというプログラムもあるようです


2. キャリアのブランクが無い事

  • これは,受験勉強やリサーチだけしていて、全くのブランクがある人を避ける為の条件のようです


3. 米国での臨床経験が1年以上ある事

  • 結局、言語のバリアが無いかどうか?アメリカのシステムの中で機能できるかどうか?を知りたいようです
  • 必ずしも必須条件ではなく、強い推薦状さえあれば大丈夫と複数のディレクターからいわれました


4. 自分が応募する科を専門とする米国の医師による推薦状(LOR)が1枚以上ある事~これが一番大事

  • アメリカも実力主義とはいいつつ,結局はコネ社会です
  • Strong recommendation,つまり「アメリカの医師による強いお勧めがある」があるというのが最も重要な鍵となります
  • 私は最初、アメリカの家庭医研修育ちの日本人の先生方にLORを書いていただいていましたが、どれだけ優秀で、日本でどれだけ認知されていて、アメリカの家庭医育ちでも、LORの強さとしては、現役のアメリカ家庭医Facultyには及ばないと聞いていました。結局ぎりぎりになって或るUS Facultyの先生に書いていただけました! 本当に感謝です!


これらの条件をクリアできなくても、東京海上のNプログラム
に参加するなど、他にも方法はあります


結局言いたいのは

提示された条件をクリアしていなくても、

「その条件の背景に何があるのか」を情報収集して、一つずつクリアしていけば道は開ける、「何とかなる」ということです


ただ確実に留学を実現するには、やっぱり以下のいずれかを選択することをおすすめします

米国家庭医療プログラムの認定基準

2008-04-25 01:13:02 | 家庭医療
ACGME Program Requirements for Graduate Medical Education in Family Medicine

アメリカにはACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education:卒後医学教育認可評議会)という組織があります

ACGMEが全ての専門科の全ての研修プログラムの認可を一括しておこなっており、認可が下りなければ国から予算も出ず、卒業生は専門医試験も受けられません

認可を受けるには各専門科ごとに厳しい基準が設定されており、家庭医の基準もACGMEのサイトから自由にダウンロードできます

超有名な大学のプログラムでさえ、基準を満たさなければ実際に認可を外されてしまいます。

日本のような「なあなあ」はありません

実際に認可作業の様子を知りたい方は以下をご覧下さい
(2002年とちょっと古いですが、大きくは変わっていないはずです)

〔レポート〕米国における臨床研修の質を保証

――ACGME(卒後医学教育認可評議会)の役割

岸本暢将(ハワイ大学・内科研修医)



さて、ACGMEがつくった家庭医療の基準については、HANDS-FDFに参加した際と、日本家庭医療学会で学会認定後期研修プログラム(バージョン1.0)を設定するためのワークショップに参加した際に、さらっと読んでいたのですが

レジデントとして働き始める前に、改めてじっくり読んでみることにしました

改めて読んでみると、日本家庭医療学会のものと比較しても、「ここまで書くか!?」というほど細かく書き込んであることに驚きます

そして全体を通して感じたのは
「レジデントが学ぶ環境を徹底して守る」という姿勢です


全て書き出すとキリがありませんので、以下は自分が着目したポイントです

1.ディレクターは年間1400時間以上、レジデントと過ごす必要がある
  • 週でいえば28時間。8時-17時の勤務とすれば3日強レジデントと過ごさなければいけません

2.一つのプログラムの定員として1学年に最低4人が必要
  • 3年間のプログラムですから最低限4×3=12人
  • 同僚との相互作用が学習には欠かせないとの理由
  • 私が日本で所属している施設の定員は現在1学年3名
  • 日本でこの基準をクリアできそうなのは10施設も無いでしょう

3.フルタイムのFacultyがレジデント6人に1人以上の割合で必要
  • フルタイムとは前述の年間1400時間以上レジデントと過ごすという定義

4.ファンドをとってくるか、リサーチ、出版、教育がらみの委員会に所属するなどのアカデミックなFacultyも必要
  • アカデミックな部分もけっこう強調されるのです

5.家庭医療センターでは、他の学習者(医学生、コメディカルの学生、フェロー)がいることでレジデントの学習の邪魔になってはいけない
  • 繰り返しかかれていることで、大変印象的です

