今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

帰国しています・三重で家庭医をしています

2012-09-06 22:08:46 | 家庭医療

ながらく更新していませんでしたが、2011年の7月に帰国し

 

三重県津市で家庭医として働いています

 

三重大学家庭医療研修プログラムとみえ医療福祉生活協同組合の指導医として研修医や医学生の教育にも携わっています

 

現在の職場のホームページと、ブログもありますので興味のある方は下記へどうぞ

 

http://www.tsucoop.jp/takachaya-cl/index.html

 

 


米国医学生による家庭医不要論

2011-02-06 23:07:57 | 家庭医療

大層な、タイトルを書きましたが

 

実はミシガン大の1人の医学生が、ふと口にした何気ない一言を、私が頭の中で増幅させただけです

 

 

ある日、クリニックで実習中の医学生と隣同士の席に座りました

 

診療の合間のわずかな時間で

 

「はじめまして◯◯です」

 

「やあ、元気?レジデントの◯◯です」

 

「僕は日本から来たんだけど、日本ではまだ家庭医がメジャーじゃなくて。ニーズはあるからこちらでトレーニングして、日本での普及に一役買いたいんだ」

 

などと話すと、医学生の彼が曰く

 

「へえ~、それはアメリカと逆ですね。アメリカでは家庭医のニーズはどんどん減っているというのに。家庭医の仕事は、どんどんナースプラクティショナー(NP)とかにとってかわられているから。」

 

「はあ?」と思ったのですが

 

彼を指導する立場でもなく、診療の合間のわずか1、2分だったので

 

ムキになって反論することもせず、それ以上に話を深める事も無く終わったのですが、ずっと頭に引っかかっていました

 

件の医学生は、バリバリの専門医志向で

 

彼の分析に私は全く同意するつもりはありませんが

 

表面的なレベルでは、彼の言っている背景も確かに理解できます

 

 

アメリカの医療現場では、何でもかんでも、分業がすすんでいます

 

それもこれも、「高額な医療費を押さえるため」です

 

すなわち、一番人件費の高い医者の仕事を「純粋に医者しかできない事」に集約させることが徹底されています

 

心臓外科の手術が良い例です

 

バイパス手術では、開胸、グラフト採取、術後管理などは人件費の安いPA(Physician Assistant)に任せて、術者である外科医は肝の部分だけに集中します

 

そうする事によって、外科医は一日に何件も手術をこなします

 

こうして考えると、家庭医の仕事には「絶対に医者じゃなければダメ?」という質問に対して

 

「う~ん、そうでもないけど」・・・という内容が結構含まれています

 

事実、アメリカの地域では半径数十キロにわたって医師が1人もおらず

 

PAが遠隔地の医師の指導のもと(という建前で)、実質上地域の健康を守っている事もあります

 

 

確かに、高度な専門手術での分業はメリットが大きいでしょうし

 

家庭医の場でも、必要に迫られての分業はあります

 

ただ、分業がすすんで「家庭医はいらなくなる」とか「ニーズが減る」という考えには全く同意できません

 

分業がすすむからこそ、

 

1人の患者さんのケアをコーディネートする医者、地域のケアをコーディネートする医者が必要で

 

それが家庭医という仕事なのです

 

今やっている仕事、業務の内容が、10年、20年後も全く同じであるとは思いませんし

 

必要に応じて、変化をしていかなければいけませんが

 

分業化の世の中だからこそ、その弊害をカバーするジェネラルなマインドの医者が、ますます必要なのです


大学に家庭医療科があることの意義

2011-01-24 00:41:24 | 家庭医療

今年のミシガン大医学生のうち、家庭医療科にすすむのは15-7名とみられています

 

一学年が170人ですので、1割弱

 

これを多いととるか、少ないととるか

 

実は、例年と比べて今年はかなり多いようです

 

家庭医療科選択者が一桁台の年も有るようですので、今年はアテンディング達も喜んでいます

 

全米の医学部の中には3割近くの学生が、家庭医療科を選択する学校もありますが

 

ミシガン大学は一般的に、プライマリケアよりもいわゆる「臓器専門科」優位の学校です

 

ミシガン大学の家庭医療科は、全米の医学部で最も多くの指導医陣を擁し

 

医学生からの実習評価では10年以上にわたり、専門科の中で一番の評価をされています

 

指導医の先生方も、chairのシュウェンク先生を始め、尊敬できる方々が大勢いらっしゃいます

 

