ながらく更新していませんでしたが、2011年の7月に帰国し
三重県津市で家庭医として働いています
三重大学家庭医療研修プログラムとみえ医療福祉生活協同組合の指導医として研修医や医学生の教育にも携わっています
現在の職場のホームページと、ブログもありますので興味のある方は下記へどうぞ
http://www.tsucoop.jp/takachaya-cl/index.html
ながらく更新していませんでしたが、2011年の7月に帰国し
三重県津市で家庭医として働いています
三重大学家庭医療研修プログラムとみえ医療福祉生活協同組合の指導医として研修医や医学生の教育にも携わっています
現在の職場のホームページと、ブログもありますので興味のある方は下記へどうぞ
http://www.tsucoop.jp/takachaya-cl/index.html
大層な、タイトルを書きましたが
実はミシガン大の1人の医学生が、ふと口にした何気ない一言を、私が頭の中で増幅させただけです
ある日、クリニックで実習中の医学生と隣同士の席に座りました
診療の合間のわずかな時間で
「はじめまして◯◯です」
「やあ、元気?レジデントの◯◯です」
「僕は日本から来たんだけど、日本ではまだ家庭医がメジャーじゃなくて。ニーズはあるからこちらでトレーニングして、日本での普及に一役買いたいんだ」
などと話すと、医学生の彼が曰く
「へえ~、それはアメリカと逆ですね。アメリカでは家庭医のニーズはどんどん減っているというのに。家庭医の仕事は、どんどんナースプラクティショナー(NP)とかにとってかわられているから。」
「はあ?」と思ったのですが
彼を指導する立場でもなく、診療の合間のわずか1、2分だったので
ムキになって反論することもせず、それ以上に話を深める事も無く終わったのですが、ずっと頭に引っかかっていました
件の医学生は、バリバリの専門医志向で
彼の分析に私は全く同意するつもりはありませんが
表面的なレベルでは、彼の言っている背景も確かに理解できます
アメリカの医療現場では、何でもかんでも、分業がすすんでいます
それもこれも、「高額な医療費を押さえるため」です
すなわち、一番人件費の高い医者の仕事を「純粋に医者しかできない事」に集約させることが徹底されています
心臓外科の手術が良い例です
バイパス手術では、開胸、グラフト採取、術後管理などは人件費の安いPA(Physician Assistant)に任せて、術者である外科医は肝の部分だけに集中します
そうする事によって、外科医は一日に何件も手術をこなします
こうして考えると、家庭医の仕事には「絶対に医者じゃなければダメ?」という質問に対して
「う~ん、そうでもないけど」・・・という内容が結構含まれています
事実、アメリカの地域では半径数十キロにわたって医師が1人もおらず
PAが遠隔地の医師の指導のもと(という建前で)、実質上地域の健康を守っている事もあります
確かに、高度な専門手術での分業はメリットが大きいでしょうし
家庭医の場でも、必要に迫られての分業はあります
ただ、分業がすすんで「家庭医はいらなくなる」とか「ニーズが減る」という考えには全く同意できません
分業がすすむからこそ、
1人の患者さんのケアをコーディネートする医者、地域のケアをコーディネートする医者が必要で
それが家庭医という仕事なのです
今やっている仕事、業務の内容が、10年、20年後も全く同じであるとは思いませんし
必要に応じて、変化をしていかなければいけませんが
分業化の世の中だからこそ、その弊害をカバーするジェネラルなマインドの医者が、ますます必要なのです
今年のミシガン大医学生のうち、家庭医療科にすすむのは15-7名とみられています
一学年が170人ですので、1割弱
これを多いととるか、少ないととるか
実は、例年と比べて今年はかなり多いようです
家庭医療科選択者が一桁台の年も有るようですので、今年はアテンディング達も喜んでいます
全米の医学部の中には3割近くの学生が、家庭医療科を選択する学校もありますが
ミシガン大学は一般的に、プライマリケアよりもいわゆる「臓器専門科」優位の学校です
ミシガン大学の家庭医療科は、全米の医学部で最も多くの指導医陣を擁し
医学生からの実習評価では10年以上にわたり、専門科の中で一番の評価をされています
指導医の先生方も、chairのシュウェンク先生を始め、尊敬できる方々が大勢いらっしゃいます
それでもやっぱり、多くの医学生は臓器専門医の道を選ぶのです
確かに専門医の質がおしなべて高く、他科にも尊敬できる先生方が大勢いらっしゃるのでしょう
それでもやっぱり「収入」という要素が否めません
プライマリケア医の給料は、放射線科、眼科、心臓外科などの高給取りの先生方の数分の一ですから
まあ、それは置いておくとして
「大学、大学病院、医学部に家庭医療科が存在する事の意義」です
家庭医療科を進路の選択肢として選んでもらうということは、勿論、大きいです
また、大学という事でリサーチも大きいでしょう
でもそれ以上に大きいのが、プライマリケア医と専門医がどのようにかかわり合っているか
臓器専門医を選択した彼ら医学生が、将来、どのようにプライマリケア医とかかわっていくか
臓器専門医として、信頼できるプライマリケア医がいるのだということを知っておいてもらう事
そういうことが大事なのです
勿論、「プライマリケア」ですから主戦場は地域,クリニックでなければいけません
ミシガン大も大学に病棟を運営していますが
あくまでもメインの所属は郊外に5つあるクリニックです
日本の大学でも、家庭医療科は大学病院の外にあるクリニックを主戦場とし
臓器専門医とうまくかかわり合いながら
医学生のロールモデルとなる
それが大学に置ける家庭医療科の使命だと感じています
遅ればせながら,明けましておめでとうございます
久しぶりの更新です
数ヶ月更新していなくても、結構な人数の方にアクセスして頂いているようで恐縮です
情報発信が、Facebook→Twitterと移行して
