遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

男の帽子(現代詩)

2017-10-10 | 現代詩作品

昭和の男たちは帽子を愛した
風の噂のソフト帽
帽子は全国にある銀座の
青い背広たちをつぎつぎに席捲し


ダンゴ坂の粋な明智先生から
ハンティングの好きな御用聞きの少年たちまで
みんな、なんみん?
浮いた浮いたで
一斉に戦闘帽をかぶらせられる
今世紀最悪の和平で
叔父は牡丹江からとぼとぼ帰還
その後は
後楽園から
学校のグランドへと
野球小僧がどっと町中にあふれた、歌もあふれた
ボクラの時代


こんなまぶしい夏の夕暮れは
隣国の美女軍団すら横目に
お茶の水から
浅草寺の神輿を担ぎにとびだしていったという
未だに帰らない
帰ってこない(母さんぼくのあの帽子どうしたんでしょうね
従兄弟もいる


昭和は遠いソフト帽
一闡提(いっせんだい)的迷いごとではないが
一時ハマからリーゼントの浦島も
煙と消えかかり、


帽子を捨てた男たちは
朝のトイレで
ヘヤーが出世の早道と
緑の頭髪をなでつけている






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