今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

pain of 10 out of 10

2009-05-26 00:51:35 | 医療ネタその他
pain scaleというものがあります

痛みを10段階にわけて、想像しうる限りの最大の痛みを10として、痛みが全くない状態をゼロとすると、

現在の痛みの強さはいくつか?という考えなのですが

「痛み」がある、となると必ずこのpain scaleを聞きます

痛みにはしっかり対処しようという意味もあるのですが

「痛み」が主訴だった場合、痛みの性質を網羅したカルテを記載しないと、診療収入が減額されるという現実問題もあります


笑い話として'pain of 10 out of 10 pain got worse'ということを言っている患者さんの話題が出ますが

先日も実際に '10 out of 10 pain got worse, and now, it is 13 out of 10' などと、のたまっている患者さんに遭遇しました

このpain scale、はっきり言って信用できません

10段階で7未満だとコメントする「成人」は殆どいません

つまりちょっと痛いだけで、8とか9と言ってくる人が殆どなのです

すぐに大騒ぎして、しっかり痛み止めをもらおうということなのですが

主観的なものなので、信用しないわけにもいきません

結果として、すぐに麻薬を出すことになります

さて、ここで「成人」と書いたのは、子供は正直だということ

結構痛がっていても '5 out of 10' と、こちらからみて妥当な数字を言ってくる子供が小児ERでも多いのですが

横に座っているお母さんが 「そんなわけ無いでしょ、もっと大きい数字でしょ」と介入することを幾度と無く見かけました

正直な子供の感性も、大人からの刷り込みで、かえられてしまうのです

つまり、アメリカ人の痛みの閾値の低さは、先天的なものではなく後天的なものではないかという実際の観察に基づく考察です

「痛み=絶対悪」という強い信念のあるこの国では

「やせ我慢」を一種の美徳とする日本人は、異質な存在に感じます




近所で見かけた土筆、こちらではhorsetailというらしいです

ALSO受けます

2009-05-14 23:58:28 | 家庭医療
大抵の家庭医療のプログラムや施設では

分娩を取り扱う医師にALSO受講を義務づけているところが多いのですが

ミシガンの家庭医療プログラムではALSOを受けません

そのわけはALSOをやらない理由で書いたのですが

ふと、「ALSOを受けておこう」と思い立って、申し込んでしまいました

衝動買いならぬ、衝動申し込みです

きっかけは、今年から北海道で家庭医療を指導し始めたHaj先生のブログのエントリー ALSO JapanによるALSO@手稲 開催告知!!   

日本に帰って、「家庭医のお産」に携わる(つもりな)以上

指導者、リソースの少ない現状では、帰国後はALSOに携わる可能性大だな、と考えたわけです

ちょうど7月からの来年度の研修ローテーションが確定したのですが

7月前半は、Electiveを利用して「OB強化コース」を組んでもらっていたので

その期間にALSOを受けてしまおうと思い、あわててAAFPのサイトで近場のALSO開催の予定を調べました

すると
July 9,10 ミルウォーキー、ウィスコンシン州
July 15,16 Maruquett, ミシガン州
July 17,18 Rockford, イリノイ州

それぞれ車で6時間ぐらいですが、日程があうのはミルウォーキーのみ

ということで急遽、参加決定です

参加費325ドルなり

薄給で自腹(プログラムからもらえるCME費を使います)はきついですが

参加の目的(メリット)を改めて整理してみました

1.勉強のモチベーション
2.どうせ受けるから今のうち
3.外部交流
4.OBおちこぼれなので、頑張ってることのアピール
5.受講後の観光(途中シカゴによってうまい和食でも・・・)


日本にいる人にはたいしたこと無いでしょうが、シカゴにラーメン屋の「山頭火」があるらしいので

実はそれが一番たのしみ

チェーン店でもいいんですよ

あれば別に「天下一品」でもいいわけ

無加調じゃなくてもいいんですよ

多少、業務用スープが混じっていてもいい

とにかくまともなラーメンが食べたい

箸で持ち上げて、途中でプチッと切れない

チリソースじゃない、ダシのしっかりきいたラーメンが食べたい

あれ・・・何の話でしたっけ?

