D9の響き

Guitarを肴につらつらと・・

Romantic Warrior('76)/Return To Forever

2008-05-02 23:44:45 | band
邦題“浪漫の騎士”

'76年シリーズも中盤に差し掛かりました・・まだまだ続きます。(笑)
クロスオーヴァーと言うには早すぎた存在と言いましょうか。
常に新しい血を導入しつつ進化し続けたジャズ・グループであったReturn To Forever(リターン・トゥ・フォーエヴァー)の、グループとして第2期の最後を飾った作品“Romantic Warrior(浪漫の騎士)”をこの辺でチョイスしなければなりませぬ。
彼等の'72のデビュー作“Return To Forever”(カモメのやつね、笑)とは似ても似つかない程、エレクトリックでハードなサウンドなのが特徴でしょうか。
チックらしいラテン・フレーヴァーは希薄ですが、なんとも不思議な雰囲気が随所に漂う名盤じゃないかと思います。

今更ですが、この作品を残した強者達はこの方々ですネ。

personnel:
Chick Corea(kb,per:'41年6月12日マサチューセッツ州チェルシー出身・当時35歳)
Stanley Clarke(b,per:'51年6月30日ペンシルバニア州フィラデルフィア出身・当時25歳)
Al DiMeola(g,per:'54年7月22日ニュージャージ州ジャージシティ出身・当時22歳)
Lenny White(d,per:'49年12月19日ニューヨークシティ出身・当時26歳)

ご覧のように、リーダーのチック以外は皆若い20代のミュージシャン達ばかりです。
ドラムのレニーと共にマイルス門下生として有名な彼ですが、既にこの頃から若者の才能を見抜く力が際だっていたようですね。
チック以外みんな20代半ば以下で、ディメオラなんて2年前に参加した当時は学校卒業仕立てのド素人だったわけで・・。

そんな彼等のこの名作は、チックの友人で著名な詩人Neville Potter(ネヴィル・ポッター)の詩を題材としており、コンセプトアルバムの様相を呈しています。

tracks:
1.Medieval Overture“中世序曲”
2.Sorceress“女魔術師”
3.The Romantic Warrior“浪漫の騎士”
4.Majestic Dance“荘厳な舞踏”
5.The Magician“手品師”
6.Duel Of The Jester And The Tyrant(PartⅠ&PartⅡ)“道化と暴君の決闘(パートⅠ&Ⅱ)”

メインとなるシンセの音色などがさすがに時代を感じさせます。
どの曲も長いしネ。(笑)
しかしながら、各楽曲の構成が実に良く練られており、シンフォニックでプログレッシヴな要素まで兼ね備えた、時代を思えばかなり先見的な作風じゃないかと思います。

最近、“ジャズ・ロック”と“クロスオーバー”もしくは“フュージョン”の違いって何だろう?と考えてしまう場面に度々遭遇します。
どちらもインプロヴィゼーションを生かそうとした音楽を目指しているのには違いないのでしょうが、私が思うにやはりスタンスの違いが大きいんじゃないかと思います。
すなわち、“ジャズ・ロック”はビバップの形式をロックに当てはめ、あくまでスタンドプレイ主体でガンガンいったれ!みたいな感じ・・ヨーロッパ方面に多いセッション主体のヤツかな。
一方、“クロスオーバー”&“フュージョン”はハーモニープレイ主体で、もちろん個人プレイも重視しながら着地点までみんなで突っ走りつつ、緩い枠と構成ありきなんですね・・で、ジャズ主体。
RTFの音楽は、まさに後者だと思います。


【RTF LtoR:DiMeola,White,Corea,Clarke】

どの曲が一押しか?なんてのも野暮といえばそれまでなんですが、敢えて言えばアルバムタイトル曲#3“浪漫の騎士”かな。
唯一アコースティックなアレンジなんですが、スリリングでドラマチックな曲なんですよね。
スタンも随所でボーイング演ってたりエレキベース紛いの熱いソロが炸裂してたり、ディメオラも多分オヴェーションで短いながらもらしいソロを重ねてます。
レニーのドラムも破壊力満点でタム回しやスネア捌きがめっちゃ早いし、曲調にあわせてチューニングやショットを変えながら構成してるのが凄いです。
チックもピアノ主体で“よっしゃよっしゃ、ええ感じやね君ら・・”みたいなノリ(笑)で、余裕かましながら連中をグイグイ引っ張っているのがよく分かるプレイです。

