今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

自己犠牲

2008-08-11 02:17:34 | その他
アメリカでは問題が起きると、システム改善プロジェクトが発動されます

例えばクリニックでの業務の流れが複雑なせいで、患者さんの待ち時間がふえていることに対して

トヨタのジャストインタイムや自動化などの概念を取り入れて、改善プロジェクトを立ち上げています

Lean thinkingという考えで、とにかくシンプルにする

業務の流れをシンプルに、ムダを省くことで待ち時間が減ります

確かにすばらしいのですが・・・それだけの問題ではないのです

分業がいきとどきすぎており、ちょっと不備があると担当者が来るで待つことになります

複雑な流れと、いきすぎた分業も問題なのですが

それより問題なのは

'It's not my job' の精神です

日本だと、機転を利かした看護士さんなどが自発的にやってくれていたことが、こちらでは

'It's not my job.'となり、みんなでぼさーっと待っています

勿論なかには、「やっといてあげる」という人もいます

家庭医の同僚はその(気をきかしてサービスする)傾向は強いと思うのですが

これを「自己犠牲」と呼ぶとすれば

「ちょとした自己犠牲」にあふれた日本人は、すばらしいと再認識しました

ただし自己犠牲が「ちょっとした」ですまないと、大変なことになります

サービス残業が当たり前、医者にプラベートの時間など無い

私が研修医の頃はそれが普通だ思っていました

それがおかしいと、医者がいっせいに気づいたために

医療従事者の自己犠牲が無いと維持できないような医療システムが

いっきに崩壊へすすんでいるのです