今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

リーダーシップは教えられる(書籍紹介)

2008-04-13 00:18:44 | Faculty Development
HANDS-FDFで紹介されていた本です

リーダーシップは教えられる (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)





ハーバード・ケネディスクールで実際に行われている、「ケース・イン・ポイント」による学習法、教授法を紹介した本です

この本は、私や皆さんの多くが持っているであろうリーダー像とは全く異なるリーダー像を示してくれました


本書の全体像を紹介する代わりに、印象的なフレーズを紹介します

  • トップダウン型のカリスマリーダー」よりも      「ダイナミックなネットワークの優れた『ノード』として、また活力の中心として新たな可能性を切り開く仲介者としてのリーダー」が求められているのです

  • リーダーシップの醍醐味は、他者の秘められた能力を発掘して活用することにあります

  • 日々の混沌とした問題を解決するには、創造性(芸術性)のあるリーダーシップ力を発揮する必要があります

この本を読んでいて、あることに似ていると思いました

それは大学の総合診療部での外来診療です

biopsychosocialな問題を抱え、多くの医療機関を受診しても解決され無い日々を過ごし、長く病に苦しむ患者さん

その病態は複雑で,混沌としており

確定診断になかなかたどりつけない不確実性に耐えつつ、様々なリソースを活用しながら、患者さんとつきあっていきます

ときには、どのような治療も役に立たず

患者さんと共に歩み、思いを共有することによって、患者さんの自己治癒力を引き出すことだけが、治療となることもあります

ということは、総合診療部の外来でトレーニングをすることは、リーダーシップを磨くことになるんでしょうか?

う~ん、もしかしたら面白いことに気づいたかも

などと悦に入っていたら、さらにあることに気づきました

この「ケース・イン・ポイント」を実践しているロナルド・ハイフェッツ教授は、精神科医なのだそうです

だとすれば、精神科医の診療プロセスが先にありきで、リーダーシップの教育の中にそのアイデアが盛り込まれたのでしょうか?


もう少し一般化してみましょう

トップダウン型のカリスマリーダー」がパターナリスティックな医師像に相当し

仲介者としてのリーダー」が患者中心の医療を行う医師像に相当する
と考えられそうです

患者中心の外来診療を行うトレーニングを総合診療部なり、家庭医療なりでやっていれば、自然と「仲介者としてのリーダーシップ」のトレーニングに繋がるというのは理屈として言えそうです

patient-centered care、 leadershipなどをmainのMESH keywordとしてPubmedで調べてみましたが、思うような論文はみあたりません

ヒットするのはほとんど全て、clinical nurse leaderというカテゴリー

昨今の日本での医療問題を考えても、医師によるリーダーシップが必要なのは明らかです

着目すると面白い領域かも知れません