6.電子カルテは必須
  • まだ導入していなくても、導入計画を立てなさい

7.家庭医療センターがしまっている時に、患者さんは主治医やその同僚に連絡が取れるようにしなければいけない
  • 患者さんがケアへのアクセスを常に持っているという話
  • 家庭医の専門性」で書いたことと同じですが、実際どのように実践できているか要チェックです

8.Continuity of Careとして
 Nursing Home(老人ホームのようなもの)の患者さん二人以上を24ヶ月以上診なければいけない

             and
 在宅は二人以上(そのうち1人は自分が継続的に看ている患者)を診なければいけない

  • 日本での在宅の普及具合からすると、心もとない数ですが・・・
  • アメリカでは在宅診療自体がペイしないので、医者でなく看護士が主にやっている現状があります。せめて「経験だけでも」というところなのでしょう。

9.3年間でのべ1650人以上の外来診療が必要で、うち1年目で最低150人以上

  • 数としてはたいしたことはありませんが、細かく設定している所に着目です


10.家庭医療センターでの継続診療が断片的になってしまってはいけない
  • 継続性の話で繰り返し強調されています


11.産科は最低2ヶ月のブロック研修が必要。さらにのべ40以上のお産を経験。そのうち10以上がcontinuity patient delivery(外来で産前、産後のケアもする)の必要有り。
  • 自前でこれを満たせない施設もあり、awayで数をこなさせることもあります
  • ミシガン大では余裕ですが、私が行くチェルシークリニックはcontinuity patient deliveryが少なくなりそうなので日本家庭健康プログラムでお産を中心に継続診療できればと思っています

12.Management of Health Systemの教育
  • リーダーシップ、医療管理、経営、患者満足などについてのコースを100時間以上受ける必要がある
  • レジデントは年4回以上、診療の生産性、患者満足度、診療の質等を評価されます

他にもポイントはたくさんありますが、研修を受ける立場として研修前、研修中にこのような文章に目を通しておくことは


  • 自らの研修のプラスになる(何を学べば良いかを知る)ばかりでなく
  • 自分が教える側になった時に「何を学ばせるために、どのような方略をとったらよいか」を学べるという点で役立ちます

かつて医学生時代は、シラバスなど全く目もくれませんでしたが、その大事さが分かるようになってから受ける研修がどのようなものになるか、本当に楽しみです



渡米しても、日本へ発信し続けます!(決意表明)

2008-04-23 00:35:49 | 家庭医療

以前から感じていたことを、ある大御所先生からもメールで言われ、決意を新たにしました

日本で「家庭医!」とがんばって活動している若者が、米国へ留学すると発信しなくなってしまう

特定の個人をさしているわけではありません

レジデントになれば、なれないシステムに苦戦し、一年目は頻繁な当直と、自分のことで精一杯

おそらく私も、最初は余裕がなくなるでしょう

それでも1行ブログや、メーリングリストでの1行発言でも良いから、発信し続けること

なんとなくそんなことを考えていたら、期せず同じ内容のアドバイスを頂き、ちょっと決意を新たにしました


そもそも何故、ブログを書き始めたのか?


