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◇企業システム◇静岡大学が学内情報基盤システムを全面クラウド化

2010-03-17 09:29:04 | ユーザー

 【ユーザー】静岡大学は、学生及び教職員 約13,000名が使用する学内情報基盤システムを全面的にクラウド化し、運用を開始した。これは、大学内に存在するサーバ約850台、業務用端末約7,000台をクラウド化する国公立大学としては初めての例となる。学内情報システムを全面的にクラウドコンピューティングに移行することで、従来のシステムと比較して13年度までに消費電力90%以上、IT投資コスト80%以上の削減が可能になる。NTT西日本静岡支店と伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が同システムの構築を担当。(静岡大学/伊藤忠テクノソリューションズ:10年3月15日発表)

 【コメント】クラウド・コンピューティングの波が本格普及に向け、さらに速度を上げているように感じられる。あたかも今話題の津波のようでもある。今回のチリ地震による津波は、日本にも押しかけてきたのはご存知の通り。実際の体験者の話では、津波は通常の波とはぜんぜん違い、何か底深くから押し寄せる感覚で、大変恐ろしいものだという。IT界にあって、これまでいくつものブームが到来し、その都度ユーザーは右往左往させられてきた、苦い経験をお持ちだと思う。しかし、今回のクラウド化は、従来のブームとは異なり、何かもっと深いところから押し寄せてくる、新しいうねりみたいなものに感ぜられる。やはり、クラウド化は通常の波でなく、既存の概念を覆す津波のようなものかもしれないのだ。

 例えば、全国の自治体においてもクラウド化への関心が高い。総務省は、平成21年度から自治体クラウド開発実証事業開始を発表した。同事業は、地方公共団体の情報システムをデータセンターに集約し、市町村がこれを共同利用することにより、情報システムの効率的な構築と運用を実現するための実証実験である。これは、地方公共団体において、クラウドコンピューティングをはじめとする昨今のICTの活用や、情報システムの一層の共同利用の推進について関心が高まっていることを受け、総務省においてもポータルサイトを開設することとしたもの。 今後は、開発実証事業の進捗状況をはじめ、自治体クラウドに関係する情報を発信していく予定となっている。

 このようにクラウド化の流れは、官公庁や一般企業のほか、各教育機関にも押し寄せようとしている。この代表的な事例が静岡大学だ。静岡大学では07年より、グリーンIT、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)、BCP対応、ITコンプライアンス、コストの最小化、J-SOX対応など様々な課題に対応したシステムの刷新を検討してきた。09年までの3年間に環境負荷及び投資コストについての詳細な調査を行ったところ、大学内ネットワークに接続されている情報機器は、パソコン約7,000台、Webサーバ552台、研究開発用サーバが300台以上存在し、サーバや端末は組織ごとに調達しているためリソースがうまく活用できていないこと、また、IT機器がキャンパス内に分散設置されていたため、大容量空調設備や大規模受電設備、多数の無停電電源装置などが存在し、運用環境においても効率化できることが判明、IT機器全体では全学の15%に相当する、年間233万kWhの電力が消費され、885トンのCO2が排出されていることが推定できた。

 この対策として同学では次のようなクラウド化を採用することとした。①プライベートクラウドコンピューティングセンター(PRCC)の設置=キャンパス外のデータセンターに静岡大学専用のPRCCを構築し、キャンパスとは10Gbpsの大容量光ケーブルで接続②パブリッククラウドコンピューティングセンター(PBCC)の設置=ホームページやSNS、ブログ、研究用サーバなどについては一般向けサービスを行う PBCCを想定し、処理能力や情報セキュリティなど多くの項目について調査・検証を行った結果、Amazon EC2など世界中の数十種類のクラウドサービスから最適なものを選択して使用する形態に変更③パソコンのクラウド化=学内にある7,000台のパソコンのうち、1,100台をシンクライアントに置き換えるとともに、使用時間以外はシンクライアントを完全に電源オフにする装置を設計、運用も確立し年間総合電力を低減するように工夫した④ストレージのクラウド化=教職員全員のパソコンデータのハードディスク内のデータを全て移行できるクラウドストレージを整備。現状では1人あたり20GBを割り当てているが、13年までに80GBまで拡張する。(ESN)