今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

医者性悪説

2010-01-29 13:33:16 | 時事ネタ
ものすごく主観的な話です

日本での医者性悪説

アメリカに来て改めて実感しています

アメリカの医者はすごく儲けています

家庭医は収入的には最下層ですが、日本の開業医のアベレージぐらい

放射線科、心臓外科、整形外科、眼科はすごいです

例えば放射線科、平均年収が5000万円越えです

労働時間も、日本の医者と比べれば遥かに少ないです

そして、国民は金がなければまともな医療が受けられません

そんな状況にも関わらず、「医者だ」というだけで公共の場で丁寧に扱ってもらえます

「努力して医者になって、医者になってからは当直などをこなし、患者さんのために頑張っているね」と

「尊重してもらっている」「敬意を払ってもらっている」ことを実感します

翻って日本ではどうだったかと思えば

「医者は儲け過ぎ」「医療ミスだ」「たらい回しだ」

「尊敬しろ」などと尊大なことを言うつもりは毛頭ありませんが

せめて「多くの医者が身を粉にして働いている」という現状に見合った、収入と敬意があってほしいと願わずにはいられません

冬のアナーバの休日

2010-01-26 07:09:18 | その他
冬のアナーバーは寒いです

昨年と比べれば、比較的温かい日も多く、雪に閉ざされる率も少ないですが

外を出歩く気にはなれません

結果的に運動不足になります

昨年は土曜日ごとに、40kmはなれたデトロイト近郊のインドアテニスクラブで

こちら在住の日本人の方とテニスをしていましたが

今年は人が集まらず、テニスができません

結果的にかなり運動不足です


先週末は、M&Mの準備を控えていましたが

すっかりスキー好きになった家族の要望も有り、車で30分の近くのスキー場へ行ってきました

Mt. Brighton

スキー狂の知り合い曰く「あれは丘だよ」との前情報でしたが

そんなわけ無いだろうと思いつつ言ってみると

本当に「丘」でした

高低差はわずか200フィートちょっと(70mぐらい)

丘(Hill)のくせに山(Mt)を名乗るのは許せません

調べてみると、かつて日本にあった室内スキー場ザウスよりも微妙に小さいぐらい



それでもナイターが午前2時までやっており

途中で食事をとりに、近くの店か家まで抜け出すこともできる便利さがありますので

また来るかもしれません

それにしてもこちらのスキーは高い

コロラドのスキー場は一日券が90ドル以上(1万円近い)

Brightonも丘のくせに一日券で30ドル以上とります

スキーは日本と比べて、お金持ちのスポーツという色合いが濃いようです


翌日の日曜日は、レジデント企画で

大学のスケート場ですべってきました

そんなわけで現在筋肉痛です

ある日の家庭医外来

2010-01-24 10:27:22 | 家庭医療
久々の更新です

M&Mのプレゼンを2日後に控え、それどころではないのですが、何となく更新です

最近クリニックで小児があまりまわってこず

妊婦さんもゼロ状態が続いていたので

コーディネーターに要望を言いにいったところ

早速、妊婦さんの予約が入りました

はやりアメリカは言った者勝ち

というか、自分が知らないところで結構みんな

要求を言いまくっているらしいです


さて、今日の外来患者さんリストです
  1. 29歳女性 妊娠13週 妊娠悪阻,点滴をする
  2. 84歳女性 退院直後の心不全、糖尿病、下肢の潰瘍、高カリウム血症のフォローアップ
  3. 18歳女性 不安障害、うつ病。Strep throatの従兄弟の面倒を見たあと調子が悪いと来院。心因性の要因強し
  4. 1歳男児 発熱。両側性の中耳炎を繰り返す。耳垂れが悪化し今回も中耳炎の診断
  5. 46歳男性 突然の肉眼的血尿と排尿痛。結石、尿路感染も念頭に入れるが、atypicalなpresentationのため癌の除外も
  6. 17歳女性 咽頭痛、耳痛。中耳炎。抗生剤は処方箋を渡すも、全身症状無いため服用せずに数日様子をみるように
  7. 2歳女児 左結膜炎
  8. 25歳男性 健診
  9. 6ヶ月男児 全身性の発疹。風疹の診断。
  10. 4歳女児 風邪症状後の耳痛。中耳炎。抗生剤処方。同じく数日様子見を指示
  11. 16歳男児 脳しんとう