家庭医の教育家庭医を一般に啓発するとかいろいろ考えていますが

HANDS-FDFでの学習もふまえ、webを通してどのように活動しようか?と考えると


「とりあえずブログ」となるわけです

海外に留学している人は、日本へ発信という意味を込めてブログを書かれている方が多いのですが、

私も最初は「家庭医のレジデントになってから始めよう」と何となく思っていたのですが、

何故すぐに始めないんだ?と自問しました

教育でも、「自分はまだ一人前になっていないから、教えられない」

「じゃあ、いつになったら教えられるようになるんだ?」

似たような構図があります

留学が始まってから書き始めるのではなく、「思い立った時が始め時」そう思ったのです

そして、これからレジデンシーが忙しくなってもがんばって続けよう

そう誓ったところです  


大リーガー医”に学ぶ―地域病院における一般内科研修の試み

2008-04-19 15:19:07 | 教育
大リーガー医”に学ぶ―地域病院における一般内科研修の試み



医学生の時に舞鶴市民病院に見学に行きました

既に自分の研修病院も決まっており

「どうしてもっと早く見学に来なかったんだろう?」と後悔しました

その後も「舞鶴で学べたらなあ~」という憧れ(後悔?)は消えることがありませんでした

思えば現在の職場に転向した時も「舞鶴出身の指導医が入った」というニュースが大きな後押しをしたのを憶えています

そして今更レジデント(研修医)を受け入れる自分の根底には、「大リーガー医」に揉まれていない劣等感のようなものがあるのかもしれません

この本は以前に購入していたのですが、最初の方しか目を通していませんでした

途中まで読んで、「うらやましすぎて」読むのを辞めてしまったのかもしれません

「留学が決まった今こそ、読む時だ」 というわけです

この本の前半は大リーガー医との交流が描かれていますが、本当の収穫は後半部分の医学教育、医療倫理などに対する松村先生の洞察でした

これらの文章が書かれてから数年経っていますが、時代を先取りしていたり、未だに大きな問題として横たわっているトピックばかりです

いわゆる書評としては、例えば黒川清先生の書評をご覧下さい


私はこの本で一番好きな部分を引用します

ちなみにこれは小浜逸郎さんの『癒しとしての死の哲学』からの引用です

好きなフレーズとして引用を引用するのは大変失礼な話ですが、「松村先生が何故このフレーズを引用したか」というところまで考えて、私の心におちた言葉なのでご容赦ください

日本人は、要するに「相手を気にする」ことで「自分を立たしめる」民族なのである。日本人は格別「相手の立場を慮ってあげる」思いやりのある優しい民族なのではない。また、特に「真実と対面することから逃避しようとする」臆病な民族なのでもない。相手と自分との関係に配慮することを通じてはじめて自分を実現させようとする民族なのである。
 したがって、親しい者の癌について告知することをためらうという心情には、関係性の維持というところに自己存立の根拠をおいている日本人特有の実存構造が映しだされているといえるだろう。これは、いいことでも悪いことでもなく、ただそのようにしかありえないというにすぎない。そして、この構造はなかなか変わりそうもないだろう。

がん告知で本人に真っ先に告知するのは、理屈から言えば至極真っ当です

本人が一番希望する治療を選択するのも当たり前の理屈です

家族、親戚と意見が合わず、本人の意向が必ずしも反映されないことはよくありますが、

それを解決する考え方として

一人称、二人称、三人称の区別をはっきりさせる
  • 一人称=本人
  • 二人称=近い家族
  • 三人称=他人(医療関係者、遠い親戚)

例えば「自分は告知してほしいが、夫に告知するのはかわいそう」

あくまで一人称が優先というのが原則

考えがぶれる人は自分が何人称で考えているかを顧みるとぶれない

割とクリアな考えだと思っていたのですが、現場では必ずしもしっくりきません

その理由の一つが分かったような気がします

小浜逸郎さんの言葉を借りれば

「日本人は一人称と二人称が相互依存している」とでもなるのでしょうか

患者さん本人の一人称を優先し、家族の二人称を後回しにすると、家族の一人称があやうくなり、患者本人も家族との二人称が崩れることで、自分の一人称もぶれる

松村先生曰く、こういった考察は他流試合(異文化との)でこそ磨かれます

他流試合をしにいく私にとって、大変良いおさらいになったことは確かです

1年目のスケジュール決定 「家族の用事は最優先」

2008-04-18 10:58:18 | 家庭医療
ミシガン大学家庭医療プログラムのレジデントとしての初年度のスケジュールが送られてきました

実はこのスケジュールの調整がうまくいかず、数日悩んでいました

今回の渡米は私1人で行き、妻は9月末まで日本に子供と二人で残り、フルタイムで仕事をすることになっていました

そして9月末に日本の住まいを引き払って(妻が勤務する病院の官舎なので辞めたら早急に退去をしなければいけない)、家族全員で渡米

その引っ越しを一緒にするために、私も9月後半に休みを取れるようにお願いしてあったのですが

9月後半に休みを取るためには、大学病院でCCUのローテーションを初っ端にしないと調整がつかないとのこと

ただ最初のローテーションは
  • ミシガン大卒の人以外は、大学のシステムに慣れないので、他科を回るローテーションを入れない
  • きついローテーションを避ける(CCUはきついらしい)
  • ビザが間に合わないかもしれない私は、他の人がカバーできるローテーションにする

