今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

チェルシーの老人医療、福祉の状況

2008-08-17 00:16:57 | 家庭医療
チェルシーはお年寄りの多い田舎町です

近隣にChelsea Retirement Community、要するに老人ホームと老健の複合体のようなところがあり

お年寄りのケアという点では、比較的恵まれている地域です

家庭医療科の先生の中でも、老年科を専門とする先生方がそこの施設を担当している関係で、

チェルシー病院で当直をしていると、頻繁に電話トリアージに相談が入ります

independent living、つまり自立したお年寄りは本人と直接お話をしますし、assisted livingの人は、そこの看護士と話をすることが多いです


看護士は結構レベルが高いので適切な相談が入って、まだ良いのですが

ご本人から直接の電話の場合は、結局本人も自分で状況が説明できなかったりして

「まあ大丈夫だと思うけど、直接診ていないから念のためERに来て下さい」と言わざるを得ない場合があります

昨晩も、盲目のお年寄り患者さんから「一過性のめまいdizziness」の電話相談がありました

印象としては、様子を見ても大丈夫そうなのですが、本人の不安も強いため、ER受診をすすめると

「ERは待たされるから嫌。もうパジャマに着替えちゃったし。」

せめて血圧や脈拍数などが分かれば、もう少し相手を安心させることができるのですが、independent livingに入っているので看護士もいないようです

同じ敷地内の、assisted livingの看護士にバイタルだけでもとってもらおうと、電話番号を探し出して連絡をしたのですが

「担当が違う」と、しかるべき部署に電話をまわされてしまいました

まわされたしかるべき部署は、週末の夜のせいか誰も電話に出ません

結局本人にかけ直し、「施設内の対応に関しては、こちからからは何ともできないので、自分を担当してくれる施設の担当者に一度電話してみて」と言うと

「independent livingは、assisted livingと比べて安いお金しか払っていないから、休日は誰も助けれくれないのよ。ありがとう。あなたはやるべきことをやってくれたわ。結局ここでは、いつもこうなのよ。お金がなければ、誰も助けれくれないのよ。といっても、ここもかなり高いお金を払っているのよ。」

最後は、諦めに近い嘆き節になってくるので、こちらも申し訳ない気分でいっぱいです

ERにかかってくれれば、それですむ話ですが

ERに誰がつれてくるんだろう?という疑問も残りましたし

「結局金なのよ・・・」と言われると、

「やっぱりそう?」と思わざるを得ません