9月10日のブログ「前立腺がんと肺がん検診への厚生労働省の見解」で触れた話題をもう一度
厚生労働省の研究班が、「PSAによる前立腺がん検診は勧められない」という指針を出しました。
これに対して泌尿器科学会は猛反発していますが、
前回とはちょっと切り口をかえて書いてみます。
まずは前回のおさらい
ガイドラインの推奨度で「推奨しない」というのは正しくは、
検診が有効でない or 害が利益を上回るので推奨しない=D recommendation
というのと
根拠が不十分でどちらか分からないので結論が出ない=I recommendation
とあります。
本当はI recommendationなのに、D recommendationだととれるような今回の見解に対して
「まだ結論が出ていないじゃないか!どちらか分からないんだから、現状維持で検診をやらせてくれ!」
と泌尿器科学会が噛み付いたのですが、
「ちょっと待ってくれ!!」と言いたいです![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_ang1.gif)
前立腺がん検診が「良いか分からない」場合に「検診を続ける」のが正解なのでしょうか?
Evidence-Based Medicine(EBM)という言葉があります。
日本語では「根拠に基づいた医療」などと訳されます。
つまり「行っている医療が患者さんにとって良いかどうかちゃんと考えましょう」という当たり前の概念なのですが
日本に欧米から輸入され、自分たちが行っている医療の効果がしっかり検証されだしたのが、わずかこの10年あまりです。
ところが、健診(検診)を含めた予防医療の世界では全くと言ってよいほどこの概念が無視されています。
でもよく考えてみてください。
健康に及ぼす利益と害が五分五分の検査(治療)があるとします。
あなたなら以下のAとBそれぞれの場合、その検査(治療)を受けますか?
A.夜中に急に胸が苦しくなり、救急車で運ばれた病院で病気を診断され「この検査(治療)を受けてください」と言われた場合
B.普段なんの生活の支障もなくハッピーに暮らしていたが、職場で受けさせられた健診で「この検査(治療)を受けてください」と言われた場合
AとBの大きな違いは
1.症状があるか、無いか
2.患者さんがより自発的に医療を求めたか?
AとBで1.の違いは異論が無いと思います。
2.はどうでしょう?
Aの場合は、苦しくていてもたってもいられず自分から病院に行きます。
「助けてくれ~」と行くわけです。
Bの場合、基本的に日本で行われている職場健診は強制です。いやでも強制です。
ドックは強制ではありません。が、自発的に受けたとしても「医者がすすめるからこそ、普通の人はそれが自分の健康に良いと信じて」受ける訳です。
本来、病院なんかに来なくても,ハッピーに暮らしていた人ですから、ドックなど知らなければ,当然受けるはずはなかったのです。
このAとBの場合における1.2の違いがあるからこそ
予防医療(健診)こそほかの検査(治療)よりもより確たる医学的根拠が求められるのです。
つまり「この検査(治療)はあなたの健康にとって利益が害をうわまわりますよ」と言えなくてはいけない度合いがより高いのです。
実はこれ、EBMの大家であるDavid SackettがThe arrogance of preventive medicineという題の論文で書いていることなのです
タイトルを直訳すれば、「予防医療の傲慢」
「健康に良いかどうか分からないけどこの検診」受けろ
という現在の日本の医療界、健診(検診)業界全体の姿勢は
「傲慢」とはいいませんが、「プロとして無責任」だとは思いませんか?
厚生労働省の研究班が、「PSAによる前立腺がん検診は勧められない」という指針を出しました。
これに対して泌尿器科学会は猛反発していますが、
前回とはちょっと切り口をかえて書いてみます。
まずは前回のおさらい
ガイドラインの推奨度で「推奨しない」というのは正しくは、
検診が有効でない or 害が利益を上回るので推奨しない=D recommendation
というのと
根拠が不十分でどちらか分からないので結論が出ない=I recommendation
とあります。
本当はI recommendationなのに、D recommendationだととれるような今回の見解に対して
「まだ結論が出ていないじゃないか!どちらか分からないんだから、現状維持で検診をやらせてくれ!」
と泌尿器科学会が噛み付いたのですが、
「ちょっと待ってくれ!!」と言いたいです
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_ang1.gif)
前立腺がん検診が「良いか分からない」場合に「検診を続ける」のが正解なのでしょうか?
Evidence-Based Medicine(EBM)という言葉があります。
日本語では「根拠に基づいた医療」などと訳されます。
つまり「行っている医療が患者さんにとって良いかどうかちゃんと考えましょう」という当たり前の概念なのですが
日本に欧米から輸入され、自分たちが行っている医療の効果がしっかり検証されだしたのが、わずかこの10年あまりです。
ところが、健診(検診)を含めた予防医療の世界では全くと言ってよいほどこの概念が無視されています。
でもよく考えてみてください。
健康に及ぼす利益と害が五分五分の検査(治療)があるとします。
あなたなら以下のAとBそれぞれの場合、その検査(治療)を受けますか?
A.夜中に急に胸が苦しくなり、救急車で運ばれた病院で病気を診断され「この検査(治療)を受けてください」と言われた場合
B.普段なんの生活の支障もなくハッピーに暮らしていたが、職場で受けさせられた健診で「この検査(治療)を受けてください」と言われた場合
AとBの大きな違いは
1.症状があるか、無いか
2.患者さんがより自発的に医療を求めたか?
AとBで1.の違いは異論が無いと思います。
2.はどうでしょう?
Aの場合は、苦しくていてもたってもいられず自分から病院に行きます。
「助けてくれ~」と行くわけです。
Bの場合、基本的に日本で行われている職場健診は強制です。いやでも強制です。
ドックは強制ではありません。が、自発的に受けたとしても「医者がすすめるからこそ、普通の人はそれが自分の健康に良いと信じて」受ける訳です。
本来、病院なんかに来なくても,ハッピーに暮らしていた人ですから、ドックなど知らなければ,当然受けるはずはなかったのです。
このAとBの場合における1.2の違いがあるからこそ
予防医療(健診)こそほかの検査(治療)よりもより確たる医学的根拠が求められるのです。
つまり「この検査(治療)はあなたの健康にとって利益が害をうわまわりますよ」と言えなくてはいけない度合いがより高いのです。
実はこれ、EBMの大家であるDavid SackettがThe arrogance of preventive medicineという題の論文で書いていることなのです
タイトルを直訳すれば、「予防医療の傲慢」
「健康に良いかどうか分からないけどこの検診」受けろ
という現在の日本の医療界、健診(検診)業界全体の姿勢は
「傲慢」とはいいませんが、「プロとして無責任」だとは思いませんか?