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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(62)

2005年03月07日 | 変形
EG23の続きです。以下、見ましょう。

(1)It seems [ that Tom loves Susan ]. ([ トムは、スーザンが好きな ] ようだね。)
(2)Tom seems to love Susan. (訳同上)

‘seem’「~ ようだ」は、「様子」を述べる述語として用いられます。使い方は、ちょっとクセがあって、(1)のように、‘It seems that 主語+動詞 ~’となるように、‘it’を、‘seem’の主語に立てて用いるところです。そして、(2)のような構文でも、‘seem’は使えます。ところで、(1)と(2)は関係が深い、とよく言われています。

ポイントは、①・(1)の‘that’節の主語‘Tom’「トム」が、(2)では、‘it’を外した後、‘seems’の主語になっているということ、②・その際、動詞‘love’は、‘to’不定詞にしなければならない、ということです。

(3) a. Tom seems [ that _ loves Susan ]. (×) (訳同(1))
   b. Tom seems [ _ loves Susan ]. (×) (訳同(1))

(1)の文から、(3a)と(3b)をつくってみましたが、両方ともアウトになっています。(3a)と(3b)は、共に、(1)の‘it’を外した後、‘that’節内の主語‘Tom’を‘seem’の主語にするべく、移動させました。(3a)に関しては、EG59のルール、「‘that’節内では、‘that’は、その直後に移動によって残された空所があってはならない」に違反してしていますので、アウトになるのは容易に予想がつきますが、かと言って、‘that’を消去した(3b)がOKになるわけでもありません。

(3a)や(3b)がアウトになる一方で、(2)がOKである、という事実から、①の移動を行う際には、②の条件は必須であることがわかると思います。ですので、そもそも、EG59のルールうんぬんとは無関係に、(2)は、‘that’節そのものが許されない、という性質をもっているわけですね。この部分は、EG47で見た、「疑問詞の移動」とは、少し異なる点なので、注意が必要です。それと、EG23の、‘easy’構文との差も、注意点となります。

(4)It is easy (for Tom) to deceive Susan. ((トムには)スーザンを騙すなんて簡単だよ。)
(5)Susan is easy (for Tom) to deceive _ . (訳同上)

(4)と(5)は、ほぼ同じ意味をもっていますが、ポイントは、(4)の不定詞内の‘deceive’「~ を騙す」の目的語‘Susan’が、(5)では、‘it’を外した後の、‘is easy’「簡単だ」の主語位置に移動している、ということです。ですので、その移動の結果として、当然のことながら、‘easy’構文である(5)では、‘deceive’「~ を騙す」は、他動詞であるにもかかわらず、その直後に目的語を取っていません。一方、‘seem’を用いた、(1)から(2)への書きかえでは、その目的語‘Susan’ではなく、主語‘Tom’の移動になっていますね。

(6) a. Susan seems [ that Tom loves _ ]. (×) (訳同(1))
   b. Susan seems [ Tom loves _ ]. (×) (訳同(1))
   c. Susan seems (for Tom) to love _ . (×) (訳同(1))

(6a-c)では、目的語‘Susan’を、あらゆるパターンで、‘seem’の主語位置に移動させてみましたが、全部アウトです。(6a)では、‘that’節内から、①の条件を無視して、目的語‘Susan’を‘seem’の主語位置に移動してみましたがアウトです。(6b)では、(6a)から‘that’節内の‘that’を消去してみましたが、やはりアウトです。(6c)では、(1)の‘that’節を、‘to’不定詞にしてから、目的語‘Susan’を‘seem’の主語位置に移動してみましたが、それでも、やはり、アウトです。

このことから、(1)から(2)への変形は、予め、(1)の‘that’節内の目的語ではなく、「主語」が移動する、と決められているようです。では、(4)から(5)のように、‘to’不定詞内の「目的語」が移動の対象となる変形タイプの、‘easy’構文ではどうなんでしょうか。

(7) a. Tom is easy for _ to deceive Susan. (×) (訳同(4))
   b. Tom is easy _ to deceive Susan. (×) (訳同(4))

‘to’不定詞の場合、「for A to 不定詞」のカタチになると、‘for A’が‘to’不定詞の主語になれることは、EG43で説明しました。そこで、(7a)では、‘to deceive Susan’の主語である、‘for Tom’の、’for’を残したままで、‘Tom’を移動してみましたが、アウトになっています。一方、今度は、(7b)では、(7a)から、‘for’を消去してみましたが、それでも、やはり、アウトです。どうやら、‘easy’構文を、決定的に特徴づけているのは、その‘to’不定詞内の「目的語」が、移動の対象として選ばれる、ということにつきるようです。

一方、‘seem’「~ ようだ」を用いる構文の特徴は、(1)のような文の、‘that’節内の「目的語」ではなく、「主語」が移動の対象として選ばれるということです。加えて、‘that’節内の主語が移動によって外へ出て行く際には、その‘that’節が、(2)の文のように、‘to’不定詞に変わっていなければならない、ということですが、ここで、ちょっと疑問に思うのは、(1)のような構文は、もともとが、‘seem’の後が、‘that’節ではなく、‘to’不定詞の構文じゃダメなのか、ということです。

(8)It seems (for Tom) to love Mary. (×) (訳同(1))

(1)を、(8)のような、「for A to 不定詞」の構文に変えてみましたが、アウトです。やはり、‘seem’を用いた構文では、‘it’を‘seem’の主語に立てる場合、‘it seems that 主語+動詞 ~’で記憶しておかなければならないようです。しかし、一方で、‘easy’構文の場合は、以下のように、もともと、‘that’節が取れません。