以上のことを、公然のルールのようにしているそうですが、私はそのすべてがクリアできません


だから「ちょっと難しいがどうしますか?」というメールのやりとりだったのですが、ディレクターに電話で家族の話(9月末の退去が動かせないこと)をしたとたんに

「それは大事だ!分かった、なんとかしよう!」

他のレジデントと変則的にスケジュールを交換して、なんとかしていただけました

家族(家庭)と聞いたとたん、まるで魔法の言葉がかかったように、あっという間に解決

さすが家庭医療(アメリカ共通の傾向でしょうが)

さすが若くしてディレクターになっただけあります

頼りになります、初っ端から感謝感激です


ところで、スケジュールですが

 6月後半 オリエンテーション
 7月   Block Month(Family Practice Center)
 8月   Chelsea Family Practice Inpatinet Service
 9月前半 University Family Medicine Inpatient Service
  後半 休み(帰国して引っ越し)
10月    CCU
11月前半  Pediatric Newborn
   後半  休み
12月         Family Mother Baby Inpatient Service
 1月          Family Mother Baby Inpatient Service
 2月   Surgery
 3月          Pediatric Inpatient
 4月   ER
 5月   Pediatric ER
 6月   Chelsea Family Practice Inpatinet Service

    ※下線が当直有りでChelsea以外はq4(4日ごとの当直)

外来は常に週1コマはいります(Chelsea clinic)

気づいた点は
  • 休みが2週間×2回きっちりあること
  • 内科系、小児、産科の病棟がびっちり
  • 当直が続くのはmax2ヶ月まで
  • 内科系、小児系、産科系は割とまとまっている
  • よく見ると、卒業生(今現在の3年目)10人中5人が2~3ヶ月分のローテーションを7月以降もやっていること
→産休などをしっかりとれるという面と、卒業するにはしっかりトレーニングを完遂することを要求されているという当たり前のことを反映しているのでしょう

家庭医の専門性

2008-04-16 11:58:08 | 家庭医療

先週末、家庭医療学会の指導医講習会がありました


平成20年度 第1回 家庭医療後期研修プログラム指導医養成のためのワークショップ


私は参加できませんでしたが、参加してきた三つ葉在宅クリニックの舩木先生とディスカッションしました


主に岡田先生のセッションに参加して、舩木先生が考察した内容がトピックです


 家庭医の専門性はどこにあるのか?という自分たちの視点よりも、


患者さんの視点「家庭医にかかりたい」と思わせるユニークネスは何か?


医療サイドからの専門性だけみていてもはっきりしません


例えば、プライマリ・ケアの5つの理念

  • 近接性
  • 包括性
  • 協調性
  • 継続性
  • 責任性


例えば、家庭医を特徴づける能力

  • 患者中心・家族志向の医療を提供する能力
  • 包括的で継続的、かつ効率的な医療を提供する能力
  • 地域・コミュニティーをケアする能力

特定非営利活動法人 日本家庭医療学会認定後期研修プログラム(バージョン1.0)より抜粋



継続性でしょうか?

「継続的にみてくれる町のお医者さんは沢山います」


包括性?

「何でも聞いてくれる、開業医の先生はいらっしゃいます」


昨年10月に医療制度の変革の底流にあるもの~家庭医療はどこへ行くのか?で、「日本の家庭医療にフィールドはほとんどない」と過激な意見を書きましたが、自分の専門性ばかり強調しているようであれば、やっぱり状況は変わらないように思います


人々は自分のお医者さんに何を求めているのでしょうか?


安心感!!


すなわち

「この先生にかかりたい 」

     ↑

「この先生にかかっておけば安心」

      ↑

「いつでもみてくれる」と「すぐにみてくれる」


すなわち

フルの一次救急を如何に提供するか?

