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◇企業システム◇SAPジャパンとNECが協業強化へ

2008-12-24 16:23:01 | ERP

 【ERP】SAPジャパンとNECは協業を強化し、SAPが提供する中堅企業向けERP導入プログラム「SAP Business All-in-One fast-start program」のプラットフォームとして、NECのサーバー「Express5800シリーズ」を選定し、SAPジャパンおよびそのパートナー企業が販売することに合意した。「SAP Business All-in-One fast-start program」は、サービス、商社・卸、組立製造業界の中堅企業に向けた、低コストかつ短期間でERP導入を可能にするプログラムで、ユーザーが従業員数、ライセンス数を入力し、必要なソフトウエア機能を選択するだけで、導入にかかる費用の
試算を行うことができる。また、会計、販売、購買、在庫、その他の機能を統合的にサポートするSAP ERPの導入を3千万円台からという低価格(ソフトライセンス、ハード、導入サービス込み)で実現可能にする。 (08年12月24日発表)

 【コメント】SAPのERP導入プログラム「SAP Business All-in-One fast-start program」は、SAPの「オンライン・ソリューション・コンフィギュレター」機能を利用して行われ、導入時にはOS、データベース、SAP ERPなどに加え、ユーザーが選択した設定情報をハードウエアにプリインストール済みの状態でユーザーに提供するもの。
そのため特定のサーバーにプレインストールし、SAPのパートナーから販売されれば効率的であるし、サポートもしやすくなる。一方、NECのサーバー「Express5800シリーズ」は累計100万台(08年2月現在)を出荷、国内IAサーバーでトップシェアを誇っている。しかし競合も激しく、NECは市場で富士通、デル、HPなどと激しいシェア争い繰り広げている。今回SAPと提携したことによって、これらの激しいシェア争いの中で優位に展開できる一つの選択肢を得たことになる。

 現在SAPジャパンは、NECのほか富士通、日立製作所などとも提携し、ERP市場での体制を盤石なものにするための体制づくりに必死だ。08年11月5日には富士通とデータ可視化ソリューション「EIM(エンタープライズ・インフォメーション・マネジメント)」
で協業を強化した。これはBI(ビジネス・インテリジェンス)技術が背景に存在している。独SAPは08年2月にBI企業の大手・仏ビジネスオブジェクツを傘下に入れたが、ビジネスオブジェクツの得意とする一つがデータ可視化技術。これにSAPのソリューションを統合したのがデータ可視化ソリューション「EIM」である。一方、富士通は1995年からビジネスオブジェクツのデータ可視化ソリューションの日本語化および提供を行ってきた。03年からは富士通大分ソフトウェアラボラトリが日本ビジネスオブジェクツとパートナー契約を締結し、本格的に提供を行い、既に富士通グループ全体で300以上のユーザーを獲得している。今後両社では「EIMソリューションセンター」を富士通ソリューションスクウェア(東京都大田区)内に設置し、EIMソリューションの技術検証および導入支援を行うことにしている。

 日立製作所と独SAPは、両社でSAPソリューションのマーケティング、販売、システム構築に至る広範囲な協業をグローバルで推進することで合意し、「SAPグローバルサービスパートナー」のパートナー契約を08年12月2日に締結した。内容は日立のプラットフォームやミドルウェアおよびコンサルタントサービスとSAPソリューションを組み合わせ、米国をはじめとした世界各国のユーザーへ提供しようとするもの。このため日立は、SAP認定資格者を国内、海外合わせて、2011年までに2080人に増員することにしている。これまであまりマスコミには取り上げられていないが、日立は国内でSAPのパートナーとして常にトップクラスの実績を挙げてきた。今回はその実績を土台として広く世界へSAPビジネスで打って出ようとするもの。逆に言うと、もう日本国内だけで今後も成長を遂げることは難しいということであろう。昔トヨタが世界へ向けて製造・販売網を拡大していったと同じことだ。その意味では、日本のIT産業は自動車産業に比べ2-3周は遅れをとっているともいえる。

 いずれにせよSAPを中心としたビジネスは、これまでにない展開を日本の大手IT企業に与えつつあるといっていいであろう。これはSAPがドイツの企業であり、米国の企業でないところが、このきっかけをつくったと見ることもできる。米国企業であると
多かれ少なかれIBMかマイクロソフトの影響を受けており、戦略が硬直化しがちだ。これに対しSAPはIBMとマイクロソフトとはパートナー関係だけであり、自由な戦略が練れる。この意味からも日本の大手IT企業はSAPとの連携を密にとりながら世界進出の足がかりを掴むと、今後新しい展望が生まれるかもしれない。(ESN)