今日は感染症、中耳炎が多かったようですが

そこそこバラエティーに富んで、家庭医っぽい外来でした

アメリカの在宅診療

2010-01-15 09:02:52 | 家庭医療
仕事中にポケベルが鳴りました

指定された電話番号に電話すると、アテンディングのS先生

「Tさんが亡くなりました。安らかな最期だったそうです。御家族がチームのケアにすごく感謝していて、よろしくと言っていました。」

6日前、外来主治医のS先生、入院チームのレジデントである私とインターンの3人でTさんの家にお邪魔しました

退院2日後の、在宅診療です

患者さんは感染症で入院していたのですが、ベースに末期の心不全、認知症がある高齢女性

入院3日で感染症もメドがつき、退院となったのですが

退院にあたり、在宅ホスピスを選択されました

同じく高齢の夫と自宅で2人暮らし

何とか支えあって生きてきたので、どうしても家に帰りたい

近くに住む娘が、仕事の長期休暇をとって泊まり込み

在宅ホスピスサービスのサポートを受けるという形で退院となりました

リビングに病院用ベッドを持ち込み、横になっているTさんは

病院でみたよりも、和やかな顔をしていました

ベッドサイドに腰掛けたアテンディングのS先生はTさんに

「いつもはどのソファに座っているの?」などと話しかけながら、御本人の様子をアセスメント

同席した夫、娘、息子、ホスピスナースと現状の把握、困っていることなどを確認

処方箋を一つ一つチェックしながら、薬局からもらってきた薬を実際に一つ一つ手にとり

必要最低限に薬を削ります

結局、訪問は45分ほどに及びました

「How can I help you?」と最後は各自に問いかけて

「困ったことがあれば、いつでも連絡して下さい」とお別れをしました


S先生は基本、在宅をされません

必要に応じて年に数回だそうです

今回は、在宅ホスピス導入を円滑にすすめるための臨時訪問で

2回目以降の訪問は、基本的に予定せず

以降は、在宅ホスピスの看護婦さんが中心です

在宅ホスピスの看護婦さんとは、綿密に連絡を取りますが

「その看護婦さんと自分が綿密に連絡を取っており、いつでもサポートできますよ」ということを

患者さん、御家族にメッセージとして伝えることも今回の訪問の大きな目的です

以前書いたことがあるかもしれませんが

アメリカで医師が在宅をやることは稀で、殆どは訪問ナースが中心です

理由は単純明快、「診療報酬が安いのでペイしない(しにくい)」からです

それでも在宅専門クリニックはあるようで

日本の三つ葉クリニックのように、グループ診療を行い

今日はこちらの地域、明日はこちらの地域とかためて患者さん宅を回るそうです

アメリカは広すぎて、そうしないとかなりきついのです

ちなみにミシガン大の家庭医でも、老年科の専門医を持ったM先生がアクティブに在宅診療をされており

レジデントの研修要件として2件以上の在宅診療を課されている私たちレジデントは

M先生と在宅診療をすることがカリキュラムに組み込まれています

今回のS先生とのTさん宅訪問は

たまたま、退院後の訪問が計画されたので運良く同席させてもらったものです


やはり家に行くと、病院では全く見えなかったものがたくさん見えてきます

例えばTさん宅にはトイレが2階にしか無く、1階のリビングはポータブルトイレがおいてありました

トイレが無いということは、シャワーも2階で、Tさんはなかなか気軽にシャワーを浴びることも難しいでしょう

そういったことだけでなく、患者さんの表情がやはり違います

人間味あふれるというのでしょうか

例えばお孫さんと同居しているとか、御家族の様子も大事です

家庭医レジデンシーのアプリケーションに際し「田舎の町医者である祖父の訪問診療について行った幼少期の体験が、私の医師としての原点だ」と書いていたのですが

多少の受け狙いはあるとしても、それは本当の話で

自分は在宅が大好きなんだということを改めて再認識しました

Away Electiveはどこへ?

2010-01-11 23:55:20 | 家庭医療
ACGME(Accredition Counsil for Graduate Medical Eduation)の規定によって

Family Medicineのレジデントは、Elective(選択)ローテーションを3ヶ月から6ヶ月行うこととされています

ミシガンのプログラムではEleciveが4ヶ月あります

そのうち1ヶ月は、Away Electiveといって、外部で研修することができます

どこに行くかは自由ですが、Away Elective中も給料が出ますので

きっちりとした研修計画書を提出する義務があります

来年度のAway Electiveの計画書を秘書さんに提出する期限が迫っています

ミシガンは海外でのプロジェクトが多く、既に確立された選択肢が以下のようにあります

  • キューバ
  • ニカラグア
  • エクアドル
  • 日本(静岡)
  • ジャマイカ
  • ケニア
  • ウガンダ
  • ガーナ
  • Alpena, MI
  • state and national advocacy experiences