それでもやっぱり、多くの医学生は臓器専門医の道を選ぶのです

 

確かに専門医の質がおしなべて高く、他科にも尊敬できる先生方が大勢いらっしゃるのでしょう

 

それでもやっぱり「収入」という要素が否めません

 

プライマリケア医の給料は、放射線科、眼科、心臓外科などの高給取りの先生方の数分の一ですから

 

 

まあ、それは置いておくとして

 

「大学、大学病院、医学部に家庭医療科が存在する事の意義」です

 

家庭医療科を進路の選択肢として選んでもらうということは、勿論、大きいです

 

また、大学という事でリサーチも大きいでしょう

 

でもそれ以上に大きいのが、プライマリケア医と専門医がどのようにかかわり合っているか

 

臓器専門医を選択した彼ら医学生が、将来、どのようにプライマリケア医とかかわっていくか

 

臓器専門医として、信頼できるプライマリケア医がいるのだということを知っておいてもらう事

 

そういうことが大事なのです

 

勿論、「プライマリケア」ですから主戦場は地域,クリニックでなければいけません

 

ミシガン大も大学に病棟を運営していますが

 

あくまでもメインの所属は郊外に5つあるクリニックです

 

日本の大学でも、家庭医療科は大学病院の外にあるクリニックを主戦場とし

 

臓器専門医とうまくかかわり合いながら

 

医学生のロールモデルとなる

 

それが大学に置ける家庭医療科の使命だと感じています


今月はsports medicineローテ

2011-01-18 18:36:14 | 家庭医療

遅ればせながら,明けましておめでとうございます

 

久しぶりの更新です

 

数ヶ月更新していなくても、結構な人数の方にアクセスして頂いているようで恐縮です


情報発信が、Facebook→Twitterと移行して


ブログの更新がどうしても滞ってしまうのですが


Twitterはどうしても、その場で情報を垂れ流し気味で、あとから見直すのも大変です

 

Facebookはもう少しまとまっていますが、日本の友人,アメリカの友人半々が対象で

 

情報発信がクローズド気味です

 

自分の中でもある程度まとめてとどめておいたうえで、不特定多数に発信したい場合は、やはりブログが良いかもしれません


ということで今回は久しぶりに現状報告


今月はSMO2というローテーションです


Sports Medicine Orthopedics の2回目ローテーションを略してSMO2です


ローテーション中は、5人いるsports medicineの指導医のうち3人の外来にそれぞれ半日ずつつきます

 

家庭医系のsports medicine医はオペをしませんので関節注射、リハ、シーネ固定,薬物治療などを主に行い

 

オペ適応になれば整形外科医に回します

 

クリニックで働いていますので、超急性期の外傷が少ないというセレクションバイアスがかかりますが

 

整形外科医に回される患者さんは意外と少なく、1割程度でしょうか?

 

その他は,家庭医のスポーツ整形外来で診療が完結します

 

肩、腕、手、腰、膝,足のオンラインモジュールで復習をしながら

 

日々,遭遇する患者さんのケアをしていきますが

 

どうしても疾患頻度に偏りが有り、肩,膝の患者さんが多くなります

 

ローテーション中は、他にも週1日は地域病院の整形外科グループの外来につきます


ここでのポイントは、あくまで外来につくのであって、オペ室には入りません

 

コンサルテーション後の患者さんがどのような経過を辿るかを知る,貴重な体験です

 

Rotator Cuff Injuryのオペではsupraspinatusの損傷が9割以上を占めるなど

 

外科系外来じゃないと実感できないことがみえてきます

 

今月はこれらsports medicineがらみの外来が週に計5コマ

 

他は1コマが水曜午前のカンファレンス

 

残り4コマが自分のクリニックでの外来です

 

私はうち1コマが日本人クリニックでの診療になります

 

週の半分はsports medicineの患者さんを診ながらも

 

日本人クリニックでは妊婦さんのグループけんしんをやったり

 

お産で呼ばれたり、新生児、小児の健診

 

月に1回はいつものnursing home visit(長期療養型老人施設の診療)など

 

バラエティーにとんだ日々です


そしてこのSMO2のもう一つの大きなイベントがGround Roundでのトークです

 