(ちなみに崩壊しつつありますが、病院は二次救急)


ソロプラクティスで、「いつでも、すぐに対応してくれる」お医者さんはいらっしゃいます


TFCでも、過去にその話は出ていました


患者さんに自分の携帯番号を渡すことによって、患者さんの安心感に結び付けている

 

それを自らの信念として語り、大事にされていた(いる)のが故田坂先生であり、友人の守屋先生です

 

ただ、ソロプラクティスでそれを継続する場合、医師の身体的、精神的負担はあまりに大きいのです

 


そこで

「グループ診療による、24時間対応」

 

ソロプラクティスで既に開業していると難しいですが


逆に、これから参入する家庭医にとって一つのあり方ではないか?

 

「家庭医」ではありませんが、


在宅のグループ診療で「いつでも、すぐにみてくれる」を文字通り実践している舩木先生だからこその説得力がありました

 

アメリカの家庭医はグループ診療が基本ですが

 

「いつでも、すぐに」をちゃんと実践しているかといわれると疑問のようです


理想的なグループ診療のありかた


アメリカで学んでくる大きなテーマになりそうです


以前から漠然と考えていたようなことが、舩木先生と話すと霧がはれて、クリアになります


ありがたいです

書籍紹介 「エビデンス身体診察」

2008-04-14 01:58:29 | 教育
目からウロコのすばらしい本を紹介します

身体診察を学ぶ上で必携の本で、以下の方々にお勧めです

  • 医学生
  • 初期研修医
  • ジェネラル(家庭医療、総合診療)を志す若手医師
  • 身体診察をもう一度おさらいしたいベテラン
  • 教育回診で研修医をうならせたい指導医

その本とは「エビデンス身体診察


・・・

・・・


すみません 拙書の紹介でした・・・


梅田望夫さん、岡田唯男先生にならって、カミングアウトしてブログを書いていますので

自分の本を紹介するのもありかなと思ったわけです

この本は
  • 身体診察を勉強したいけど、ベイツやマクギーは詳しすぎる
  • 身体診察をとるように指導されるが、結局役に立っていない気がする
  • 全身の身体診察をとれといわれても、毎回そんなに網羅的にとれない
  • てっとりばやく、身体診察をとれるようになりたい

そんな方々を対象として書きました

ただ、「尤度比とはなんぞや」というのを知っている事を前提として書いていますので、医学生よりも後期研修医ぐらいの方が、しっくりくると思います

ちなみに書籍名とサブタイトル
  • エビデンス身体診察
  • 研修医必携
  • これさえ押さえれば大丈夫
これらのキーワードは、本の内容をきっちり反映しているとは思いますが

キーワードを選んだ基準は、マーケティング的なものです

梅田望夫さんのブログや本を参考に

  • googleでキーワードを検索
  • 他の売れている本のキーワードを参考に
  • どのような表現がターゲットとなる読者を引きつけるか

を考えてつけてみました

医学書は所詮パイが小さいですから、爆発的売れ行きとはいきませんが

出版社によると医学書の中では結構売れているそうです

でも  こっちのほうは、たいした事ございません

本を多く書いているボスが、「ほ~んと、たいした事無いよ~」

とおっしゃっていたのは本当でした

一般向けのベストセラーでも出さない限り、印税生活なんて、夢のまた夢

ちなみに、アマゾンで待望のレビューを書いていただきました

一部抜粋
「いままでの自分の不勉強のためだと思うが知らない陽性尤度比がたくさん出てきた。 非常の勉強になった。
~中略~
全体としてはおもしろくある程度臨床経験のある医師にとっては興味深い本だと感じる。
僕が本を書くなら最後に臨床問題をつけて「この患者では肺炎の確率はどれくらいでうっ血性心不全はどれくらいの確率で否定できる」などの問題と解説をつけたかもしれない。」

なるほど~

臨床問題をつければ、もっと面白い本になりますね

何で気づかなかったんだろう・・・

「ちゅうたろうさん」貴重なご意見ありがとうございました

改訂版で、是非検討したいですね

リーダーシップは教えられる(書籍紹介)

2008-04-13 00:18:44 | Faculty Development
HANDS-FDFで紹介されていた本です

リーダーシップは教えられる (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)





ハーバード・ケネディスクールで実際に行われている、「ケース・イン・ポイント」による学習法、教授法を紹介した本です

この本は、私や皆さんの多くが持っているであろうリーダー像とは全く異なるリーダー像を示してくれました


本書の全体像を紹介する代わりに、印象的なフレーズを紹介します

  • トップダウン型のカリスマリーダー」よりも      「ダイナミックなネットワークの優れた『ノード』として、また活力の中心として新たな可能性を切り開く仲介者としてのリーダー」が求められているのです

