今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

Group visit

2010-05-04 15:00:00 | 家庭医療
最近流行の診療にgroup visitというものがあります

例えば妊婦さんや慢性疾患(糖尿病、COPD、喘息)の患者さんを対象に

複数の患者さんを同時に診療するものです

旧来の1対1の診療と比較して様々なメリットがあります

基本的にはグループに対して介入するので
  • 一人一人の患者さんと多くの時間を共有できる結果、学習が促進される
  • 患者さん同士のグループ内の結束による相互サポート
  • 結果として自己管理の向上
  • コスト削減

妊婦さんのグループ健診では

  • 妊婦さんの高い満足度だけでなく
  • 低出生体重児の減少
  • ER受診の減少
  • 早産の減少
  • 母乳育児率の増加
  • 妊婦の知識の増加

などが証明されています

重要なのは、これは「教室」ではなく「グループ診療」であることで

個人診察とグループ内でのディスカッションが診療の中心で

一方的なレクチャーは最小限にし、医療者はfacilitatorに徹します


グループ型の妊婦健診にはCentering Health Instituteという団体が促進している

Centering Pregnancyというモデルがあります

日本語での紹介サイト


そしてミシガン大の日本人クリニックでは今月からグループ型妊婦健診を開始します

この診療の導入は私のシニアプロジェクトにもなっており

先週末には、前述のCentering Health Instituteが主催するCentering Pregnancy導入のためのワークショップに参加してきました

オーランドでの2日間のワークショップでしたが

クリニックから空港へ直行し

ワークショップ会場から帰りの空港へ直行

そして翌朝から当直という強行スケジュールでしたが

参加者は自分以外全員女性、しかも多くが助産師さんという異空間で

なかなか貴重な体験をできました

感触としては、これからの診療形態として「アリ」なのではと感じています

日本で「診療」としてみなされるかをクリアしなければいけませんが

こちらでうまくいけば、是非日本に持ち帰りたいものです

レジデントの成長曲線

2010-05-03 23:58:51 | 臨床留学
以前も触れたことがあるかもしれませんが

同僚をみていて,その成長曲線に驚かされます

というより,「自分1人成長が鈍いのでは」というおもいにさいなまれます

そもそも3年のレジデンシーを卒業したあとは,独立したアテンディングになることを要求されます

卒後すぐ開業(グループプラクティスが主ですが)をできることが前提の教育ですので,そうでなければいけません

自分が日本で卒後1年目の時も,1学年上の先輩との差を痛感しましたが

卒後3年で完全独り立ちをできる医師がどれだけいたかは疑問です

家庭医レジデンシーで外来研修は3年間ずっとありますから,まだ良いのですが

入院診療などは基本1ヶ月ごとのローテーションです

例えばCCUをローテートしても1ヶ月

加えて労働時間の縛りなどもあり,明らかに経験症例数は少ないのですが

わずか数例経験しただけで「もう私,完璧」と豪語している同僚もいます

まあ,その彼女は少し自信過剰としても

わずか数例の経験で自立を求められ,それにこたえている同僚をみるにつけ驚きをおぼえます

日本での自分の経験から言えば,今の倍から3倍ぐらい数をこなさないと,同じように振る舞えません

その理由を自分なりにリストアップしてみました
  • 第二言語のハンデ
  • 数をこなし経験で憶えるという自分が身につけた学習スタイル
  • 所詮帰国が前提なので,自分は薬の名前や用量を必死で憶えていない
  • 年齢的な衰え

いずれにしても,「学習スタイルの違い」と割り切らないとつらいものがあります