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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(61)

2005年03月04日 | 動詞
EG60の続いて、二重目的語の構文を扱います。今回は、二重目的語のカタチが使われる上で、数ある一般的傾向の中から、代表的な概念を1つ選んで話してみます。以下、見ましょう。

(1)Tom gave a book to the girl. (トムは本をメアリーに与えた。)
(2)Tom gave the girl a book. (訳同上)

まず、基本的な問いになります。そもそも、なぜ、(1)があるのに、(2)のような、二重目的語の構文があるんでしょうか?(1)と(2)が同じ意味だ、というのならば、ただ単に、重複的なだけであり、(1)だけが存在するというのでも、問題はないはずなんです。そこで、EG60では、ほんの少しだけ、両者の意味的な差異に触れましたが、それを具体的に述べると、以下のような感じになります。

(3)I knitted this sweater for our baby. (私たちの赤ちゃんにセーターを編んだのよ。)
(4)I knitted our baby this sweater. (訳同上)

(3)と(4)は、‘knit A for B → ‘knit B A’「BにAを編む」の動詞を使っています。そこで、場面設定として、(3)または(4)の話者は、妊娠中の妻であり、その夫に話しかけているような状況を想定してみます。ここで、‘knit A for B’を使った(3)を、英語のネイティヴが聞くと、すんなり、OKにできるんですが、一方、‘knit B A’、つまり、二重目的語の構文を使った(4)を聞くと、かなり奇妙に感じるようです。

この状況でのポイントは、妻は妊娠中なので、赤ちゃんは、まだ胎児であり、実際にセーターを受け取ることができませんし、受け取るかどうかを問題にしなかったとしても、胎児が、何らかの利益を受けるような影響を被っているとも考えにくいのです。と言うのも、胎児には、まだ、自我(意識)が芽生えていないと考えられるからです。

「動詞 A for B (AをBに ~) → 動詞 B A」の書きかえになる、二重目的語の構文では、このように、二重目的語になった場合、‘動詞 B A’の、Bに対して、何らかの受益的な影響があったことが含意される傾向があります。次に、「動詞 A to B (AをBに ~) → 動詞 B A」の書きかえになる、二重目的語の構文を見てみましょう。

(5)The pitcher threw the ball to catcher、but the throw went wide.
   (ピッチャーは球をキャッチャーに投げたが、暴投になってしまった。)

(6)The pitcher threw the catcher the ball、but the throw went wide. (訳同上)

(5)では、‘throw A to B’「BにAを投げる」の構文を使っていますが、一方、(6)では、二重目的語、‘throw B A’の構文を使っています。ポイントは、ピッチャーが投げた球 (=A) を、キャッチャー (=B) が捕れなかった、という状況で、この場合も、英語のネイティヴは、(5)はすんなりOKにできるが、(6)を聞くと、やはり、奇妙な感じがする、との判断を下しています。

ここでも、やはり言えるのは、(6)の文からは、ある矛盾が生じている感じがするからで、(6)の、‘threw the catcher the ball’からは、ピッチャーが投げた球はキャッチャーに到達している感じがするのに、その結果が、暴投になった、では意味がおかしいと感じるからのようです。

このように、英語話者の判断から、‘throw A to B’「BにAを投げる」の構文は、AがBに到達していることまで、必ずしも含意してはいないが、一方で、二重目的語、‘throw B A’の構文は、AがBに到達していることを含意している、という概念は妥当であることを支持しています。

と、ここまで言って、前置詞を使う構文と、二重目的語の構文の間に、いかなる場合でも、上で述べたような意味の差が、ハッキリと出るのかというと、そういうわけでもありません。これを、もう少し詳しく言うと、その可否に関する判断に、個人差が大きく、特に両者の間に使用上の差を感じない、とコメントする英語話者の数も、例外的と見なせるほどに少ないわけでもないのです。

つまり、二重目的語の構文の使用上の可否は、話者の意味的なイメージ力に依存する傾向が多分にあり、そのため、使用上の個人差が、大きいと言えます。こう言った事情があるため、完璧な一般化が、なかなか困難で、上で述べたような「傾向」がある、としか言えない側面があるのです。