  • リーダーシップの醍醐味は、他者の秘められた能力を発掘して活用することにあります

  • 日々の混沌とした問題を解決するには、創造性(芸術性)のあるリーダーシップ力を発揮する必要があります

この本を読んでいて、あることに似ていると思いました

それは大学の総合診療部での外来診療です

biopsychosocialな問題を抱え、多くの医療機関を受診しても解決され無い日々を過ごし、長く病に苦しむ患者さん

その病態は複雑で,混沌としており

確定診断になかなかたどりつけない不確実性に耐えつつ、様々なリソースを活用しながら、患者さんとつきあっていきます

ときには、どのような治療も役に立たず

患者さんと共に歩み、思いを共有することによって、患者さんの自己治癒力を引き出すことだけが、治療となることもあります

ということは、総合診療部の外来でトレーニングをすることは、リーダーシップを磨くことになるんでしょうか?

う~ん、もしかしたら面白いことに気づいたかも

などと悦に入っていたら、さらにあることに気づきました

この「ケース・イン・ポイント」を実践しているロナルド・ハイフェッツ教授は、精神科医なのだそうです

だとすれば、精神科医の診療プロセスが先にありきで、リーダーシップの教育の中にそのアイデアが盛り込まれたのでしょうか?


もう少し一般化してみましょう

トップダウン型のカリスマリーダー」がパターナリスティックな医師像に相当し

仲介者としてのリーダー」が患者中心の医療を行う医師像に相当する
と考えられそうです

患者中心の外来診療を行うトレーニングを総合診療部なり、家庭医療なりでやっていれば、自然と「仲介者としてのリーダーシップ」のトレーニングに繋がるというのは理屈として言えそうです

patient-centered care、 leadershipなどをmainのMESH keywordとしてPubmedで調べてみましたが、思うような論文はみあたりません

ヒットするのはほとんど全て、clinical nurse leaderというカテゴリー

昨今の日本での医療問題を考えても、医師によるリーダーシップが必要なのは明らかです

着目すると面白い領域かも知れません

US Notary

2008-04-10 17:23:13 | 臨床留学
大阪はときどきでした


おびただしい数の、書類に圧倒されていますが

困ったものの一つがNotary(公証)

同意書に自分のサインをするときに、サインしましたというのを公証人に公証(Notarize)してもらうのですが

US Notary(アメリカの公証人)によるNotarizeが必要な書類が2種類ありました

日本にも公証人制度はあります

アメリカの公証人制度とは別なのですが、ハーグ条約にのっとり、日本の公証人にNotarizeしてもらっても理論上はOKになっているらしいです(日本公証人連合会に電話で問い合わせて教えていただきました)

ただ現実には相手あってのこと

先方がダメといえばダメらしいので、プログラムの秘書さんにきいてみたのですが

US Notaryと書いてある以上、US Notaryじゃないとダメという結論になりました

大使館か、領事館でやってもらうしかない・・・

幸い、名古屋にも領事館があるので問い合わせてみると、名古屋でのNotarizeのサービスは政治、経済がらみじゃないとダメらしいです

一番近い大阪領事館へ、先週1日がかりで行ってきました

ところが・・・

1つの書類は良かったのですが、もう一つの書類は

「これではダメです」と・・・


13枚綴りの1枚だったのですが、結構重くなるので、Notarizeしてもらう書類だけ持っていったところ、13枚全てそろっていないとダメ

言われてみれば、そりゃそうなんですけど・・・

明らかに自分に落ち度があるので、何ともなりません

1回目でNotarizeしてもらえなかった書類も、早急に送る必要があるので

やむなく雨の大阪に今日も行ってきたわけです

「せっかく大阪に行くんだから、観光でも」とくれば良いのですが、そんな気分にもなれませんでした

Visaの面接でもまた同じ領事館にいきます


J1ビザ取得への長い道のり~その4

2008-04-09 16:58:24 | 臨床留学
前回書いたビザ発行までの流れ

1.Ministry of Health Letter(政府証明書)の書類を取り寄せる
2.プログラムからLetter of Offerを受け取る
3.Letter of Offerとその和訳をつけて、Ministry of Health Letter(政府証明書)の申請(1~2週間)
4.Ministry of Health LetterとAPPLICATION FORM FOR INITIAL SPONSORSHIPなど添えて、ECFMGにDS2019の発行を申請(ここで4~6週間)
5.DS2019をそえて大使館にVisaの申請をして面接の予約を取る
6.面接後ビザ発行

