今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

家庭医療における継続性(患者サイドからみて、いつでも診てもらえるか?)

2008-08-16 22:42:49 | 家庭医療
以前も家庭医の専門性で書きましたが、患者さんからみれば

「いつでも診てもらえる」という意味での継続性(continuity)は大事ではないでしょうか?

そこで「ミシガンのプログラムでこれをどのように担保しているか」について書きます

そもそもアメリカの家庭医療のプログラムは、ACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education:卒後医学教育認可評議会)によるプログラム要項の中で、

「患者さんはクリニックが休みの日でも、自分の主治医もしくはそのグループと連絡をとれ、適切な指示を仰げるようにしなければいけない」と定められています

これを可能にしているのがレジデントによる電話トリアージ(phone triage)です

例えば、私が所属するチェルシークリニックの患者さんは、妊婦を除いて全員、チェルシー病院で当直をしているレジデントが電話相談に応じています

かかってくる電話を直接受けているわけではなく、その電話を電話交換手がトリアージして、担当のレジデントのポケベルに患者情報と、簡単な相談内容、連絡先を入れてきます

その情報をもとに、電子カルテで患者情報を把握してから、こちらから患者さんに電話します

診療が必要な場合は、大人であればチェルシー病院のERもしくは大学病院のERにかかるように指示しますし

小児の場合は大学の小児ERにかかるように指示をします(小児ERにも家庭医療科のレジデントがローテートしています)

妊婦さんに関しては、家庭医療プログラムの6クリニック全部にかかっている妊婦さんは全員、家庭医療科の産科病棟当直医が電話トリアージ、および直接の夜間診療に応じています

これを可能にしているのが、電子カルテシステムで、チェルシー病院は大学とは別団体ですが、大学病院やクリニックでつかっているCarewebという電子カルテも院内で使えるようになっています

現在ローテートしているチェルシー病院では、毎週金曜日の夜に当直をしていますが

レジデントにとっては、当直中の電話トリアージが結構トレーニングになります

個人的には、電話での診療相談に、やる前はかなり不安を感じていました

やはり英語が第一言語でない人間にとって、電話での意思疎通のレベルはかなり落ちることが予想されたからです

電話だと相手の顔も見えず、声がこもって聞き取りにくいからです

戦々恐々としながら、実際にやってみると、とりあえず問題なくクリアできたのでまずはひと安心

お年寄りからの相談が多く、結構相手もゆっくり話してくるので、何とかなるのです

電話で今一番困っているのが、ERからの入院紹介

これについてはまた後日書きたいと思います


今のところの印象では、完璧ではないものの、患者サイドからみた継続診療はまずまず担保されているのではないかと感じています

ソロプラクティスが多い日本の開業医は、交代での電話当番は難しいですから

1人で頑張ろうとすると、負担はかなりのものになります

チームでどのように分担していくかということと、現在のシステムでの患者さんの満足度について、さらに観察していきたいと思っています





記事とは関係ありませんが、カントンというエリアにある居酒屋三平の、「単身赴任弁当」です

通常の弁当(bento)もあるのですが、それとは別に日本人用に、量と値段を押さえたものですが、完食は無理です

この他にご飯とみそ汁、フルーツがついて15ドルです

経営が日本人なだけあって、煮物もちゃんと手作りで、日本の居酒屋レベルには達しています(ということは、こちらではかなり高レベル)