Ground Roundでの発表については次回書きたいと思います


10月はElective

2010-10-02 08:56:33 | 家庭医療
10月はElective(自由選択)です

もともとは、Away Electiveを静岡でやる予定でしたが

予算の関係でrejectされてしまったので、半ばいじけながら

Ann Arbor周辺での研修を計画しました

テーマは外来関係で「これまでの研修で自分に足りないもの」


このまま卒業すると心もとない分野がどこかをまず考えると

1. OB/GYN エコーとIUDなどの手技
2. 小児科
3. 手技(皮膚系)
4. Sports Medicine

ということで上記の1-3を今回のelectiveでカバーしました

月から金まで週10コマの半日

うち3コマがチェルシーの外来、1コマが日本人クリニックの外来

そして水曜午前のカンファレンス

残りの5つを自由に使えます

一コマはリサーチ

シニアプロジェクト2つと、個人的にグラントをとったリサーチの計3つを少しでもすすめる必要があります

そして一般小児科外来が一コマ、Developmental & Behavioral Pediatrics外来が一コマ

あとは大学のPAC(perinatal assessment center)でのOBエコーと、若者向けの無料クリニックでのOB/GYNを組み合わせて週一こま

そして外来手技のクリニックが一こまです


PACについて少し書きます

アメリカでは通常、家庭医であれ産婦人科であれ、妊婦けんしんでルーチンのエコーをとりません

Trimesterごとに1回とれば充分と判断されており

平均的には、初期にdatingを主な目的として1回

中期以降にFetal Anatomic Surveyを1回ルーチンにとります

勿論、問題が有ればエコーをしますが、順調であれば診察ごと毎回はしません

そのかわりFetal Anatomic Surveyはかなり厳密に行われており

相当なトレーニングを積んだ技師や産婦人科医が、AIUM(American Institute of Ultrasound in Medicine) Practice Guidelineに基づいて

かなり細かくみています


ということで初日はそのFetal Anatomic Surveyにつきましたが

相当の細かさに驚きました(30分から1時間かけます)

多くの家庭医がfetal anatomic surveyには手を出さず(自分でやる先生もいますが)、大学のPACに外注しています

このような診療パターンが日本で可能かどうか

ちょっと考えさせられました

次のPAC研修は、BPPとAFIをひたすら習得するのが目的です

MSSローテーション

2010-08-29 12:20:55 | 家庭医療
すっかり情報発信がTwitterとFacebookにかたよってしまい、ブログの更新がひさしぶりになってしまいました

今月はMSSローテーションです

MSS
とはMedical Subspecialtyの略です 

要するに他科の外来をいくつか回るという外来ローテーションです

スケジュールは以下の通り 

             午前                午後            夜間

月曜日  神経内科外来         家庭医外来 
火曜日  内分泌内科外来       循環器内科外来 
水曜日  カンファレンス       眼科外来 
    FMB (お産当直) 
木曜日  直明け休み 
金曜日  耳鼻科外来      家庭医外来 

そして各外来の簡単な説明です

神経内科外来 

グループ診療をしている開業神経内科医につきます 

パーキンソン、頭痛、不眠、脳梗塞後遺症、認知症、
MSなどの患者さんを診ます 

大変ゆっくりとしたペースの診療です 

日米の違いを垣間みることができ興味深い経験でした 


内分泌内科外来 

チェルシーのクリニックに、週
1回来てくれている大学内分泌の先生につきます 

糖尿病、甲状腺疾患が主 

インスリン注射の部位を必ずチェックするなど 

家庭医指導医とは普段話題に上らない注意点がためになります 


循環器内科外来 

昔循環器をやっていたので医学的にはあまり学びがありませんが

日米の違いを垣間みることができて、良い経験になりました  


眼科外来 

大学の先生ですが、眼科センターではなく市内のサテライトクリニックでの診療です 

その意味では眼科医の
common diseaseを多く診ることができました

眼瞼炎の患者さんが多いのが割と大きな発見でした 


耳鼻科外来 

大学の耳鼻科外来なので正直
common diseaseではありません 

主につくのが頭頸部癌担当の先生 

他に耳を専門とする先生にもついたのでそれなりにバリエーションがありましたが 

正直、大学病院外でローテーションしたいところです 


procedure 外来

2010-06-20 00:13:14 | 家庭医療
FPOローテーションのコアであるprocedure(手技)外来は

木曜と金曜の午前にあります

各クリニックでは、レジデントの教育のために、予約の外来手技を週1回の決められたコマになるべく集中させます

その外来はアテンディングとレジデントがマンツーマンで診療を担当します

手技の種類は以下が主です
  • 皮膚生検(shave biopsy, punch biopsy, excision biopsy)
  • 皮膚病変切除(皮脂嚢胞、皮膚がん、懸垂繊維腫など)
  • 液体窒素による寒冷療法(AK, wartなど)
  • 産科エコー
  • 精管切除
  • 陥入爪切除
  • ステロイドの関節注射

