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◇企業システム◇マイクロソフトとレッドハット、仮想化ソフトで提携

2009-10-19 09:25:24 | 仮想化

 【仮想化】米レッドハットは、Microsoft Windows ServerとRed Hat Enterprise Linuxを組み合わせた仮想化環境が、フルサポートで利用可能になったと発表した。IT環境における相互運用性に関するユーザーからの要望に応えて、レッドハットとマイクロソフトは、サーバ仮想化を利用する両社のユーザーに共通のテストと検証を完了もの。認定が完了したソリューションは、以下のとおり。 ①Red Hat Enterprise Linux 5.4ハイパーバイザにおけるWindows Server 2003、2008、およびWindows Server 2008 R2ゲストの認定 ②Windows Server 2008 Hyper-V、Microsoft Hyper-V Server 2008、Windows Server 2008 R2 Hyper-V、およびMicrosoft Hyper-V Server 2008 R2ホストにおけるRed Hat Enterprise Linux 5.2、5.3、および5.4ゲストでの認定 。(米レッドハット:09年10月7日<現地時間>発表)

 【コメント】レッドハットとマイクロソフトは、犬猿の仲と思っていたら、今回仮想化環境で協調サポートの発表を突如行った。マイクロソフトとしては、自社の地盤を侵食し始めたレッドハットは、“敵”であり、絶対に認めることのできない存在だったはずである。かつてマイクロソフトは、レッドハットのLinux攻勢に対し、「初期導入コストが低いからといって、トータルコストではWindowsの方がずっと安く済む」と反論、さらOSS(オープンソースソフトウエア)は、ソフトウエアの著作権侵害の疑いがあると主張するなど、両社の関係は、一発触発の危機にさらされていた。

 その後、マイクロソフトがヨーロッパで独占禁止法違反の採決があるなどして、それまで順風満帆の勢いを堅持してきた“マイクロソフト神話”にも陰りが見え始めてきた。一方では、マイクロソフトは、ドル箱の「マイクロソフト・オフィス」の国際標準化を何とか実現させようと尽力し、08年4月にマイクロソフトが推す電子文書フォーマット「オープンオフィスXML(OOXML)」が、ISOとIECから国際標準のお墨付きをえることに成功。この頃からマイクロソフトの政策に微妙な変化が見え始めた。つまり、国際標準を標榜するからには、オープン化に対しても柔軟な姿勢を打ち出さざるを得なくなってきたのである。

 そして、マイクロソフトはレッドハットの仇敵であるノベルとの間に電撃的な提携を発表し、逆にLinux市場へ参入を開始した。ユーザーとしては、WindowsとLinuxとの間の親和性が低ければ、どちらかを選択しなければならなくなる。これはマイクロソフトにとっては、結果的に自社のユーザーの一部をLinux陣営に奪われることを意味する。それを防ぐ意味でもノベルとの提携は、重要な意味があったのである。さらに、既にLinuxに奪われた市場を奪還できるチャンスが生まれるかもしれない。このほか、マイクロソフトは、関係の深いシトリックス・システムズがOSSの仮想化ソフト「Xen」を買収したことによって、間接的に仮想化市場に参入し、さらにに自社開発の仮想化ソフト「Hyper-V」を持つことによって、Linux市場には「Xen」を、Windows市場には「Hyper-V」を提供できる仮想化環境体制を完成させた。

 そして、現在に至るわけであるが、仮想化環境の先に大きく広がるのがクラウドコンピューティングの世界であることは論を待たない。マイクロソフトは、先行するグーグル、アマゾンを追って11月から独自のクラウドサービス「ウインドウズ・アジュール」をスタートさせる。今度はマイクロソフトがグーグル、アマゾンを追撃しなければならない立場に逆転したのである。そこに今回のレッドハットとの「仮想化環境の協調サポート体制」発表があったわけである。つまり、マイクロソフトとしては、グーグル、アマゾンに追いつくには、強力なパートナーを必要としたが、まさかIBMとは組めない。その結果、レッドハットとの提携が浮上したのではないか。レッドハットとしても、このままマイクロソフト・ノベル連合を見過ごすわけにはいかない事情もあろう。

 とにかく、今回のマイクロソフトとレッドハットの提携の背景には、今後のIT業界を左右するクラウドコンピューティング市場の覇権争いが存在することだけは確かなようだ。(ESN)