寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第72回例会

2007年05月01日 | 例会履歴

2007.05.01 早稲田大学戸山キャンパス

【研究発表】興福寺西金堂縁起の展開  大橋直義
【要旨】治承四年の炎上以後、南都諸大寺は縁起説の再編あるいは確認を余儀なくされ、それが『建久御巡礼記』、または縁起集の類に収載される縁起説へと結実してゆく。そしてこの時期に再認識された縁起説は中世期を通じてひとつのスタンダードとして機能し、『建久御巡礼記』などを軸にそれ以後の縁起説が展開されてゆくのであるが、その一方、おのおのの堂舎・仏像・法会など、個別の文脈をもって著述される縁起もまた存在していた。その位相差をはかる上で好例となるのが、本報告が主たる対象にすえる大谷大学図書館蔵『興福寺縁起』である。この縁起は室町期の書写にあたるもので、その内容は興福寺西金堂にかかわる縁起説を独自の認識をもって再編したものということができる。そのことを検討した上で、さらに、ある縁起説が他の縁起説をとりこむ際の方法についても言及したい。