多くの手技が皮膚絡みですので

皮膚科外来の研修と同時期にできているのは大変ためになります

さすがに精管切除術は、日本で続けることは無いと思いますが

陥入爪切除術、関節注射などはしっかりマスターしたいところです

ちなみに、婦人科がらみの外来手技(コルポスコープ、子宮内避妊具の装着など)は、Women's Healthのローテーションのときに研修することになります


研修の方略として、精管切除術と皮膚生検はそれぞれオンラインモジュールがあり、また必須の課題論文も10ほど指定されています

課題論文のうち二つは、手技外来を担当する2人のアテンディングがそれぞれ書いたものですので

彼らと働く直前にこれを読んでおくのは「必須」です

Essentials of Skin Laceration Repair<o:p></o:p>
Management of the Ingrown Toenail

皮膚科外来

2010-06-18 23:45:10 | 家庭医療
ミシガン大家庭医が運営する5つのクリニックのうちの一つ

Dexter Family Practiceで、皮膚科の先生が週に数回、非常勤として皮膚科外来を開いています

FPOローテーションでは、この皮膚科外来に週2コマつきます

うち1コマは皮膚科レジデントが2人いますので、自分は完全に指導医のshadowingです

もう1コマは皮膚科レジデントが1人なので、自分も単独で診療をしてpreceptingしてもらうかたちです

遭遇している疾患で目立つのは以下です
 
  • 皮膚がんチェック
  • 脂漏性角化症( seborrheic keratosis: SK )と日光角化症(Actinic keratosis : AK)
  • 乾癬
  • 有棘細胞(扁平上皮)癌(SCC)
  • 基底細胞癌(BCC)
  • メラノーマ
  • ニキビ
  • 酒さ(Rosacea)
  • アトピー性皮膚炎
 
Dexterが白人のコミュニティーなことも関係しているのでしょうが

患者さんは殆ど白人で

皮膚がんチェックが圧倒的に大多数を占めます

SK, AKの鑑別とBCC, SCC, menalomaの診断

そしてサンスクリーンの徹底と、月一回の全身皮膚セルフチェックの指導がひたすら続きます

さすがにSK, AK, BCC, SCC, melanomaは見た目でかなり判断がつくようになってきました

これを日本へ帰国後、日本人の患者さんの診療にどのように活かすかが課題ですが・・・

FPOローテーション

2010-06-01 07:43:28 | 家庭医療
久々の更新です

最近はTwitterとFacebookへの書き込みがほとんどになってしまい、ブログの更新がおろそかです

ブログはブログとしての活用があるはずなのでそれを模索しているのですが・・・


さて本題です

5月の後半と6月いっぱいはFPOローテーションです

FPOとはFamily Practice Outpatient and Procedureの略です

Procedureとは外来で行われる様々な手技の事で

実際には皮膚生検、アテローム除去術、嵌入爪の手術、パイプカット、OBのエコー、S状結腸鏡検査などなど

具体的な週のスケジュールは以下です

月 午前   放射線科読影
  午後   家庭医外来(日本人クリニック)
火 午前   皮膚科外来
  午後   泌尿器科外来
  夕    FMB当直(お産)
水 午前   カンファレンス(義務ではないので帰宅も可)
  午後   休み
木 午前   Procedure clinic (@ Chelsea Clinic)
  午後   皮膚科外来
金 午前   Procedure clinic (@Ypsilanti Clinic)
  午後   家庭医外来(Chelsea)

他に月1-2回、ランダムといってチェルシー病棟やお産の24時間当直が土曜日に入ります

割と盛りだくさんの月ですので、詳細は別に書きたいと思います

Group visit

2010-05-04 15:00:00 | 家庭医療
最近流行の診療にgroup visitというものがあります

例えば妊婦さんや慢性疾患(糖尿病、COPD、喘息)の患者さんを対象に

複数の患者さんを同時に診療するものです

旧来の1対1の診療と比較して様々なメリットがあります

基本的にはグループに対して介入するので
  • 一人一人の患者さんと多くの時間を共有できる結果、学習が促進される
  • 患者さん同士のグループ内の結束による相互サポート
  • 結果として自己管理の向上
  • コスト削減

