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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(77)

2005年04月21日 | 主語
「一般人称」と呼ばれるものを扱います。以下、見ましょう。

(1)私たちはピクニックに行った。
(2)私たちは限りある資源を大切にしなくてはなりません。

(1)でも、(2)でも、「私たち」という表現が使われているんですけど、「私たち」って、一体、誰のことを言ってるんでしょうね。(1)でも、(2)でも、話者である「私」を含めた、複数の人たちであることは確かなんですけど、(1)の場合は、「私」の家族とか、友達とか、そういった特定の人たちなんでしょうね、きっと。

でも、(2)の場合はどうなんでしょうか。限りある資源を大切にしなくてはならないのは、特定の人数の「私たち」ってことなんでしょうか。例えば、「私」を含めた家族全員?「私」を含めた秋葉原の人たち?「私」を含めた栃木県の人たち?ちょっと違いますね。おそらく、(2)の「私たち」は、漠然とした不特定人数の「人」、というくらいの意味で使われているんですね。

というわけで、「私たち」には、狭い範囲の「私たち」もあれば、広い範囲の「私たち」もある、ということなんですが、決定的な違いは、(1)の「私たち」は、話者である、「私」を含む、2人以上のメンバーから成る特定人数のグループということです。しかし、一方、(2)の「私たち」は、特定人数のグループというわけではなく、人数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」、ということなので、グループという概念自体が意味をなさないものです。

(3)私たちはクルマに乗るときは、慎重にならなくてはなりません。
(4) a. なぜなら、普通の人たちよりも反射神経が鈍いからね。
   b. なぜなら、そんなことは、ドライバーにとって当然の義務だからです。
   c. なぜなら、この国の交通ルールは特に厳しいからです。

(3)の「私たち」は、それ自体、特定のグループを指す「私たち」なのか、それとも、「人」、の意味になる「私たち」なのか、解釈があいまいです。そこで、(4a)の文が(3)の後に続けば、例えば、運転のヘタクソな仲良しグループの「私たち」というケースがあり得ますので、特定のグループを表す「私たち」になります。一方、(4b)が(3)の後に続けば、「人」、という意味の「私たち」になりますね。

しかし、(4c)が(3)の後に続く場合は、少し厄介です。この場合の「私たち」は、「人」、の解釈でもよいとは言えるでしょうが、しかし、「この国でクルマに乗る人に限り」、というような、限定付きということになりますので、漠然とはしていても、一定のワクが付いている上での、「人」、になるんですね。このように、(2)や、(3)+(4b)、(3)+(4c)の解釈になるような、「私たち」を、「一般人称」と呼ぶことがあります。要するに、一般人称とは、誰とは特定できないような人々のことを漠然と表しているだけなのです。

(5)We must save our resources because they are not unlimited. (訳同(2))

英語にも、もちろん、一般人称というものはあります。(5)の‘we’だって、日本語(2)の「私たち」と全く同じで、「人」の意味で使われています。しかし、それどころか、英語は、この一般人称の表現方法が、日本語以上に豊かである、と言えるような側面があります。

(6)They say that she is a famous actress.
(7) a. 彼らは、彼女が有名な女優だと言っている。
   b. 人は、彼女が有名な女優だと言う。

(6)の英語は、実は、(7a)と(7b)のような、2通りの解釈がOKです。これらの違いは、(7a)が、「彼ら」という特定のグループを主語にしている解釈で、「あの連中は」とか、「3年B組の生徒は」とか、具体的に表せる人たちの場合で、圧倒的に優勢となる解釈ですが、場合によっては、(6)の‘they’を不特定多数の人々と解釈して、人が言うには、彼女は有名な女優だそうだ、くらいの意味にとってもOKとなります。

これは英語と日本語の大きく異なる点で、日本語は、「彼ら」という表現を、一般人称としては用いません。「彼らは ~ だ」という表現は、必ず、特定のグループを指していますから。ですので、日本語(7a)の「彼ら」を、人数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」の意味に解釈することは不可能です。ところで、‘they’は三人称ですが、二人称の‘you’も、一般人称として使われます。

(8)You should be careful when you drive a car.
(9) a. お前らはクルマの運転には注意せんといかん。
   b. クルマの運転には注意しなくては。

(8)の解釈としては、(‘you’が複数形であるという前提で) やはり、2通りがあり、(9a)ならば、話し相手 (聞き手) を含んだ特定のグループを指しますね。しかし、一方、(9b)ならば、話し相手 (聞き手) を含めて、人数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」という解釈になります。日本語の場合、やはり、「お前ら」、「あなたたち」、「キミら」など、どれをとっても、聞き手を含んだ特定のグループという解釈になりますので、日本語(9a)の「お前ら」を、聞き手を含めた「人」の意味に解釈することは不可能です。

