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◇企業システム◇IDCジャパンが2010年国内IT市場の主要10項目発表

2009-12-28 09:28:07 | 視点

 【視点】IDCジャパンは、2010年国内IT市場の主要10項目を発表した。  1. 国内IT市場は2009年に大幅縮小し、2010年はきわめて低い成長率に留まる  2. 仮想化の対象がストレージやネットワーク機器にも拡大し、ITインフラの統合管理ツールへの需要が本格化する  3. クラウド上でのシステム/アプリケーション開発環境が整い、クラウドへ の流れが加速する  4. 新政権による政策の追い風を受け、地球温暖化防止に向けたITの利活用が本格化する  5. スマートグリッドへの取り組みなど、社会インフラ向け大規模システム開発が新たなテーマとして浮上する  6. 高速無線データ通信サービスの開始によって、消費活動に連携したアプリケーションの多様化が進む  7. パンデミックへの対応を契機に、ユニファイドコミュニケーションの本格導入が始まる  8. クラウドへの対応が新たなハイブリッドセキュリティ対策需要を喚起する  9. システム開発のグローバル化と、国内SI事業の再編が加速する  10. 市場分析/経営分析ツールが注目を集め、BI/BA市場が急拡大する。(IDCジャパン:09年12月15日発表)

 【コメント】09年の国内IT市場は、金融危機に直面し、これによって各企業の情報化投資の大幅なダウンが続く中、クラウドの大きなうねりが押し寄せた年となった。これは、ある意味では、絶妙のタイミングとも捉えられる。これまで、システムの自社導入が当たり前の状況から、情報化投資の削減により、自社導入を諦め、アウトソーシングへと向かう傾向に今後とも拍車が掛かることが予想されるからである。クラウドであれば、初期投資を抑えられ、しかも、開発期間を短縮できるというメリットも得られる。ただ、一方ではセキュリティをどう考えるか、さらに、データセンターでの処理が世界のどこで行われているのか、ユーザーが分からないという不安材料が存在することも確かだ。これらの問題はプライベート(自社内)クラウドで対応するなどの解決策で乗りきれる可能性はある。とにかく、2010年は、09年より一層クラウドへの関心が高まる年となろう。

 新型ウイルス対策が叫ばれる中、09年から2010年を迎えようとしているわけであるが、各企業ともパンデミック対策に追われている。もし新型ウイルスの大発生に企業が巻き込まれると、日々の企業活動に大きなブレーキが掛かることになる。この対策の一つが社員の在宅勤務を可能とするシステム化の実現だ。このためには、社員が自宅でPCを使って業務をこなし、しかも企業のデータを安全に保つ必要性が欠かせない。そこで、各企業は現在、シンクライアントシステムの導入に踏み切りつつある。貴重なデータはサーバー側に蓄積し、PC側には残さないシステム化が必要となるからだ。しかし、シンクライアントシステムの導入は、パンデミック対策にとどまらない可能性もある。自宅で業務をこなせるシステムが完成すれば、社員は必ずしも毎日オフィスに出社する必要性はなくなる。このためには、シンクライアントシステムの導入は欠かせない。09年のパンデミック対策を契機に、2010年はシンクライアントシステムによる在宅勤務元年となるかもしれない。

 企業システムの中で、これまで地味な分野と見られてきたBI(ビジネス・インテリジェンス)に脚光が向けられたのが09年であった。2010年もこの傾向に拍車が掛かることは間違いないところだ。もう昔のように右肩上がりの経済成長は考えにくい状況に、各企業とも陥っている。このためには、これまで蓄積してきたデータを基に、いかに効率経営を実現するかが今後の企業間格差を生む。つまり、BIによって詳細なデータ分析を行い、より収益性の高い分野に業務をシフトさせていくことが欠かせない要件となってくる。IBMをはじめとする大手IT企業は、このことを予見し独立系BI企業を相次ぎ買収し、ユーザーへの対応体制を整えてきた。この成果が09年に表面化し、2010年にはBI分野の本格的成長が見込まれる。ただ、BIが想定する業務はあらゆる分野にわたり、これらに対応する人材の育成が需要に追いつかない可能性が高い。

 09年の暮れの話題はCOP15で持ちきりであった。地球環境への関心の高まりは2010年ますます顕著になってこよう。この中で新しい電力網であるスマートグリッドへの関心も高まっている。企業システムには電源の確保という意味から無視するわけにはいかないテーマだ。IBMなどははスマートグリッドを含む公共システムが次の成長分野と睨み、全力を投入し始めた。グーグルはクラウドセンターの維持には電力の確保が欠かせないとし、電力分野への投資を行い始めている。SAPはこのほど、シャープ、日建設計、日本HP、三井不動産などと共同で、スマートグリットの実証プロジェクトへの参加を表明した。スマートグリッドは米国では古くなった電力網の再整備という側面も持っているが、日本の場合はあくまで電力の有効利用に焦点が向けられる。2010年は、スマートグルッドが企業システムをも巻き込んで大きなテーマに浮上してきそうだ。(ESN)