遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

そらまめ(現代詩)

2017-10-12 | 現代詩作品
そらまめ
空豆は
他の豆よりも
大きく
そらまめ、そらまめ
淡い緑の空にはじけて
いくつもの
物語をひきずっていた
空豆と
上野の家から
合羽橋通りをぬけて
入谷へとはじめてたどった日よ

空豆そーら、
まめよと
どこかのだれかが呼び止めていた
いまだったら
たぶん義理と人情とやせ我慢で
浅草一番という
幇間の
「計らうこと」の美学に
心酔することになっただろうか
(テレビの中の話だけれどね

上野の音楽短期大学の
濃紺の女学生が
神聖な藤棚をくぐって
毎朝、家の前を通るから
祖母と一緒に二階から眺めていた
幼年期のぼくの
空豆いずこ
合羽橋通りからの
帰路への
みちしるべからもずっと遠く
映画吉原炎上の遊女の
悲哀と反骨という
下町のしいたげられた底意地など
どこ吹く風のぼくの
夢の道はいずこ

ぼくの空豆は
珠玉のたましい
六月の晴れ間に
新鮮なまゆをつくり
懐かしい未知を
緑したたる虚偽で飾ってみる


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