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アメリカにはACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education:卒後医学教育認可評議会)という組織があります
ACGMEが全ての専門科の全ての研修プログラムの認可を一括しておこなっており、認可が下りなければ国から予算も出ず、卒業生は専門医試験も受けられません
認可を受けるには各専門科ごとに厳しい基準が設定されており、家庭医の基準もACGMEのサイトから自由にダウンロードできます
超有名な大学のプログラムでさえ、基準を満たさなければ実際に認可を外されてしまいます。
日本のような「なあなあ」はありません
実際に認可作業の様子を知りたい方は以下をご覧下さい
(2002年とちょっと古いですが、大きくは変わっていないはずです)
〔レポート〕米国における臨床研修の質を保証
――ACGME(卒後医学教育認可評議会)の役割
岸本暢将(ハワイ大学・内科研修医)さて、ACGMEがつくった家庭医療の基準については、HANDS-FDFに参加した際と、日本家庭医療学会で学会認定後期研修プログラム(バージョン1.0)を設定するためのワークショップに参加した際に、さらっと読んでいたのですが
レジデントとして働き始める前に、改めてじっくり読んでみることにしました
改めて読んでみると、日本家庭医療学会のものと比較しても、「ここまで書くか!?」というほど細かく書き込んであることに驚きます
そして全体を通して感じたのは
「レジデントが学ぶ環境を徹底して守る」という姿勢です
全て書き出すとキリがありませんので、以下は自分が着目したポイントです
1.ディレクターは年間1400時間以上、レジデントと過ごす必要がある
- 週でいえば28時間。8時-17時の勤務とすれば3日強レジデントと過ごさなければいけません
2.一つのプログラムの定員として1学年に最低4人が必要
- 3年間のプログラムですから最低限4×3=12人
- 同僚との相互作用が学習には欠かせないとの理由
- 私が日本で所属している施設の定員は現在1学年3名
- 日本でこの基準をクリアできそうなのは10施設も無いでしょう
3.フルタイムのFacultyがレジデント6人に1人以上の割合で必要
- フルタイムとは前述の年間1400時間以上レジデントと過ごすという定義
4.ファンドをとってくるか、リサーチ、出版、教育がらみの委員会に所属するなどのアカデミックなFacultyも必要
- アカデミックな部分もけっこう強調されるのです
5.家庭医療センターでは、他の学習者(医学生、コメディカルの学生、フェロー)がいることでレジデントの学習の邪魔になってはいけない
- 繰り返しかかれていることで、大変印象的です
6.電子カルテは必須
- まだ導入していなくても、導入計画を立てなさい
7.家庭医療センターがしまっている時に、患者さんは主治医やその同僚に連絡が取れるようにしなければいけない
- 患者さんがケアへのアクセスを常に持っているという話
「 家庭医の専門性」で書いたことと同じですが、実際どのように実践できているか要チェックです
8.Continuity of Careとして
Nursing Home(老人ホームのようなもの)の患者さん二人以上を24ヶ月以上診なければいけない
and
在宅は二人以上(そのうち1人は自分が継続的に看ている患者)を診なければいけない
- 日本での在宅の普及具合からすると、心もとない数ですが・・・
- アメリカでは在宅診療自体がペイしないので、医者でなく看護士が主にやっている現状があります。せめて「経験だけでも」というところなのでしょう。
9.3年間でのべ1650人以上の外来診療が必要で、うち1年目で最低150人以上
- 数としてはたいしたことはありませんが、細かく設定している所に着目です
10.家庭医療センターでの継続診療が断片的になってしまってはいけない
- 継続性の話で繰り返し強調されています
11.産科は最低2ヶ月のブロック研修が必要。さらにのべ40以上のお産を経験。そのうち10以上がcontinuity patient delivery(外来で産前、産後のケアもする)の必要有り。
- 自前でこれを満たせない施設もあり、awayで数をこなさせることもあります
- ミシガン大では余裕ですが、私が行くチェルシークリニックはcontinuity patient deliveryが少なくなりそうなので日本家庭健康プログラムでお産を中心に継続診療できればと思っています
12.Management of Health Systemの教育
- リーダーシップ、医療管理、経営、患者満足などについてのコースを100時間以上受ける必要がある
- レジデントは年4回以上、診療の生産性、患者満足度、診療の質等を評価されます
他にもポイントはたくさんありますが、研修を受ける立場として研修前、研修中にこのような文章に目を通しておくことは
- 自らの研修のプラスになる(何を学べば良いかを知る)ばかりでなく
- 自分が教える側になった時に「何を学ばせるために、どのような方略をとったらよいか」を学べるという点で役立ちます
かつて医学生時代は、シラバスなど全く目もくれませんでしたが、その大事さが分かるようになってから受ける研修がどのようなものになるか、本当に楽しみです
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