Retreat

2009-05-12 00:15:38 | 家庭医療
4月の末に、Retreatという集まりがありました

年に1回、週末に泊まりがけで、全てのレジデント(30人ほど)が集まる会です

アテンディングは立ち入り禁止です

この間、当直も含めて、全てのサービスはアテンディングがカバーしてくれます

今年は、車で3時間離れた、湖畔にあるYMCAのキャンプ地のログハウス行われました




Retreatの目的は大きく二つあります

1.レジデントの親睦を深める
2.プログラム(ローテーション、研修内容、アテンディング)の評価

昼間は、皆で集まって各ローテーションの評価と、各アテンディングの評価をして、報告書を作成します

この報告書に基づいて、研修内容もかなり改善されますし

アテンディングの昇格、昇給にもかなり反映されます

かなり歯に衣を着せぬ、コメントも多々あり

自分の個人的体験では知り得なかった、アテンディングの姿を知ったりと

有意義な2泊3日でした

合間には、乗馬、カヌー、サッカー、バスケット、アーチェリーなどを楽しみ




夜はキャンプファイヤーを囲みながら、プログラムのゴシップ話に花が咲きました

「どうしてFMBの当直室がアテンディングと、研修医で全く離れたところにあるか知ってる?」

「昔は同室だったんだけど、指導医のA先生が当時の女性レジデント2人とつきあって・・・

「キャー、分かる、分かる! あの先生の髪型、遊び人だった片鱗を感じるわ」

そうですか・・・

GME Internal Review

2009-05-10 11:38:06 | 家庭医療
今日は午前中カンファレンスのあと、クリニックの予定でしたが

GME Internal Reviewなるものにランダムに選ばれたため、クリニックは免除でした

おかげで、たまっていたディクテーションの修正をする小暇もありました

ところで、このGME Internal Reviewとは何か?


その前に、ACGMEによる各プログラムの認定更新について知っておく必要があります

各プログラムは、2から5年ごとに訪問審査を受け、プログラム認定を更新することを義務づけられています

2から5年と幅があるのは、プログラムの「強さ」に応じてのことです

つまり、しっかり運営されており、歴史もあり、予算もあり、研修医も毎年そろっていて・・・となると5年ごとの認定になりますし

「不備」があれば、短い年数ごとの認定となります

ミシガン大はもちろん、5年ごとの認定です

この認定更新作業は、かなり厳しく

歴史があり、アメリカでもトップクラスの某内科プログラムが認定を取り消されたことなどもあり

プログラムにとっては死活問題なのです

そこで、早めにプログラムの不備を改善する目的で

認定更新の合間の中間当たりで、GME Internal Reviewという内輪での内部調査をしているのです

内輪の演習のようなものです

家庭医プログラムのReviewは、外科のレジデントで、リサーチを2年間やっている先生が中心となってやってくれています

家庭医プログラムのレジデントのうち、各学年2人ぐらい呼ばれて

この計6人に対して、外科レジデントが事前に集めた資料を見ながら事情聴取をして

報告書をまとめあげます

  • どんな研修をしているか
  • カンファレンスにしっかり出席させてもらえるよう配慮されているか
  • 研修プログラムの不満は
  • 研修プログラムのウリは