(9)It is easy [ that Tom deceives Susan ] . (×) (訳同(4))

以上、英語の場合、ある特定の述語には、決まったカタチで使われる、ということと、決まった変形のみを許すということで、タイプ分けされていることを見ましたが、補足的に、(1)から(2)へのカタチとなる「変形」を保証するような証拠となる例を見てみます。

(10)a. It seems [ that there are many books in the room ].
    ([ その部屋にはたくさん本がある ] ようだね。)
   
   b. There seem to be many books in the room. (訳同上)

(11)a. It seems [ that there is a book in the room ].
    ([ その部屋には本が一冊ある ] ようだね。)
   
   b. There seems to be a book in the room. (訳同上)

(10a)から(10b)、及び、(11a)から(11b)の変形では、‘there’構文 (EG31参照)、‘there are/is ~’の主語である、‘there’が移動していると思われます。ここで注目すべきポイントは、(10b)では、‘seem’のカタチが、‘seem’のままですが、一方、(11b)では、「三人称・単数・現在」のカタチ、‘seems’となっていることです。

(10a)から明らかなように、‘that’節内では、複数形‘many books’に対して、動詞が‘are’のカタチを取っていますし、一方、(11a)からも明らかなように、‘that’節内では、単数形‘a book’に対して、動詞が‘is’のカタチを取っています。こういった単数・複数に関する動詞との呼応関係が、そのまま、変形後の(10b)や(11b)にも持ちこされて、‘seem’に影響を与えているのです。さらに、以下を見ましょう。

(12)a. It seems [ that there is the book in the room ]. (×)
   b. There seems to be the book in the room. (×)

(12a)の‘that’節内では、‘book’に‘the’が付いて、‘there’構文、本来の「不定」解釈ではなく、「定」解釈となっているため、非文法的とされていますが、その非文法性が、(12b)でも、そのまま持ち越されてアウトになっています。これも、「変形」によって派生されたと考えれば、もとの文が悪いのだから、派生された文も悪い、ということになり、説明がつきます。次は、イディオムを使った証明です。

(13)The cat is out of the bag.
(14)a. そのネコは袋から出ている。 (通常の解釈)
   b. (うっかり)秘密が漏れている。 (イディオム解釈)

(15)The cat tried to be out the bag.
(16)a. そのネコは袋から出ようとした。 (〇)
   b. 秘密が漏れるよう試みた。 (×)

(13)の文は、普通に意味を解釈すれば、(14a)のようになりますが、一方、イディオムとしての解釈もあり、(14b)のように、「秘密が漏れている」という解釈も可能です。しかし、(15)のように、‘the cat’の部分を、動詞‘try’「試みる」の主語にして、その後に‘to be out of the bag’を続けた場合、(16a)のように、(14a)の通常解釈は、そのままOKですが、一方、(16b)のように、(14b)のイディオム解釈は不可能となります。そこで、‘seem’のような述語を用いて、同様のテストをするとどうなるかというと、以下のようになります。

(17)It seems [ that the cat is out the bag ].
(18)a. [ そのネコは袋から出ている ] ようだね。 (〇)
   b. [ 秘密が漏れている ] ようだね。 (〇)

(19)The cat seems to be out the bag.
(20)a. そのネコは袋から出ているようだね。 (〇)
   b. 秘密が漏れているようだね。 (〇)

(17)の解釈として、(18a-b)の両方とも可能で、同じく、(19)の解釈として、(20a-b)の両方が可能です。つまり、(17)と同様に、(19)でも、(13)における、2つの意味解釈、(14a)と(14b)がそのまま可能となっていて、特に注目すべきポイントは、(14b)のイディオム解釈が、(16b)では不可能だったのですが、(20b)では可能となっていることです。このことから、(1)のような構文から(2)のような構文への「変形」は保証されたものと言ってよいでしょう。

今回のポイントは、EG23の‘easy’構文とは異なる性質をもつ変形です。その特徴は、‘easy’構文のように、‘to’不定詞内の目的語が移動の対象となるのではなく、‘that’節内の「主語」が移動の対象となる、ということです。この性質をもった同種の述語としては、‘be likely to’「~ しそうな、~ ありそうな」、‘happen to’「たまたま、偶然 ~ する」、‘appear to’「(外見から) ~ に見える」などがあります。

■注1 :よくある説明として、(2)のような構文における、‘seem to’を、一種の「助動詞」として教える向きもありますが、‘Tom seems to me to love Susan.’「ボクには、トムはスーザンを好きのように思える。」のように、容易に、‘to me’のような語句を割り込ませることが可能なので、その点、「助動詞」として扱いは、説得力に欠ける説明となります。
■注2 :(1)は、‘[ That Tom loves Susan ] seems.’、と書きかえるのは不可能ですし、よく言われる、(1)の‘it’と、 ‘that Tom loves Susan’、の部分が、イコールで結ばれるような関係にある、ということも、特に証拠があるわけではありません。そこで、(1)の文は、学校で習うような、「基本5文型」のどれに該当するか、などと言うようなことを考えても、あまり意味はありません。
■注3 :(6c)は、‘Susan seems to be loved (by Tom).’のようなカタチでなら、‘Susan’を移動の対象にすることが可能です。この場合、‘It seems [ (that) Susan is loved (by Tom) ] .’のように、‘that’節内で、‘Susan’が主語になっている文が、基になっています。


●関連: EG23EG31EG43EG59

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