(10)They speak French in this country.
(11) a. 彼らは、この国では、フランス語を話している。 (〇)
    b. 人は、この国では、フランス語を話している。 (〇)

(12)French is spoken by them in this country. 
(13) a. この国では、フランス語が彼らによって話されている。 (〇)
    b. この国では、フランス語が話されている。 (×)

能動文である(10)の‘they’は、やはり、特定グループの解釈(13a)と、人数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」の解釈(13b)の、2通りに解釈できますが、ここで面白いのは、能動文(10)の受身文である(12)は、‘them’が、特定グループの解釈(13a)しか許さない、ということです。では、なぜ、人数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」の解釈になる(13b)が、アウトなんでしょうか。

ここで、能動文の主語と、受身文の‘by ~’の文法上の特性について考えてみると、英語の主語は、よく言われているように、日本語の主語とは違って、ある一定の例外を除いて、省略が不可能である、ということです。しかし、一方で、受身文の‘by ~’は、表す必要がない、と思われる場合は、なくても構わないものです。そこで、以下を見ましょう。

(14)French is spoken in this country. (訳同(13b))

(14)は、(12)から、‘by them’を取り除いた文ですが、このカタチでは、(13b)の解釈がOKになります。ここから言えそうなのは、英語の場合、一般人称の‘we’、‘you’、‘they’は、文法的に消去が可能ならば、消去しなければならない、というルールがあるのではないか、ということです。

(15)It is said by them [ that she is a famous actress ] .
(16) a. [ 彼女は有名な女優だと ] 彼らに言われている。 (〇)
    b. [ 彼女は有名な女優だと ] 言われている。 (×)

(17)It is said [ that she is a famous actress ] . (訳同(16b))

能動文(6)からつくられた、受身文(15)では、やはり、‘them’が、特定グループの解釈(16a)しか許さず、人数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」の解釈になる(16b)が、アウトになります。しかし、(15)の‘by them’は、文法的に消去可能なので、(17)で、‘by them’を消去してみると、(16b)の解釈がOKになります。

(18)It is impossible for us to drink up the whiskey at one gulp.
(19)a. オレたちには、そのウイスキーを一気飲みなんて無理だ。 (〇)
   b. そのウイスキーを一気飲みなんて無理だ。 (×)

(20)It is impossible to drink up the whiskey at one gulp. (訳同(19b))

(20)の、「for A to 不定詞」のカタチでは、その不定詞の主語に、‘us’(=A)が使われていますが、(19a)のように、特定グループの解釈をOKにすることができます。しかし、一方で、数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」の解釈になる(19b)はアウトです。この場合も、(20)のように、‘for us’を消去してやれば、(19b)の解釈がOKになります。 (EG43参照)

以上、受身文の‘by ~’や、「for A to 不定詞」のカタチでは英語の場合、一般人称の‘we’、‘you’、‘they’は、文法的に消去が可能ならば、消去しなければならない、というルールがあるのではないか、ということを支持する証拠を上げたわけですが、しかし、以下の例は、ちょっとした反例になるようです。

(21) Saving limited resources is very important for us.
(22)a. 限りある資源を節約することは、私たちにとって大事なことです。 (〇)
   b. 限りある資源を節約することは、大事なことです。 (〇)

(21)の‘for us’は、(22a)のように、特定グループの解釈がOKであり、そして、(22b)のように、数も漠然とした、誰ともハッキリしないメンバーから成る「人」の解釈もOKです。そこで、少し考え直して、受身文である、(12)や(15)の‘by them’は、もともとは、能動文の主語であったことに着目してみたいと思います。すると、(20)で消去されている、‘for us to drink ~’のカタチの‘for us’も、その不定詞の主語である、という共通点があります。そこで、以下のようなルールにするのがよい、ということになります。

(23)主語である一般人称は、その主語位置が、文法的に消去可能ならば、
   消去しなければならない。(変形によって派生された一般人称が、
   もとの文では主語である場合を含む)

今回のポイントは、一般人称と呼ばれる、‘we’、‘you’、‘they’ですが、一般に、あまり詳しく扱われることがない点を見てみました。そして、英語の一般人称は、日本語の一般人称と比べて、種類が多いので、解釈の仕方で、ちょっとカン違いしやすい場合がある、ということです。

一般人称が、受身文の‘by ~’には使えない、といったことは、断片的には、学校の英文法などでも教わるのですが、ハッキリとしたルールに基づいて教わる、ということはないようなので、この機会に、(23)のルールをマスターしておいて下さい。

● 関連: EG43

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