今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

県立大野病院事件で無罪判決

2008-08-26 01:20:54 | 時事ネタ
無罪判決自体が当たり前だということは、数多くの医療ブログや各学会の声明で言い尽くされています

あえてふれません


私が危惧した点は二つ

1. 民事ではなく刑事事件で起訴されたこと自体
2. 遺族感情に便乗して、医師たたきをあおるマスコミ

1点目について

そもそも、このような状況で患者さんや遺族から民事で訴えられるのは、やむを得ないとしても

刑事事件として、起訴されたこと自体が問題です

アメリカでお産をやっている家庭医の指導医に話したところ

「お産で訴えられるのは、アメリカでも多いからねえ~。・・・えっ?民事じゃなくって、刑事?逮捕??」

「Why?」

全く理解できないようでした

家庭医として将来は日本でお産もしたいとの志を持って、渡米しましたが

もし今回の判決が有罪だったとしたら、

そんな国で、しかも産婦人科医でなく家庭医としてお産をしようなどというのは

正気の沙汰ではないかもなあ・・・と思っていたところです


2点目について

これも多くの医療ブログなどで語られてきていることなので、今更なのですが

家族を失った遺族の感情に便乗して

「医療で人間は死なないもの」

不幸な転帰をたどった=医療ミスだ、隠蔽だ

とあおる記事が多く見られます

例えば読売のオンラインニュース
「なぜ事故が」…帝王切開死、専門的議論に遺族置き去り

悲しくなります

単に不勉強なのか、悪意で煽っているのはか分かりませんが

いちいちこんなことで、「読売新聞を取らない」と騒いでいると

とる新聞が無くなってしまいます

メディア報道の偏りについては下記ブログによくまとまっていますので、是非ご覧下さい

日々是よろずER診療
大野病院判決:メディア報道の偏向性を憂う