4月9日現在で、どのあたりかというと

4.のための書類をプログラムに送って着いたところ

今日付けで秘書さんが、ECFMGに申請書類を発送してくれているはずです

ついでにいえば、大使館へのVisa申請書類は完成させて、面接の予約も5月のなかばに入れました

DS2019が間に合うかどうか微妙ですが、面接日の変更は大丈夫です

このまま書類不備等で、プロセスが滞らなければオリエンテーションには間に合いそうです

気がかりなのはECFMGに送る書類のうちLetter of Offerに研修開始の日付がついていないこと

CHECKLIST for INITIAL J-1 VISA SPONSORSHIP in 
ACGME-ACCREDITED CLINICAL TRAINING PROGRAMSから抜粋

 CONTRACT OR LETTER OF OFFERThe contract or letter of offer must specify start and end dates of the training year, specialty and subspecialty of the training program/pathway, training level, and stipend. The applicant and an appropriate hospital official must sign the contract or letter of offer.

これは、Letter of Offerをみた時に気づいて、書き直すようにお願いしたのですが、「書き直しは無理」とのことで、別の書類として研修期間を書いてもらっていました

別の書類に、私のサインをする欄が無かったのですが、無理やり最後に自分のサインをつけて送り返しました

Letter of Offerと組み合わせて、これで通らないかと期待しています 

おせっかいがすぎるとKY

2008-04-06 22:38:41 | 家庭医療

笑えるようで、笑えない話

アメリカの某プログラムをインタビューで訪れた時のことです


あるレジデントが酒の席で愚痴っていました


彼はビザのトラブルで、この半年ほど家族と離ればなれで暮らしています

「毎日、毎日、『家族と離れて暮らして本当につらいよね~』といちいち声をかけないでくれ!せっかく仕事に集中して忘れようとしているのに!鬱陶しいんだよ!」


psychosocialに力を入れているプログラムで、mentoringやレジデントの危機への対処にかなり力が入っているようですが


おせっかいにも程があるようです


日本には、「空気を読む」という言葉があります

KY(空気読めない)という流行語もできて、逆にKYを汎用するマスコミに対する批判が出たりしています

異文化交流だらけのアメリカでは1から10まで言わないといけないというのが基本なのは分かりますが

長く一緒にやっている仲間内では、「空気を読む」というコンセプトをもっと高められないか?と日本人として思いました


もちろん英語でも似たような意味の言葉があるようです


家に泊めてもらったレジデントとその話題について話していた時、日本のKYという流行語の話をしたら、興味を持っていました


そもそも全部説明するのが基本のアメリカでは、そのような感覚を鋭く磨くのは難しいのかもしれません


body language一つとっても違う異文化の集合だからこそpsychosocialの重要性が強調され、実際にとりくまれているのでしょうが

こういうところが意外と良いリサーチクエスチョンとなって、すばらしい論文が生まれるかもしれません



せっかく異分子として入り込むのですから、それを長所として診療、教育、研究に活かしたいものです


認定医を必要としているのは指導医?

2008-04-04 00:24:42 | 家庭医療
新初期臨床研修医制度がもたらしたメンタリティの変化で、「今の若手は認定医にあまりこだわっていないのかも」と書きました

家庭医療の2006春号より

今度からお世話になるミシガン大学家庭医療学教室の神保先生がFirst Authorの論文

「日本の家庭医療学における教育,臨床,研究と今後の発展に対する問題点と解決策:世界一般家庭医学会(WONCA)ワークショップのグループインタビューより得られた知見」 

