今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

ERでのお産

2008-08-23 16:00:20 | 臨床留学
ある朝7時頃

朝食をとりながら、夜勤のレジデントから、患者さんの引き継ぎをしていました

居合わせたのは夜勤の3年目レジデント、昼勤務の2年目レジデントとインターン(私)の3人

突然夜勤レジデントのベルが鳴り、彼がすくっと立ち上がりました

「いくぞ!ERでお産だ!」

「え?まだヨーグルト食べてないんですけど・・・」と思いながら、あわててついていくと

ERの一室では、女性の雄叫びが聞こえました

もう頭の先が見えています

この病院には小児や産科はありませんので、普通は妊婦がくるはずも無く

看護士は、おろおろしています

当然、胎児モニターなどありません

ERの先生はさすがに、お産のトレーニングを受けていますが

「僕は赤ちゃんのほうをみるので、後は家庭医の先生たちよろしくね」とさっさと部屋の隅に引っ込んでしまいました

上級レジデント2人は、さっさとガウンを着てテキパキとこなしています

自他ともにみとめる戦力外の私は

本来なら1時間後に到着する予定の、家庭医指導医へ連絡です

ポケベルをうってもどると、「おぎゃ~」

もう生まれてしまいました

お産が3人目のお母さんは

「そういえば言ってなかったけど、わたしGBSプラスだから、ペニシリンうっといてね」

「それから、抗生剤の眼軟膏もうやった?」と矢継ぎ早に看護士に指示を出しています

「いや~良かった。とりあえず指導医に、急がなくても良いと報告しよう」と思っていると

「ちょっと良い?僕、夜勤明けで帰りたいから、入院患者引き継ぎたいんだけど」と他のER指導医に引き止められました

これがICUで重症患者と向き合う、長い当直の一日の始まりになろうとは、その時は気づいていませんでした・・・