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◇企業システム◇日商エレがユーザーとしてシンクライアントシステムを構築

2009-12-09 10:10:56 | ユーザー

 【ユーザー】日商エレクトロニクスは、紛失・盗難などの情報漏えい対策、パンデミックなどの在宅勤務への対応、運用管理の負荷軽減を目的に、社員が営業活動、技術検証で社外利用するPCにおいてシンクライアントソリューションを導入し、11月より本格稼働を開始した。IT基盤構築において豊富な実績をもつ日商エレが自社構築したもので、今回の実績をもとに、今後はあらゆる市場に最新シンクライアントソリューションを展開する。(日商エレクトロニクス:09年12月7日発表)

 【コメント】現在、企業ユーザーの関心が最も高いのテーマの一つが、セキュリティであるという。ベンダーがセミナーを開催すると、セキュリティのテーマであると直ぐ満員御礼になるらしい。これは現在、セキュリティに関する事件が次々に起こり、うかうかしていると、次はわが社かと考えているからだろう。この事例はセキュリティとは言えないかもしれないが、最近「みずほ証券誤発注事件」の判決が行われ、東京証券取引所に107億円の賠償命令が下された。これなども、システム構築上に脆弱性が少しでもあると、企業は莫大な負債を抱え込むという、恐ろしい話なのだ。これに加え、この冬新型ウイルスによる集団感染が喧伝されているように、これからの企業は、社員が一斉に休暇をとるパンデミック対策も欠かせない要素になってきている。つまり、社員が自宅待機になっても、企業としての事業継続を遂行するにはどうすればよいのか、の対策が求められているのだ。もっともこのパンデミック対策は、近い将来本格的に到来するかもしれない、在宅勤務時代の先取りだと考えれば、前向きな取り組みができよう。

 現在、セキュリティ対策、パンデミック対策の有力なツールとしてシンクライアントが注目されている。つまりサーバー側にデータを蓄積し、PC(端末)側にはデータは残さないというシステムづくりに脚光が向けられている。今回、日商エレクトロニクスでは、一企業ユーザーとして自社内にシンクライアントを導入し運用を開始した。つまり、ベンダーの立場でなく、ユーザーの立場でシステムを構築したところに意義がある。

 日商エレは、09年1月より一部の部署においてシンクライアントを導入し、仮想化デスクトップ環境への移行を経て運用を行ってきたが、この度、社外利用するPCのシンクライアント化を計画し、構築を完了した。今回構築したのは、仮想化サーバーとしてブレードサーバー「HP c7000+BLシリーズ」、ストレージ「NetApp FASシリーズ」、デスクトップ仮想化ソリューション「Citrix XenDesktop」の組み合わせによる最新シンクライアントソリューションである。現在、330ユーザーが既存資産を有効活用しつつシンクライアント環境を利用しているが、2010年5月までには600ユーザー規模に拡張し、最終的には営業活動・技術検証用のPCすべてをディスクレスPCに移行して完全シンクライアント化を行う予定。これにより、業務におけるセキュリティを一層強化するとともに、運用管理の負荷軽減とコスト削減を図る。なお、今回は抽出した問題点を検証するパイロット期間を事前に設けたため、約3カ月という短期間で構築を完了したという。

 同社では、自社で構築したシンクライアントシステムを、外部に提供することにしている。このようにベンダーが自らユーザーとなり、これを基に商品化したシステム商品は、より信頼性が高かまり、大歓迎ではある。(ESN)