妊婦さんのグループ健診では

  • 妊婦さんの高い満足度だけでなく
  • 低出生体重児の減少
  • ER受診の減少
  • 早産の減少
  • 母乳育児率の増加
  • 妊婦の知識の増加

などが証明されています

重要なのは、これは「教室」ではなく「グループ診療」であることで

個人診察とグループ内でのディスカッションが診療の中心で

一方的なレクチャーは最小限にし、医療者はfacilitatorに徹します


グループ型の妊婦健診にはCentering Health Instituteという団体が促進している

Centering Pregnancyというモデルがあります

日本語での紹介サイト


そしてミシガン大の日本人クリニックでは今月からグループ型妊婦健診を開始します

この診療の導入は私のシニアプロジェクトにもなっており

先週末には、前述のCentering Health Instituteが主催するCentering Pregnancy導入のためのワークショップに参加してきました

オーランドでの2日間のワークショップでしたが

クリニックから空港へ直行し

ワークショップ会場から帰りの空港へ直行

そして翌朝から当直という強行スケジュールでしたが

参加者は自分以外全員女性、しかも多くが助産師さんという異空間で

なかなか貴重な体験をできました

感触としては、これからの診療形態として「アリ」なのではと感じています

日本で「診療」としてみなされるかをクリアしなければいけませんが

こちらでうまくいけば、是非日本に持ち帰りたいものです

Sports Medicineローテーション

2010-04-10 14:29:23 | 家庭医療
バカンスから戻ってみると、アナーバーはフロリダと同じ気候に変わっていました

連日の20℃越えによろこびつつも

わざわざフロリダまで行っていたので、複雑な気分です

さて、今月はSports Medicineローテーションです

Sports Medicineは、家庭医のsupspecialityのなかで

ACGMEが認定しているものの一つで

ミシガン大のsports medicine fellowshipも、比較的評判の良いプログラムのようです

レジデントのローテーションは基本外来です

1週間のスケジュールは

半日を1コマとして

  • sports medicineのアテンディングとの外来が3コマ(3カ所のサイトで別々の先生につきます)
  • PM&R(Physical Medicine and Rehabilitation)外来1コマ
  • リハビリ1コマ
  • 放射線科読影1コマ
  • カンファレンス1コマ
  • 自分の外来2コマ
  • 栄養指導1コマ(なぜかsports medicineローテに含まれています)
Sports medicineはあまり良い教科書が無いようで

Physical examination of the spine and extremitiesを購入しましたが



あまり使っていません

プログラムで開発した上質のlearning moduleが下記のトピックでありますので

それを毎日みています

Foot and Ankle Examination Unit
Hip Examination Unit
Elbow Examination Unit
Hand & Wrist Examination Unit
Shoulder Examination Unit
Knee Examination Unit
Joint Injection Unit

それぞれ、pre-test、身体診察のビデオ、鑑別診断の解説、post-testで構成されており

卒業後も是非利用させてほしいほどの出来です(残念ながらlog inが必要な職員限定ですのでブログには載せられません)

他にはrequired readingがありますが、公開されている総説論文が中心ですので載せても問題ないでしょう


Joint and Soft Tissue Injection


Preparticipation Athletic Evaluation

The Athletic Preparticipation Exam: Cardiovascular Evaluation


Assessment and Management of Concussion in sports


Management of Head and Neck Injuires by the Sideline Physician 


Childhood and Adolescent Sport Related Overuse Injuries


Common Overuse Tendon Problems

Braces and Splints for Musculoskeletal Conditions


Commonly Missed Orthopedic Problems


Radiographic Evidence of Arthritis


Osteoarthritis of the Knee

Intraarticular Hyaluronic Acid in treatment of knee Osteoarthritis


Viscosupplementation for the treatment of osteoarthritis of the knee.: Cochrane review