もちろん自分で新しい伝手を探して行くのもOKです

お産やSport Medicineも含めて、日本での現状を知るために

一度日本へ行きたいのですが

Electiveは、ウガンダかガーナに行って

日本へは休暇を使って行脚しようと目論んでいました

が、諸事情によりアフリカは諦めて

日本行きを決めました

まだ計画の段階ですので、何ともいえませんが

静岡に新しくできる家庭医プログラムに主にお世話になって

他,いくつかのプログラムを回らせて頂こうかと考えています

よろしくお願いします

回診の頻度について

2010-01-09 22:58:39 | 医療ネタその他
Twitter、Facebookと続いたやりとりから、考えさせられたこと

それは、「回診の頻度」

ある日、Twitterに「1日3回、回診をする」という書き込みがありました

「3回はすごいな~」と思いつつ

そういえば、日本では「患者さんを必ず朝夕見に行くように」という自分と同僚がいたと思いたち

ではここミシガンではどうしているかな?と考えてみると

大学家庭医病棟、チェルシー病院、大学小児科病棟、循環器病棟、全て1日1回が基本ということに気づきました

他のレジデントに聞いてみても、やはり同じ経験です

勿論、必要があれば何度も患者さんを見に行きます、当然

ただ、基本は午前1回です

何故かと言うと
1.忙しすぎて、物理的に全回診を1日2回は無理
2.電子カルテでの入院患者のノートは1日1回が基本

2.に関してはアメリカでの診療報酬の払われ方におおいに関係していますが

1日2つ以上のノートを書いても、全く収入にならないのです

逆に、1日1回書かれたノートの内容、濃度に応じて診療報酬が決まり、それがアテンディングの懐に直接入ります

まあ、2.はともかく、1.の忙しすぎるというのが現実かなあ~と自分なりに分析していたのですが

Facebookでアメリカ帰りの先生とのやりとりの中で、考え直させられました

その先生の施設(家庭医プログラム)では1日2回の回診が風土(文化)として浸透していたとのこと

夕方にサインアウト(引き継ぎ)をする前に、患者さんの状態を再チェックするのは当然という意見です

これは至極もっともです

ということで、早速チェルシー病棟の私のチームではインターンと

「朝夕1日2回、回診を基本ルールにしよう」と話し合いました

そしてこれを、自分たち家庭医レジデントの基本ルールに浸透させようと目論んでいます

とりあえずは、回診頻度と、患者ケアのクオリティに関するペーパーでもないか探してみましたが

Sit-down roundsの頻度が、ケアのクオリティに相関するというペーパーはあるものの

ベッドサイドroundの数に関するものは見当たりません

ベッドサイドに通う頻度を増やすのが良いことなのは、直感的に分かりますが

やっぱり大勢を説得するには、もっともらしいペーパーでもあればと思ったのですが

どなたか、ご存じないでしょうか?

病棟シニアデビュー

2010-01-08 20:02:43 | 臨床留学
明けましておめでとうございます

年明けの初更新です

年末年始は、デンバー(コロラド)でスキーをして過ごすことができました

全米一大きなスキー場に圧倒され、富士山頂に近い標高の空気に苦しみながらも、楽しくすべってきました


さて、今月はチェルシー病院の入院担当です

当病棟は、シニアレジデント1人(2年目)、インターン1人(1年目)、時々医学生Sub-I(4年生)そしてアテンディング1人で運営されています

そしてこれが、私のシニアデビュー戦です

Night Seniorという夜間の担当は経験しましたが、基本的に単独行動が多かったのですが

昼のシニアは、チーム全体をみなくてはいけません

病棟全体の運営と、インターンの教育両方に頭を悩ます毎日です

忙しいながらも、まずまずの1週目が終わりました

患者さんは、
  • CAP(community acquired pneumonia)
  • Cellulitis(cat bite)
  • Osteomyelitis w diabetic foot
  • CHF exacerbation with Afib RVR
  • Anaphylactic shock with ACS
  • presyncope
  • nephrolithiasis(腎結石)
  • co-mangement(整形の術後患者管理)
  • Consult(Head pain unitの患者の胸痛) などなど

特に興味深かったのが、cat biteとアナフィラキシーの患者さん

cat biteは教科書通りのPasuteurella multocida菌

アナフィラキシーの患者さんは、2回目のエピネフリフリン投与後に胸痛をおこし

心電図変化、トロポニンの上昇から緊急カテのため搬送となりました

カテの結果をまだ聞いていませんが、大変気になります