今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

Mock Code

2009-03-28 01:59:14 | 臨床留学

小児科病棟研修では月一回、Mock Codeというものがあります


Mock Codeとは「小児蘇生の演習」とでも訳すのでしょうか?

 

当直の日の、暇な時間帯を見計らって


当直チームが持っているcodeベルがなり、シミュレーションセンターに呼び出されます


そこで子供の人形を相手に、チームで蘇生の演習をするのですが

この演習は主にチームのシニアレジデントが蘇生をリードすることの練習を目的としています


私たちインターンは、チームの一員として蘇生に加わります

 

私の役割は、気道確保と挿管でした


年度の始めにPALS(小児の心肺蘇生コース)をとっていたとはいえ


大人と比べると子供は、薬の計算やDCのジュール数の違いなどもあって


いきなりCodeを回せと言われても、今の自分では難しいことが認識できてよかったです

 

ちなみに当直中はCode pageを持ち、小児病院でのcodeではチームが呼ばれることになっているのですが、


CCUのときと比べても、実際にcodeが発生することも少なく


今のところ一度しか呼ばれていません


呼ばれていったところで、小さな部屋にあっという間に20人以上がひしめき合う状態となり

「挿管は必ず麻酔科医」というように、各手技の専門科が押し寄せてきますので

正直、Internは出番無しです

大人への手技は、日本でさんざんやったので良いですが

新生児の蘇生には不安がありますので

Electiveで、新生児の蘇生専属グループに所属する研修を選択しようかと考えています



アパートの公園にて、午後7時すぎでこの明るさ



小児科のカンファレンス

2009-03-26 18:29:33 | 臨床留学

小児科ローテーション中の良い点として、カンファレンスがあげられます


月曜日から金曜日まで、毎朝、毎昼、それぞれ一時間のカンファレンスが食事付きであります


家庭医のレジデントは新生児研修、小児科病棟研修、小児ER研修中にこのカンファレンスに出席をします


小児科病棟研修中は、当直明けの日や、特別忙しいときを除けば


このカンファレンスに出席できるように、回診の時間が組んであります

 

食事が出るというのは魅力なのですが、質がちょっと問題です


朝はベーグルとコーヒーが定番で文句は無いのですが


昼はラザニア、ピザ、タコス、スープとパンのローテーションです


ひどい時はサラダとパンのみ

飲み物はもちろんコーラ

 

「小児の肥満」というトピックで食生活の話題が中心だった日に出されたのが、ピザだったのには参りました


肝心のカンファレンス自体はケースカンファレンスや、小児科各専門のトピックで、まずまず興味深く聞けています


一方的な講義形式が多めなのがちょっと不満ですが、


日替わりでほぼ毎日レクチャーがあるこの環境を、ありがたく思う心が薄れている自分にふと気づいてしまいました



ようやくアパートのテニスコートがつかえる暖かさになりました



アメリカで最も頻度の高い病気

2009-03-23 23:21:38 | 家庭医療
先日診た、外来の患者さん

40代の女性なのですがBMIが40ぐらいの肥満とPCOS、高血圧症、高脂血症、甲状腺機能低下症などで同じクリニックの某アテンディングの外来に通院中

今回は、新しい職場(医療関係)に就職するためのHME(Health Maintenance Examination)、つまりは健診です


入ってくるなり「私もう、これ以上耐えられない、無理!」

「痩せる薬を出してもらえないなら、今日インターネットで自分で買うから」「主治医も変えるし」

「私はできることは全てやったのよ、栄養士とも食事の話はしているし、痩せるプログラムも挑戦したし。何をすべきか全部分かってるの」

「問題は、そんなことじゃないの!食欲(hunger)なのよ、食欲(hunger)!