久々の当たり当直

2010-03-08 14:07:05 | 家庭医療

アパート前の残雪です

この数日、急激に温かくなってきました

気温が摂氏10度にもなる日は暑いです

半袖で歩いている人もいます

そしてこれが24時間ぶりのまともな食事



日本から送ってもらった、博多ラーメンに

ありあわせの牛ミンチのニンニク炒め、チンゲンサイ、わかめ、半熟たまご

紅ショウガとごまを浮かべて出来上がり

海外で欲しくなるのはおいしいラーメン


日曜日は朝から24時間当直でした

といっても午前中アテンディングと回診してからは

新規入院と、入院患者さんの急変対応なので

日本で言うところの休日回診当番と24時間待機

当直時に急変や重症が多く「つく」人はこちらではblack cloudと呼んでいますが

私は経験上、その逆のwhite cloud (これもおそらく内輪の造語)

私がいるとサービスが落ち着くので、まわりから喜ばれます

ところが昨日は、回診をすませて一旦家に帰り昼食をとったあと

夕方、新規入院で呼びもどされてから

比較的重傷者の入院が重なりました

最初は救急から「急性膵炎」と受けた30台の男性

アルコールは飲まず、全く既往歴もない、薬、ドラッグとも無縁な男性

数日の腹痛で来院ですが、CTで膵尾部周囲に炎症像があるも

アミラーゼ、リパーゼ上昇は無し、血糖は300台

電話で申し送りを受けた時はなんとなく「おかしい」と思っていたのですが

患者さんと話をして、新たな所見が二つ

  •  1ヶ月まえから多飲、多尿、10kgの体重減少
  •  同じく数週間前から全身に発疹

HbA1Cを出してみると案の定 13以上

膵炎後の血糖上昇ではなく

DMの発症が先のようで

尿ケトン、代謝性アシドーシスの所見などから軽症のDKA

発疹は赤みが少ないので目立たないのですが

よく見ると水泡状のものから、痂皮化したものまで頭皮内も含めて点在し

赤みが少ないこと以外はまるで水痘のようです

本人は幼少期に水疱瘡に罹患した記憶が有り

まあそれでも二度目の水疱瘡も無くはないし

水痘のcomplicationで膵炎も稀ながらあるようです

結局

  • 腹痛(急性膵炎)
  • 糖尿病、DKA
  • 発疹(水痘?)

この三つのからみが??の状況で

ICUに入院してもらい

膵炎としてNPO
DKAの治療をしつつ
水痘疑いでdroplet precaution、ゾビラックス投与、翌日IDコンサルト

さらに興味深いのが

総コレステロール600台後半、トリグリセリド3000台

Diabetic Lipemiaです

それによる二次的な膵炎発症でしょうか?

などと考えているうちに

救急から連絡が入り

「入院です。3人お願いします。」

「1人は服薬で挿管しています。あと2人もICUに入れた方が良いかも。」

「こっちは1人なんだから、重症3人いっぺんに渡すなよ!」と呪いながら走り回っていると

アテンディングが件のDKAに興味を持って再来院

アテンディングは朝の回診をすませたあとは、帰宅して再来院することはめったにありません

よほど重症患者でも

患者さんの状態に興味を持ったのと、たまたまフットワークの軽い若手アテンディング(プログラムディレクター)だったので来てくれました

結局ICUには2人しか入らず

他の2人は落ち着いたので一般病床管理となりましたが

ICUの2人の管理で断続的に時間をとられ

睡眠を殆ど取れず翌朝帰宅

前日の夕食は全くとっていなかったのですが

食べた直後に寝るとGERDが悪化するので

朝食をとらずそのまま就寝

昼過ぎに起きて、24時間ぶりのまともな食事、ラーメンを堪能

今はそんな月曜の昼下がりです

今晩から4連続で午後7時入りの夜勤です

やはり老体には応えます

CNSローテーション~ナイトシフト

2010-03-03 13:15:38 | 家庭医療
3月の前半はCNS

CNSとはChelsea Night Seniorの略

チェルシー病院家庭医病棟の夜勤(ナイトシフト)です

以前も書きましたが、ナイトシフトはmole(もぐら)と呼ばれます

太陽をみることがほとんど無いからです

ただでさえ日照時間の少ないミシガンの冬にmoleはつらいのですが

家庭医病棟が大学病院、市中病院二つにあり、お産病棟も独自に運営しているため

レジデント2、3年目は年間ある程度のmoleをこなさなくてはいけません

ちなみに2年目の私には大学のmoleが2週間 x 2、チェルシーのmoleが2週間 x 1回まわってきます

2週間のmole生活が終われば、2週間のバカンス(カリブクルーズ予定)が待っていますので

耐え忍ぶのみです

ちなみに1週間のスケジュールは

  • 日曜日 7AM-7AM (24時間)
  • 月-木  7PM-7AM (12時間)
  • そして金曜日朝当直あけ午前中が外来
  • 土曜日いっぱい休み

大学の病棟ナイトシフトは本当につらいですが

実はチェルシーのナイトは以外と楽(多分)

