企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇富士通とマイクロソフトが共同で「富士通Hyper-V仮想化センター」を開設

2008-05-30 10:40:13 | 仮想化

 富士通とマイクロソフトは、富士通のPCサーバー「PRIMERGY」とマイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」による仮想化システムの構築を支援する「富士通Hyper-V仮想化センター」を、富士通の総合検証センター「Platform Solution Center」内に共同で設立した。同センターでは両社の持つ先進の技術と高信頼な製品による仮想化システムの設計・構築を支援し、安定した仮想化システムを迅速にユーザーに提供することにしている。(08年5月28日発表)

 【コメント】マイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」は現在、Windows Server 2008にベータ版が同梱されているが、正式版は08年8月頃に出荷が開始されることになっている。これまでマイクロソフトは「Virtual Server」と呼ぶ仮想化ソフトを提供してきたが、その存在感は薄く、このためVMwareに市場を奪われるのをただ見守ることしかなかった。そこで、満を持して開発したのが「Hyper-V」である。「Virtual Server」と今回の「Hyper-V」の違いは何か。「Virtual Server」はホストOSを必要とするのに対し、「Hyper-V」はホストOSを必要としないハイパーバイザー(仮想マシン・モニター)方式によっており、オーバーヘッドが少なくて済む。そして同方式が重要な点は、OSとハードの縛りから解かれ、仮想基盤上でアプリケーションが稼動可能になることである。これは何を意味するかというと、仮想化ソフト自身が、従来のWindowsやLinuxのOSに代わる存在になりうることを意味する。もし、マイクロソフトが仮想化ソフト市場に参入しなかったら、一挙に市場を奪われかねない。この意味からしても、マイクロソフトは今後、「Hyper-V」の普及に全力を投入することになろう。この一つの表れが今回の富士通との提携だ。

 マイクロソフトの仮想化ソフト戦略で見逃せないのが、オープンソースソフトウエア(OSS)の仮想化ソフトXenとの関係である。Xenはもともとゼンソース社が提供していたが、シトリックス・システムズ社がゼンソース社を買収したのに伴い、現在ではXenはシトリックス社から提供されている。このシトリックス社はWindowsの統合化ソフトで実績があり、以前からマイクロソフトと近しい関係にあったが、シトリックス社がXenを買収したのを受け、仮想化ソフト事業での提携を発表した。つまり、ここにきてマイクロソフトは、自社開発の「Hyper-V」とOSSの「Xen」の2つの仮想化ソフトを持つことになったわけである。

 これは何を意味するのか。マイクロソフトは今後、XenをLinux対策、とりわけレッドハット対策に使うと思われる。レッドハットはLinuxOSの世界的な普及の中で事業を拡大しており、現在、Windows市場への浸透が進んでいる。「エンタープライズ・リナックス5」からは、レッドハットは仮想化ソフトのXenを標準搭載し始めた。そこで、マイクロソフトとしてはシトリックス社を介して、XenユーザーすなわちLinuxユーザーとも接触が図ることができ、Linuxの侵食を少しでも防げるかもしれないし、逆に、LinuxユーザーにWindowsソフトを供給できる切っ掛けがつかめるかもしれない。いずれにしても、これからのマイクロソフトの仮想化ソフト戦略から目が離せない。(ESN)