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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(64)

2005年03月13日 | 動詞
EG60とEG61の続きで、二重目的語の構文です。EG61では、二重目的語の構文のカタチそのものに内在する、いわば、「内側」の特性としての一般的な傾向を観察しましたが、今回は、「外側」から課せられる一般的傾向を考察してみたいと思います。そこで、「動詞 A to B」と、「動詞 B A」のどちらも許す、‘give’「与える」を使って、以下、見ましょう。

(1) a. Bill gave a book to Sally. (ビルはサリーに本を与えた。)
   b. Bill gave Sally a book. (訳同上)

(2) a. Bill gave a book to the woman. (ビルはその女性に本を与えた。)
   b. Bill gave the woman a book. (訳同上)

(3) a. Bill gave a book to her. (ビルは彼女に本を与えた。)
   b. Bill gave her a book. (訳同上)

いきなり、似たような文がズラッと並んでいますが、(1a-b)~(3a-b)では、(a)が‘give A to B’「AをBに与える」、一方、(b)が‘give B A’「AをBに与える」のカタチとなっています。ここで、細かい違いは、(1a-b)では、Bに‘Sally’「サリー」、(2a-b)では、Bに‘the woman’「その女性」、そして(3a-b)では、Bに‘her’「彼女」というように、ちょっとずつ、Bに相当する単語を入れかえてある、ということです。

そこで、あくまでも一般的な傾向ですが、全く同じ条件の下で、単語そのものだけを比較するならば、‘Sally’「サリー」、‘the woman’「その女性」、‘her’「彼女」という順番で、話題の中での「情報の新鮮度」が反映される傾向があります。

つまり、「サリー」というような、直接何か(誰か)を指すような表現は、情報の新鮮度が高い傾向にありますが、「その ~」というような表現になると、一度どこかで、既に話題に登場していることになり、情報の新鮮度が、「サリー」というような表現と比べると、低く感じられます。そして、「彼女」のような、一度話題に上ったものを受けるための専用表現である代名詞になると、情報の新鮮度が最も低い、ということになります。

そこで、微妙な違いではありますが、(1a-b)~(3a-b)、それぞれのペアにおいて、英語のネイティヴが、(a)と(b)を比較判断してみると、(1a)よりは(1b)、(2a)よりは(2b)、そして、(3a)よりは(3b)の方が良く感じる、という傾向があるみたいです。しかし、各ペアの(a)と(b)、どちらも基本的に悪い文、というわけではありません。あくまで、意識的に比較すると、各ペアの(a)よりは(b)の方が良く感じる、という程度のものですので、大した差ではありません。各ペアの(a)と(b)、どちらも基本的にOKです。

(4) a. Bill gave the book to Sally. (ビルはサリーにその本を与えた。)
   b. Bill gave Sally the book. (訳同上)

(5) a. Bill gave the book to the woman. (ビルはその女性にその本を与えた。)
   b. Bill gave the woman the book. (訳同上)

(6) a. Bill gave the book to her. (ビルは彼女にその本を与えた。)
   b. Bill gave her the book. (訳同上)

今度は、(4a-b)~(6a-b)ですが、それぞれのペアにおいて、(1a-b)~(3a-b)の、‘a book’を、全て‘the book’に入れかえてみました。すると、(4a-b)と(6a-b)の各ペアの(a)と(b)においては、やはり、微妙な差があるという程度で大きな差はなく、(a)と(b)、どちらも基本的にOK、という判断になりますが、しかし、(5a-b)のペアのみが、どちらも優劣を付けがたい、という判断になります。というよりも、(5a-b)は、どちらも等しく奇妙に感じる、という判断になるようです。

(7) a. Bill gave a book to a woman. (ビルはある女性に本を与えた。)
   b. Bill gave a woman a book. (訳同上)

(8) a. Bill gave the book to a woman. (ビルはある女性にその本を与えた。)
   b. Bill gave a woman the book. (訳同上)

今度は、(7a-b)と(8a-b)ですが、(7a-b)のペアは、どちらも奇妙に感じる、という判断になるようです。しかし、一方で、(8a-b)のペアですが、(8a)はOKなのに、(8b)は奇妙に感じる、という判断になるようです。

以上見た感じで、もう、そろそろわかってきたと思いますが、どうやら、‘give A to B’のカタチであろうと、‘give B A’のカタチであろうと、AとBとの間には、比較上の、「情報の新鮮度」に関するコントラストが必要である、と言えそうです。つまり、AとBとの間で、「情報の新鮮度」にコントラストが感じられない、(5a-b)と(7a-b)のペアは共に奇妙に感じられる、ということですね。

しかし、それでは、AとBの間の「情報の新鮮度」にコントラストがある(8a-b)はどうなるんだ、ということになってしまいます。(1a-b)、(2a-b)、(3a-b)、(4a-b)、そして、(6a-b)は全て、「情報の新鮮度」にコントラストがあり、かつ、どちらも、微妙に差はあるけど、基本はOKなのです。一方、(8a-b)においては、(8a)はOKだけど、(8b)は奇妙だとの判断を受けています。

これは、どうやら、二重目的語の構文のカタチになると、「動詞 B A」のBに、不定冠詞‘a’や‘an’が付くほどの、情報の新鮮度をもった表現がくること自体が許されないようです。例えば、「サリー」のような人の名前は、他の条件が同じなら、「その ~」や、「彼女」といった表現よりも比較上、情報の新鮮度は高いんですけど、結局は、固有名詞になり、特定の固体を指す表現なので、解釈は、「不定」ではなく、「定」になってしまいます。そこで、‘a’や‘an’のような不定冠詞が付くような「不定」の表現ほどには新鮮度はない、ということなんですね。