などなど、改善点だけでなく長所もとりあげるところがおもしろいところです

本気で改善をしようと思っているプログラムにとっては

「そんなことは承知している」というフィードバックだらけであり

Retreatのときにまとめあげた、プログラムに対するレジデントからのフィードバックに殆ど網羅されているのですが

「そういえば,これ言ってなかった」

とか、

自分たちが認識していなかった、レジデント、学習者としての保証も指摘されたりと

なかなか興味深いミーティングでした

これを日本でやろうと思うと、これまた資源、労力の問題を考えてしまいますが

ここまで認定作業を厳しくすることで、質を向上する努力を強いられているのを目の当たりにすると

日本でも、ある程度締め付けをしないと,最終的に良いものは出来ないのではないかと思います

逆に、日本人の気質を考えると、ここまで厳しくしなくても

この半分ぐらいの締め付けで、そこそこのものをつくりあげるのではという楽観的な想いもあります




家族でゴルフデビュー
ラウンドフィー は13ドルですが、気持ちのよいコースでした

年間評価

2009-05-05 10:52:20 | 教育
年間の評価レポートをもらいました

A4レポート3枚で、以下の項目に分かれています

A. Patient Care
B. Medical Knowledge
C. Practice-Based Learning and Improvement
D. Interpersonal and Communication Skills
E. Professionalism
F. System-Based Practice
G. Summary
H. Recommendations

評価は下記の情報に基づいて行われています

  1. 年間を通して提出された各ローテーションごとの評価
  2. 各アテンディングからの個別評価
  3. クリニックコメディカルからの評価
  4. ログしたprocedureの記録
  5. カンファレンスの出席
  6. M&Mでのプレゼンテーション
  7. In-Training Examinationの結果
  8. その他の活動(論文作成など)

印象深いのは

  • ポジティブフィードバックは生の声の「引用」を多用していることと
  • ネガティブフィードバックは、具体的な対策とセットになっていること
  • 最後にまとめとして、来年へのrecommendationがあること

ちょっと苦笑したのは、最後の最後

締めのrecommendation

インターンの始めに論文を書くのはすばらしいが、臨床研修そのものが最優先するのを忘れないこと」と釘を刺されていたことです


一応、そういうことを意識して今年のSTFM出席は断念したり、いくつかの課外活動を制限したのですが・・・

来年は、大手を振って参加できるよう、文句を言わせないよう

ウィークポイントの改善に努めたいと思います




娘の学校でのインターナショナルフェスティバルの風景




小児救急ローテーション と 豚インフルエンザ

2009-05-02 09:43:18 | 臨床留学
今月は小児救急(Peds ED)ローテーションです

Peds EDは普通のEDの隣にあり、独立運営ですが、カルテシステムなどは共通なので

初日からわりとスムーズに入ることが出来ました

勤務体系としては9時間シフトで6パターンの勤務時間帯があり

私はほとんどが9AM-6PMと4PM-1AMのシフトです

インターンは月合計19シフトと決まっており

毎週水曜日はFamily Medicineのカンファレンスとクリニックですので

それを除いた週6日(=27日)のうち、8日も休みがある計算で週休2日です

子供は昼間学校があるため、昼間より夕方シフトが圧倒的に忙しいらしく

私の場合、夕方シフトが全体の2/3入れられており

勤務表を見たとき、一瞬「ちょっと~ Unfairじゃん」と思ったのですが

「夜勤も無い上に、週休2日で文句を言うな」と思い直しました

さて実際の患者さんですが、大人のEDよりはCommon Diseaseが多く、回転も速いのでやりやすそうです

初日は、鎖骨骨折、歯牙骨折、bronchiolitis、異型肺炎、胃腸炎、ウイルス性上気道炎症などと割とバランス良くあたりました

ただしそのうち2人はHirschprung病でストーマ付きの子の、胃腸炎再入院と、Digeorge症候群のウイルス性上気道炎でしたが・・・


スペイン語通訳付き、いかにもメキシカンなお父さんに連れられた、高熱、咳の子にあたったときは、かなり身構えましたが

しつこく接触歴をきいた結果

「アナーバーに数年来住んでおり、メキシコを含めた発生地域への来訪歴無し、メキシコからの来訪者との接触は一切無し」

カタル症状も無く、physicalで明らかな肺炎所見有りで、ほっとしました

とりあえず4日連続で、4PM-1AMシフトが続き

こちらの感覚では「ゲーッ」ですが、何とか楽しくやれそうです