興味深かったのは、結論

指導者自身の「家庭医としての自信」を確保するために、家庭医療学の専門性と守備範囲をはっきりさせる事が必要。そのために「専門医制度の確立」が必要


2004年のWONCA参加者の考えですから、かれこれ4年前

指導者自身のメンタリティも多少、変わっているかもしれませんが

自信が無いのは、指導医層

確かに・・・

その層に属するべき自分が、留学するのも「自信をつけるため」といえばそうですね

新初期臨床研修医制度がもたらしたメンタリティの変化

2008-04-02 02:06:07 | 家庭医療

「認定医制度はどうなっているのですか?」

「将来の保障はされるのですか?」

ほんの数年前まで医学生や研修医からよく聞かれたものです

 

「やっぱり内科認定医をとっておきたいです」

地域の診療所を中心に研修をしたあとに、市中病院へ転勤していった若手医師の言葉です

 

「そうか、将来の保障、専門性の保障が無いと若手はなかなか集まってくれないのか!」

 

そう思っていました

 

思っていましたので、3学会の合併や認定制度の流れなどをブログに書いたり、メーリングリストで発言したりしていました

 

が、どうやら若い人たちのメンタリティは急速に変化しているようです(全体の傾向として)

 

「医局の説明会でも、そのような質問はこの数年ぱったりと出なくなった」と上司から聞きました

 

新初期臨床研修医制度の影響が大きいように思います

 

これまでは関連病院(ジッツ)の多い大きな医局に入って、将来が保障されることが安心のよりどころでした

 

病院は認定医や専門医が何人という基準でさまざまな施設認可を受けますので、認定医や専門医をもっていることが、病院へ配属されるためのパスポートだったわけです

 

ところが新初期臨床研修医制度が始まり、医学生は自分でよりよい研修を受けられる施設をさがすことを始めました

 

さらにその後はすぐれた後期研修を受けられるところが、彼らの関心事です

 

学会の動向や、認定制度は検討事項の中で相対的に順位が下がっているようです

 

もうひとつは、新しい研修制度が引き金となった病院崩壊、医局崩壊

 

「大きな医局に入って、よい病院をあてがってもらう」ということが唯一に近いキャリアプランだった時代は終わったのです

 

「とにかくよい研修を受けて、自分の能力を高めればなんとかなる」

 

そうであれば、健全なメンタリティといえるでしょう


逆に認定制度の確立を待ち望んでいるのは、指導医層なのかもしれません

J1ビザ取得への長い道のり~その3

2008-04-01 23:54:21 | 臨床留学
ビザ発行までの流れです

1.Ministry of Health Letter
(政府証明書)の書類を取り寄せる
2.プログラムからLetter of Offerを受け取る
3.Letter of Offerとその和訳をつけて、Ministry of Health Letter(政府証明書)の申請(1~2週間)
4.Ministry of Health LetterAPPLICATION FORM FOR INITIAL SPONSORSHIPなど添えて、ECFMGにDS2019の発行を申請(ここで4~6週間)
5.DS2019をそえて大使館にVisaの申請をして面接の予約を取る
6.面接後ビザ発行



1.でつまづき焦っていましたが、現在思わぬところが律速段階になってしまいました

2.です

マッチングが決まってからLetter of Offerを受け取って、それを添えて厚労省に政府証明書を申請するのですが

Letter of Offerに研修の開始日と終了日が明記していないと、政府証明書は発行されません

プログラムとしてJ-1ビザの手続きに不慣れなためか、Letter of Offerにその日付が明記しておらず・・・

秘書さんに電話すること4回、他の大量の書類といっしょに、マッチから10日以上たってようやく必要なLetter of Offerが手に入りました


もう一つのポイントは、政府証明書に添付するLetter of OfferはコピーでOKということです

つまり、サイン付きのLetter of OfferをPDF書類として読み込んでもらい、メールで大至急おくってもらうと時間のロスが省けます

山のような他の書類を一緒に用意していたのも、書類が届くのが遅れた原因のようです

IMGの実績のあるプログラムは全く問題ありませんが、そうでない場合は、マッチした直後に秘書さんに電話してこういいましょう

「研修開始日と終了日が明記されていて、サイン付きのLetter of OfferをPFD書類として読み込んで、メールに添付して大至急、他の書類より先に送ってください。そうしないとビザの発行がオリエンテーションに間に合わないかもしれません」

そうすれば10日はかせげました

この10日の差がのちのちどう響いてくるでしょうか?