そこで、二重目的語の構文のカタチ、「動詞 B A」のBは、どうやら、不定表現に対しては、相性が悪い、というような条件があるようです。ですので、(7a-b)の(7b)に関しても同じことが言えるんですが、しかし、(7a)と(7b)は、どちらも奇妙だと判断されているので、これは、(5a-b)のペアで、(5a)と(5b)が、どちらとも奇妙と判断されていることもあわせて考えると、AとBの間には、「情報の新鮮度」にコントラストがなければならない、という、独立した別の条件も必要になってきます。

(9) a. Bill gave it to a woman. (〇) (ビルはそれをある女性に与えた。)
   b. Bill gave a woman it. (×) (訳同上)

(10) a. Bill gave it to Sally. (〇) (ビルはそれをサリーに与えた。)
    b. Bill gave Sally it. (×) (訳同上)

(11) a. Bill gave it to the woman. (〇) (ビルはそれをある女性に与えた。)
    b. Bill gave the woman it. (×) (訳同上)

(12) a. Bill gave it to her. (〇) (ビルはそれを彼女に与えた。)
    b. Bill gave her it. (×) (訳同上)

今度は、(9a-b)~(12a-b)ですが、それぞれ(a)と(b)のペアにおいて、‘give A to B’のカタチと‘give B A’のカタチのいずれであっても、全て、Aには代名詞の‘it’を使っています。すると今度はハッキリと、「〇・×」で示せるほどに、各ペアの(a)と(b)の間に差が出るようです。

(9a-b)~(12a-b)を見て、ひと目でわかるのは、‘give B A’のカタチでは、Aに‘it’を使うと、Bがどのような名詞であろうとアウトになってしまう、ということです。つまり、‘it’のような、「情報の新鮮度」を著しく低下させる傾向のある代名詞は、二重目的語のカタチ、「動詞 B A」のAに使用することは不可能である、ということです。以上からわかった、一般的な傾向をまとめると以下のようになります。

(13)「動詞 A to B」のカタチ、及び、二重目的語、「動詞 B A」のカタチでは、
   AとBとを比較して、「情報の新鮮度」に関するコントラストが必要である。

(14)二重目的語、「動詞 B A」のカタチでは、Bが、「不定」解釈になるほど、
   「情報の新鮮度」が高すぎるものであってはならない。

(15)二重目的語、「動詞 B A」のカタチでは、Aが、代名詞になるほど、
   「情報の新鮮度」が低すぎるものであってはならない。

ここで注意点ですが、傾向(13)は、(14)や(15)の傾向と比べると、それほど強い強制力はないようです。傾向(13)は、(5a-b)と(7a-b)の容認度の低さから要求されるものだったわけですが、しかし、(5a-b)と(7a)のような文は、その文だけをいきなりポンと与えられると奇妙に感じるだけであって、実際の発話では、結構、容認されています。(ただし、(7b)は、傾向(14)にも、引っかかるので、どの道、救えません。)

それは、実際の文は、必ず、「文脈」の助けを借りて発話されているのであって、たとえ、文のカタチのみからは、「情報の新鮮度」にコントラストを出しにくい場合でも、文脈などから、それが止むを得ないような場合、例えば、AとBがどちらも、「情報の新鮮度」といった観点からは、あまり重要ではないような文脈であれば、(13)を容易に逃れて、(5a-b)と(7a)の容認度を上げることは可能だからです。

(16)What Bill did is to give a book to a woman. 
  (ビルがしたのは、本を女性にあげたってことだよ。)

(16)では、ビルが「何をしたのか」という「行為」が問われているのであって、AとBが直接問われているわけではありませんので、そういった文脈では、(13)を簡単にすり抜けることが可能となります。というわけで、傾向(13)は、あくまでも、AとBに焦点が当たった場合に問題になる、ということらしいですね。

今回のポイントは、二重目的語の構文は、EG61で見たような、構文そのものに内在する意味的な特性以外に、「情報の新鮮度」という観点からも、その容認度に影響を受けやすい傾向がある、ということです。特に、(14)と(15)のような傾向は、かなり顕著に見られるものなので、実用英語といった観点からは、この2つの傾向は押さえておいた方が良いようです。

しかし、これらの傾向は、EG61で扱った傾向と同じく、話者によるイメージ力の問題で、容易に覆されてしまうことがあるのも事実であり、その点、話者の主観の中から集めた最大公約数的傾向であるので、文法の問題とは、一線を画す側面があることは留意して下さい。まだ他にも、見るべき点はありますが、別の機会です。

■注1 :(12b)は、ごくまれに容認する英語話者もいるそうです。これは、傾向(13)をすり抜けている(12a)とあわせて考えると、AとBにおいて、代名詞同士がカチ合うような場合は、容認度が上がるような、特別な傾向があると言えるかも知れません。
■注2 :代名詞は、常に、「情報の新鮮度」が低い、というわけではありません。一度、話題に上ったからと言っても、別の観点からは、新鮮な情報として扱われることはよくあります。例えば、‘The man you should respect is him.’「尊敬すべき人物は、彼なのだ。」、のような文では、「尊敬の対象」という、新たな観点を与えられた「彼」が、強調されることで、新鮮な情報として再浮上しています。


●関連: EG60EG61

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