というより当たり外れが有ります

一晩での入院は平均1-2人なので運がよいと新規入院ゼロの夜も有ります

そして入院患者さんがICUに入っておらず安定していれば

病院に必ずしもいなくても良いことになっています(大学病院は病院張り付きが必須)

つまり同僚からのサインアウト(引き継ぎ)も電話

救急からの入院受け入れ、入院時指示も電話でOK

入院中の患者さんについても、大学病院と比べると看護士さんが自立しているので、よほどのことでないと呼ばれません

もちろん救急からの入院受け入れに関しては

救急の先生の診たてとサインアウト(引き継ぎ)をどれくらい信用するか

患者さんがどれだけ安定しているかによります

落としどころとしては、

病状が安定している真夜中の入院は、とりあえず電話で指示をしておいて

明け方早めに病院入りし、患者さんを自分でみてから指示のmodifyと入院時カルテのdictationをすませて、7時に引き継ぎ

いずれにせよ、本人の自信度によって家で仕事を済ませられます

こうしたルールは、実践的な意味で設定されています

つまり将来、田舎で病棟を受け持つ家庭医ともなれば

夜中に入院患者さんが入っても、翌朝に外来があることを考えれば

患者さんの病状次第で、必ずしも夜中に病院入りすることが得策とは限りません

そうした将来の診療パターンに備えるという意味で、大学病院以外の地域市中病院に病棟を持っていることは

レジデントのトレーニングとして大きなメリットとなっています

ストレスクリニック

2010-02-28 10:53:04 | 家庭医療
BCMもいよいよ終わりですが、最後にこのローテーションの肝のセッションについて書きます


毎週木曜午前、午後のストレスクリニックです

 

ストレスクリニックとは、レジデントの教育と患者サービスをかねて


プログラムのpsychologistの先生が作ったセッションで


日常のストレスによってうつ病などを悪化させている患者さんに対して


ストレス要因を明らかにし、それに対する具体的なrecommendationを行うものです


新患は1時間、再診は30分の枠で


psychologistの先生とレジデントが診療を行います


通常のカウンセリングは、長期にわたるものが多いですが


このストレスクリニックは、初回のセッションでpracticalな解決法を提示し


2、3回のセッションで終了が多く


ミニカウンセリング、クイックカウンセリングといったかんじです


長期のカウンセリングが必要と判断されれば、勿論それもrecommendationに入ります


このクリニックで用いられる技法を、普段の15-30分の診療の中にレジデントが取り入れることを主眼にしており


提示されるrecommendationはいずれもシンプルで、自分たちでもやりやすいものです


シンプルだからといって有効でないという訳でもなく


再診の患者さんと話をしていると


結構役に立っているようです


具体的なrecommendationは、メモに書き出して各患者さんにリストアップして渡しますが


概要を以下にまとめます


太字アンダーラインのところが頻用するもの


Educational Strategies

  •  Anticipatory guidance
  •  Bibliotherapy – recommend readings
  •  Patient education
  •  Support groups and classes


Behavioral Strategies

  •  Writing assignments – lists, letters, journals, symptom logs  emotional journalingが多い
  •  Behavioral rehearsal
  •  Assertiveness training
  •  Physical activity公的なレクリエーションサービスの提案、図書館でのヨガDVDなど
  •  Scheduling / Time management 
  •  Anxiety reduction
  1.    Thought stopping – STOP! Technique
  2.    Time limits
  3.    Situational Limits環境と時間を限定してあえて心配する時間を作る, deep breathing と組み合わせて

Cognitive Strategies

  •  Normalization
  •  Identifying distortions
  •  Rational substitution - 2.3cognitive therapyになりますのでstress clinicではあまり掘り下げません
  •  Use of affirmation – post it などに書き出して張り出す


Referral

  •  Support groups -患者サポートグループ、ローカルの大人向け市民講座
  •  Educational groups – relaxation classes, parenting groups
  •  Vocational rehabilitation
  •  Mental health – カウンセリングなど

 