「自分で言うのもなんだけど、もう自分の意思で何とかできるレベルじゃないのよ! なんとかしてちょうだい!」


結局この方は、他にも問題点がたくさんあり

1. 肥満: やせ薬は長期的ベネフィット無し。主治医と相談して、ダイエットの総合サポートをもう一度練りましょう

2. 高脂血症: スタチンを自己中断していたが、IHDの家族歴も濃厚なため、空腹時採血をしてスタチン再開を相談。

3. 左腰背部痛: 腰痛のエクササイズのパンフレットを渡す。

4. 甲状腺機能低下症:  採血フォローアップ。飲み薬の補充。

5. 乳房下の皮膚カンジダ感染: ナイスタチンクリーム処方

6. 癌のスクリーニング: 乳がん術後で半年ごとにフォローアップしているので、乳房の触診はパス。papsmearも最近やったのでパス

7. Immunization:  職場の要望によりツ反、HBS抗体チェック(マイナスならワクチン)

8. Health maintenance: カルシウムとビタミンD補充のパンフレット


結局、通常の枠以上にお話もしたのですが、肥満の話が解決されなかったので

この患者さんにとっては、不満が大きく残る受診だったようで

去り際の患者さんの顔が、それを物語っていました

努力をしていると言っても、こちらの人の食事をみていると介入の余地はたくさんあると思うのですが

何しろ自分自身が、この患者さんとは一回限りの関係だったことと

他にすることもたくさんあったので、深入りはできませんでした

(一応、患者さんが特定されないよう微妙にアレンジしています)

小児科病棟で診ている症例

2009-03-22 23:16:33 | 臨床留学
大学病院での研修の問題点は、洋の東西を問いません

教育のシステムとしては、大変行き届いていますが

患者層まではコントロールができないからです

すなわち、common diseaseよりも特殊な病気が多いこと

正確に言うと、「特殊な病気」ではなく「特殊な病態」です

commonなものはやっぱりcommonなので

たくさん診ているのは
 喘息
 RSVの細気管支炎
 ウイルス性胃腸炎
 新生児の敗血症疑い
 新生児高ビリルビン血症

ただし背景として
 「肝臓移植後の」、「short gut syndromeの」などがついていることが多いのです


(以下は自分のリフレクションのための覚え書きです)

他に担当した患者さんとしては  
  • 急性膵炎
  • Failure to Thrive
  • Tracheobronchomalacia
  • 潰瘍性大腸炎
  • Edward症候群
  • 膀胱尿管逆流
  • 薬物中毒(自殺企図)
  • 糖尿病(type1)
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • Blue Rubber Bleb Nevus Syndrome
  • Juvenile dermatomyositis
  • Generalized lipodystrophy
  • Beckwith-Wiedemann Syndrome
  • 川崎病

また当直時のcross coverとして他のチームの患者さんでよく遭遇するのが

  • 左室形成不全に対するHemi-Fontan手術
  • 大動脈縮窄症
  • seizure
  • 嚢胞性線維症
  • 肺高血圧症
  • ネフローゼ症候群

WBC

2009-03-18 06:06:05 | 時事ネタ
WBCはWhite Blood cellではなく、World Baseball Classic

せっかくアメリカにおり、高いケーブルテレビと契約してもいるので、日韓戦をみました

同じアメリカにいるのだから、まともな時間にみられると思っていましたが

時差が誤算

試合開始は午後8時ですが、当地は既に午後11時

当直前日なので、途中で諦めて寝ました

ちなみにこのWBC、自分的には盛り上がっているのですが、職場を含めて周りでの盛り上がりはイマイチ

というより、全く話題に上りません・・・

日本で言うところのオープン戦以下の注目度

職場で話題になるのは、大学のバスケットの試合ばかり

ちょっと前はアメフト

なんだかなあ・・・


アカデミー賞の授賞式で、おくりびとの受賞もリアルタイムで観たのですが

その他大勢の中の一コマとして、さらっと終わっていました

アカデミー賞の話題も、その日にあったしょーもないドラマの話題に負けていました

日本にいたらワイドショーで何度も流されて、日本中が大騒ぎの空気に包まれているんだろうなと想像します

思うにアメリカは娯楽がたくさんあり、個人が自分に興味があるものを個々で楽しむ感じ(唯一の例外はアメフトのスーパーボールぐらいでしょうか?)

日本は、国中あげて大騒ぎ

どっちがどうというわけではありませんが、

日本で国中が一つのことに熱狂するにしても、マスコミによって作り上げられた感が強く、好きではなかったのですが

国外に出てみると、ちょっと懐かしいです

頻繁にあるお祭り騒ぎと、あの妙な一体感は、意外と心地よいものだったのかもしれません

比喩が適切かわかりませんが、「個人主義の国に来て初めて分かる、集団主義の心地よさ」とでもいうのでしょうか?