ブログの更新がどうしても滞ってしまうのですが
Twitterはどうしても、その場で情報を垂れ流し気味で、あとから見直すのも大変です
Facebookはもう少しまとまっていますが、日本の友人,アメリカの友人半々が対象で
情報発信がクローズド気味です
自分の中でもある程度まとめてとどめておいたうえで、不特定多数に発信したい場合は、やはりブログが良いかもしれません
ということで今回は久しぶりに現状報告
今月はSMO2というローテーションです
Sports Medicine Orthopedics の2回目ローテーションを略してSMO2です
ローテーション中は、5人いるsports medicineの指導医のうち3人の外来にそれぞれ半日ずつつきます
家庭医系のsports medicine医はオペをしませんので関節注射、リハ、シーネ固定,薬物治療などを主に行い
オペ適応になれば整形外科医に回します
クリニックで働いていますので、超急性期の外傷が少ないというセレクションバイアスがかかりますが
整形外科医に回される患者さんは意外と少なく、1割程度でしょうか?
その他は,家庭医のスポーツ整形外来で診療が完結します
肩、腕、手、腰、膝,足のオンラインモジュールで復習をしながら
日々,遭遇する患者さんのケアをしていきますが
どうしても疾患頻度に偏りが有り、肩,膝の患者さんが多くなります
ローテーション中は、他にも週1日は地域病院の整形外科グループの外来につきます
ここでのポイントは、あくまで外来につくのであって、オペ室には入りません
コンサルテーション後の患者さんがどのような経過を辿るかを知る,貴重な体験です
Rotator Cuff Injuryのオペではsupraspinatusの損傷が9割以上を占めるなど
外科系外来じゃないと実感できないことがみえてきます
今月はこれらsports medicineがらみの外来が週に計5コマ
他は1コマが水曜午前のカンファレンス
残り4コマが自分のクリニックでの外来です
私はうち1コマが日本人クリニックでの診療になります
週の半分はsports medicineの患者さんを診ながらも
日本人クリニックでは妊婦さんのグループけんしんをやったり
お産で呼ばれたり、新生児、小児の健診
月に1回はいつものnursing home visit(長期療養型老人施設の診療)など
バラエティーにとんだ日々です
そしてこのSMO2のもう一つの大きなイベントがGround Roundでのトークです
Ground Roundでの発表については次回書きたいと思います
Preparticipation Athletic Evaluation
The Athletic Preparticipation Exam: Cardiovascular Evaluation
Assessment and Management of Concussion in
sports
Management of Head and Neck Injuires by the
Sideline Physician
Childhood and Adolescent Sport Related Overuse Injuries
Braces and Splints for Musculoskeletal Conditions
Commonly Missed Orthopedic Problems
Radiographic Evidence of Arthritis
Intraarticular Hyaluronic Acid in treatment of knee Osteoarthritis
Viscosupplementation for the treatment of osteoarthritis of the knee.: Cochrane review
ストレスクリニックとは、レジデントの教育と患者サービスをかねて
プログラムのpsychologistの先生が作ったセッションで
日常のストレスによってうつ病などを悪化させている患者さんに対して
ストレス要因を明らかにし、それに対する具体的なrecommendationを行うものです
新患は1時間、再診は30分の枠で
psychologistの先生とレジデントが診療を行います
通常のカウンセリングは、長期にわたるものが多いですが
このストレスクリニックは、初回のセッションでpracticalな解決法を提示し
2、3回のセッションで終了が多く
ミニカウンセリング、クイックカウンセリングといったかんじです
長期のカウンセリングが必要と判断されれば、勿論それもrecommendationに入ります
このクリニックで用いられる技法を、普段の15-30分の診療の中にレジデントが取り入れることを主眼にしており
提示されるrecommendationはいずれもシンプルで、自分たちでもやりやすいものです
シンプルだからといって有効でないという訳でもなく
再診の患者さんと話をしていると
結構役に立っているようです
具体的なrecommendationは、メモに書き出して各患者さんにリストアップして渡しますが
概要を以下にまとめます
太字アンダーラインのところが頻用するもの
Educational Strategies
Behavioral Strategies
Cognitive Strategies
Referral
このクリニックのメリットとしては
1. レジデントが実践的なrecommendationを学べる
2. 通常の診療では掘り下げることのできないストレス、生活背景を探り、有効なrecommendationを提示できる
3. 長期のカウンセリングを必要とはしないが、ストレス要因が強い患者さんに有効
4. 保険の制約でカウンセリングを受けられない患者さんに良い(アメリカでは保険の種類によってカウンセリングが受けられない人が多いのですが、このセッションはfamily medicineの通常の診療としてbillされるのでカバーされます)