このクリニックのメリットとしては


1. レジデントが実践的なrecommendationを学べる

2. 通常の診療では掘り下げることのできないストレス、生活背景を探り、有効なrecommendationを提示できる

3. 長期のカウンセリングを必要とはしないが、ストレス要因が強い患者さんに有効

4. 保険の制約でカウンセリングを受けられない患者さんに良い(アメリカでは保険の種類によってカウンセリングが受けられない人が多いのですが、このセッションはfamily medicineの通常の診療としてbillされるのでカバーされます)


Cognitive Behavior Therapy 認知行動療法

2010-02-26 13:27:15 | 家庭医療
BCMローテーションも今週で終わり

金曜午前は、予定が入らなかったので「認知行動療法」を学びたいと希望をしたところ

あいにくちょうど良いセッションがスケジュールされておらず

家庭医プログラム専属のpsychologistが

午前中いっぱいマンツーマンでレクチャーしてくれることに

なぜ「認知行動療法」を希望したかと言えば

日本でのこれまでの経験から

うつ病、パニック障害などの治療には、

長期的にみれば抗うつ剤単独よりも、認知行動療法単独もしくは抗うつ剤との併用の方が成績が良いことが分かっているにもかかわらず

「認知行動療法」をしている施設が限られ

紹介するにもできず、困っていました

自分でやってみようかと、独学で勉強するも

書籍例:いやな気分よ、さようならー自分で学ぶ「抑うつ」克服法




実際、10-15分の外来ではどうしたら良いかも分からず

結局SSRIを出しておしまいというのが日本での状況でした

そんな状況から「10-15分でできるミニ認知行動療法は無いのか?」というのが私の問い


そこで認知行動療法の概要から始まり

認知療法、行動療法を

うつ病、パニック障害、OCD、GADに対して

どのようにapplyするかという実践的な話をしました

以下は自分のためのまとめ

リラクゼーションのために作ったMP3の録音もいただきました

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CBT vs 精神分析
 CBTはwhyではなくHowにfocus


Cognitive
                                dysfunctional thought
      Events(trigger)                  --->                    reaction

Behavior
  1.    Event(A)   ---->   reaction    -----> Event (B)       +reinforcement

    then     Event(A)   ---->   reaction   (w/o Event B)

  2.    Event (A)
         Event (B)           -------->     reaction

    then    Event (B)           -------->     reaction



Depression

Beck Depression Inventory is useful

" I am always  ........."   <----- 

       "If I whisper in your ear as such all day long, how will you feel?"

       "Is that really true?"

1. Observe yourself carefully, think of yourself like a spy. Write just down  in sentence, what you think, feel.

2. How strong do you believe? 0-100% scale?

3. Break through the pattern

  Put the thought in trial
  True-- Why true? List 3-5 examples
  Exeptions -- What exception
             Usually, pt may not list any exception. then ask                                      "Anybody else w .......?(put other people)"
               "Other reason that .....?"
               "Have you had same situation before......, how did you feel?"

  Key: Challenge the thought, do not say "destroy, cancel the thought"
         Always put both sides

4. Then ask again
  "How strong do you believe? 0-100% scale?"

5.  Let them do dozens of times.

Behavior therapy

   Like PT, expand psychological ROM, gradually
   Only ask easy things they can do by sure, at least, over 80%

1. Ask to do easy, fun things.  "just go out 5min/week"

  Usually, they are not joyful for a while, so say

 "Put seeds before, get express" "fake it until you make it"
 "prime the pomp" "do this because it is good for you, I can reassure"

2. "what does depression tells you to do? write down. "
    Do something to change the angle of the stream.
                   'Draw a stream of river. change the angle 5 degree.'

Anxiety disorder

    Exposure and relaxation
 
  "Try not to stop the attack. agree to have it"

  "put number to anxiety level, draw a chart of pattern"
    explain about desensitization

  every panic attack duration is consistent with each person 

  Meditation "tells you they are only thoughts. treat like a movie"
          Zen temple at Packard street
          One psychiatry in UofM

For Phobia, "what's the worst that can happen?"
                Give a card, paper, or write down on memo


References
Depression
   Feeling Good : The new mood therapy:  David Burns
Panic
   Don't Panic: Taking Control of Anxiety Attack : Reid Wilson
GAD
   Stop Obsessing: How to ovecome your obsessions and compulsions: David Barlow, Edna Foa
Other authors:  Craske, Steketee (OCD)