春の訪れ

2009-03-17 21:44:53 | 時事ネタ
先週までマイナス10度の時もあったのが、今週に入って急に暖かくなりました

休みの今日は、何と最高気温20度

さっそく近所に住んでいるボリビア人の友人と、アパートのコートでテニスをしました





2週間前にサマータイムに切り替わったこともあり、太陽も午後8時頃まで出ています

昨年は4月にも雪が降ったそうなので、油断はできませんが

すっかり春めいてきたおかげで、「太陽を全く拝めず、外にも出られず」の生活から解放されて、皆がうきうきしています

小児科病棟のオンコール

2009-03-14 23:47:41 | 臨床留学
早いもので、1ヶ月の小児科病棟ローテーションも半分近くまでたどりつきました

この数日はサービスが少し暇になったことと、システムや人間関係に慣れてきたことで

同僚と軽口をたたいたり、シニアレジデントに自己主張をできるようになってきました


さて、今回はオンコールについて書きます

前回も書きましたが通常のチームはシニアレジデントが1人、インターンが2人、医学生が3人で構成されています

インターンは4日に一回当直をし、シニアレジデントは週末だけ当直をします

週末にチームの当直が無いとき、つまり平日の当直は全てナイトフロート(夜だけ勤務)のシニアレジデントと働きます


ところで各チーム、インターンが2人と書きましたが、私たちのチームはインターンが3人います

これはたまたまらしく、運がよい家庭医の同僚も何人かインターン3人のチームに入っているようです


オンコールの勤務は、朝から翌日の正午まで30時間ですが

インターンは2人だけオンコールです

もう1人はshort callといって、午後8時頃にお役御免で家に帰れます

そのかわり、翌日は夕方まで普通に働くことになります

そういうわけでQ4といっても、私の勤務はQ6ということになります

実際の業務内容ですが、当直のチームは朝から翌日の朝まで一般小児科の入院を全てとります

さらに各専門科の入院は、夕方の4時までは各専門科が所属するチームに入院しますが、それ以降は当直チームが翌朝まで入院をとって、翌朝に専門科に引き渡します

全般的なシステムは内科と同じなのですが、最大の違いはキャップが無いこと

キャップというのは1チーム、もしくは1人のインターンが受け持つことができる患者数の上限のこと

内科では研修の質、診療の質を守るため

キャップを超えた入院は、ホスピタリスト(レジデントの教育とは別にある、スタッフによる診療グループ)のチームが全て診てくれます

このキャップが小児科には無いため、理論上の入院数は無制限になります

通常は一晩に10人前後の新規入院数なのですが、

先月小児科をまわった同僚は、一晩に22人も入院があり

悲惨な一夜を過ごしたそうです

私が初めて当直をしたときは、チームで13人の入院でしたが、正直一杯いっぱいでした


さてこの当直ですが、小児科のチームでは暗黙のルールがあります

それは、当直チームのうち、当直を外れた人が、当直をしたメンバーの朝食を用意するというもの

short callだったインターン、当直じゃなかったシニアレジデント、あげくの果てにはアテンディングまでもが

コーヒー、ベーグル、クッキー、ケーキなどを持ってきてくれます

今日は自分がshort callなので、翌朝何を持っていこうか実は頭を悩ませています

小児科研修開始

2009-03-08 03:33:59 | 臨床留学
疲れ気味のため更新が滞っています

小児科研修が始まって1週間がたちました

オアシスの外科から、魔のQ4生活に逆戻りです

朝のサインアウトが6時半なので、日の出を拝めない生活に逆戻り

始まる前はさほど予期していなかったのですが、インターンの間では「CCU(循環器)よりもきつい」という意見もありますので

一般的には一番きついローテかも知れません

私にとっても久しぶりの小児科であることと、小児科は内科とシステムが違うことなどもあり、分からないことだら


レジデントが研修する、通常の小児科サービスは4チーム有ります

それぞれが、シニアレジデント1人、インターン2人、医学生2、3人で構成されています

4つのチームは専門に分かれており

例えば私のチームは消化器/内分泌/感染症チームです

患者さんは各専門科に割り振られるか、一般小児科に属するかで

一般小児科は当直の時に診たチームがみることになります

ですから私のチームには一般小児科/消化器/内分泌/感染症の4つの科の患者さんが混在することになります

今のところの比率は60% : 30% : 10% : 0% となっています

それぞれのサービスにアテンディングがいますので

max4人のアテンディングと回診をすることになります

よそから新たに入り込む家庭医のインターンにとっては、まずは慣れるのが大変

一緒に働く小児科のインターンは既にこのシステムになじんでいますので、チーム内での働き具合がかなり違います

要するにこちらは「まだ使えない」状態

何とかサポートしてもらいながら1週間が過ぎましたが

早く慣れなければ・・・