あと、(1)と(2)の可否についても、ちょっと突っ込んだ説明が必要になります。‘give’は、「与える」の意味ですが、「与える」とは言っても、少し意味が広くてあいまいで、「あげる」の意味もあれば、「わたす」の意味もあります。「あげる」なら、所有権が他人に移ることを意味しますが、「わたす」なら、物が移動する、という意味を表す場合もあって、所有権が移るとは限りません。こういった概念分けで、‘give’の使い方に差が出てくることもあります。

(7) a. Bill gave the pen to Ann by throwing it、but the throw went wide.
    (ビルはアンに、ペンを投げ与えるも、暴投になってしまった。)
   
   b. Bill gave Ann his pen by throwing it、but the throw went wide. (訳同上)

(8)a. Bill gave all his money to Ann、but she rejected it.
    (ビルはアンに、有り金すべてを与えたが、彼女はそれを拒否した。)
   
   b. Bill gave Ann all his money、but she rejected it. (訳同上)

(7a-b)の場合は、ペンを投げる、という行為によって、ただ単に、ビルからアンにペンが移動していて、上手く届くかなかった様子を表しているので、そういったときの‘give’は、物が移動していることが強調され、「わたす」という感じになりますので、「所有者」が替わる、ということを意味してはいません。この場合、(7a)の‘give A to B’は、OKにできても、(7b)の‘give B A’は、奇妙だと判断されます。

一方、(8a-b)の場合は、ビルがアンに、お金をあげようとして拒否された様子を表しているので、この‘give’は、「所有者」が替わる、ということを意味していて、お金の「到達」を含意する意味に解釈されますが、このときは、(8a-b)のどちらも、奇妙だと判断されてしまいます。

このことから、‘give’は、物の移動を表す、「わたす」の解釈になる場合、‘give A to B’では、必ずしも、AがBに到達することを含意していませんが、‘give B A’では、AがBに到達していることを含意します。しかし、その一方で、「あげる」の意味になると、‘give A to B’であろうと、‘give B A’であろうと、AがBに到達していることを含意します。

これは、やはり、ただ単に、「移動」を表すだけでなく、「所有者」が替わる、といった概念が原因で、このことを、より一層裏付けるのが、‘sell’「売る」を使った場合です。‘sell’「売る」は、まさに、売買によって「所有権」が移ることそのものを表す動詞なので、以下の(9a)の‘sell A to B’であろうと、(9b)の‘sell B A’であろうと、両方とも、はなはだしく奇妙だと判断されます。

(9) a. Bill sold his car to Ann、but she did not buy it.
    (ビルはアンにクルマを売りに出したが、彼女は買わなかった。)
   
   b. Bill sold Ann his car、but she did not buy it. (訳同上)

以上から、「所有」と「占有」の違いは、意味の強さの違い、と言ってもよく、「所有」は「占有」よりも、意味的に強い、と判断されるので、「あげる」の場合は、意味が強く、‘give A to B’の構文でも、「到達」を容易に含意し、一方、「わたす」の場合は、「移動」の方を強調しやすくなる分だけ、意味がそれほど強くもないので、‘give A to B’の構文では、「到達」を含意するには至らないという差が出てしまいます。ですので、(1)と(2)の場合でも、特に、(1)は、メアリーが本の「所有者」となるのか、単なる、移動による「占有者」の交替になるのか、によって、本の「到達」の含意に関する差が出ます。

今回のポイントは、二重目的語の構文、「動詞 B A」には、「到達」や「受益」が含意されるという、一般的な傾向があるということです。一方、「動詞 A to B」の場合は、必ずしもそういった含意はないという傾向があるものの、しかし、動詞固有の意味によっては、「動詞 B A」との差がでない場合もあります。こういったことは、一応、「動詞 A to B」と「動詞 B A」の間にある違いの代表的な傾向ではありますが、細かく見ると、他にも、まだ違った特性があるにはあります。それについては、機会を改めて、見てみたいと思います。

●関連: EG60

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