寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第104回例会

2011年08月01日 | 例会履歴

2011.08.01 近畿大学東京事務所(外苑前)

【研究発表1】『粉河寺縁起』の構成と受容―奥書に見る書写者と書写地・信仰・時代背景―  土橋由佳子
【要旨】三十三話の構成をもつ長禄二年(一四五八年)書写『粉河寺縁起』(続群書類従所収)の奥書には、『粉河寺縁起』を書写した人物名をそれぞれ「明徳四年」「応永十九年」に記している。これは、同構成でなる『図書寮叢刊 諸寺縁起集』(底本・宮内庁書陵部所蔵・伏見宮家旧蔵本)に収められた宝徳四年(一四五二年)後祟光院貞成親王書写の『粉河寺縁起』にはない。そこで本発表では、『粉河寺縁起』の構成に見る特徴にふれつつ、続群書類従本の奥書に見る人物、書写された場所を追う。さらに伏見宮家旧蔵本の書写年の背景も含め、縁起書写・生産の場とともに、粉河寺信仰などの周辺と受容について考察する。

【研究発表2】匂いをめぐる身体経験と信仰について  吉村晶子
【要旨】「聖なるもの」が何であるのかは、周知のとおり長きにわたる議論が重ねられてきたテーマである。発表者はこれまで、〈匂い〉という身体経験を足掛かりに「聖なるもの」が聖者と人びととの関わりのなかでいかに立ち上がるのかを考えてきた。聖者と人びとの間に立ち込めた匂いは、聖性の確信を与える「奇跡」の経験として共有されるが、こうした匂いの交感ともいえる奇跡は、匂いをめぐる人びとの日常経験に根差した側面がある。日常と聖なる世界とを結ぶ経験の回路は、奇跡や聖性の真実性を増幅し、それを伝え聞いた人びとにも、自らも経験したいという欲望を生み出していく。こうした共感や羨望のまなざしが、日本の古代から中世の信仰を語るテクストのなかで、どのように機能しているのか。『今昔物語集』『宇治拾遺物語』をはじめとした説話や縁起などから、匂いを題材にした語りを扱い、聖なるもの、あるいは穢れと身体経験とのかかわりについて考察してみたい。