あと、非常にシャープに纏まってると思うのが#2“女魔術師”かな・・次点かも。
ただ、ディメオラがらしいエレキソロをぶちかましてる#6“道化と暴君の決闘(パートⅠ&Ⅱ)”も捨てがたくて、同率で次点かな。
・・ちょっと冗長気味なのが難点かもです。

#4“荘厳な舞踏”はラケンロ~みたいな能天気な雰囲気で、意外とザッパ風な感じもしますね。
#5“手品師”ではスタンのハーモニクスプレイが炸裂・・これもザッパ風かも・・。

チックはやはり“ピアニスト”と呼ぶのが一番妥当じゃないかなと感じますね。
熊谷美広さんの邦盤ライナーにもあるように、この作品が後のエレクトリック・バンドへ繋がる布石となってるのは間違いない事実なんでしょうが、どんなにエレクトリックな曲であってもピアノ主体だったり、あるいはそれを感じさせるプレイであったりするんですよね。
それと、ユニゾンプレイも大好きだし・・絶対どっかに入ってますよね。(笑)

彼のこの辺が並みの鍵盤弾きと違うところじゃないでしょうか。



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6 コメント

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こでまり様 (elmar35)
2010-06-18 22:13:10
古い記事にすんません。(笑)
チックの全体像をまだまだ掴みきれてませんので、あんま偉そうな事は申せませんが、RTF初期の頃が多分もっともエネルギッシュだったのでは、と感じております。
こういう親分肌の方が、最近滅法減ってきましたね。
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Unknown (こでまり)
2010-06-18 01:05:36
こんばんは^^

コメントとトラックバック、ありがとうございます♪
思わず、なるほどと頷きながら読んでしまいました^^ゞ
ジャズ・ロックとフュージョンの違いとか、分かりやすくて、流石ですね。

チック・コリア、わたしもピアノ主体のプレイで、そこが凄くいいなと思いました。
ユニゾンがまた気持ち良さそうにやってるのが目に浮かびますよね^^

elmarさんのこの記事を読みながら、もっとじっくり聴きますね~^^
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daika様 (elmar35)
2008-05-08 19:47:41
コメントありがとうございます。
再結成のようですね。
仰る様に、私も動く彼らの勇姿を拝んでみたいです。
ブートは間違いなく出るんでしょうがね・・。
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こんばんは (daika)
2008-05-07 22:05:06
今年、RTFが再結成しますね。
欧米ツアーだけで日本には来ないのがかなり不満ですが、どこかのレコード会社がツアーの模様をライブCDとして発売するのを期待して・・・まっています。
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FUSION様 (elmar35)
2008-05-04 09:27:43
コメントありがとうございます。
直しときました・・お気になさらぬよう!(笑)
RTFは全部聴いてる訳でもないので、結構裏を取るのに手間取りました。
是非、貴ブログで解説願います。

それから“カモメ”は私結構好きなんですよ。
・・意外かもしれませんがネ。(笑)
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素晴らしいアルバムです。 (FUSION)
2008-05-04 09:20:25
お邪魔します。
おっと!これが登場しましたか!!!
私も大好きな作品です。お世話になりました(笑)76年だったのですネ。リアルタイで聴いてはいませんが(汗)
>この作品が後のエレクトリック・バンドへ繋がる布石となってるのは間違いない・・・
そのとおりだと思います。確かにコンセプト自体はかけ離れていますが、方法論的にチックはこの第2期RTFを推し進めたかったのでは??それが結果としてエレクトリック・バンドに至ったのかもしれませんネ。
私がRTFを初めて知ったのが3作目「第7銀河の讃歌」・・・衝撃的でした!それがこの「浪漫の騎士」まで続いたりしました。ビル・コナーズ大好きなんです・・・もちろんディメオラもですが・・・。
ちなみに、正直「カモメ」はあまり好みのサウンドではありません・・・嫌いじゃないんですけど・・・野暮というものでしょうか(笑)。
私もRTFを語ってみたくなりました・・・難しいので避けていたのですが、elmar35さんに刺激を受けました。
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